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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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本末転倒

──交易都市 ガレット


グラロマニカ大森林・ノーデンス大聖洞から東方。

アルストレア王国からは北東に位置する、行商人の行き交う交易が盛んな町。

町そのものの大きさはそれほどでもないが、各地への中継点として利用されている。

それもアルストレアの国王が山をくり抜き、近隣都市への直通路を開拓した事も栄えさせた大きな要因になっている。


「というのが表向きの理由よ」

「理由よ、って何があるんだよ」


俺達はガレットに向いながらフェリエの話を聞いている。

ハル達は俺の中に収納して『竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)』で移動。

フェリエとユキは徒歩、オードとドルガはケビンJrに跨っている。

今回は急ぎだと言うので、途中戦闘回避と効率の為、ハル達には俺の中に収納した方が安全だと、オードとユキから提案された。

俺もあの一件から、かなりの力と速度を手に入れ、以前より早くなったと自負していたのだが、それに普通に走って追いつくフェリエとユキの脚も大概である。

極めつけはケビンJrが割と早い。俺の本気と同速ぐらいなのが笑えないところだ。

速さ順で行けばユキ>>俺>ケビン>フェリエの順だろうか。だけどフェリエに関しては、本気を出しているのかは怪しいので、あくまでも体感だが。


そんな訳で、ただ移動するのも暇なので、もはや恒例になりつつある移動しながらの動植物収納をしていた時、ドルガとケビンが何故かあんぐりと口を開けてうわの空になったので、気晴らしにユキが町の様子を訪ねたのがこの話の始まりだっただろうか。


話は戻り、町の特徴は思っていたよりも賑やかそうなのがwktkするところだな。

本来なら酒場とか回って色々な情報を手に入れるイベントなんかをこなしたいところだが、如何せんこの身体だからなぁ。

アルストレアでもアウェーな空気が漂っていたし、路地裏とか通ると襲撃にあったりする。

ハル達曰く、ガレットではアルストレアほど敬遠している訳ではないらしいが、あまりいい印象ではないというのが共通認識らしい。

だが交易都市と呼ばれるだけあってか、入国審査みたいなものは無く、魔物であってもギルドカードを見せれば簡単に出入りする事が出来る。

そもそもギルドそのものが、自分の身分証明をするところらしく、国に永住する者で無い限りは皆ギルドに在籍しているとの事。


それ故、ギルドに登録出来る者であれば、信用もある程度はあるという考え方らしい。

そんなんで暴動とか起こったらどうすんだって話だが、商人達は基本的に傭兵を複数人連れており、大道芸人達は武芸にも精通していたりと、そこは自己責任で対処せよって事のようだ。

まあギルド登録出来ている時点で、ある程度の言語能力と知性はあるはずなので、そもそも犯罪を犯そうと思ってさえいなければ問題も起こらないさハハハって話のようだ。

因みにこの話はギルドに登録した時に講習みたいなものを、ギルド側が開いてくれるのだが、魔物には特に説明らしい説明をされないのが殆どだという。

なので魔物側はギルドに所属する者からそういう話を聞き出す必要があり、コミュ能力と害意の無さを証明する訓練だとされているが、普通に魔物差別されていて悲しくなったのは心に仕舞っておこう。いやいや。


まあギルドにさえ登録しておけば、身分証明と入国審査が簡略化、入出金の割引をしてくれるので、入っていて損は無い。

もし失業してもそのまま冒険者として稼ぐ道もあるので、職業斡旋にも一役買っている。

ギルド最高!素敵!ただ扱いが少し腑に落ちないが。



「道を作ればそれだけ移動の手間が掛からなくなるでしょ」

「まあな」

「そして王国への流通も増えるでしょうね」

「…何が言いたい」


いや、何が言いたいなんて分かっている。

アルストレアは今代の国王に代わってから、戦争をよく仕掛けるようになったらしい。

なんでも国土拡大だとか、人員確保の為だとか囁かれる中で、国王には別の目的があるとの噂が、ハル達もユキも耳にしていた。

当然、フェリエに至ってはアルストレアで商館を構えるほどの大商人、知らないはずが無い。

その目的が何なのかは皆分からないみたいだったが。


「あのバカの目的はね、人類を魔物から徹底的に守る事なのよ」


なので、そんな予想外な返答が返ってきた事に、思わずハル達を吹き出しそうになった。


「いやいや。あのリューガ村での拉致している奴が何ほざいてるんだよ」

「有り得んな。ワシらをコケにしたあげく、まさかそんな事の為に戦争を仕掛けとるとは…本末転倒じゃろ」

「オイラの父さんを…あんな奴に守られる世界なんて…」


と、それぞれ口にする。

俺は嘲笑、ドルガは憤怒、オードは何やらブツブツ呟くように発する。

いやいや。人類を魔物から守るってのは確かに、そりゃあ勇者様っぽくて素敵!ってなるところなんだが、やってる事がやってる事だからねぇ。しかもドルガの言う通り、戦争なんて起こしている時点で本末転倒もいい所だよ。


口々に罵倒する俺達に、更にハル達からも「それで勇者を名乗っているなら願い下げだ」と俺の中から聴こえてくる。

一応、俺が口開ければ皆にも聞こえるんだが、なんだか腹話術みたいでちょっと恥ずかしい。


そんな中でもフェリエは淡々としており、ユキは黙ったままである。若干瞳の奥に憎悪のような暗い光が見えるのは気の所為だろうか。


フェリエは何も言わない。


皆がそれぞれの気持ちを胸に抱き、必ずしもフェリエの言う「人類を守る」という言葉が理解されないのを知っていて。

それでもなお、あのバカを救けたいと願うのはどうしてだろう。

フェリエが語るそのリベルという奴は、ひどく優しく勇敢だと言うが、オード達から聞く噂とは噛み合わない。

おそらく、他の七大罪の勇者(セプテュプル)と呼ばれる者達も同様なのだろう。


じゃあ、そもそも何故勇者と呼ばれ称えられた者達が、今では世界に仇なす敵として認知されているのだろうか。

…フェリエはその"何か"を知ってるのか?

仮にも元々パーティーを組んでいたと言うし。

その頃に何かあった…のか?


皆の罵声はまだ止みそうに無い。

元々の評判と噂、そして実体験が影響しているせいだが。

町につくまでこんな会話が続くのかと思うと、そろそろその辺にしとけよとは思うが、皆の話を、特にオード、ユキ、ドルガはまだまだ止まりそうに無い。

俺は苦笑しながらも、皆の気持ちを思考しながら森の斜面を勢いよく転がる。











───全く、相変わらずよく死ぬ奴だよ。


───だが、いいタイミングで力を渡せた。


───今のワタシに出来るのはこの程度だ。


───ワタシの我侭とはいえ…


───もう限界、か


───最後に、この旅路に救済があらん事を


───ユーキ




空に溶け込むようにして消え去る黒い靄は、まるで何事も無かったかのように青い空を映し出していた。

いつも遅くなってすみません。

勤務先で人が抜け、更に忙しく(´・ω・`)


今回は導入部みたいなものなので短めで。

そこ!いつも短いとか言わない!

ああ、定時帰宅がホントに夢の彼方みたい…

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