七大罪の勇者
「しかし皆さん凄いですよね…」
少し歩いて小休憩を挟んだ時、ハルがそう呟いた。
「いくら魔力感知や千里眼があるからと言っても、魔物の奇襲にここまで簡単に対処されると…」
「それは本人に言ってやってくれ」
その当人はジュースをがぶがぶ飲んでいる。
少し開けた場所で小休憩をしようと辺りを探索していた時、側面からアウリスリザードが奇襲を仕掛けてきた。
俺達にとってはよくある事なので特に気にしてなかったんだが、ハル達のパーティーとオルディンは臨戦体勢に入っていた。
それをオードが隣から火弾を滞留させたお馴染みの拳で一撃で倒した。
それを見てルルが「オードさんって魔法使いだよね?」と聞いてきたが、俺もあれが魔法使いなのかは疑問なところである。
分類上は魔法戦士らしいが、カニスとハル曰くそんな職業は存在しない、との事でおそらくオード特有の戦い方らしい。
まあ、それもいつもの事だったので俺達のパーティーはオード以外微動だにしなかった。
ハルはそれを仲間を信頼した連携と評価してくれたんだが、スマン。あれは連携というか、毎回作戦無視するオードが敵に突撃するだけなんだ。
一応ユキが注意すれば止まるが、さっきみたいな状況だと逆に誰も止めない。ただそれだけなんだが。
「ま、オイラ達は強いっスから泥船に乗ったつもりで居るっスよ」
「よく沈みそうだな」
やんややんや。
「お二人は仲良しですよね、同じ出身なんですか?」
ハルが俺達を見て微笑みながら聞いてきた。
「いや、恩人みたいなもんだが、何か話してたら気が合ってな」
「ミストくんを一目見た時から、絶対仲良くなれるなとは思っていたんスよね」
「全くだ。何か兄弟だと言われてもそんな気がするぐらいだな」
まあ、吊橋効果だと思うけどな。
互いに独りぼっちで出会ったから、余計に寄り添う形になったんだろう。
結果的にはそれが良かったんだが。ま、それは言えないな。
あとフェリエ、ニヤニヤするな、そのスキルOFFにしとけと言ってるだろ!
「ウフフ、男の友情は素敵ね〜」
小休憩を終わり、再び道無き道を進む俺達。
その道中でも会話は続く。
「そう言えばハル達はアルストレアの出身なのか?」
「大きく言えばそうだけど、この辺りの地域では無いね」
「アルストレアもいい国でしたのに」
はぁ〜、とノーリンが溜息ひとつ。
「嫉妬の勇者が王になってからというもの、王国内は荒れに荒れていますわ」
「嫉妬の勇者?」
「あら、ご存知無いのですか?」
「勇者が王様やってるって話は前に聞いた事あったが」
「この世界には昔、魔王っていう魔物の王が七体居てね。人間達と永く争っていたんだけど。
この王国の現国王であるリベルタ=アルストレアを含む八名が魔王を全て討伐したんだ」
「へぇ、人類に平和が訪れたってところか」
「いや、むしろ逆でね、その勇者達が世界を支配しようという行動をする様になったんだ」
「はぁ?何で?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「分からない。けれど、その勇者達には共通点があってね、固有能力の更に上、究極能力と呼ばれるものを保有しているんだ」
「その名前が《嫉妬》か」
「ああ。その勇者達はそれぞれ《憤怒》《傲慢》《嫉妬》《怠惰》《色欲》《強欲》《暴食》の究極能力を持っている事から、七大罪の勇者と呼ばれているよ。
だけど彼等は元々は本当に勇者らしい勇者だったんだけど、魔王を討伐してからしばらく経ったぐらいから、急におかしくなっていってね」
「そういやリューガ村でも聞いたな。村人達が国王に拉致されるっていう」
「ええ、しかも誰1人として帰って来ない。
国王自身は討伐隊や革命軍すら敵わない強さ。その上、表面上は魔物に襲われず安全で住みやすい国を装っているところが解せませんわ。
内部では魔物よりも国王の方が危険ですのに」
「やっぱり普通はそう思うよな。何か王都に居た奴ら、普通に生活してるもんだから」
「王都の人達が異常なだけです。おそらくは《嫉妬》による力と勇者教の影響でしょうけど」
また勇者教か。この宗教、名前だけはよく聞くんだけど実態が掴めない。
グラちゃんにもギルドで寝泊りさせてくれた時に話を聞いたんだが、傲慢な勇者が作った宗教とか言っていた。
《傲慢》。成程、そういう意味だったのか。
しかし魔王を倒したのに、それで大罪系の能力を得たみたいな感じだが。
俺も魔王は悪だと思い込んでいたが、もしかすると…
フェリエは国王を古い仲間だと言っていた。
グランと国王、そしてフェリエが冒険者として魔王を討伐したって事だろう。
その時はまだ国王も普通で、だけど大罪系スキルを取った事で人格が変わった。
魔王…一体どういう存在なのだろう。まだ情報が少ない。
「お話が盛り上がるのはいいけれど、トカゲの大群が来るわよ」
そうフェリエが言った。
話を無理矢理遮ったような気がするし、それに見間違いじゃなければ左手に隠した瓶の中身、魅了薬な気がする。
効果はオードの不幸せな踊りと同じ効果、魔物を引き寄せる。
まあ、いくら気にしてはいないと言っていても、やっぱり話をされたい訳じゃないんだろう。
だからって魔物を呼ぶのはどうかと思うが。
俺はそう判断し、これ以上考えるのはやめ、戦いに集中する事にした。




