カース・ド・クッキング
ユキ達の事が気になって、再び念話をしてみたが何故か繋がらなかった。
おそらく高速フラグ回収中だろうが、あのフェリエが居るわけだし大丈夫だろうと飯の用意をしていた。
飯はトカゲ肉の串焼き(串はそこら辺にある枝で代用している)と焼き芋。
こちらはカニスとノーリンがパーレを、ゴブリンお二人はパーラを。
俺も食べ物が恋しいが、食欲も睡眠欲も無い。
匂いは分かるんだけどな。
更に性欲も無いとなると、人間の三大欲求が全く無い事になる。
いや、人間じゃないんだけどね?
今の俺の三大欲求は、物欲、開発欲、冒険欲ってところかな。
物欲はまあ、ミミックの性なのか珍しいアイテムや植物を見つけるとついつい採取したくなる。
開発欲は夜番の暇つぶしに品種改良しまくってたらハマった。
オードも魔法関連の草には詳しいが、カニスにも色々教えて貰って今では少し複雑なレシピも扱える。
ここまでの道中でも、以前作った跳薬という薬とアウリスリザードの肝を合わせて作る、超跳薬という薬を作った。
名前の通りの効果だが、これを使って回し蹴り(俺の場合足が無いが底の方の角で攻撃)をしてみたら、大木が倒せるぐらいには強化された。
普段解体する時は、肝は毒があるかもという事で廃棄していたのだが、カニスはもったいないと嘆いていた。
錬金術では肝や目玉はよく使うらしく、常時枯渇しているとの事だった。
今度からは取っとく様にしないとな。
んで、冒険欲ってのはそのままだな。
冒険と言えば、RPGとかMMOとかを思い出すのは元ゲーマーの性なのか。
ゲームは仕事をしてからはあまり出来てなかったが、昔は結構ゲーセンに篭ったり即日販売の列に並んだものだ。
ゲームと付いてさえいれば、ある程度は嗜んだつもりだ。
まあ、社会人になってからはゲーセン主体になってたが。
UFOキャッチャーで景品取りすぎて出禁を食らった店は数知れず。
まあ、微妙な思い出だな。
そんなアホな事考えていたが、味は分からずともこの代わり映えしない料理のメニューはちょっとなぁ。
元日本人としては、色々な物を食べさせてやりたいものだ。
こんな冒険中に温かいもんを食えるだけでも、この世界の人達からしたら凄い事みたいだけど。
カニスの持ち物から干し肉と硬いパンを貰って鑑定した時は、正直笑ってしまったよ。
個体名:オークの干し肉
味:とても不味い
栄養:とても悪い
腹持ち:とても良い
種族:アウリスオークナイト
属性:地
能力:スタミナが持続
個体名:硬パン
味:普通
栄養:悪い
腹持ち:とても良い
種族:無し
属性:無
能力:スタミナが多少持続
何かの修行なのだろうか?と思ったが、持ち運びが出来てかさ張らず、腹が満たせるものとなるとこういう物が選ばれるらしい。
また、例え水属性の魔法使いが居ても飲料水を作り出せるのはほんの一部で、殆どの場合不純物が混じっている。
なので、水も使えない場合が多く、料理する手間もある為、冒険中は不味い飯となるようだ。
オードも水魔法を使えるが、あの水は一応綺麗な水である。
まあ俺は手汗とか呼んでるが。
でも俺から出した水も綺麗ではあるが、見ようによってはゲロ…いや、やめとこう。
しかし、俺の畑から何か出すにしても野菜や果物を作ってはいるが、味がまちまちらしいからな。
こういう時自分で味見出来ないのがなぁ。
一応鑑定すれば美味しいかは分かるが、どう美味しいのかは分からん。
完全擬態も期待していたのとは違うし。
擬態は相手に、完全擬態は風景に。
俺としてはもっと人間に近づく能力が欲しかった。
こう思うって事は、俺はまだ未練があるんだろう。
転生出来た事は正直、かなり幸運な事だろう。
俺は天国なんて物はぶっちゃけ信じてないし、幽霊も見た事無いから信じてない。
死ねばそれまで。そういう感覚だったが。
新たな箱生には感謝を覚えるが、どうしても人間だった頃の感覚が忘れられない。
記憶を引き継いでいるのも要因の1つだけどな。
あー、あんまり考えると俺の空っぽの脳みそが爆発するな。
今は今の事を考えよう。
どうせ死んだらそれまでだ、先ばかりに思いを馳せずに今を見よう。
と、空を見上げていた俺は後ろを振り返るとオードとオルディンが前のめりで倒れていた。
「はぁっ!?オード!!オルディン!!一体何が…!?」
一瞬慌てたが、その傍らで泣きじゃくるノーリンと、やれやれという感じで肩を竦めるカニスを見て、ノーリンが何かやらかしたと気付く。
「ご、ごめんなざい…大丈夫だと、大丈夫だと思って」
ノーリンでは要領を得ないので、カニスに話を聞く。
「一体何があったんだ?オードとオルディンは無事なんだろうな?」
「ハハハ、まあ大丈夫だと思うよ」
「だけど明らかに顔色悪いぞ」
そう言って鑑定で状態を確認すると、状態:呪いと表示された。
「呪い…?」
「ああ、ミストさんも鑑定持ちなんだっけ」
「そうだけど。呪いってなんだ?」
「いや、ノーリンがね…」
話を聞くとノーリンは呪術師の家系で、彼女自身もそれを色濃く継承しているそう。
だが、強すぎる力のせいで触る物全てに呪術が掛かる為、普段料理をするのは遠慮しているそうな。
一応、自身には呪術に対して耐性がある為、食べ物に呪術が掛かっても問題無いのだが、他人からすれば脅威に他ならない。
自身で抑える事が出来れば良かったのだが、いくら訓練しても制御出来ず、家族から冷ややかな目を向けられ、家を飛び出してきたんだとか。
槍を使っているのも、相手を触らない様にするという表れなのかもな。
因みに解呪はカニスがやってくれた。
と言っても解呪自体は魔法に分類される。
ならどうするかと言えば、解呪薬という便利な物がある様で、俺も早速レシピを覚えさせてもらった。
魔石+魔素水+アウリスリザードの肝+薬草の汁という、俺からすれば簡単なレシピだが、どれも手に入れるのは難しい物ばかりな為、国の薬屋が何とか持ってるレベルらしい。
それをオードとオルディンに振り掛けると、みるみるうちに顔色が良くなった。
「いや〜、ノーリンのご飯食べたら急に身体が動かせなくなってびっくりしたっス!」
と笑ってるオード。
動かせなくなるってヤバイな。
「面目もございません、若」
オルディンもそう言うが、アンタは微妙に動けていたよね?
オードでも動かせなくなってたのに、動くってどんだけだよ。
全く、この森林のゴブリンはゴブリンしてないから困る。
「ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ」
ノーリンはひたすら謝っているが、オード達は別に気にしてない様だ。
むしろ…
「じゃあこの薬を料理に掛けたらいいんじゃないっスか?」
と言って料理に解呪薬を掛け、ヒョイっと食べるオード。
ノーリンとオルディンが止めに入ったが、本人は「うまぁ」と言っている。
ああ、ノーリンは別段料理が下手という訳じゃない。
自炊するぐらいらしいからな、むしろ美味い方との事。
なるほど、呪術さえ無ければ普通の女の子なのに。
いや、普通かどうかは微妙だな。
「オード1人で食べるなんてズルイよ」
そう言ってカニスも食べ始め、ノーリンにウィンク。
ノーリンはそれを見て泣き止み、クスッと笑う。
仲間っていいなって思ってしまったよ。
そして今後は料理はノーリンに頼み、解呪薬は俺が作る事になった。
大分期間が空きました、すみません(;´Д`)
決算やら棚卸が被り、家に帰るのは寝るだけ状態が続き、書く時間が…。
やはり月末は投稿が難しいです。
今月から仕事量が減るとの噂なので、投稿ペースも戻せると思いますので、よろしくお願いします。




