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笑いの形‐WARAKATA‐  作者: らい
第一部『彼らの日常は日常とは程遠い』
6/16

第五輪:『一歩進むことは難しい』

夏です!平成最後の夏です!

といってもそろそろ夏も終わり秋ですね~。

秋といえば美味しいものが沢山!!!

美味しい梨とか柿とか食べたいな~。

ということで本編は春頃なんですが、始まります~!

さこ「ふざけんな、礼ーーー!!!」

礼「ごめんてーーー!!!」

「あぶねぇあぶねぇ、そこの兄ちゃんがへましてくれなきゃやられてたぜー」

礼央「ほんとに……」

紅龍「貴様、覚えておけよ……」

 莎子(さこ)礼央(れお)(れい)紅龍(こうりゅう)は木に縄で宙ぶらりん状態で捕まってしまっていた。

 皆が向かった土煙の先には睨んだ通りレイラーを狙う奴らが数十人とうじゃうじゃいた。礼央の大地のリレパは眠り粉を出せるため、それを使って隠密行動で敵を倒すという算段だった。しかし礼が敵の仕掛けた罠を踏んでしまい足に縄が引っ掛かり、木の上に宙ぶらりんという初歩的なものに引っ掛かってしまったのだ。それを素早く気づかれぬうちにと助けようと出た、莎子、礼央、紅龍。しかし既に気づかれており、三人も礼と同じ宙ぶらりん状態。安心してください、莎子はスカートの下にスパッツをはいております。

礼「そうだ! 紅龍のリレパで縄焼けばいいんじゃん!」

紅龍「おい、礼! むやみやたらに……」

「お、やっぱりレイラーだったかおめぇら」

さこ「あほ……」

 罠を仕掛けていた敵だったが、莎子達がレイラーだという確証はなかったようで、近づく奴らを適当に捕まえていたようだ。しかし、礼の発言でレイラーだということがバレてしまった。莎子は呆れた目で礼を見る。

礼「だ、だってどーせなんか装置使ってバレるわけだろ!? んなら別に一緒じゃん!」

礼央「開き直るなよ!」

礼「てかバレてんなら早く縄切れよ紅龍!」

紅龍「気づかんのか貴様」

礼「何が!?」

「ははっ、リレパを使おうとしてんなら無理だぜぇ。その縄はてめぇらレイラーのリレパを封じる特製の縄だぜ?」

 くくくっと笑いながら敵の男達は四人を取り囲む。

礼「うあーーー、どうしよう紅龍!?」

紅龍「知らん! 少しは黙っていられんのか!」


 さて、四人が大変な事態になっている中、皆様はお気づきでしょうか。あの二人がいないことに。

みき「どうしよう、一夜(いちや)くん!」

一夜「ちっ、めんどくせーことになりやがって」

 そう、未來(みき)と一夜は間一髪見つからずに少し遠い木の影で隠れていたのです。

みき「みきたちでなんとかするしかないよね!」

一夜「は? めんどくせぇ。行くなら一人で行けよ」

みき「い・ち・や・くん」

一夜「んだよ……な!?」

みき「い・ち・や・くん」

一夜「……はい、行きます」

 一夜の暴言に未來は怒っているのか怒っていないのか。しかしとても笑顔で、本当に笑顔で、一点の曇りもない笑顔で一夜のことを見つめる未來に一夜ははいと言わざるをえなかった。

みき「よろしい」

 そう言った未來は笑顔から一転、真剣な表情で莎子達に視線をやる。

みき「とりあえず絶対に捕まっちゃいけないみたいだね。さっつん達が大人しく何もしない所からみると、きっとリレパを無効化する何かがあるみたい。あの縄かな?」

一夜「……」

みき「ん? どうしたの?」

一夜「お前以外と頭回るんだな」

みき「何それー! みきが頭悪いみたいな言い方!」

一夜「お前みたいな女は基本的に頭わりぃだろ」

みき「失礼だよ! てかみきみたいな女って何!?」

一夜「……なんでもねぇよ」

みき「なんでもなくない!」

 一夜の発言が気に障った未來は、間近で問いただす。しかし怒っているからか距離感がやや近く、一夜は一歩、また一歩と下がるが、未來は更に詰め寄る。

一夜「なんでもねぇもんはなんでもねぇって!」

 いい加減やめてほしい一夜は、未來の肩を押して顔を遠ざける。文句を言う未來であったが言えるはずもなかった。てめぇみたいな見た目可愛くて癒し系女は基本的に頭が悪い……とは。二つの意味で自分が死んでしまう、と。未來は文句を言っているが一夜はどうにか無視して作戦を練ることに集中する。

一夜「お前、縄を切る感じの技は使えるか?」

みき「もう! 使えるよ、風切(かぜきり)って言って、風圧を小さく圧縮して……」

一夜「原理はどうでも良い。使えるならお前はあいつらの縄を切る役目だ。後の周りの奴らは俺が引き付ける」

みき「無茶だよ! 引き付けるって言ったって、10人以上いるよあれ!」

一夜「いいから、てめぇは黙って従え」

あまりも強引な一夜だが、未來はもうとぼやきながらも、作戦に乗るらしく臨戦態勢に入る。

一夜「行くぞ!」

みき「うん!」


一夜「水の龍巻(ウォータードラゴン)!!!」

「な、なんだなんだ!?」

「うあー!!!」

 そう一夜が叫んだ瞬間、一夜の周りにどこからともなく水が集まり龍の形へと姿を変え向かっていき、たちまち敵を水の中へと飲み込んでいく。不意討ちを受けた十数人はほぼ全員水の中へと捕らえられる。

みき「風切(かぜきり)!!!」

未來がそう叫ぶと風圧で莎子たちの縄が次々と切れ、礼以外は綺麗に下に着地する。

礼「いってー! みきりん雑じゃねー!?」

みき「へまして文句言わないで!」

さつ「ふざけてないで、来るよ」

 一夜のリレパのおかげで大分敵は捕らえられているのだが、数人残った敵は莎子達を囲む。

紅龍「この数なら俺一人でも充分だな」

礼央「ダメだよ。安全策をとって皆で倒そう」

紅龍「ふんっ。おい、行くぞ礼」

礼「え? 行くってどこに?」

紅龍「アホか。連携だ、来い」

礼「えー! なんでオレ!? オレ戦わなくていいじゃーん!」

紅龍「つべこべ言うな! 行くぞ、あれだ」

礼「うわー、マジかー。 しゃーないなー……鎖縛(チェーンズ・)鎖硬(バインディング)!」

 礼が嫌々ながらもそう叫ぶと礼の手のひらから無数の鎖が現れ、敵達の周りを取り囲むように鎖が張り巡らされる。

紅龍「炎蛇(ファイヤースネーク)

 次に紅龍が叫ぶと文字通り蛇のように鎖を炎が走っていく。たちまち無数の鎖に囲まれた敵達は炎の中へと閉じ込められる。

「あちー! あちー!」

「どこにも逃げ場がねぇ! あちーよー!」

礼央「こ、紅龍、火加減考えてる? さすがにあの人達死んじゃうよ!」

紅龍「ふん、俺は馬鹿ではない。死なん程度、というよりこの炎は熱さを感じているだけであって実際に人体に影響はない。まぁ、幻術のようなものだ」

礼央「へー、そうなんだ! すごいね!」

さこ「……」

紅龍「……」

 紅龍の技に感心する礼央を見て、莎子はなんだか悔しそうに紅龍を睨む。そんな視線に紅龍は気づいたのでからかおうとしたが、先日のことがあるため一瞬ためらう。しかし何度か頭で葛藤したあと意を決した顔をしたかと思いきや、ニヤリと笑いながら礼央の肩を引き寄せる。

紅龍「おい、ちび女。それは俺の技が羨ましいのか? それともこいつに褒められたのが羨ましいのか?」

さこ「な!?」

 隣で莎子に変なこと言うなーなんて礼央が叫んでいるが、そんなことは気にもせず紅龍は不敵な笑みを浮かべたまま莎子を見る。一瞬さっつんは気まずそうな顔をしたが、紅龍の気にしていない態度を見て安堵した。

さこ「ーっ……べ、別に! 礼央のことなんてどうでもいいし!」

 しかし礼央のことを言われ恥ずかしさのあまり礼央を睨み付けてそっぽを向いてしまった。しかし恥ずかしがっていることは礼央に伝わらず、礼央はショックに顔を青くした。そんな二人を見て紅龍はニヤニヤするのであった。そしてその騒動が終わる頃に敵は全員下に倒れ込んでいたとか……。



 そんなこんなで一件落着し、礼央の大地のリレパにより倒れた敵全員はこの家に関する記憶をなくしたのであった。大地のリレパ便利である。

 そして一通りの片付けを終え、皆が住む家へと帰って来た一行。

礼「あー、疲れたー! マジやべーわー」

さこ「あんた足引っ張りすぎ」

礼「あ、足は引っ張ったかもしんねーけど、めっちゃ頑張ったじゃん! な! 紅龍!」

紅龍「……」

礼「おい! シカトかよ!」

みき「礼うるさーい。耳元で騒がないでー」

礼「皆ひでーよー!」

 なんだかんだで楽しそうな皆。少しずつではあるが絆が深まってきたようだ。和気あいあいとしながら談話室で皆過ごすのだった。

 一人を除いて。


 ここは一夜の自室。来たばかりの一夜の部屋には最低限の物だけが置かれ、閑散としている。

一夜「……ちっ。よりにもよって炎のレイラーが一緒とか、マジでありえねー」

 怒っているような、苦しそうな表情を浮かべ一人、ベッドに座り窓の外を見ていた。静まる部屋が一夜の心情を表すかのようだ。

一夜「一緒に仲良く暮らすとか絶対無理だろ」

 もっと苦しそうな表情へと変わった一夜は、ベッドへと寝転ぶ。

一夜「なぁ、どうしたらいい、仁歌(にか)……。」

 仁歌。一夜はそう呟いた。寂しそうに、苦しそうに、愛おしそうに。

一夜「くそっ!」

 ガンッと大きな衝撃音を立て、一夜は壁を殴った。真新しい白い壁がかすかに赤く汚れた。

 今日起こった目まぐるしい出来事に一夜も疲れてしまったのか、まだ日が暮れて少ししか経っていないがそのまま眠りについてしまった。

 その日一夜は夢を見た。夢の中には今よりも少し幼い一夜と、一夜よりもう少し幼い小柄な少女がいた。二人は仲良く小さな白い花が沢山咲いた花畑にいて、少女はその花で花冠を一生懸命作っていた。土まみれになっていることなどお構い無しに無心にそれを作り上げるのを一夜は優しい笑みで見ていた。

一夜「出来たか、仁歌?」

仁歌「うん!はい、あげる!」

 仁歌はにっこりと可愛らしい笑顔を一夜に向けているはずだが、何故だか一夜にはその顔は陰っていて見えない。しかし雰囲気で笑顔なのだと伝わってくるのは確かだ。

一夜「一生懸命作ってたのに俺にくれるのか?」

 貰うのを躊躇った一夜だったが仁歌はとても嬉しそうに一夜の頭に乗せる。気恥ずかしそうに一夜は仁歌にお礼を言った。

 その瞬間一夜の目の前で仁歌は弾け飛び、花びらが舞う。

一夜「仁歌! 仁歌!!! 仁歌ああぁああ!!!!!」


一夜「うぁ!!?」

 夢にうなされた一夜は叫び声と共に起き上がる。冷や汗がたらりと垂れ、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

一夜「くそっ……仁歌……」

 その日の夜、一夜が再び眠りにつくことはなかった。


─続く─

次回予告

みき「じゃじゃーん! 次回はみきと一夜が頑張りまーす!」

一夜「めんどくせぇ」

みき「そんなこと言わずに、一緒に頑張ろう?」

一夜「ーっ……」

礼「はいはーい。皆見てること忘れずになー」

一夜「な!?」

みき「次回笑形第六輪! 『きっかけはとても簡単』」

礼「お楽しみにー!」


2018,07,23

2018,08,26(加筆)

2024/06/04(最終加筆)

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