名前とレベル
「いやぁ、このトカゲが一撃って凄いっスね」
まだ言うか。
初魔法だと言うのに、結構上手く行って俺的にもびっくりだが。
いや、実際凄い事らしい。
この世界には魔物のランクを人間種が作成しており、その強さで難易度判定するとの事。
このトカゲ、ランクはFで俺達はE。
俺達このトカゲ以下かよ!
それはさておき、ランク作成自体はギルドが行っており、オードも人間種の時に加入していたそうだ。まあ、尤も…
「魔物でも知性が有ればギルド加入出来るんスけどね!」
どういうこっちゃ。
魔物狩りを魔物がするのは、生きてく上では普通だという。
確かに縄張り争いや食事の為に、敵を狩るのは自然な事。
なら、魔物がギルドに加入するのも自然な事…なのか?
「とりあえずトカゲ焼けたっスよ」
地味に火弾を滞留させた手で、器用にトカゲを焼いていたオード。
魔法って飛ばしたりするものだけだと勝手に思い込んでいたけど、これってかなり応用が効くんだな。
俺、無属性だけど、もっと魔法を覚えたい。
それで†漆黒の大賢者†とか呼ばれたい。
…うん、冷静になったらそれは無いなと思った。
「おう、ありがとう」
そう言って口の中に放り込む。
別に食事自体は必要無い。問題は情報だ。
生き物なら飲み込めば情報化されるという事が解った。
だが、これは全体を飲み込まなければいけないのか、部分だけなのかが分からないとこだ。
しかも調理されたものとまだ生身の状態でも違いがあるのか。
色々試したい事が増えて混乱するが、ゲーム感覚で結構楽しい。
これで死んでも転生せず、ペナルティがあるだけ、とかなら最高だったが。
何気にこの身体も慣れてきたのか、最初より随分快適になってきている。
ま、移動はあれだがな。
で、飲み込んだ焼きトカゲを詳細鑑定してみる。
個体名:リザード焼き
味:不味い
栄養:悪い
腹持ち:普通
種族:アウリスリザード
属性:地
能力:スタミナが多少持続
となった。
個体名w
しかも味や栄養まで出るんだな。
流石に調理済みのものは、料理の品としての鑑定結果になる事が解った。
ところで料理なのに属性とかあるのが謎なんだが。
保存も出来るのかな?
まあ、よく分からん。
オードに聞いても「え?料理に属性なんてあるんスね!」だった。
鑑定系って結構チートスキルと言われるけど、本当にそうだと思う。
でも俺の鑑定は飲み込まなきゃいけない。これがネックだ。
まず俺の戦闘力がどのくらいなのか怪しい。
オードに聞いても正確には分からないとの事で、それを調べるには町に行ってギルド等で調べる必要がある。
一応、先程の話では魔物もギルド加入出来るようだが、本当に大丈夫何だろうか?
魔王とか居る世界なのに魔物が街中を闊歩するのは、良くない気がするのだが。
そんな不安を紛らわせるかの様に、まだ調理されてないアウリスリザードを飲み込んだ。
鑑定結果は…
個体名:トカゲ
種族:アウリスリザード
属性:地
称号:敗者
職業:無し
固有能力:地中移動、視野拡大
能力:おねだり
魔法:無し
何だろう、この何だろう感。
詳細鑑定を使う度にこんな事になるんだろうか?
個体名って他者に言われたらそうなるのか?
いや、それならオードは俺に”結城くん”と言っている。
だが、実際には名無しになっている。
恐らく、前世の名前は使えないって事だろう。
しかも後ほど実験でオードを適当な名前で呼んだら、その名前に変化したのだ。
つまり、この個体名は現時点での名前が反映されているって事だ。
更にオードからは、自分の名前を使う魔術があるらしく、名無しや名前が固定されてないと使えないものがあるから、必要はあるんスよ〜
と軽い感じで説明してくれた。
いや、最初からそう言ってくれよ!めっちゃ悩んでたよ!
聞いてない俺が悪い、人に当たって自分の失敗に目を背けるのは相変わらずだな。
反省しよう。
他、突っ込みどころ満載だが、一応部分だけ飲み込めば全体でなくとも鑑定出来る。
この情報は大きい。
もしドラゴンとか飲み込まなきゃいけない事になったら、俺はきっと顎が外れて分解するだろう。いやいや。
そもそも鑑定が飲み込む前提だから、相手を倒さなきゃ使えない。
オードみたく呑気な奴や許可を得られるなら問題無いだろうが。
ん?許可無しに飲み込んだじゃないっスか?
知らんな。記憶にございません。
今回の事で新たに目標が出来た。
ギルドに加入をしよう、だ。
とにかく情報が欲しい。
詳細鑑定もあるが、事前に情報があった方が断然いい。
オードからすればこの詳細鑑定もチートスキルらしいが、使っている感じ戦闘には使えない。
俺も回転頭突きと道具弾以外の戦闘に役立つ能力を憶えたいもんだ。
更に2日。
俺達は拠点の中でスキル開発に勤しんでいた。
何故町へ移動しないって?
いや、俺達も移動はしていたんだ。
そう、奴等さえ来なければ……
───トカゲを狩り終え、帰路に着く俺達。
そこでオードの魔力感知が何かを捉えた。
「ん?ちょっと待つっス」
「どうした?」
「拠点の中に…多分同族っスね。ゴブリンが……ええと、4、5…6体居るっス」
「仲間か?」
「……だといいんスけどね」
その言葉を言った瞬間、後ろに気配がして、俺は咄嗟に回転頭突きでその場を離れる。
勿論、隣に居たオードを飲み込んで、だ。
──能力《回避補正》を獲得しました。
「おや、避けられちまったか」
俺達が居た場所には、地面を穿ち裂け目が出来る程の威力で振り下ろされた長剣が刺さっていた。
それを放った主は、ゴブリンの見た目だが背は1メートルほどあり、人間種に近い出立ち。
革の防具を身につけ、オードと違い紫色の肌をしている。
強さは分からないが、流暢に喋るその姿を見て、コイツには知性があると見受けられる。
「お前…何が目的だ」
「俺様の縄張りに侵入者が入ってきたようなんでな、排除しに来ただけさ。
でもまさか、クク。魔物堕ちのゴブリンとはな」
クククと笑うそのゴブリンは、どうやらオードの事を知っているようだ。
オードの方を見遣ると目で合図していた。
何をするのかは分からないが、やる事は解る。
俺は回転頭突きを構え、オードは地面に向けて地弾を繰り出した。
この地弾だが、鍛えれば岩塊を放てるようだが、オードの今の魔力では粉塵を起こせる程度だ。
だが今回はそれを利用したのだ。
粉塵に身を隠し、オードを飲み込み逃げる。
我ながら変な逃走方法を編み出したものだ。
暫く転がり続けていたが、後ろが気になりジャンプをする。
そしてすかさず後ろを見る。うん、大丈夫だな。
この回転中にジャンプをするという技量、もはや神業。
とか言ってた時に思った。
そう言えばレベルってあるんだろうか?
「オードさんオードさん、オーバー?」
「はーい、こちらオード、結城くんどうしたっスか?
もしかして追いつかれたっスか?」
「いや、敵はどうやら巻けたっぽい。
オードも俺の中だと魔力感知出来ないんだな」
「こんな異空間で外の様子解ったら化物っスよ」
呑気に笑い合う。
「で、本題は何っスか」
「さっきのゴブリンも聞きたい事なんだが、この世界ってレベルってあるの?」
「ああ、あるっスよ。スキルレベル、マジックレベル、それと自身のレベルっスね」
「マジか!うおおおやり込み要素キター!」
…と熱くなっていたのだが、冷静になってみるとおかしい事に気づいた。
俺の詳細鑑定ではレベルは表示されてない。
つまり、このスキルはまだ上があるんじゃないだろうか。
もしそうなら、敵を飲み込まずとも鑑定出来る様になりたい。
「レベルってどうやれば上がるんだ?」
「基本的には戦闘っスけど、合成とかは使いまくれば上がるっス。
レベルが無い代わりに進化だけする物もあるっスけどね」
多分、固有能力の事を言ってるんだと思う。
しかしレベルか…。
回転頭突きも結構使ってる感じがするが、これが最終形態なんだろうか。
ううむ、要実験だな。
「悪いがオード、少し外に出て魔力感知してくれ」
「オッケース」
魔力感知の結果、敵影は無かった。
その後拠点の方へ戻っても敵は居なかったが、拠点内のアイテムは根こそぎ盗られていた。
「ああ…折角結城くんに貰った回復薬が…」
「どうせそんな渡してないし、俺の中見ただろ?」
「あの量おかしいっスよ!道具屋開いたら一儲け出来るレベルっスよ!」
ここでも道具屋と言われる。
だが金を稼ぐのは良い手だと思う。
この世界でも金はある程度の事が出来る手段になり得ると思う。
よし、やりたい事リストに追加!
「ま、これからは相棒って感じなんだし、俺の中の道具バンバン使ってくれればいいよ」
「おおお!結城くん、太っ腹っスね!」
「あ、その結城くんって名前だけど、何か別の名前付けてくれないか?」
「?」
「いや、鑑定した時に分かったんだけど、どうやら前世の名前だと名無しになるみたいでさ」
「ああ、成程っス。でも名前っスか〜。
…じゃあアルケミストから取ってミストで!」
「ミストか…何かいいな。じゃオードも何かカッコイイ名前に変えるか」
「いやいや〜、自分この名前結構気に入ってるっスから、変えられると逆に微妙っス」
由来はアレだが本人がいいならいいか。
そして俺ことミストとオードは拠点でスキル開発とレベル上げを重点に、あのゴブリンに仕返ししようという方向になったのだった。




