チーム分け
「だからお前が鑑定屋にビビって早く拠点に帰ろうとか言うから国王ぶん殴る予定が飛んだんだろうが!」
「ミストくんが魔法薬を制限無く渡してくるから歯止めが利かないんス!」
「何だよ、俺が悪いってのか!」
「責任の一端はあると思うっスけどね!」
「黄色い水魔法の使い手!」
「冷蔵庫型掃除機!」
「本当…彼等はいつもこうなのかい?」
ハルはそう尋ね、ユキは頷く。
俺とオードはいつも喧嘩している。
別にガチの喧嘩では無く、お互いの不満に思う点を言い合って改善に努める。
パーティーでは些細な衝突でバラバラになる。
戦いでは互いに背中を任せる関係なので、そういう事にはフラットでいこう、と俺とオードはパーティーを組んだ際に誓っていた。
結果これである。
互いの悪口を言いつつ、阿吽の呼吸とも言える連携でトカゲ共を狩っていく。
そして最後、敵が弱りきったら上に高く打ち上げる。
そこにユキが飲み込みやすい大きさに素早く分断してくれる。
もはや一連の動作が効率化されている程に。
「アタシもこれ見た時は、よくあんな喧嘩しながら息の合う連携が取れるものだと関心したわ」
「分かりますわ。魔物同士がパーティーを組む事は珍しく無いですけれど、ここまで的確に敵の攻撃を無効化するなんて…」
フェリエとノーリンがウンウンと頷きあっているのが見えた頃、トカゲの殲滅に成功した。
「いやぁ、これだけあればご飯には困らないっスね」
「いや、ノーリンが居るから2日も持たないな」
「そ、そんな事ありませんわ!」
「本当に?」
「本当です」
「じゃあ食事の量は皆と同じでいいよな」
「えっ」
そのあからさまに落ち込むのやめようか。
「しかしお前ら、見てないで加勢しろよ」
本当、実際戦っていたのは俺とオード、止めにユキが攻撃していただけで他のメンバーは見ているだけだった。
「いや、まさか20匹近くいたアウリスリザードを狩ってしまうような人達の戦闘に入るのはね」
「ぶっちゃけ俺らが入ると足手纏いになりそうっしょ」
ハルとカニスが申し訳なさそうな顔になる。
うーん、しかし出来ればもう少し戦闘慣れして貰った方が、俺達的にも効率的に戦えると思うんだが。
やはり隊をもう少し分けるべきだな、流石に安全の為とは言え、10人も居ると小回りが効きにくい。
「そうだな、よし。皆提案がある」
皆が俺の方を向き、静かに見つめる。
「このまま10人での移動も良いが、やはり俺的には戦闘も経験して欲しい。
無理をする必要は無いが戦闘する事に臆病になって、いざと言う時に動けない様ではそれが本当の意味での足手纏いになると思う。
話を聞く限り、戦闘系のクエストはあまりしてないみたいだし、いい機会だと思ってやってみないか?」
皆を見回し、返事を待つ。
一番最初に口を開いたのは意外にもミィだった。
「私、は、やってみたい、と思います」
小さく、だけどハッキリとした意思で答える。
しかし意外だな、状況に流されるタイプかな?と勝手に思っていたんだが。
どうやら意見を持ってはいてもそれを口に出さないんだろう。
このパーティーはハルとノーリンが引っ張ってく感じだし、おそらく意見を言う事で動きを阻害してしまうのを防ぐあまり、奥手になってしまうのだろう。
俺も結構その辺鈍い方だが、フェリエ、お前の顔はコロコロ変わるから読みやすいぞ気を付けるべきだな。
「あら、アタシの顔から推測するなんてミストちゃん熱烈〜」
「ぎゃー!抱きしめるなー!」
「僕も賛成する」
次はハルが意見した。その隙に離脱!
ふぅ、酷い目にあったぜ。
「やっぱりミストさんやオードさんに頼ってばかりでは、パーティーとしても個人としても成長出来ない。
ギルドに所属する以上、採取クエストだけで生活するのは厳しいしね。それに」
ミィの方へ目を向けるハル。
「まさかミィが意見を出すなんて珍しいからね。彼女の意見を尊重してあげたいんだけど、皆どう?」
「異議なーし」とカニス。
「ミィは私が守りますわ」とノーリン。
「ウチも負けないし」とルル。
どうやら皆ヤル気の様だ。
「という事なので、編成をお任せしたいんですが、ミストさん」
「よし、やるか!」
という事で再編成。
俺、オード、カニス、ノーリン、オルディンのAチーム。
ユキ、フェリエ、ハル、ルル、ミィのBチーム。
「まあこんな感じかな」
バランス的にはこんなところだろう。
ぶっちゃけフェリエが1人入れば、ハル、ルル、ミィの3人を受け持ったとしても問題無いだろうという判断だ。
それとノーリンとハル、いやノーリンだけかな?が、結構ハルに依存した戦い方をしている。
なのでこの2人は分ける事で互いに強くなってもらおうという狙いである。
あと、ミィを守るって言ってたのに分けちゃってごめんな。
カニスは錬金術を教えてもらいたくて入れたのは内緒だがな。
回復は俺、フェリエ、ミィしか出来ないが、俺は回復薬を超ストックしてあるしな、大丈夫だろう。
オルディンは、会話がしやすい様にとオードがこちらのチームに入れる様勧めてきた。ちゃんと気遣ってやってんだな。
「とりあえず作戦は命大事にだ。
調査なんだから不必要な戦闘は避ける方向で。
魔物の棲息地の場所や巣があった場合は速やかに撤退。
他、何があるか分からないからな、収納持ちはこれ持ってけ」
そう言ってBチームのユキ、フェリエ、ハルに上位回復薬を渡した。
ハルはこんな高価な物を…とかこれ使わずにいたら貰っていいのかしら?とかフェリエが聞いてきたりしたが、あげたんだから遠慮せず使えよとだけ言っておいた。
そして俺達はゴブリン村からノーデンス大聖洞をぐるりと周辺を1周するルートで調査する事にした。
Aチームは右回り、Bチームは左回りで。
「じゃ、何かあったら空に向ってなんか打て」
「ミスト、曖昧」
「まあ魔法打ってくれれば駆けつけるよ」
「私も駆けつける」
「まあユキの早さならすぐだな」
「そうだね」
オード、会話に入りたいならこっち来いよ、全く。
「じゃ、行くぞ!Aチーム!」
「「「「おー!!」」」」
「では行きましょうか、皆さん」
「お願いします!フェリエさん」
「お、お願い、します」
「よろしく」
「よろだし〜」
そして更に俺達は奥へと進む。




