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笑いの形‐WARAKATA‐  作者: らい
第一部『彼らの日常は日常とは程遠い』
5/16

第四輪:『遅れてきたもう一人のレイラー』

皆さんはどうやってストレス解消してますか?

私は家だったら、昔好きだった曲を引っ張り出してきて、熱唱します。

外に行くならカラオケ行きます。

歌うのってきもちいですよね。

本編全然関係ないですが、どうぞ~!

礼「あと一人中々来ねーよなー」

  ここは談話室。そこには皆集まっていた。あれからもうすぐ一週間が経とうとしていたが、最後の一人はまだ現れていなかった。

紅龍「おい(れい)、もたれかかるな、鬱陶しい」

礼「つれないこと言うなよ紅龍(こうりゅう)ー」

  礼は鬱陶しがる紅龍をからかうように更に体重をかけて遊んでいる。はじめは我慢していた紅龍だったが、段々頭に怒りマークが増えていき、最終的には礼の首根っこを掴んで下に落とす。

礼「いってー! ひでーよ!」

紅龍「ふん、自業自得だ」

  そんな二人を向かいのソファに座っていた莎子(さこ)礼央(れお)はなんとなく見ていた。

さこ「……」

礼央「礼っていつも楽しそうだよね。紅龍よく付き合ってるなー。ねぇ、さっつん」

さこ「……」

礼央「さっつん?」

さこ「え? あ、何?」

礼央「……さっつんさ、当番の日からもしかして紅龍のこと避けてる? 何かあったの?」

さこ「へ!? な、何もないよ!」

礼央「……まぁ、さっつんが話したくないならそれで良いけど。喧嘩なら仲直りしなきゃだよ? これから一緒に住んでくんだから、ね?」

礼央はとても優しい笑みで莎子に言った。

さこ「うん……」

 礼央に言われたから、というわけではないが莎子はあの日から約一週間考えていた。

さこ「……(あたしが謝る? どう考えてもあいつの言動に問題があったわけなんだけど、でもさすがに強く叩きすぎたかな。一週間経ちそうなのにまだ頬赤いし……)」

 紅龍の方をちらりと見ると頬にはまだ赤く跡が残っていた。明らかに自分がつけたものだと認識する莎子。

さこ「……(でも礼央の言うとおりこれから一緒にやってくのに気まずいのは面倒くさいしな……。嫌だけど謝ろうかな)」

 そうさっつんが決意し、紅龍に話しかけようとしたその時だった。

 ──ドシーンッッッ──

みき「な、何?! なんの音?!」

 珍しく誰もちょっかいをかけてこないので、談話室で優雅に紅茶を飲んでいた未來(みき)だったが、音に驚き声をあげる。

礼央「庭の方からだったね。行ってみよう!」

 礼央を先頭に皆は庭へ向かうのだった。


  ◆◆◆


礼央「この辺りの方角からだったよね?」

 庭へついた一向。音のした方向へと礼央は進んでいくが、特に庭には何もある気配はなかった。

さこ「なんか、あそこ、人がいない?」

 莎子の指差した森の木々の一本。そこには青年が座っていた。先程の音は青年が木から落ちた音なのか、青年は痛そうにお尻を押さえていた。

?「いってーな、ったく……。あ?」

 痛そうにお尻を撫でる青年はふと莎子達に気づき、睨み付けてくる。

礼「お前オレたちと住む最後の一人だろ? 超遅いじゃーん!」

  しかし、そんなしかめっ面も礼には効かないらしく軽い調子で背中をばしばし叩くが、青年の顔はますます険しくなる一方。そんな礼に紅龍が全く検討違いの奴だったらどうするのか、自分がレイラーだという危機感を持てと怒っているが礼は聞く耳持たず。

?「よくわかんねーが、あの手紙のこと言ってんなら人数見る限り最後の一人で間違ってねー。ここまでの道色んなわけわかんねー奴らに襲われまくってよ、着くまでに時間がかかったんだ。避けるために森の木に隠れ隠れ来た」

礼央「そんなに活発に活動してるんだね、奴ら……」

?「奴らのことか知ってんのかよ?」

 知ってる口ぶりの礼央に青年は一体奴らはなんなのか問う。礼央はここまでの経緯を話した。そして流れで自己紹介も始めていく。

一夜「レイラー狩りがそんな活発化してんのかよクソ……。まぁいい、俺の名前は狩矢一夜(かりやいちや)、十八歳。リレパは水だ」

  青年は髪を染めているのか少しパサついた金の短髪で、襟足の方だけ伸ばしている。その襟足を残しながら左側を少し結んでいる。一夜のリレパは水の様で、指先から大道芸のように水を出して見せた。


  ◆◆◆


一夜「てめぇ、今なんつった!!?」

礼央「やめなよ、一夜!」

紅龍「……」

 一通り自己紹介を終えようとした所で一夜は声を張り上げた。紅龍の自己紹介の番になった途端、突然紅龍に掴みかかったのだ。それを礼央は抑えようと二人の間に割って入るが、一夜は紅龍の襟を掴んだまま離さない。

礼「何そんな怒ってんだよ? 紅龍がなんかしたのか?」

 一連の流れから怒る所など見当たらず、疑問を礼は投げかける。そんな礼の発言に一夜は更に顔をしかめ、叫んだ。

一夜「何かしたかじゃねーよ! お前ら知らねーのかよ、俺達レイラーがこんなひっそりと暮らさなきゃいけなくなった理由をよ!」

さこ「は? そんなの皆知ってるに決まってるでしょ? 昔リレパが暴走したレイラーが国をめちゃくちゃにして、それを怖がった人間がレイラーを次々に殺して……」

一夜「……それだよ。その暴走したレイラーが大昔の炎のレイラーなんだよ!」

紅龍「……」

  今にも殴りかかりそうな勢いで一夜は紅龍を睨み付ける。その場は静まり返った。しかし紅龍は無表情のまま一夜を睨む。

礼「ま、まぁまぁ。暴走した炎のレイラーって言っても紅龍のことじゃないじゃん? 紅龍のご先祖様なだけであってさ、紅龍は直接関係なくね?」

  うんうんと頷きながら礼は一夜をなだめた。しかし一夜は聞く耳を持たない。

一夜「おい、なんとか言ったらどうだ! てめぇのせいで、オレは、オレ達は……っ」

  一夜は怒りを露にしているがどこか悲しそうな目をしていた。とても辛そうなしかし怒りに満ちた表情で紅龍を睨み続ける。

紅龍「……礼の言った通り、俺には関係のないことだ。やったのは俺の遠い先祖だ。俺様を恨むのはお門違いというやつだな」

 やめておけばいいのに、紅龍はわざと一夜を鼻で笑いながら睨み返す。どうやら先程からの言動が紅龍の気に障り、完全に怒りスイッチが入っているようだ。

一夜「てめぇっ……。オレは嫌だからな! てめぇと一緒のチームなんざ死んでもごめんだ!」

紅龍「ならばここから消え去れば良い。まぁ、そうすれば貴様には最大の絶望とやらが待っているだけだがな」

 ククッと紅龍はまた鼻で笑う。更に殴りかかりそうな一夜に礼央がまた止める。

礼央「やめなよ紅龍! 一夜も! オレ達これから一緒に協力していかなきゃいけないんだよ! 仲良くは無理かもだけど、喧嘩はダメ!」

一夜「うるせぇ! 何良い子ぶってんだよ! てめぇはどっかいってろ!」

さこ「ちょっとあんた、礼央に暴言吐かないで。殴るよ?」

 礼央を侮辱した一夜に、莎子も喧嘩の場に混ざろうとする。しかしすんでのところでまぁまぁと礼に制される。

みき「……」

一夜「あ? んだよ、何見てんだよ?」

 先程からこの場を無言で見つめていた未來だったが、一夜はその視線に気づき睨み返す。

みき「……」

 無表情で見続ける未來。

一夜「な、なん、だよ……」

 あまりにも無表情の未來に一夜は引き腰になってくる。しかし負けてはならぬと睨み続けた一夜だったが、不意に未來の表情が変わる。

みき「一夜くん」

一夜「!?」

  にっこり。

  未來は笑った。今までの無表情とは違うとても笑顔で。一点の曇りもない笑顔で。更に語尾にハートがつきそうな声音で。

  あまりにも突然の笑顔に一夜はびくっとなった。そして言葉にはならない、え、う、などを発している。

みき「仲良くしようね?」

一夜「……」

みき「仲良く、しようね?」

一夜「は、はい!!!」

 その場にいた全員は未來には逆らうまいと思ったのだった。


  ◆◆◆


  なんだかんだで一件落着?した一同。ひとまず場所を談話室にうつし、各々くつろぎ始めていた。紅龍だけはあのあと無言のまま自室へと戻っていってしまった。

一夜「ーっ、いってー」

礼央「大丈夫? オレが治してあげるよ」

 レイラーを狙うやつらから逃げる際に森の木々という木々を抜けてきた一夜は中々に深い傷をおっていた。そんな一夜を見て礼央が治すと言って近づく。礼央の大地のリレパには癒しの力、傷を治す力があるのだ。ソファに座る一夜に礼央は近寄り、目の前に立つ。

礼央「癒しの大地(ハッピーグリーン)

 そう礼央が唱えると礼央の手のひらから緑色の淡い光が灯る。その光は一夜を包み込んでいく。

一夜「な、なんだ?」

 自分が何をされるか怖くなったのか一夜はその緑の光を中からきょろきょろと見渡す。

礼央「オレの大地のリレパは傷を癒せるんだ。そのくらいの傷ならこの中に入ってれば2、3分で完治するよ」

一夜「すげーな」

 一夜は感心の声をあげた。

礼央「紅龍がこの前顔を赤く腫らして帰ってきた時もやってあげようとしたんだけど、すごい勢いで拒否されちゃったんだよね」

さこ「!……」

 礼央の発言に人知れず莎子はびくっと反応した。

  そうこうしている間にも一夜の傷は完治し、緑色の光は消えた。

一夜「おぉ、すげぇ完全に治ってやがる痛くねぇ。礼央、だったか? お前がいれば怪我しても安心だな」

礼央「軽い傷ならすぐ治るけど、ひどい傷は時間がかかるし、体力の消耗が激しいんだよね。だからなるべく怪我はしないこと」

  ははっと笑いながら礼央は一夜に言った。

  そんな空気が穏やかになったのも束の間。

 ──ドーーーンッッッ──

  外から何やら大きな音とともに地響きがする。

みき「きゃ!? 今の何!?」

さこ「正面の森の方から聞こえた気がする」

礼央「とりあえず外に出てみよう」


礼央「紅龍! 何があったの?」

  五人が正面の玄関から外に出ると、そこには一足先に紅龍が立っていた。紅龍の姿を見つけた瞬間、一夜はちっと舌打ちをした。

紅龍「俺にもわからん。少し身体を鍛えに行こうとして外に出てきたら森の奥の方から大きな音とともに煙が立った。あそこだ」

  紅龍の指差した先には大分遠くだが土煙があがっている。

礼「次から次へとなんなんだよー!」

さこ「あたし、見てくる」

礼央「ま、待ってよさっつん! 何かわからないのに危険だよ!」

  今にも飛び出しそうな勢いの莎子の腕を礼央は掴む。

さこ「でも……」

紅龍「……もしかしたら、またレイラーを狙う奴の仕業かもしれんな」

みき「そ、それなら余計見に行かない方がいいよね?」

紅龍「そうはいかん。もしあの土煙の正体が本当にレイラーを狙うものなら、この家が見つかってしまえばそれこそ終わりだ。ここが見つかる前に奴等を倒さねば」

礼「で、でもさぁ、もしかしたら見つからねーかもしんねーじゃん? この森すっげー入り組んでるからさ」

一夜「まぁ実際俺は奴らを撒いてきたからな、大丈夫だろ。つーか俺はてめぇが行くなら行かねーわ」

  一夜は紅龍を睨み付ける。無言で紅龍も睨み返す。

みき「一夜くん! 今はそんなこといってる場合じゃないでしょ!」

  睨み合う二人の間に割って入った未來が、一夜の頭を軽くぺちっと叩く。

一夜「ちっ……」

  反抗するかと思いきや一夜は大人しくなった。

さこ「とにかく、行かないことには何も状況がわからないし、とりあえず様子を見に行こう」

  しびれを切らした莎子がそう言い、皆賛同した。

  そして土煙の方向へと向かうのであった。


 ─続く─

次回予告

一夜「次回予告とかダリーな」

みき「い・ち・や・くん」

一夜「な、なんだよ」

みき「楽しく予告しよ? ね?」

一夜「……ちっ。次回笑形第五輪:「一歩進むことは難しい」」

みき「一歩とまではいかなくても、ちょっとずつ進んでけば良いよね!」

一夜「……あぁ」


2017,07,15

2018,05,27(加筆)

2024/06/04(最終加筆)

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