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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
78/123

ドルガ

「ワシは、ここは、………」

どうやらまだ気が動転しているのか、疑問を口にするも言葉はバラバラで纏まりが無い。

直ぐにでも話の場を設けたいとこだったが、俺はその前に皆に声を掛ける。


「色々話をしたい事があるんだが、その前に一つ手伝って欲しい。

今ドワーフのオッサンが向いてる方に広場があるんだが、そこに倒れてる奴等を埋葬してやりたいんだ」

それだけ言うと俺は広場へ向かう。

皆は、特に白銀の風はよく分からぬまま広場に向かうが、その歩を止めてしまう。

あまりにも無惨な殺害現場に。

だがその中でも、事情を知るオードとオルディンは構わずに俺に続き、それを見て悟ったのか他のメンバーも広場へと降りてくる。

ドワーフのオッサンも、整理が付かない様子だが、おそらく自分達がやった事なのだろうと無言で手伝ってくれた。



そうして穴を掘り、遺体全てを埋葬して花を手向けた頃、すっかり日は沈み、辺りには静寂と暗闇で満ちていた。


「とりあえず今日はこれ以上移動も出来ないし、不謹慎かも知れないがここで一夜を明かそう」

と思って、いつも通り野営の準備に掛かろうと、俺が出した薪をフェリエが割り、オードが火を付けた辺りでドワーフのオッサンから声が漏れる。


「ワシは、王宮の一室に()ったはずじゃ。なのに、ここはグラロマニカでは無いのか?」

「まあ色々話したい事はあると思うが、まずは顔を洗ったらどうだ?」

そう言って俺はオードが作ってくれた土の容器に水を出し、目の前に置く。

先程まで魔物を喰らい、ヒゲや腕が血で真っ黒に染まったまま、更に埋葬を率先して手伝ってくれたのもあって、かなり汚れてしまっていたのを見かねて声を掛けたのだった。

一瞬、オッサンは何か言いたそうに口を開けたが、直ぐに閉じ無言で汚れを落としていく。


オードはすっかり大人しくなったトカゲを同じく洗ってやっている。

ルル、ミィ、ノーリンの女性陣は、簡易の天幕を張り先に横になっている。

俺も初めて味わう危険な戦いだったが、生身の彼等に取っては余程疲れが出るものだったのだろう。多分、白銀の風に居た二人の理由は違うだろうが。

オルディンは墓の前で祈りを捧げており、カニスもそれに同行している。

つまりこの焚き火を囲むのは、俺とユキ、フェリエ、ハル、そしてドワーフのオッサンだけだった。


「改めて、互いの情報交換とアンタの事について色々聞きたい事がある、がまずは自己紹介からだな。俺はミスト、よろしくな」

「ワシはドルガ、見ての通りドワーフ族じゃ」

「ドワーフがこんな場所に居るなんてビックリしたわぁ。あ、アタシはフェリエよ。よろしくね、ドルちゃん」

「ドル…ちゃんじゃと?」

「ま、まあこのオカマはほっといて」

「やーイケズぅ」

「そっちのちっちゃい子がユキ、そっちのまだ顔が青いのがハルだ」

「ううう…」


ハルはチームの代表だからと、無理をしてでも話に参加したいと申し出たので座らせたが…埋葬の時に触った遺体の感触に顔を青くしたままだった。

「ハル、代表だからって言っても身体は大切にしろ。じゃないとぶっ倒れるぞ」

「大丈夫、大丈夫…」

本当に大丈夫だろうか。


そうして話し合いは始まった。

まず互いのチームの経緯とここに至るまでの足跡を、フェリエとユキから聞き、逆に俺と途中オルディンに付き添っていたカニスが戻ってきて、二人で状況説明をしていった。

この説明中にハルが「すまない…」だけ言って天幕の方へ向かって行き、カニスが代役としてその場に残る事になった。


本当はオードも居てくれると助かるところだが、先程オルディンがジェスチャーで一人にして欲しいとカニスに伝え、話に参加した事をオードがコッソリ聞いていたらしい。

なので今はオードがオルディンの側に付いている為、呼び出すのも流石に悪い。

概ね内容に似たり寄ったりだったのが幸いか。


森林に敵と呼べる魔物は奥に行くほど少なくなり、そこかしこに幻術が掛かった地帯があるのは共通点だったが、まさかそれをフェリエやユキでは無くミィが解いたのは驚いた。

こちらもカニスが予想外の能力や技術を持っていたりと、ここまでは楽しい話だった。


そして、話は進みここで起きた事を俺からの視点で説明した途端、ユキとフェリエはパーティーのステータスを確認する。

が、二人とも首を傾げている。

「ミスト、本当に一度死んだんだね」

「おう、多分だけどな。オード達がそう言ってるんだが、種族が微妙に変わったのと、スライムが俺と融合したぐらいか」

「融合…。そんな事もあるんだね」

「よー分からんが、実際起こった訳だしな」


苦笑するミストの隣でマジマジとステータスを見つめるフェリエは、ミスト達とは逆の事を思っていた。

即ち、そんな事は有り得ない、と。

ミスト達と出会ってから、自身に新しい能力の成長が現れた時点でフェリエは疑いを持っていた。

だがあくまでその時点では、まあ転生者ならそういう事もあるだろうと流していた。

しかし、種族の進化とは普通そんな簡単に起こる現象では無い。

どんな者にもレベルがあるが、これはあくまでその者の経験値の総計を表すものだとされており、例えて言うなら山篭りで仙人的な強さを身に付けた、つまりはレベル100のただの人も居れば、何の経験も無いレベル1の現人神も居る、みたいなものである。

要は生まれながらに種族と云うものは決まっており、早々進化などするものでは無い。


また、進化には幾つかの条件が必要になる。

例えば、一定以上のレベルを持ち、特殊な魔道具が必要。

例えば、特別な場所へ行き、一定時間の祈りを捧げる。

例えば、魔力を喰らい、自身を異形へと変貌させる。等々…


レベルさえ上げればいいと言う訳では決して無い。

もし仮に種の進化をミストが果たした場合、死んだ事がトリガーとなった、又はスライムと同化した事が要因となると考えられる。

それが、"フェリエ・リエール"という者で無ければ、きっとそう考えるだろうと。


ミストは言った、黒い靄のようなものを見た。

気の所為かも知れないが、などと笑うミストにフェリエはもう一度その考えを否定する。有り得ないと。

だが確かめたい、本当にそれがあの時の…


「フェリエ?」


そっと声を掛けた俺に、フェリエは少し呆けた顔をしていた。

何か考え事をしていたんだろうが、何か引っかかる事でもあったんだろうか。

まあ一応商人らしくないが情報力はあるみたいだから、一応は頼りにしてるんだが…。なんて思ってみても反応しないところを見るに、読心術は解除してるようだ。

んー、それはそれで話が進まない。本当、何で能力(スキル)ってこんな微妙なもんばかりなのか。作った奴が居たら一言言ってやりたいもんだぜ。


そんな阿呆で虚しいツッコミを入れながら、フェリエに問うた。

「何か気になる点でもあったのか?」

そう言ったら、またウーンと顎に手を添え数秒考えた後、決心が付いたのかその疑念に踏み込む。

「黒い、靄と言ったわね?」

「ん?ああ。俺にもよく分からんし、実際ノーリンも俺が話しかけるまで辺りを見回してたらしいが、知らないっつってたしな。

まあ多分幻術の影響か何か…」


そう言ってあれは夢だったのだと否定しようとするが。

「転生者には幻術や魔法の類いが効きにくい、そう言わなかったかしら?」なんてまた言われた。

「別に能力を解除してる訳じゃないのよ。アタシの能力も自身が考えてる間は声が聞き辛くなるの、お分かり?」

さいですか。

「そういやドルガとあのトカゲ?は、嫉妬の執念って能力に掛かってたけれど、それとは別に幻術にも掛かってたのか?

そうだとしたら、ドルガにともかくトカゲ?の方は転生者だから、幻術には強かったんじゃないのか?」

それは…とフェリエが口を開こうとして、大きいが短い腕に制される。

「ワシが答えよう」

ドルガは自身のこれまでの経緯を含めてポツリポツリと話始めた。



ドルガの居た町は、ドワーフ族が集団となって暮らす割と大きな町で、鍛冶、染物、織物、工芸、陶芸等、盛んに行われる産業都市として栄えてきた。

こういったドワーフ族の集落は数少ないものの、町と言われる程の大きさを誇るのは、アウリス地方広しと言えどアルストレアから遥か南方のその場所だけだと言う。


その場所で鍛冶師として、信頼と真面目さを買われ、町一番の鍛冶師とまで言われ、近隣諸国にもその名が轟く程だった。

ドルガには弟がおり、兄弟揃って仕事に精を出していたそんな時、アルストレア王国から使者なる者が突然来て王宮に出向いて欲しい、と言われたそうだ。

勿論、いきなりそんな事言われたドルガは、唐突に来てこちらの都合も考えんと何言い出すんじゃ小童!と追い返したという。

弟には乱暴な扱いは止めろと注意されていたが、生来直ぐ手や口を出してしまうのはなかなか治らないと、酒を飲みながらその日の愚痴を語っていたそうだ。


そして酒も入り爆睡した翌日、目を覚まし外が何やら焦げ臭いと寝ぼけ眼で窓を開けて見れば…町は一面火の海と化していた。

慌てて下に降り弟を呼びに行こうとした時、自身の腕や足に重りと枷が付けられ、移動が制限されていた。

『まぁまぁ、落ち着きなよ』

自身の後ろ、丁度ドルガが先程起きたベッドに腰を下ろし、足を組んでいたのは見た事も無い赤毛の青年だったという。


『キミの探し物はコレかい?』


そう言われ、ベッドの影に隠すように置かれたソレ、赤黒く染まったもはや顔すら分からぬその者は…

それを見たドルガは怒りに狂い、枷を引きちぎり、そしてそれに呼応するように自身の親の形見とも言うべき相棒、ケビンJrを口笛で呼び出しその青年と相対した。


結果は惨敗。

攻撃が何故か当たらず、細く尖った剣の猛攻と途中から猛烈な視界の歪みによって徐々に意識を刈り取られてゆく。

『大丈夫、死んで貰っては困るからね。命までは取らないよ』

最後に聞こえた声が遠くなり、一度意識を失った。



そして次に目を覚ました時には、小奇麗な部屋に兄弟共に枷を両手両足、かなり強固なものを付けられていた。

弟の傷は殆ど癒えておらず、おそらく回復魔法か薬で喋れる程度に回復させたものと見られる。

そして部屋の椅子に腰掛けた、赤毛の青年。それを見ただけで沸き上がる怒り。だが、まるでそれが急速に冷やされるような、そんな感覚と共に、頭はどんどん平静へと変貌していく。

何をした、とすら言えぬ固く閉ざした口に、何らかの能力を使われたと察する。

そこからは取引という建前の拷問を受けた。

近々戦争を起こすからその為の武具が欲しい、だからそれを作ってくれれば身の安全は保証しよう、と。

せっかくキミ達が仕事や何やらと都合があると言うから、それを無くしてあげたのに、悲しい事を言うものだ、と。

だがドルガは意地でも首を縦に振る事は無かった。


それが何回か続き、弟がもはや虫の息となり、幾許かの余命を残すのみとなり、すまない…と謝るドルガの手を握り返す事すら出来なくなった頃。


これが最後となる拷問に会った時、奴は見るだけで分かる笑みと表情で、嬉しそうに弟へその手に持った薬品をぶっかけた。

するとどういう訳か、生傷の癒えぬ弟の身体は元の屈強な姿へと形を変えていた。

回復薬、それもかなり上位の。

確か原産国はエルフの領地で、今は輸出を制限していたはず。何故そんな貴重なものを…と考え、その真意を問うたドルガ。

対する青年はその効果を見て顔を綻ばせる。

『やはりボクには運が向いている。まさか商会がこんな物を入手していたとはね。あとはキミ達に働いて貰うかな』

そう言って手を翳す青年の指の間から、アウリス地方に生息するコウモリが見えたところで意識を再び失う。


そして断片的に意識が覚醒、堕ちるを繰り返す中で、どうやら自身はある者を探し出す為に、グラロマニカ大森林へとケビンJrを足とし動いていた。

視界には映らぬものの、コウモリの気配を感じ取っていたドルガは、おそらく幻術で敵味方の区別を付かなくされていると悟る。

ただ目の前の者を壊したい衝動を抑えられていたのは、ドルガが異世界人の母の血を引いていた為であり、その母が拾ってきたという、後に鑑定屋にて転生者と判明したそのトカゲに運命を感じ、相棒と呼ぶ仲となった者と共に居た事も大きい。

気力の限りを尽くしていたが三日程経った時、流石に限界が来て意識を落とした。


そして意識を覚ますと、ケビンJrが(ミミック)を壊した辺りから自身の感覚が戻りつつある違和感と共に、目的を達成したような達成感が全身を支配する。

そして頭に響くのは、その残骸を全て回収し王宮へ戻れ、という声。

だが、ケビンJrの方は目に映る敵しか見えないのか、目的を達しようとはしないでいた。

そして箱の方は謎の発光と共に復活。

その光の中で、黒い靄のようなものがその箱からするりと抜けるのが見えたと。


その後の事は俺達の体験した出来事そのままだった。



「ワシらの幻術を破ってくれた事は感謝する。じゃがワシは奴の元へ戻らねばならん。弟の事も町の者達の事も」

そう言って立ち上がろうとするが、よろけて転けるドルガ。

再び地に足を着けるも動きは重く、歩くのもかなり辛そうに見える。

埋葬の際も多量の汗を流しながらも、特に何か言う訳でもなく黙々と手伝っていたので流してしまっていたが、そう言えば能力の中に『嫉妬の執念』が残っている事を思い出す。

そして同じく、それを感じ取っていたユキはドルガへと歩み寄り、そっと手を翳す。

ドルガはユキが何をするのかは分からなかったが、治療の類いと思ったのか、静かに動きを止める。

その様子を見ながらも、俺はそっと気付かれぬようにユキに『詳細鑑定(ミサダメルヒトミ)』を発動しながら注視する。


程なくして、ドルガの顔色が快方へと向かう中、俺は見た目がただの顔すら無い箱だと言う事に初めて感謝した。

もし顔があったなら、きっと目を見開き、それに驚きを隠す事が出来なかっただろうから。


ドルガから暗い炎のようなものが抜け出たかと思えば、その炎がユキの中に入り込み、ユキの全身がどんどんそれに侵されていく、そんな光景を見て。

先月、仕事で人員も減り多忙と化した為に、寝落ちの頻度の激増で更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

気づけば8月…前回から三週間超。やばたん。


もう自分でも内容うろ覚えだよ。

でもこっそり頑張ります。またこっそり見に来てくれると杜邪の精神力(ハート)がごっそり減ります。多分。

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