The world is in retrospect
──世界の時間を巻き戻す。
全てが限りなく白に近い空間。
在る影は、7つ。
そう言葉を放ったのは、比較的真ん中に位置をとる一つの影。
この世界の最高位――光の王。
神とも呼ばれる存在。
──もう一度、やりなおそう。
先程の発言は、この場にいた者全員に対して向けられたものだったが、今度は違う。
ただ一人に向けられたものだった。
そして神は、その一人に続けて問う。
──もう一度、愛してくれるか?
と。
問われた者は、まっすぐと神を見据えて即答した。
──たとえ姿カタチが変わったとしても、必ず。
続けざまに、誓いを立てる。
──何者と刺し違えてでも、次は絶対に、守り抜きます。
その答えに満足した神は、口角だけを上げて微笑んで見せた。
それは他人を安心させる為のものなのか、はたまたただの強がりか。
しかしその目に映しているのは、哀しみの色のみであると、この場にいる全員がそのことに気が付いている。
もう、そこに、咎めるものは誰も居なかった。
神の口から紡がれる呪に、世界が応じる。
真っ白であった空間の彼方此方に、何色ともとれない光の帯が走り始め――
それは、神を軸に世界を這った。
そうして巻き戻された世界の時間は、
神を除く誰の記憶にも残らない。
世界から失った一人を取り戻せば、
すべての命が救われると、そう思った神は、元より万能ではなかった。
もしもこの先、たった一人が巻き戻された世界の記憶を思い出したとしても、
すでに書き換えられてしまった運命に抗う術はないだろう。
これは、世界の<回想>──
結ばれる運命だった相手は、
もう一度、と願ってしまったが為に、
永遠に結ばれない運命の存在へと換わってしまった。
この世界には、
「知れてよかった」と思える真実よりも、
「知らない方が幸せだった」と、そう感じる真実の方が、圧倒的に多い。




