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笑いの形‐WARAKATA‐  作者: らい
第一部『彼らの日常は日常とは程遠い』
8/16

第七輪:『闇々パラダイス』

台風じゃ~!!!

台風もそうだけど、最近ゲリラ雷雨とか頻繁に起きててヤバイですよね!

皆さんもおへそ取られないようにお気をつけあれ!

ということで本編へどぞ~!

 それは晴天とは程遠い、どんよりとした雨雲が空を覆っていて降りそうで降らない雨。そのせいか少し湿っぽい日の出来事。

 六人は何が起こるかわからないリレイションワングランプリ、略してリレワンのために中庭に集まり修行をしていた。

 春も少し終わりかけてきていて、森の木々はちらほら桜色が残るも緑に染まってきていた。湿っぽいせいか初夏を感じさせるじんわりとした暑さが少し鬱陶しい。

 今は六人で住むことだけを命じられているリレワンだが、いつ何が起こるか分からない。リレワンのせいでレイラーが活発化しているため、レイラーを狙う悪い人間の組織も活発化している。そういう奴等にいつ襲われてもおかしくないのもそうだが、リレワンを開催している“えらい人”という人物もどうも胡散臭い。同じレイラーが襲ってくる可能性だって充分に有り得る。何が起こるか、何を起こされるか分からない故の修行ということだ。


 しかし皆中庭に集まっているものの、木の上で昼寝する一夜(いちや)、「ダルい」「疲れた」「女の子」と口々にして全くベンチを動かない(れい)、中庭に設置されたパラソルと椅子でまったり紅茶を飲む未來(みき)、と自由である。

 皆で修行しようと提案したのは礼央(れお)であったが、最初こそ呼びかけたものの皆言うことを聞いてくれないため途中から自由にさせているようだ。

 そんな礼央は珍しく紅龍(こうりゅう)と組手を行っている。初めは莎子(さこ)と紅龍が行っていたのだが、どうも二人の距離が近すぎるのが気になった礼央は慌てて交代を申し入れたのだ。

 紅龍はそんな礼央に気づいたようで、ニヤニヤしながら組手をするのであった。

紅龍「そんなんじゃ先が思いやられるな!」

礼央「な、何がだよ! オレは! 肉弾タイプじゃ! ないよ!」

紅龍「ふん! あの女のことだ!」

礼央「わわ! え!? うわ!?」

 組手の練習に慣れている紅龍は何事もないように喋りながら事を成しているが、もともと体力タイプではない礼央は紅龍についていくのがやっと。そんな中で動揺するようなことを言われ、体勢を崩ししりもちをつく。

礼央「いてて」

紅龍「それくらいで心を乱すこともダメだな」

礼央「こ、紅龍が変なこと言うから」

紅龍「修行中にやきもちを妬くな」

礼央「!? ……ごもっとです」

紅龍「まぁ、組手に熱中してあの女と口と口がぶつかったらすまんな」

礼央「それはダメに決まってるだろ! やっぱりオレが相手するよ!」

紅龍「仕方がない、来い」

 礼央をおちょくるのが楽しくなってしまった紅龍は、組手を再開するもまた礼央をからかいながら始めるのだった。


 そして組手の除け者にされた莎子は一人リレパを高める修行をしていた。

 莎子のリレパは闇。

 己のリレパを高めるには最大限の集中力とリレパを限界まで高めては休みを繰り返す。誰に教わってきたわけではなく、そうするとリレパの性能や制度が上がることを何となく感じるのだ。

 一歩間違えれば己も闇にのまれてしまう恐ろしいリレパだと莎子は親に言い聞かされてきた。

 しかし今まで特にリレパが暴走したり、制御出来なくなるなんてことはなかったため、両親に聞かされていたその言葉を忘れてしまっていた。

さこ「ーっ……」

 何度か限界と休憩を繰り返していると不意に莎子の頭にチリッとした痛みが走った。少し変に思ったが特に気にも止めず、また意識を集中しだす。

 それが間違いだったと数分後に気づかされるとは知らず。


礼「あーもー無理! つーかこんな森ん中で女の子とも遊べず修行とかどこの少年誌だよ! みきりん癒して! それかほうきで街まで連れてって!」

みき「ちょっと抱きつかないで礼! あと礼はほうきに乗せると無駄に抱きついてくるから嫌!」

 元々汗くさいことが嫌いな礼は我慢の限界だったようで、大きな声を上げ未來に抱きついた。

 いつもならここで莎子のパンチが飛んでくるのだが、莎子はリレパ操作に集中しているため気づかない。

礼「あれ? さっつんからパンチが飛んでこない? さっつーん? オレみきりんに抱きついてますよー?」

 不思議に思った礼は莎子に近寄り、顔を覗き込んでみる。すると莎子は目を閉じ、集中していて聞こえていないようだ。

礼「お? これチャンスじゃね?」

 そんな莎子を見てやめておけば良いのに礼のイタズラ心が芽生え、莎子の背後にそろりそろりと回り込む。

礼「さーっつん」

 礼は語尾にハートが付きそうな声音で莎子の耳元で囁きながらふぅーっと息を耳に吹きかける。

さこ「ひゃ!?」

礼「ははっ、めっちゃ可愛い声出るじゃん、さっ、つ、ん……うお!?」

さこ「ーっ!!?」

 莎子が驚いて声を上げたかと思いきや、突如莎子から黒い粒子の様なもやが放たれ、その黒いもやはすぐに莎子を覆い尽くす。

礼央「さっつん!!! 何? 何があったの!?」

 すぐさま異変に気づいた礼央は莎子がいるであろう黒いもやに駆け寄り、近くにいた礼の肩を掴み、問う。

礼「いや、オレもよくわかんねーっていうか、突然真っ黒いのがさっつんを覆って」

礼央「さっつん!!!」

 礼央は少しの迷いもなく闇の中へ入ろうとするが、礼がそれを制止する。

礼「何が起こってるかわかんねーのに危ねーだろ!」

礼央「でもさっつんが!」

紅龍「礼の言う通りだ、落ち着け」

みき「皆危ない!!!」


 暗闇。

 未來が叫んだ瞬間、周りにいた全員暗闇に取り込まれた。凄い速さで覆い尽くした闇は家全体を囲み、半径一㎞程に広がる。周りにあった建物や木々はまるでなかったかのように、飲み込まれた瞬間、礼央達以外は無となった。真っ暗闇に吸い込まれた六人。

礼央「さっつん!!!」

 そこには莎子もいたが、倒れていた。すぐさま礼央は駆け寄り、自分の膝の上に莎子の頭を置く。

礼央「良かった、眠ってる」

 近寄ってみてただ眠ってるだけだと認識できた礼央は安心し、莎子の頬に手を当てる。

一夜「なんだよ、ここ?」

みき「さっつんのリレパの中……とか?」

紅龍「闇のリレパ。謎多きリレパだと死んだ爺さんに聞いたことがある。有り得ない話ではないな」

礼「でもどうしてこんなことになったんだよ?」

紅龍「貴様のせいだろう」

礼「え?」

紅龍「チビ女はリレパを高める修行をしていた。リレパを高めるには相当な集中力がいる。そんな状態のチビ女を驚かし、集中を崩させこうなっていると俺は推測している。しかしこういった事例は初めてであり、俺は聞いたこともない」

みき「もー、いつも礼が何かしらやらかすよねー」

礼「そんなこと言われたってさー!」

一夜「どーでも良いが出る方法はねーのかよ?」

さこ「ーっ」

 各々が不安に包まれている中、莎子が目を覚ます。

礼央「さっつん! さっつん、大丈夫?」

 目を覚ましたことにほっと一息した礼央だったが、莎子に異常がないか優しく問いかける。

さこ「ちょっと頭痛いけど大丈夫。ここは?」

紅龍「貴様が作り出した空間だ」

さこ「は? あたしが作り出した? あんた何言ってんの?」

 怪訝そうな顔で莎子は紅龍を見る。

紅龍「まぁ礼のせいと言っても過言ではないが──」

礼「わあああ!!? 聞かなくていいよさっつん! ね!」

 慌てて礼が莎子の耳を両手で塞ぐ。その際礼央が何か言っていたが礼はお構い無しに塞ぎ続ける。

さこ「ーっ」

 耳を塞ぎ続けたまま礼と紅龍が言い合いを続けていると、ふと莎子はまた頭にチリッとした痛みを感じた。

礼央「さっつん? 礼、一旦離れ──」

さつ「う、ああああああ!!?」

礼央「!?」

礼「うわ!?」

みき「皆!」

紅龍「ちっ」

一夜「くそっ!」


 莎子が叫んだ瞬間、全員先程とは比べ物にならないくらい深い深い闇へと吸い込まれた。


 ◆◆◆


礼央「いてて」

礼「なんだここ?」

さこ「ーっ……皆は?」

 まだ少し頭の痛みが残る中、莎子が目視出来たのは礼央と礼だけ。

礼央「バラバラになっちゃったのかな? まだ出る方法も分かってないのに」

さこ「……ところで、あたしが原因ってどういうこと?」

礼「あ、あんま気にしなくて良いんじゃねーの?! それより出る方法探そーぜ! 皆と合流もしなきゃなんねーし!」

 礼は焦った様子でキョロキョロと辺りを見回し、少し歩き出す。

礼央「……さっつん」

さつ「?」

 礼央は下に座る莎子と同じ目線で膝立ちをして真剣な眼差しで見つめる。何故そんな真剣な目で見つめられているのかわからない莎子はキョトン顔をする。

礼央「ビックリするかもしれないけど、よく聞いてねさっつん……。この暗闇はさっつんが作り出したものなんだ」

さこ「へ?」

礼央「リレパの集中を途中で邪魔されて、闇のリレパが暴走してさっつんが暗闇に取り込まれた後、暗闇が周りを凄い勢いで取り込んで皆をこの中に閉じ込めたんだよ」

さこ「嘘……」

礼央「出る方法とかわかる? 前にこんなことあったりした?」

さこ「ごめん、分からない。こんなの初めてで……」

礼央「そっか。じゃあ皆を見つけてここを出る方法を探そう。大丈夫、オレがなんとかするから」

さこ「礼央……」

 よし、と気を引き締め直し、不安そうな莎子の頭をぽんぽんと撫でてやってから立ち上がり、礼央は辺りを見回す。

さこ「礼央、ありがとう」

礼央「ん? なんのこと?」

 礼央はにっこりと莎子に優しく笑いかけた。そんな礼央に莎子は少しだけ頬を染めバレないように俯いた。しかしすぐに顔を両手でパチンと叩き、立ち上がる。

 そんな二人が前向きに頑張ろうとした瞬間だった。

礼「お前、お前は!?」

 少し向こうの方へ歩いていた礼が不意に大きな声で叫びだした。

礼央「礼? どうしたの?」

 何があったのかと礼の方に二人は駆け寄ると、礼は何もない真っ暗闇を指差し驚きと怒りの表情を浮かべていた。

礼「ふざけんな!!! お前のせいでオレは、オレ達は!!!」

礼央「何か幻覚を見てる?」




みき「皆どこー? 暗くて怖いよー! 一人は無理ー!」


紅龍「うるさい奴等が消えたな」


一夜「……」


 その頃、未來、紅龍、一夜は一人一人バラバラになってしまっていた。

 果たして全員無事に暗闇から抜けられるのだうか。


─続く─


次回予告

礼央「最近オレ思うんだ、どうしてさっつんはあんなに可愛いのかなって! いや、昔から可愛かったわけなんだけど、最近可愛さを増してきたというか、年齢を重ねた色気的なのも増してる気がして、変な人が寄り付かないかオレは心配だよ! なんてオレが心配しても仕方がないんだけどね……。でもやっぱり心配というかほっとけないというか……。はぁー、さっつん……」

さこ「次回笑形第八輪。『トラウマの先に待つものとは』」

礼央「さ! さっつん!? いつからそこに!?」

さこ「礼央があたしを呼んだくらい?」

礼央「良かったー!!!」

さこ「次回もお楽しみに」


2018,08,31

2024/06/04(最終加筆)

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