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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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ライムと意思

暗い。

暗い。

暗い。


何処までも暗い。

意識は沈み、身体は言う事を利かず、ただ宙を彷徨っているかのよう。


その中で紅く、何処までも紅い光が見える。



これは何だろう?

紅く揺れる何か。

熱を感じる何か。


これはきっと炎。

その中で叫ぶ一人の少年がいる。

少年は泣きながら、けれど笑ってもいる。


「×××××××××××」

そう言いながらもう一人の人影を見ている。

喜びに身体を震わせながら、ただその人影を見ている。

なんて言っているかは、よく聞こえない。

けれど、あまりいい事を言われている気はしない。


何かを言い終わると、その少年は何処かへ去って行った。

その場に残った人影は、そのまま倒れ伏している。



ふと、場面が変わった。


獣のような手が見える。

まるでライオンのような、けれども真っ黒で大きい獣の手。

そして顔を上げると先程の少年の後ろ姿が見える。


あの少年には見覚えがある。

まるで、前世の宮野結城()の背中────





「………」


声が聞こえる。


「…………て………い」


遠いようで近い、そんな場所。


「……さん、……きて…さい」


誰だ、折角気持ち良く寝ているのに。


「ミストさん、起きて下さい!!」



その少女の声にハッ、と目が醒める。

その先には、斜め上から見下ろすような形で、少女─ノーリン─が必死に声を張り上げている。

ノーリンの周りは、まるでスポットライトが当たっているかのように、彼女の立つ所だけ光に照らされており、逆にそれ以外は真っ暗闇で何も見えない。


そしてノーリンはただひたすらに俺の名前を呼ぶ。

そうだ、俺は確かあのトカゲからノーリンを守って、油断を突かれてそのまま…


俺は、死んでいない、のか?

自我があり、意識があり、声が聞こえる。

どうしてだという疑問の前に、昔ノーデンス大聖洞から飛び降りた時の事を思い出す。

あの時もそうだった。頭と胴体が分離したにも関わらず、俺は生きていた。

原理は分からないままだが、どうやら俺は生きているらしい。


あの頃はまだ能力(スキル)や魔法を深くは理解していなかったが、今の俺ならこんな状況でも使えそうな能力(スキル)に心当たりがある。


そしてノーリンに向けて俺は、能力(スキル)『念話』を使用した。


[ノーリン、聞こえるか?]

[ミスト…さん?ミストさんなの?]

一応皆にも使った事があるが、頭の中に直接響く感覚と微妙に高い声は、一瞬誰か分からなくなると言っていたが、流石にこの状況で誰かなんてのは無いみたいだ。

いや、どっちかと言えば俺が生きている事にびっくりしている感じだろうか。

俺もそれはびっくりなんだが。


[ああ、俺だ…ミストだ]

[良かった…生きてらしたのね。本当に良かった…本当に]

今まで堪えていたのか、その場にしゃがみ込み頬を濡らしている。

[外で何か大きな音が聞こえたかと思ったら、急に周囲が暗くなって…。ミストさんも無言になるし、外でミストさんの身体がバラバラになっているし]

[俺も何で生きているのか不思議………ん?

ノーリン、外の光景が見えるのか?]


涙を流しつつも、起きた状況を説明してくれたノーリンが、不思議な事を口にする。

俺の身体の中で固有能力(ユニークスキル)を使う事は出来る。

魔法は確か使えなかった気がするが。

以前坑道でユキが千里眼を使っていたから、おそらくノーリンもそういうものを使っているんだろうと思ってノーリンの方を見る。

するとノーリンは、自身の目の前を指差す。

俺からは何も見えない。もしかして角度的に見えたりするやつかと思って、俺はノーリン側に移動(・・)する。

そして見たものは、ノーリンが指差す方向に小さな窓ぐらいの大きさの、まるでテレビのような形で外の風景が映っていた。


これを見た俺はすぐに気付く。

これは俺の目で見た映像だと。


だが今までそんな現象が起きた事も、そういう能力も魔法も使った事は無いし使えなかった。

けれどそこには、未だギリギリで回避や防御を続けているオード達の姿がハッキリと映し出されている。

オード達がまだ生存している事に、小さな安堵感が押し寄せるが、しかしだからと言って今の状況が変わる訳では無い。

昔みたいにオードが頭と胴体を繋げてくれたのとは訳が違う。

映像には俺がバラバラの木片へと姿を変えた事が如実に映っている。

事実、俺も現実の方の身体は動かせないし。


と思ったところで、そう言えばこの空間─おそらく収納空間の中─でなら自由に動き回れる事に気付く。

先程もノーリンの後ろ側へと回り込む事が出来たし。


だが、だからなんだという話だ。

動けはしたが、だから何が変わるという訳では無い。

いつものように成長する収納グローアップクローゼットを発動しようとしても、そもそも俺自身がその中に入っているような感覚なのか、アイテムを取り出す事が出来ない。

いつもは、ゲームのアイテム画面を見るような感覚なのに、今はその画面の中に入っているような感覚。

まるで俺自身が一つのアイテムとして収納されたような。


使えないものに拘っていてもしょうがないと、色々な意味での空っぽの頭をフル稼働させながら、今出来る事を考えようと意識を集中させた時だった。


不意に真後ろからの視線を感じたのは。


ノーリンに何か感じないかと念話するが、何も感じないと言う。

振り返っても誰もいないし、そもそもミストさんも声しか聞こえないから心細いと言う。


だけど俺には感じる。

ただ静かに、だけどもこちらをジッと見つめるような、そんな視線。

意を決して振り返った先に居たのは………


黒い靄だった。


煙のようにゆらゆらと、それでいて身体も顔も無いのに目だけが光り存在する、そんな靄が。

だがその靄はこちらに気付くと、周りの暗闇に溶けるようにして消えてしまった。


何だったんだろう。

最後、気の所為かも知れないが、俺に微笑んだ気がした。

あくまでも気の所為なんだが。


[ミストさん!ちょっと、あれ!]

俺だけが体験した奇妙な出来事に気をやっていると、ノーリンから悲鳴混じりの声が聞こえた。

何だ!何があった!

そんな言葉を叫ぼうと再び振り返ると、声を発する前にその原因を知る事になる。


暗闇が少し晴れたかと思えば、その場所に蠢く翠色の流動体が無数に見える。

これは確かにライムの身体だったものだ。

トカゲに踏み潰されてから回復薬を掛ける前に今の状態になっている為、バラバラに分離したままかと思っていたが。


ライムと思わしき流動体は、暗闇を飲み込みながらもその身体を、勢力を領土を延ばすかの如く、周囲の景色を全て自身の色に染め上げていく。

そうしてノーリンの周りの空間以外、天井から地面に至るまでをその翠色の流動体が埋め尽くすまで、そう時間は掛からなかった。


これは、一体…。


そう思って、唖然とその光景を眺めていた時に、俺の脳内に直接声が響いた。


───眷属との融合を確認。

これによりステータスの更新を開始…完了しました。

固有能力(ユニークスキル)『眷属召喚』『修復再生』『構成変化』を新たに獲得しました。


これは確か「世界の意思」とか呼ばれる声。

ここしばらくは聴かなかった、頭に反響する不思議な声。

しかも、気になる事を言っていた。


眷属との融合?

まさか、先程の流動体は本当に…

それに俺のステータスが更新ってどういう…


その疑問を解消するべく、俺は自身のステータスを表示する。

例え魔法は使えなくとも、もしかすれば能力(スキル)である技量開示(レベルオープン)なら使えるかと淡い期待を込めて。


そして映し出されたのは───



個体名:ミスト Lv.0

真名:無し

種族:リビングデッドミミック

属性:無

固定称号:蘇生者

変動称号:使役者

職業:(ディフェンダー)、スライムマスター

固有能力:

詳細鑑定(ミサダメルヒトミ)

成長する収納グローアップクローゼット

『薬効調合師』

『眷属召喚』

『修復再生』

『構成変化』



能力:

竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)』[+縦横回転+高速移動+閃脚]

『完全擬態』[+透化+周囲擬態]

『一括整理』[+分割整理]

『進化予測』[+過程超過]

『念話』[+複数会話+遠話]

個数把握カウンター』[+自動集計]

『状態異常無効』[+毒+酸+雷+魅了+魂魄]

『能力補正』[+回避+命中]

技量開示(レベルオープン)』[+強制開示]


魔法:

【無属性】

道具弾(キャノン)

爆裂道具弾(バーストキャノン)

拡散道具弾(スプレッドキャノン)


種族やら称号やらにも目が行くが、それよりも気になる事がある。

何やら能力や魔法の表示に枠が付いている。

今まではただ能力名が表示されていただけなのに、まるでその力が確定したかのようで。

しかも、以前あったレベル表示が全て無くなり、俺自身のレベルだけが表示されている。

他の皆を見るが、以前のままでスキルにも魔法にもレベルが存在しているのに。


また、能力の横に過去に使用してきた技法?のようなものまである。

閃脚とかよく分からないが、竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)の隣に表示されているという事は、それを利用した蹴りに名前が付いているんだと思われる。


他にも色々突っ込みたいところだったが、今はいい。

確認は大事だが、外の動きに変化があった。

どうやらオード達は連携を組み、オルディンが壁となって逃げ出そうとしているが、俺の視線が固定されているにも関わらず、オード達を見失わないのは、トカゲが上手く逃げ道を塞ぎ、俺の元へと戻るように追い詰めているからだろう。


俺が復活したところで、逃げ出す事に全力を出した結果がこれなのだから、何も変わらないかも知れないと思う。

けれど、だからと言ってこれではい終わり、なんて言える訳が無い。

何とか動き出そうと力を込めた瞬間、翠色に染まった空間が、いつも通りの収納空間に変わったかと思うと、外の俺の破片も翠色に染まり輝くのが見えた。


外のオード達とトカゲ達は硬直し、ノーリンも収納内に響く小さな地震に似た揺れに、仲間を思い泣き叫んでいた声を止める。

揺れは次第に大きくなり、視界が歪むまでに全体へと広がる。



目を開けると俺は、元の姿形のまま、しかし前とは少し違う雰囲気でその場に立っていた。

俺は俺自身でも理解出来ない程に、復活を遂げた。

種族のところで、本来リバイブミミックと書いてたつもりが、

リビングミミックとなっていました( ・◇・)アレー?

変換ミスですが、そう言えばリビングデッドってのがあったなぁと思ってそっちに変更しました。


確かリビングデッドって生きてる死体みたいな意味なので、リバイブとは全然違うものですが、どっちにしても箱は箱だな、と思い上記採用に。

でもコッソリ変えるかも…

更新遅くてごめんね。


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