SS リベル④
「よっ、はっ、ほっ、と」
「流石グラン。これでこの辺りは全部かな」
「意外と楽勝だったな」
あれから早二週間近く経った現在。
僕らは勇者とその護衛という名目で、国の問題事を解消する手伝いをしてほしいと頼まれた。
国王陛下にお会いした時は、また人の目を気にしなきゃいけない生活が始まるかと思って鬱屈した日々を送っていたけれど、それはどうやら杞憂だったらしい。
国王陛下は僕があまり人目に付きたくない事を見抜いていたのか、アルストレアに勇者が付いた事は公言したものの、誰がその勇者かは軍部に関わる者か国王の側近ぐらい、ああ、あとマゼンダさんか、その辺りにしか伝わっていない。
ただ、城へ出入りする関係上、勇者でも何でもない平民だと問題があるそうなので、名目上僕らは勇者の護衛役という認識になっているらしい。
それに加えて、グランにも過去の事を大雑把に伝えてあるのが原因だと思うけど、僕よりも目立つ行動をする事が多い。
例えば今ギルドからの依頼を受けているけれど、魔物を一定数倒し、その討伐した証に魔物の一部を納品する、みたいなのをやっているんだけど、本当なら耳とか角とかだけでいいところを、グランは魔物を丸々生きた状態で持っていく。
勿論、辛うじて生きている、麻痺や能力などで動けなくしている、といった感じで。
確かに証明部位が無い分、買い取りも報酬も出ないから、普通はそんな事はしないのだが、代わりにギルドでのランクポイントを大量に貰える。
ランクポイントっていうのは、依頼達成や納品などをすると入手出来るもので、これを多く貯める事で上のランクの試験が受けられるようになる。上のランクほど、高収入、高リスク、高難易度になる為、安定な生活を求める人は上げようとしないらしい。
けれど、ランクAまで行けば勇者と同等ぐらいの地位と名声を得られるようなので、夢見る若者ほど頑張る傾向にあるという。
そのお陰で魔物は例年よりも減少傾向にあるものの、同じかそれ以上に若者の死亡が高くなるというデメリットもあった。
そして何故ランクポイントを多く貰えるのか、それは簡単に言えば未知の情報の多さによるものであると言える。
魔物を研究し、能力解明や開発、魔道具の仕組みなどを発明する機関が国毎に存在し、常に生きた魔物の情報を欲しがっていると言う。死んだ魔物と違い、生きた魔物からはそれでしか得られらない情報が沢山詰まっているとの事。なのでその情報を対価にポイントが高く付けられている、って訳だ。
ただ、魔物を素材として売る訳では無いので、よほどの物好きか上記のような夢見る若者か、もしくは今の僕らのように国から別途でお金を貰えるかしない限りは。
「ふう。そろそろ帰らないと日が暮れ…どうしたの?」
そういう理由から、普通こんな辺りが暗くなるほど遅くまで狩らないのだが、ついついもう少しと思って無茶してしまう。
魔物は昼よりも夜に活発化するものが多く、更に凶暴性の高いものが多い。そろそろ切り上げようかとグランを呼んだのだけど、何やら様子がおかしい。しきりにキョロキョロと辺りを伺い、臨戦態勢を取ったまま動かない。
そして僕にもそれは感じ取れていた。ある方向から、猛烈な寒気がするのだ。『気配察知』があるグランとは違い、何があるかは僕には理解できなかったけれど、それがよく無いものだっていうのは、長年一緒に暮らして本当の家族とまで呼べる彼だからこその微妙な、だけど僕には大きすぎる変化だった。
「なあ、リベル」
「いいよ」
「…!まだ何も言ってないんだが」
「どうせ、ちょっと寄り道させてくれよ、とか言うんだろ?」
「…へへっ、サンキューな」
短い会話の後、風を押し退けるような速度で翔けていく。
僕があの鑑定屋で初めて知った『意識収束』と『加速』を使って。
『意識収束』はまるで僕が前世で欲しいと思うような能力が秘められていた。それもそのはずで、異世界人というのは総じて不幸で死亡に至ったものがこの世界で転生し、更にその死に至った要因から固有能力が生まれる。その為、固有能力とはその人のトラウマないしはその不幸を乗り越える力になるものが備わるという。
初めて聞いた時はなぜ異世界人だとそうなるのか謎な部分もあったけど、異世界人は総じてそういう風になると、かの高名な魔術師が説いていたそうだ。実際研究機関からも同様の報告がある為、信憑性も高い。
だからか、僕はこの能力をほぼ練習もせず使いこなせていた。
今はまだ他人に使うと動けなくなったり制限の多い能力だけど、自分に使う分には問題無く運用出来る。
その証拠に『加速』のLvはまだ10にも満たないにも関わらず、『意識収束』で余計な情報を排除する事で普段以上に効果を引き出す事が出来ていた。
最も、これで排除する情報の内容を誤ると、転けやすくなったり音が聞こえなくなったりするので、まだまだ改善点アリって感じだ。
グランの『縮地』に並走する形でグングンと進んで行くと、目の前に見た事の無い、巨大な黒い靄を纏う魔物が一人の少女を襲う瞬間だった。
短くてすいません。眠気がzzz




