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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
75/123

合流

───数十分前


「ノォォリン!!」

「ミストくん!!」


トカゲの攻撃から危機的状況を間一髪で救出されたノーリンに安堵した束の間、バラバラの木片へと変えられたミストに、オード、カニス、オルディンの三人は悲鳴でも悲しみでもなく、怒りの声を上げた。

トカゲの眼光がこちらに向いた事で、若干の冷静さを取り戻したオードとオルディンに対し、敵意丸出しで今にも飛び掛らんと身構えるカニス。

そして一人飛び出そうと足に力を込めたカニスの前に、オードは杖に火劍(ファイアーソード)を掛け、遮るように熱を帯びたそれを翳す。


「ッ!」

「カニスくん、今こそ冷静になる時っス。オイラ達も気持ちは同じっス。けれどあの威力を見たっスよね。

多分、オイラ達が全員で相手しても、無傷で勝利は不可能っス」


たった数分対峙しただけなのに、勝利は不可能と判断せざるを得ない敵。

自身の魔法で傷付く事も無く、況してやミストの零距離射撃すら効いてない敵。

人数差、戦闘力を考えても、無傷での勝利は厳しい。

ミストが居れば回復薬を掛け続ける事によるゴリ押しが使えると思っていたが、本人がああなっては…。

手持ちの回復薬も少なく、二人を囮にして一人を逃がすのが精一杯というところ。

それも、かなり分の悪い賭けになるだろう。

せめて冷静な頭で回避に徹すれば、別の道も開けるのだが。


そう話をしている間にも、トカゲは問答無用に攻撃を仕掛けてくる。

オルディンが前に出て尻尾の一撃を横から逸らすように弾き、オードも火劍(ファイアーソード)で牽制しながら話を続ける。


「だけどノーリンがッ!ミストだって!」

「ミストくんならおそらく生きてるっスよ。前に真っ二つになってても生きてたぐらいっスからね」

そう言って鼓舞するオードだが、魔物でもああなってしまえば死んだと同じである事は分かっている。

真っ二つになっていても生きていた、そんな実績があるからこそそう思えているが、オード自身、それが淡い期待でしかない事は誰よりも理解している。

先のリーダーの如く、魔物には魔晶石と呼ばれる魔素を魔力へと変換・貯蓄しておける器官が存在している。

普通小さかったり純度が低いと魔物が死んだ際に壊れるそれは、純度が高ければドロップアイテムとして結晶として残る事がある。


だがミストのバラバラの残骸を見て、それが残っているとは到底思えない。

頭と胴体が分離した時は、その魔晶石が残っていた為、オードの修理によって回復したと思われるが、眼前の粉々の木片を見ると絶望感に支配される。

例え回復薬を使ったとしても、魔晶石が無いのでは…。


絶望と希望を綯い交ぜにしながらも、この場で打てる最大の手を提案する。

「オイラ達であれに勝つのは不可能っス。

だからもう一つのチームと合流して状況を打破するしかないっス」

「けれど向こうのチームにどうやって連絡するんだよ!」

「今考えてるっスから、少しは応戦して欲しいっス!」


敵の攻撃をいなしながら会話していたオードだが、直ぐに一撃一撃の重さに対応し切れなくなる。

カニスに攻撃を促すが、直接的な戦闘は弓矢と爆弾な為、近距離まで迫っているトカゲに手出し出来ずにいる。

もしこれが本来の(・・・)アウリスハイリザードであるならば、まだ対処出来ていたのに。

歯噛みした唇から魔物特有の黒い血を流しながら、徐々にその場から後退していくオード。

それを見て、合わせて少しずつ退るオルディンとカニスだが、一定距離まで離れると、急に動きを変え回り込む形で相対する。

そして逃げ出す事も応援を呼ぼうともさせない、まるで知性を持っているかのような動きで、元のミストの亡骸の場所まで戻されるというのを繰り返される。


それを続けられては、流石のオードも魔力を削られ体力的にも精神的にもここまでかと思ったその時、急にミストの亡骸が淡く淡く光り始めた。

最初は日差しの反射か気の所為かと思っていたが、それは徐々に強い光へと変わっていく。

三人も、そして敵も動きを止め、それを暫し眺めていると、まるで独りでにパズルが組み上がっていくかの様に、バラバラの木片が元の形へと戻っていく。


そして光が淡くゆっくりと消える頃、ミストが再び動き出した。






「ミストくん…?」


オードが何か信じられないものを見たかのように、驚きに目を限界まで開いている姿がそこにはあった。

普段の怖い顔面が、今は結構面白い間抜けヅラになっていて笑いそうになるが、こんな顔になる程心の中では心配してくれていたんだなと、むしろ自分に笑いそうになる。


「おう、俺以外に誰か居るのか?」

だから、おどけて誤魔化したのは咄嗟の事だ。

あのオカマが居たらツンデレ認定されそうだが。


「ミストく、げふっ」

オードが抱き着いて来ようとしていたので、すかさず横にスッと避けるとそのまま勢い余って地面に激突するオード。

「悪いなオード。感動の再会だがそりゃまたあとで、だ。

今目の前に居る奴等を片付けてからにしようぜ」

そう言って少し離れた場所で、先程とは違う警戒心を見せたトカゲを睨む。


「ミスト!ノーリンはッ!!」

カニスが後ろから駆け寄り、ノーリンの安否を聞いてくる。

勿論大丈夫だと答えるとガッツポーズで喜んでいる。

いや、だからそういうのは目の前の問答が解決してからだな…。

そう言おうと思ってカニスに声を掛けようとしたが、それはトカゲの尻尾の一撃にて遮られる事になった。


ガキィィィン


トカゲの鱗と金属がぶつかり合い、高くけれど重々しい音が辺りに響き渡る。

トカゲの鱗が少し削れ、破片が飛び地面へと落ち、辺りの木々の葉が風に巻き上げられ、小さな竜巻が上空へと昇っていく。

それを生み出しているのは、他ならぬ俺だ。

だが復活する前の俺では絶対に不可能な威力だった。


以前から俺の縁には金属の留め金が幾つもあった。

けれどそれ自体に耐久力はあまり無く、戦闘をする度オードに歪みなどを直して貰っていた。

その為硬度も金属としての強度も、トカゲの一撃を受け止める事が出来る、なんてのは有り得ないくらいで、むしろ先の通りバラバラの残骸に変えられていたのがいい証拠だった。


では何故、今それを凌ぎ更に今まさに攻撃を弾く事が出来るまでになったのか。

それは新たに手に入れた固有能力(ユニークスキル)『構成変化』。

これは一度収納した事のあるアイテムの性質を、身体に同化させられるという能力で、魔鉄鉱の硬度を身体に持たせた結果、尻尾の一撃を受けても崩壊する事もなく、むしろ弾き返すという結果を手にしたのである。

いやぶっちゃけ、使った俺自身びっくりな結果な訳なんだが。


てか俺の種族がリビングデッドってなっているところを見ると、一応魔物的には死んだ扱いなのだろうか?

つまり俺はゾンビ的な何かになってしまったのだろうか?

いやいや、深く考えてはいけない。

既に存在自体が突っ込みどころ多いのに、更に変な属性まで背負い込みたくない。

何にせよ、これでトカゲと渡り合えるようになったようだ。

ご都合主義はいはい、とアニメやゲームを見て口ずさんでいたが、自分がそんな状況下に置かれるとは思ってなかったな。

ていうか、よく生き返ったな俺。

いや死んだのかすら怪しいが、生きていたかも怪しい。

ヤバイ、考え過ぎてゲシュタルト崩壊してきた。


アホな考えは一旦置いておき、戦闘へと意識を傾ける。

トカゲの上のドワーフは未だ動こうとしない。

最初、トカゲの騎乗に心血を注いでいるのかと思っていたが、よくよく観察してみると、手を思い切り握っている。

その手からは魔物特有の黒い血では無く、そのドワーフのであろう赤い血が滴り落ちている。


理由は分からないが、おそらく何かを耐えている、もしくは抗っているような雰囲気だ。

だからこそ、トカゲだけに集中出来ているとも言えるんだが。


そして俺はバックステップ(回転)で下がりながらトカゲの鱗の破片と、その直線上に居たカニスに向かい収納する。

オードの称号の力でオルディンには補正が掛かっているようだが、カニスは完全に生身の人間だ。

多少の怪我なら治せるが、俺の二の舞になるのだけは避けたい。

戦闘中、回復に回れるかも疑問だからな。


そうして今度はトカゲの鱗に鑑定を掛ける。

こうして相手の一部でも鑑定を掛けてしまえば、全容は解らずとも一部の能力ならば読み取る事が出来る。

そう思って鑑定した後、敵の方を向くとこれまた予想外の光景を目にする。


個体名:ドルガ Lv.21

真名:ドルガ

種族:ドワーフ

属性:火、地、無

固定称号:上位鍛冶師(アークスミス)

変動称号:傀儡

職業:鍛冶師

固有能力:Lv.3

鉱物鑑定

鉱物合成

短縮転移


能力:

天墜 Lv.8

ラッシュ Lv.4

物質転移 Lv.15

暗闇無効

熱無効

酔無効

槌威力補正

転移距離補正

嫉妬の執念


魔法:無し



個体名:トカゲ Lv.38

真名:ケビンJr

種族:アウリスハイリザード 転生者

属性:地

固定称号:アウリスリザードの王

変動称号:トカゲ

職業:王

固有能力:Lv.1

刺剣術


能力:

ショットテイル Lv.30

おねだり Lv.82

求婚確定 Lv.1

おねだり補正

可愛さ補正

回避補正

速度補正

毒無効

嫉妬の執念


魔法:無し



鑑定をしたのは確かにトカゲの鱗だけだった。

にも関わらず、目の前にいた敵の情報が全て開示されたのだ。


そう言えば気になるものがあった。いや、めっちゃあるけど。

技量開示(レベルオープン)』の隣に表示された[+強制開示]。

フェリエみたいに何らかの方法、もしくはレベル差のせいで鑑定を抵抗(レジスト)される事があったが、もしかするとこれは鑑定を強制的に成功させる類いのものでは…。

自身の能力を鑑定し直し、前提条件の"収納する"という文面が消えているのを確認すると、どうやら見た相手に直接鑑定を掛けられるようになっているという事に気付く。

念のため辺りの収納した事の無さそうなものにも、鑑定を片っ端から掛けてみたが、どうやら俺の疑心は確信に変わったようだ。


だけど…あのトカゲ、転生者なのか…。

確か魔物に堕ちると異世界人で無い限り、理性を失うみたいな話を聞いた気がするが、どうもそんな訳じゃないようだ。

どちらの能力にも『嫉妬の執念』の文字があるって事は、また例の嫉妬の勇者とか呼ばれてる奴の仕業か。

前はユキの能力でどうにかなったが、俺もオードもオルディンも状態異常回復なんてものは無い…し…?


そういや、状態異常なんだよな、あれって。

何で能力のところに表示されてんだ?

確かに『嫉妬の執念』って能力(スキル)を掛けられたから、状態異常に出るって事何だろうが、ユキの能力で盗れるのは状態異常の方だけのはず。

大元の原因が取り除かれる訳じゃない、いや、もしかしてあの能力で奪っているのは…。


「オード、オルディン。まだ俺自身、身体が慣れてなくて上手く動けないんだ。

とりあえず向こうのチームと合流する案に乗っかろうと思うんだが、どうだ?」

「いいっスけど…念話しても合流まで時間を持たせないといけないっスね」

「いんや、それは問題無いんじゃないか?」

「え?」


間抜けな声で聞き返したオードが見たのは、ユキ、ハル、ルル、ミィが振り落とされまいと身体に巻き付く形で、全力疾走して来ながら衝撃波を飛ばすオカマに掴まる光景だった。

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