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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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グラロマニカ大森林調査⑤

ユキの起床により、一区切り休憩を挟もうと言って辺りを散策していたメンバーを集めるフェリエ。


少し遅めの昼食を取りながら、各々の散策結果を報告しあう。

ではまず僕から、と一呼吸置いてハルから話を始めた。


「まずこの辺りの地形についてですね。これに関しては、各ギルドでも情報の摺り合わせが頻繁に行われているので、今更かも知れませんが。

グラロマニカ大森林は元々は一面平野だった場所に、かの"災厄"の影響でノーデンス大聖洞を中心に、盆地の様に周りに山々を形成。その後、長い年月を掛けて、今のような南西から北かけて半月形に広がる山々だけが残りました。

ノーデンス大聖洞の真下にある地面は陥没しており、それを中心に低地となってもいる為、魔力がとても残留しやすい。

加えて、魔物達もその影響を色濃く受けているせいか、他の地域よりも強く大きい変化を遂げている。

ノーデンス大聖洞近くは、魔力も濃いけれど能力素も濃く反発し合ってるので、その付近なら魔物に襲われる可能性は低い。


まあ、簡単に言えばノーデンス大聖洞付近は安全だけど、その手前の茂みには強力な魔物が多いから注意してね、って事だね」

一通り、確認事項をおさらいし、皆の認識を改めると、

「なるほどー。超分かったし!」と言う声が聞こえた。


「いやルル。クエスト受ける時にも言ったよね?ね?」

若干額に青筋を立てて迫るハル。

「ちょっ、ハル怖いー!ミィ助けてー」

そう言ってミィの背中に隠れるルル。

「えっ、あの、二人とも、仲良く…」

「はいはい、おふざけはこの辺りになさい」

フェリエが助け舟を出し、場を諌める。

プクッと頬を膨らませるも、直ぐに身だしなみを整え、皆に頭を下げるルル。その下げた頭を優しく撫でるミィに抱きつくルルに苦笑いするハルが話を続ける。


「共通認識の確認は終わったので本題へ。

まずこの一帯の魔物の痕跡がほぼ無いという事。

これは糞や足跡、獣道の有無を調べたけれど、殆どそれが無かった。

昨日の魔物達も、ミストさんの贈り物に引き寄せられただけみたいだしね」

「つまり、餌が少なくなっている、と?」

「だと思っています。断定的ですけど」


普通、魔物は主に魔素を餌として取り込む。

その為、周囲を魔素が少なくなると、魔素を求めて移動を開始する。

勿論、生物としての食事も必要になるが、動植物の中にも魔素は存在するので、余程の事が無い限り生息地を変える事は無い。

それにここ、グラロマニカ大森林では常に魔素が滞留した状態であり、魔素が枯渇するなど、ノーデンス大聖洞付近以外では有り得ない。


「うーん。なんか引っかかるんだよね〜」

そう声を上げたのはルルだった。

「確かに私も最初そう思ったし。

でもさ〜、特定の魔物だけならともかく、そこに棲む全ての魔物が居なくなるって有り得なく無ーい?」

「それは分かってる。だけど、それ以外に何が「あの、」」

白熱しそうな雰囲気に突如割り込んできた者へと視線を向けた。

ハルとルルは驚きを顕にする。

別に話に割り込む事はメンバー内ならよくある事なのだが、唯一その者が自主的にする事など今まで無かったからだ。

声を上げた者は、周りが静かになり、自身に注目が来ているのを感じると、恥ずかしそうにしながらも意見を述べた。


「私の、意見、では、」

普段ならここでルルやノーリンから手助けが入るのだが、自主的に話をしてくれる時は手を貸すのはやめときなさい、とフェリエから止められていた。

チームとして、意見がある時は何でも言う。それが信頼にも自身の勇気にも繋がる。

フェリエは自身の経験談よと言って、道中でも色々な話を聞かせていたのもあるのだろう。

まさかここまで早く、ミィが成長してくれる事にハルとルルが我が子を見る目になっている。


「この一帯の魔物、全て、倒されてる、んじゃ、無いでしょうか」

その言葉に、我が子を見る目が恐ろしい子ッ!みたいな顔芸をやってる二人を尻目に、フェリエが理由を問うた。

「えっと、私の魔法。幻術を、見透かせる、から」

「幻術…その場所に案内してもらえるかしら?」

フェリエはそう言ってミィにその場所を案内させる。



森の中を掻き分け着いた場所は、野営地からすぐの場所。

ミィは指を指しながら、魔法的視角からも何かしら発見があるのではと幻術を見破る魔法『幻解』を使って散策した旨を話していた。


その場所を注意深く見たフェリエはおもむろに魔力を練り上げた。

フェリエを中心に、帯状の魔素が視認出来る程渦巻いている。


光魔法『退ける光(キュア)

術者を中心として、周囲の者や幻術、暗闇などを払う魔法。

ミィの使った魔法『幻解』も光魔法だが、効果範囲も効力も段違いのそれを、フェリエは容易く発動する。

ミィの憧れと羨望の眼差しを受けながら、フェリエはその場所を視る。


すると、先程まで何も見え無かった場所に、血痕や何かの死肉の破片のような粒が視える。

その周囲にも、あちらこちらに死肉や腐肉、血痕が至るところに散らばっている。

ミィの魔法では「何かがある」程度しか見えない上、術者個人しか効力が無い為、普段奥手な自分では説明が難しい。

だがフェリエは商人として、人間の挙動を視るのはお手の物であり、また道中でミィが決して意見も無く周りに従っているだけの者では無い、そう感じていたからこそ、自身の体験談を話していた。

似た境遇、似た立ち位置、魔法使いというのもフェリエと重なるところが多かったのかも知れない。

結果として、こういう発見や積極的な進言をするまでに至ったのだから、とても喜ばしい事ではある。


だがほっこりとしていられそうも無い事態に陥っているのは確かだ。

この一帯だけでこれなのだから、きっと今までの道のりでも見逃していた可能性がある。

ただ、何らかの災害があって、魔物が移動した前提で動いていたが、これは明らかに『敵』が居る。

グラロマニカ大森林でも稀にしか存在しない、『強者()』が。


「ミィ、ナイスよ。あなたの観察力と判断力は、今後もチームの助けになるわ。もっと誇って胸を張りなさい」

「…は、はい!」

「もっと張ったら服破けちゃうし〜」

「こらルル、茶化すんじゃない」

「少し状況が変わったわね。向こうのチームと直ぐに合流しなきゃ…。嫌な予感がするわね」



予感………。

死肉や血痕を隠蔽していたあの幻術。

ミィがまだ駆け出しとはいえ、あの『幻解』はそこそこに高度な魔法。

それを持ってしても、ミィには何かあるとしか視えなかったと言った。

裏を返せば、それほど高度な幻術を掛けた『敵』が居る。

ただの勘にしか過ぎない。

けれど、それは『敵』だろう。

ただの魔物では無い、知性を持った何か。

幻術を掛けるにしても、魔物の生肉を貪るにしても、人間種では余程の強者で無い限り不可能に近い。


嫌な汗がツゥー、と頬を滑り落ちる。

アタシはまだ、信じたい気持ちがあるのだろう。

思い当たる節はある。

思い当たるチカラを知っている。

だけど、あのバカは一体、何をする気なのだろうか。


いや、今は私情で動くべきでは無い。

向こうの、特にあの不思議な能力を持つ彼等を失うのは好ましくない。

全力を出せば……いえ、冷静になるのよフェリエ・リエール。

アタシには救わなきゃいけない者が居る。

決して優先順位を間違えてはダメ。

アタシはアタシの借りを返さなきゃならない。



───例え、それが死地に向っているとしても。

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