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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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SS ユキ④

──あの決意の日から半年程過ぎたある日。


私はお父さんと共に居た。

お父さんはこの狐亜人種のお偉いさんらしく、けれども自身で警備見回りをこなす村の頼れる兄貴的な人だと、同僚のヤッカルさんの弁。

そんなお父さんの仕事姿を見たいと、私は転生して初めての”お願い”をした。

お父さんは迷ったような、けれど嬉しいような笑みを浮かべて、私の頭を撫でながら一言「行こう」と言ってくれた。


なので私は現在、近くの森へ来ていた。

日の光が差し込んできて、とても暖かく明るい。

森と聞いて鬱蒼としたものを思い浮かべていた私は、少し緊張気味にお父さんの後ろに付いていたのだけれども、それはどうやら杞憂だったらしい。


木々を風が揺らし、葉っぱがざわざわと擦れる音。

何処からか、鳥達が囀る声。

ふと上に視線をやっていた私が地面へと、その目を向けるとウサギの様なリスの様な動物が走り回っている。

とても平和で穏やかな風景がそこにはあった。


程なくして、草木の生えていない楕円形に固められた地面が姿を現した。

どうやら休憩場所にやってきたらしい。

お父さんの他にも、警備兵が3人、それぞれが皆違う仕事を始める中、私とお父さんは焚き火の準備をする。

ここに来て、この世界に来て初めて"魔法"を見た。


お父さんは薪に対し、腕を真っ直ぐ突き出した後、手のひらを向けた。

そこからボウッという音と共に、青く綺麗な火の玉が煌めいた。

その火の玉は薪に吸い込まれる様に消えたかと思うと、次の瞬間には勢いよく燃える炎へと姿を変えた。

私は目を輝かせてそれに見入っていた。

それはあまりにも綺麗な光で。


そんな私にお父さんは、

「魔法はまだユキには早いが、いつか教えてあげないとな」

そういって優しく見つめてくるお父さん。

私はまだ面と向って話すのが苦手なせいで、ついソッポを向いてしまう。

それを見てお父さんは私の背中越しに「自分のペースで大丈夫だよ」と、私の心を簡単に読んでそう声を掛けてくる。

ああ、前世では結局父親がどんなものなのか、結局分からないままだったけれど、これが本当の"お父さん"なのかと胸が熱くなる。

頬も緩み、ついニヤけそうになる。


私は私が嫌いだ。

この手に付いた血も、この胸に付いた傷も、この目に焼き付いた風景も。

けれど、それは過去の事だからと慰める訳でもなく、ただ同じ過ちを起こさない努力をせよと、お父さんは言う。

私が嫌いな私だけど、そんな"私"を好きだと言ってくれるお父さん。

だから私はこんな私を少しだけ、ほんの少しだけ好きになった。

いつか胸を張って、お父さんとお母さんに私は私と両親が大好きだと言える日を夢見て。



そんな事を思っていた私と焚き火と食事の用意をしていたお父さんの元に、警備兵の人が叫びながら戻ってきた。


「ケルビンさん大変だ!人間がいる!」

「何だと!?何人いる?まさか奴隷狩りか?」

「いや、近くの川で倒れていた。人数は二人だが…」

「何かあるのか?」

「その二人、最近噂になってるアルストレアを拠点に活躍してるっていう勇者に酷似している」


お父さん達は真剣に議論を重ねている。

亜人は人間達から酷い差別と風評を受けていて、大国では隷属させられたりしているらしい。

亜人を奴隷にする奴隷狩りなる職業もあるようで、警備兵は主に周辺の森の管理の他にも、人間達を侵入させまいと監視、場合によっては戦闘するのが任務だという。


…お父さんも誰かを殺していたりするんだろうかと思うと、私は少し不安になる。

逆にお父さんも、私にこんな気持ちを抱いているのではないかと。

だけど私は、嫌われたくないなと思える(・・・)様になっている事にはまだ気付いていない。


そうこうしている内に、お父さんと警備兵の人達はその人間を助ける事にしたようだ。

勇者を助けて貸しを作っておけば、人間との関係を改善できたり、あわよくば勇者に町を守ってもらえるかもという打算もあったのだろう。




───だけど、あの時。

この二人を、いや…赤毛の少年を助けなければ。

私は私をまた、嫌いにならずに済んだのかも知れない。

忘れた頃にやってくる!


投稿が二週間以上空いてしまいました。

申し訳ございません(´・ω・`)

活動報告にも載せた通り、端末にヒビが入り修理に出して返ってきたのが2日前だったんですが、仕事の方も忙しく、なかなか時間が取れない状況でした。


このまま行ったらGW突入するのでは、と思い始めていましたが、何とか投稿出来て良かったです。

内容は短いんですけどね(苦笑)

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