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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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名前、大事。

──こちらBチーム。


「さて、どうしようかしら」

「フェリエさん!」

「はい、ハルちゃん」

「元気組というのはどうでしょう!」

「却下。はい次」



出発して間もなくフェリエが言った。

「ミストちゃんがBチームって言ったけれど、何か響きが悪いから別の名前にしたいわね」

そう言って始まったのがチーム名決めである。

チーム名を考えながらも、森の中を探索する一同。

勿論、フェリエにはそんな事をさせる理由があった。


人間、どうしても何か考え事をしている時は、集中力を欠くものだ。

こんな森で集中力を欠くというのは、それこそ危険行為に他ならない。

だが、フェリエの狙いはむしろ真逆である。

ハルは何にでも注意を向け過ぎるせいで、一つを注視してみる事が出来ない。

全体を見る事が出来ると言えば聞こえはいいが、目の前の敵との一秒にも満たない命のやり取りでは、それが命取りになる。

ミストちゃんと近い役割を担っているからこそ、自身への注意力が疎かになりがちになる。

先の戦闘でそれを見抜いていたフェリエは、まず戦いから意識を逸らす為、チーム名作りを提案する。

勿論、本当にBチームって名前が微妙だと思っているのだけど。


こちらの思惑通りというか、緩み過ぎな気もするが、パーティーの雰囲気はゆったりとしたものになっていた。

元々は魔物に偏見があったせいもあるが、暴走しない様にしなければ。

そういう意味では、あのノーリンという子と離したのは良かったと思う。

ノーリンって子を過保護に見すぎな気もするけれど、もしかしてそういう関係なのかしら。


「しっかしあの大商人フェリエさんとご一緒出来る日が来るなんて、商家の娘としちゃあ感激ものだし!」

「あらあら、アタシはそんな凄い人じゃ無いわよ」


ルルをこちらに組み込んだのはおそらくわざとかしら。

昨日の食事会でも、お話したいと言っていたものだし、ミストちゃんが気を利かしたのね。

こういう気遣いは出来るのに、どうしてあんな所々短絡的行動が多いのかしら?不思議だわ。


「ミィちゃんは何か無いかしら?」

「わ、私、は、大丈夫、です…」

「もー。そんな謙虚じゃダメよ〜。

お姉さんが手ほどきして、ア・ゲ・ル♡」


ミィちゃんは自己主張が薄い。

ハルやノーリンが意見を出し、カニスやルルがそれに追随、最終的な決定をハルが出すようだが、その流れにミィは関わらない。

一歩引いて辺りを見回すと思っているのかも知れないが、どちらかと言えば他人と関わるのが苦手なだけだと思う。

だが意見も何も持ってない訳ではないので、それをもっと全面に出してほしいものだ。


「私、は、えっと」

「焦らなくてもいいのよ。どうせ合流するまでまだまだ時間はあるんだし、戦闘スタイルの把握もしなきゃだしね」

そう、戦闘を経験させるとは言っても、相手の戦闘スタイルや役割を知らなければ教えようが無い。

例えば剣士に槍を教えても、無意味では無いであろうが、戦闘経験をさせるにしては非効率だろう。

そういう点ではハルは全体的な指揮と敵の注意を引く役であろう事は理解出来る。

尤も、そういう系統の鑑定能力があれば一発なのだが。

ミストちゃんのあの能力に対する理解度を見るに、おそらくそういう類いの能力はあるのだろう。

ならば、アタシかユキが教えやすい職業なり役割なりをこちらに入れているはず。


ミィはまさにそうだ。

アタシは主に回復系の能力が多い上に魔法が使える。

一度もミストちゃんの前で使った事は無いはずなのに。

大体この辺りの魔物は手刀で倒せるし。

この子は回復と補助、特に仲間の強化魔法に優れているみたいね。

掛けるタイミングや安全な位置取り、教えられる事は多そうね。


一方でルルは攻撃魔法や自己強化に秀でている。

…商家の娘が魔法なんて覚えたら、偏見や差別が酷いでしょうに。

愛人の子、辺りかしら。

魔法や魔力は魔物が使う物、そう風聞して回る勇者教のせいで、魔法使いは糾弾されている。

貴族ならば例え魔法が使えても英雄視される事もあれば、秘匿する事もある。

けれど、商家は色々な人に触れる分、秘匿も難しく差別も酷い。

場合によっては実の子であっても人身売買に使われたりもするぐらい。

ルルもあまりいい境遇じゃなかったのでしょう。


やーねー、全くこの世界は。

異世界からの転生者達は何でこんな世界に来て”夢がある”だの”ファンタジー最高”だの言えるのかしら?

お姉さん、全く分からないわ。


とりあえずこの2人には魔法の基礎を叩き込みましょう。

あとは敵との距離感ね。

ハルは敵の注意の向け方と攻撃の受け流し方でも覚えさせましょうかしら。

フフフ、腕が鳴るわ〜。


「フェリエさん、大木が雷で裂けた様な音が鳴っています」

「あらやーねー。お姉さん、そんな物騒な音しなーい。

とりあえずユキちゃんは手頃な敵探しをお願いね」

「分かった」



「ぎゃあああああああああああ」


「ん」

「あら、ユキ何か見つけたの?」

「遠くから熱風と共に阿鼻叫喚を感知」

「多分Aチームでしょ。あっちはあっちで楽しそうね」

「そう言えばノーリン、確か虫系とキモイ敵全般苦手だけど、アウリスビーとかアウリスワームとかに出会ってないかな」

「ノーリンなら大丈夫さ!アイツは強いからな!

…よし!やるぞ!

幸せいっぱい討伐団というのはどうだろう?ブツブツ」

ハルは自信満々に言うとまたチーム名を考え始める。

ルルはやれやれと肩を竦めた。


「まあ合流地点はまだまだ先だから、もう少し地形が入り組んだ場所を探索しましょうか」

「「了解」」

「うん」

「は、はい」


向こうのチームみたいに返事が揃うのはまだまだ先かしら、なんて苦笑するフェリエ。

彼等は更に奥地へ進む。

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