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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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グラロマニカ大森林調査⑧ -相対-

「オルディンさん!?」

「オルディィィン!!」


ノーリンとカニスが悲鳴をあげ、動きを硬直させてしまう。

それを好機と見たトカゲが地面を蹴り二人へと急迫してくる。

迫る牙と威圧に気圧され、防御も能力(スキル)の発動も出来ず立ち止まる二人は、もうダメかと目を瞑ってしまう。


俺は拡散道具弾(スプレッドキャノン)で、以前試験で作った芋の粉末と先日作った誘爆弾を、トカゲに向って目眩しに飛ばす。

それとほぼ同時に"餅"を二人にくっつけ、その場で横回転の竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)の遠心力を利用して、投擲のようにして二人を遠くにぶっ飛ばす。

若干ではあるものの、動きを鈍らせる事に成功し、オードもそれに合わせて、風斬(ウィンドスラッシュ)をオルディンに噛み付いている牙に放つ。


だが牙に傷一つ負わせる事が出来ず霧散してしまう。

オルディンに当たるまいと、威力よりも精度を重視したせいもあるだろう。

その事実に動揺の色を見せる事無く、今度は酸弾(アシッド)にて肉諸共溶かそうとする。

だがその肌は鱗に覆われており、先程の風斬(ウィンドスラッシュ)でも浅く小さな傷しか付けられておらず、その部分に被せる様に放ったにも関わらず、溶けるどころか弾かれている。


睨み殺さんとするトカゲがオードへと注視した瞬間を狙って、俺はそのトカゲの目の前まで高速移動する。

攻撃するものと思ったのか、トカゲは意外にも防御姿勢を取っているが、俺はオルディンのすぐ側まで近づくとそのままオルディンを収納した。

それと同時に全力の道具弾(キャノン)を放ち、自身の身体ごと一緒に後ろへと飛び退く。

牙の至近距離まで近づいていたので、飛び退く寸前で角を喰われ破壊されたが。

その途中に、踏み付けられたのか、バラバラになっていたライムも収納する。

オードも救出を確認したのか、その場で火壁(ファイアーウォール)を作りだし、飛び退く俺に強引に捕まって脱出する。


後ろへと飛び退いた先には、先程ぶっ飛ばしていたノーリンとカニスがおり、着地体制が整っていない俺達を気合いで止めてくれた。


「すまん。助かった」

「こちらこそすみません」

「いや、想定外だ。あんな化物が出てくるとはな。とりあえずオルディンに回復薬を…カニス?」

回復薬を掛けながら周囲の確認していると、カニスが震える様にして視線を一点に向けている。

視線の先には先程のトカゲがノシノシと火壁(ファイアーウォール)を物ともせず向かって来ている。


「アウリス…ハイリザード」

そうポツリと呟いた言葉には聞き覚えがある。

以前オードがアウリスポイズンリザードと間違えた名前。

だけど目の前の奴とはどう考えても似ても似つかぬ姿。

それに何かオッサン乗っけてるし。

あのオッサン、近づいた時も思ったがこちらが攻撃しようが逃げようが微動だにしない。

一応同時攻撃の被弾を覚悟しての救出だったんだけど。


「アウリスハイリザードって前にオードが言ってた奴だろ?あんな化物と間違えたのか?」

「いや、あんな姿形したアウリスハイリザードなんて知らないっスよ!もしかしたら変異種かも知れないっスね」

オードの話ではアウリスハイリザードは色合いはアウリスポイズンリザードと同じ、だが少し大きい程度で羽等は生えておらず、また能力的にも少し苦戦するレベルのものらしい。

決して俺達が全力を使って逃げに徹するようなレベルでは。


「それにあの騎乗しているの、ドワーフのドルガさんじゃ無いか?!」

「ドルガですって?!あの名工と言われた?!!」

何か有名人っぽい反応をしている二人を他所に、どうやら敵は痺れを切らしたのか、こちらへと向かって来ているのが見える。


今俺達が居る場所は、このトカゲ達が先程居た広場の丁度真横、坂道の様にその広場へと降りられる獣道があり、そこの通路を遮断する形で立っている。

間合い的には俺とオードは問題無いが、回復したものの近接戦闘しか出来ないオルディン、リーチはあるがおそらく対応が間に合わないノーリン、弓と錬金術があるが威力不足のカニス。

この中だとカニスが戦闘に参加出来そうではあるが、相手はどうやら幻術を使う様で、一瞬でこちらに移動する術もあるらしい。


ハッキリ言って勝てるような相手じゃない事だけは分かる。

さっきの道具弾(キャノン)だって、敵を手負いにしようと全力で放ったものだ。

なのに結果は無傷。

俺が全力を出せば岩にも大穴を空けられるほどの威力が出せる。

まあ反動とかリーチとか精度とかに問題があるが。

それでも至近距離で逃げるのと併用して放ったそれは、文字通りの全力だった。

俺が今出せる最高威力。

それが、無傷。


勝てる訳が無い。

いやいや、そもそも俺達の目的は調査であって敵の排除では無い。

この事実をギルドに報告する事が今出来る最善策。

そう思って撤退を指示しようとした俺の前にオルディンが立ちはだかった。


「若、あなたとの旅、僅かな期間でしたが楽しかったです」

「オル、ディン?」

「ここは私が食い止めます故、貴方方はギルドへと帰還なさって下さい」

「何言ってるんスかオルディン!」

「私は逃げる事が出来ませぬ」

オードが必死に説得しているがオルディンは引こうとはしない。

ノーリンとカニスも、言葉が分からないまでも、オードが必死に説得しているのを見て、事態に気付き何とか引き止めようとしている。

何故そんな頑なに…と思ってオルディンを見ると、唇を噛み締め目には怒りの色を浮かべている。


まさか、そう思って周囲の魔物をよく観察する。

血で真っ黒に染まっており、原型はもはや留めていない。

だがそれが何かは何となく分かる、いや、分かってしまう。

オードも薄々勘づいているが、それでもと思ってなのか、説得を止めようする気配が無い。


「若」

「嫌っス!オルディンも一緒に!」

「若」

「オイラ、せっかく皆に認められて」

「若、」

「そうだ、ミストくんの回復薬が有れば大丈…」

「若!!」

ビクッと身体を震わせるオードに、もうこれ以上我侭を言わないで下さいと言わんばかりに、怒りと悲しみを押し殺した声で語りかける。



「魔晶石を砕かれた魔物は、例え回復薬を使ったとしても回復する事は無いのです。

だからもう、リーダー達が、村の者が助かる事は…ありません」


オードは聞きたくなかった、言わせたくなかった事をオルディンが言った事で完全に口を閉ざしてしまった。

魔晶石、例え臓器が破壊されたとしても、それが残っている限りは完全な死にはならない。

だが、それが砕かれたなら、例え臓器等が無事であってもその魔物は完全に生命活動を停止してしまう。

新たに核となる魔晶石を入れればまだ希望はあるが、原型すら留めてない死肉には、もう…。


「ミスト殿、若を頼みます」

「……約束は出来ない、だから生きて帰って来いよ」

「ふふふ、貴方まで無茶を言ってくれますな」

そう振り返らずに呟いたオルディンは、敵へ向かって猛突進を仕掛けた。

短剣を逆手に持ち、鱗の隙間を狙って切りつける。

弾かれ、剣がボロボロになろうとも。


俺はその姿を目に焼き付ける様にして、だが一刻の猶予も無いと皆に再度指示を出そうとしたところで、後ろからバキッと鈍い音がしたのを感じた。

そして、下の広場へと転がる身体が真横に叩き折られた老躯のゴブリン。

それは紛れもなくオルディンだった。


骨を砕かれ、尚も立ち上がろうとするオルディン。

それが尻尾による一薙の攻撃だと、目の前で見せられたノーリンは、今度は立ちすくむでもなく、敵へと攻撃の意思を持って闘気を昂らせていた。


「止めろノーリン!オルディンの犠牲を無駄にする気か!!」

だがノーリンが、その歩みを止めようとはしない。

むしろ駆け出し、敵を串刺しにせんとその得物を突き立てる。

だがその攻撃も弾かれ、槍はたった一撃で壊れ、真っ二つにへし折れてしまう。

それでもノーリンは攻撃を止めようとせず、半分以上短くなってしまい、短剣ほどの長さしか無いそれを敵に向かって切りつける。

それを特に気にすらしていなかったトカゲだが、いい加減鬱陶しいと感じたのか、手を振りノーリンを広場とは真逆の森へと吹き飛ばす。

軽く払われただけなのに、ノーリンの右腕には青アザが出来ており、おそらく腕とアバラが何本か折れているだろうというのが分かる。

そのアバラが肺に刺さったのか、ゴホゴホと血を吐きながら、虚ろな目でトカゲを睨みつける。


トカゲは容赦なく、その牙でノーリンを喰らわんと大口を開けて迫っていた。

もはや絶体絶命、助かる見込みは無い。

そう思うのと反射的に身体が動くのでは、後者の方が早かったようだ。


俺は考えるより早く、それでいて身体の板がミシミシと悲鳴をあげるほど速く敵の顎門へと接近し、そのまま竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)を噛ます。

そして着地に合わせノーリンを収納する。

ノーリンを無事救出する事で頭がいっぱいで、助けた安堵感で気がほんの一瞬だけ緩んでしまった。

だから、真横から薙ぎ払われた尻尾が、俺自身に切迫しているのにも気づくのが遅れてしまった。



結果、尻尾の威力は凄まじく、俺は無惨にも粉々に破壊され、ただの木片へと姿を変える。

意識が徐々に暗くなり、光も、音も、匂いも、全てが闇に堕ちていく。

俺の箱生(じんせい)は、再び幕閉じたのだった。

完…

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