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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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SS リベル

「みんなぁー!今日は来てくれてありがとー!」


キラキラとライトで彩ろられた高台と周りを囲む水や飛び交う炎。音楽に合わせて踊り跳ね、それを見て叫び笑い楽しむ者の数々。

僕は前世でアイドルだった。




「お疲れ様、リベル。今日も最高のステージだったぜ」

「そうそう。やっぱリベルがリーダーで良かったな」

「全く、なんだよそれー」


ステージを終えてクタクタになりながらも笑い合う僕達はとても毎日が充実していた。

メンバー全員が違う国籍であり、そのメンバーの出身地の言葉で"自由"の意味を持つ名を冠するアイドルユニット『Re:BELL』。テーマは"毎日自由の鐘を鳴らし続けよう"。

主要メンバーは軽いが裏では努力家のフリーダム、最近犬飼い始めてから写真を撮りまくるようになったフライハイト、料理好きなエレフセリア、アンコ教とかいう謎ファンクラブがあるミユ、そしてそれらをまとめるリーダーのリベル。国籍も人種もバラバラだったけれど、何処の誰よりも最高のチームだった。


「よう、リベル。お疲れ」

「エレフ、ありがとう」


水を放り投げるエレフ。後半は歌とダンスの連続でちょうど水分を欲していただけに、こういう気配りをスッとしてくれる影ながらの大黒柱、エレフセリア。隣に座り今日のステージも大変だったなと談笑する。


「あはは、あそこでフライがコケるんだもん、びっくりしちゃったよ」

「ぶー。演技ですーぶーぶー」

「えー?ホントかなぁ?」

「なにをー!」


いつも通り流れる時間。ステージのミスや反省点を笑いながらも指摘し合って次に繋げる大切な時間。ここまではいつもと同じで何も変わらない日常だった。


僕がこの後、一人でジムに行きたいからと皆と分かれなければ。



一人裏口から帰ると、もう慣れたファン達の出待ち。

僕も最初の10人もいないステージでその人達全員から「頑張ってね!」と出待ちしてくれていた事を思い出し、目の前で数百余人が出迎えてくれる状況を見て、自分もここまで来たのかと感謝と一種の達成感のようなものが込み上げてくる。


「リベル?どうしたの?大丈夫?」


そうファン達が声を掛けてきて、ついほろりと涙が出ていたのに気付く。慌てて「キミ達の出迎えが嬉し過ぎて」と言い繕った。

黄色い声援が響く中、ファン達がプレゼントやサインを求めてくる。本来ならスタッフさんが送迎してくれるが、一人こっそり抜け出てきた形で対応してくれる人はいない。本当はプレゼントも事務所を通さないといけないんだけど…まあ、今日ぐらい大丈夫か。

しばらくして一人の女の子が声を掛けてきた。

「いつも見てます!会えて嬉しいです!」

よく言われる普通に嬉しい普通の言葉。けれど、その後言われた言葉は今まで受け取ってきたものと少し違った。

「これ、リベルさんがよく買ってるやつを真似て作ったんです!良ければ!」

その時意味は分からなかったけど、女の子が一生懸命作ったものだ、僕は微笑みながら「ありがとう、頂くね」と言って受け取った。




ジムもほどほどに切り上げ、近くのスーパーで最近ハマった冷凍ピッツァを買って帰宅する。

あまり生活感の無い台所に入り、買ったピッツァをレンジにかけソファで寛ぐ。ここ最近、有名になり過ぎたせいかあまり家に帰れず、帰ってもすぐ寝てしまう為食事も適当なもので済ましていた。そしてレンジが鳴るまでファン達からの手紙やプレゼントを開けていると、一つの箱が気になった。

それはあの、その場ではよく分からない言葉を言った女の子からだった。よほど厳重に梱包されているのか、密封に近い。悪戦苦闘しながらも開けた箱の中には、ちょうど今レンジの中にあるようなピッツァと手紙があった。

『〇〇社のピッツァほどじゃ無いですけど自信作です!』そんな感じの文章。その時はまだ引っ掛かりを覚えたぐらいで、特に気にせずそのピッツァも戴いた。




その次のステージ後、メンバーのフライハイトがスタッフ達に愛犬自慢と挨拶からいち早く帰ってきた。


「あれ?皆はまだな感じ」

「ああフライか。うん、僕もさっき挨拶回り終えたところだよ」


メンバー最年少のフライハイトはとても明るくチームを盛り上げてくれるエネルギッシュな子で、いつも挨拶回りをスピーディに終えて一番に帰ってくる。今日僕が早かったのはたまたまである。


「そう言えば昨日、ファン達に囲まれてね」


昨日、皆と別れた後の話をメンバーが帰ってくるまで話していよう、そう思って振ると目をキラキラ輝かせて食いつくフライ。

そして話は例のピッツァの女の子の話になる。


「っていう事があってね、熱心なファンも居るんだね」

「そりゃあ僕達有名人だし、リベルなんてSNSで目撃情報と共に写真載せられるぐらいだもん!」


悪意の無い屈託なき笑顔で自慢げに話すフライを他所に、僕はその引っ掛かりが何かを明確に理解する事になった。


「え?それってどういう…」

現代社会に置いて携帯やパソコンなどで情報を得るのは当たり前の時代、リベルはその両方が苦手であり、ネットどころかテレビも少し見る程度のものだっただけに、フライの言葉に理解が追い付かない。


「どうって…あー、そっか。リベル、機械音痴だもんね。えっと、ここで『リベル 目撃』…検索!あ、これこれ!最近このスーパーで冷凍買いすぎでしょー」


見ればそこにはオフの格好で冷凍食品を買い込む自分の姿が写し出されていた。

投稿者は通行人だったようで、興奮が伝わるような内容で投稿されていた。

『ヤバッ!あの『Re:BELL』のリーダーが冷凍買ってる!私、あれ好きなんだよね。ああ、リベル様も私と同じものが好きだなんて…身近に感じられて嬉しいよぉ!!』

そんな感じの内容と共に、顔をサングラスなどで隠してもなお分かる角度から撮られた写真。


「さっすがリベルだよね。僕達じゃまだまだ人気もそこそこだし、やっぱこういうの見ると有名人になったなー、って思うよね!」

「…ああ、そうだね」


引っ掛かりは疑問だった。何に引っ掛かりを覚えたのか、自分では理解していなかった。僕はただいつもテレビやステージで言った事の中から好みを考えて作ったものだと思っていた。

けれども実際は…


「ねー…ねぇってば!」

「あっ…え?」

「リベル大丈夫?何か顔色悪くなーい?」

「いやっ…そう、だね。ちょっと疲れたのかも知れない。今日のところは先に帰ってもいいかな」

「いいに決まってんじゃん!体調管理も仕事のうち!反省会の時間にうまく皆に伝えとくよ」

「ありがとう」


そう言って今日は別れた。


家まで送ってもらい、マネージャーさんにお礼を言う。

「ちゃんと休みなさいよ?リーダーがいなきゃね、あの子達もまだまだ青いんだから」

「ははっ、皆はもう十分大人ですよ」

そうして別れた後、自室に篭もり慣れない手付きで携帯からSNSを開き検索する。そこには…


『リベル今日も最高だった!皆の主張を薄めすぎず、かと言って前にあまり出ないのにあの存在感、マジゴッド』

『違うな。リベルは私達に神から使わせた聖騎士なんだよ。あの立ち振る舞い、まさにナイト』

そんな内容が並ぶ中に、僕は見つけてしまう。出会ってしまう。理解してしまう。


『今日リベルが服買ってたよ。あの服着こなすとかホント背が高いっていいよね』


何気ない内容、憧れの伝わる文章。けれどそこには『僕』がいた。

その日から僕は毎日ネットを検索した。

毎日、〇〇で『僕』を見掛けたという書き込み。ファンからの言葉。それがとても嬉しかったはずなのに、理解してからはまるでずっと自分を監視されているかのような錯覚を覚える。

違う、そうじゃない。ファンの子達は善意で、憧れで、応援で、感謝で、そして僕はその象徴なんだ。今までだってそれが普通だったじゃないか。何を困惑しているんだ。僕はリーダーなんだから皆を引っ張らなきゃダメじゃないか。ファンもスタッフも事務所もマネージャーもメンバーも。皆が皆期待している裏返しみたいなものじゃないか。


──本当に?


僕は皆に希望と夢を与える職業なんだから。


──本当に…


僕は自由を──本当に……










「お疲れ様〜!」

「お疲れ…」

「なんだよリベルぅ!元気無いぞ〜」

「悪い…ちょっと気分悪くて」

「大丈夫なのか?自宅まで送るよう手配して─」

「いらない」

「そ、そうか。ならいいんだが」

「今日もありがとう、お先」

「ああ、お疲れ。ゆっくり休めよ」

「………」


「なあ」

「ん?」

「最近リベルおかしくね?反省会もよく抜け出すようになってきたし」

「そうそう!この前だって皆で食べに行こー!って言ったのに今日はいい…とか言って」

「そうだな。最近何か悩んでいる様子だったな」

「やっぱりリベルがいないと寂しい」

「だな。今度見舞いに何か買って行こーよ」

「それがいい。リベルも喜ぶぞ」


そしてオフの日。彼等がリベル宅を訪れるも、そこに彼は居らず、いつまで経っても帰ってくる事は無かった。

今回は短いですがキリが良かったので。

というか最近長かっただけですが。

毎日投稿難しいなぁ。皆の意欲と休みをオラにも分けてケロ〜。

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