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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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相手のパーティーが何かおかしい件

「本当に、本当に申し訳ない」

ハルによる見事な土下座。

貴族の土下座ってだけで、やだ何か上品。とかアホな事考えていた。

「ノーリンが君達の食糧を…」

「いや、それさっき聞いたから」

ちなみにこの会話は四回程ループして今五回目になる。

「また明日狩ればいいだけだから、な?」

「ぐぐ…それでは我々の面子が立たない」

「ハルはそういうとこ固いよなー」

「カニスもノーリンも少しは遠慮を覚えてだな」

ノーリンが一番食べていたが、それに次いでオードとカニスが張り合っていたな。途中からオードはジュースにシフトしていたけど。


「ユキちゃんモフモフ〜」

「も、モフモフ、です」

「尻尾は敏感…ひゃう」

こっちではルルとミィがユキとじゃれている。

向こうがアレなせいか、物凄く癒される。

前世、人間だった頃はこの光景に萌えー!の一言でも叫んでいたもんだが、この身体になってからは女の子を見ても可愛いな、ぐらいの感想しか抱かなくなっていた。

魂は身体に依存するってやつだろうか。

出来れば人間に戻って勇者になりたいと転生直後は思っていたりしたんだが、今じゃ逆にミミックも悪く無いと思い始めてる自分が少し怖いな。


「ああ、そうだハル」

「なんだい?」

「明日どうせ周辺調査するんだし、魔物の分布や敵の強さを見るのも兼ねてトカゲ狩りするから、一緒に戦闘しないか?」

「え?いや、しかし我々では戦闘の手伝いが難しいからと、地図作成を任せる手筈じゃなかったのかい?」


そう、先程食事中に互いのパーティーの戦力や能力の一部を明かしてもらったんだが。

どうにも戦闘力に欠ける印象だった。

というのも、ハルとノーリンを足したのがユキ。

カニスとルルを足したのがオード。

ハルとミィを足したのが俺、みたいなスペックだった。

一応鑑定で詳しく見ようとしたんだが、フェリエから仲良くなったとはいえ、他人の能力をおおっぴらに覗き見るのは失礼だから止めなさいと注意された。

一体どの口が言うんだと思ったが、言ってる事には一理あるし、どのみち本人が抵抗すると見えなくなるし。

レベル差があれば強引に見えるらしいが。

しかしランクEとは言っても、隠密行動には自信があるらしく、生態調査以外のマッピングや採取ポイントの調査はかなりのものだった。

自作の地図をフェリエが買い取るとか言い出してたぐらい、詳細に記載されていたのだ。

「くっ、これがクエストじゃなかったら無理矢理奪うところだわ」

「フェリエさん、ご冗談ですよね?」

「フェリエは本気」

「もーユキちゃんにハルちゃん、冗談に決まってるじゃなーい」

「俺のイメージでは崖から突き落として回収する計画立てそうだな」

「やーねー。そんな事するぐらいなら暗殺した方が早いじゃない」

などと言って場を凍り付かせていたり。敵対したくないもんだ。


「そうなんだが、結局魔物が出る場所にも採取ポイントや洞窟の位置とかも調べる訳だろ?」

「ああ、出来ればの範囲だが」

「俺達のパーティーにはマッピング出来る奴が居ないから、何なら全員で行動した方がいいんじゃないかと思ってな」

「しかし隊が大きくなるほど指揮も難しくなるし、連携も取りにくくなるんじゃないかい?」

「ああ…連携ね…。まあそこはもう壊れているから大丈夫だよ」

「ん?それはどういう…」

「まあ、行けば分かるさ」

俺は遠い目をして夕暮れの空を見つめた。






今日で既に六日目の調査になる。

パーティーの皆で朝食を作る。

堅いパンを味があるか分からないような薄いスープに浸して食べる。

長期間の任務になるからと、水や食糧は出来るだけ保存が効く物を選び、あとは現地調達している。

毒があるかも知れないが、そこはカニスが得意としている。

彼に従えば毒に当たる事は無いだろうが、五人が腹を満たす程では無い。

魔物でも狩れればいいのだが、この森の魔物はとにかく強い。

隠密系スキルである僕の能力”遮音”とノーリンの能力”断音”を掛け続ける事で、魔物との遭遇は皆無。

だけど能力素が減ればその分疲れやすくなるし、ずっと森の中を歩くというのは精神的にとても消耗する。

何処か休む場所は無いものかと歩き回っていた時だった。

隊を為すゴブリン達を発見する。

ゴブリンなら自分達でも狩れるが、隊を為すのは初めて見た。

おそらく、ゴブリンリーダーが居るのだろう。

勝てるとは思うが、皆疲弊している。

ギルドには仮登録だし、危険な探索は控える様にと言われている。

万が一に備え、そのゴブリン達から遠ざかっていた時、一匹のゴブリンに見つかってしまった。

ヤバイ、仲間を呼ばれる!

一匹一匹なら然程強くないが、徒党を組まれるとこちらがかなり不利だ。

ミィの治癒魔法を使えば擦り傷ぐらいなら問題無い。だけど逆に言えばその程度しか回復出来ない。

だけど遠ざかったとはいえ、近くには隊を為したあのゴブリン達が居る。

ここは掛けに出るしかないとゴブリンが向った方へ歩を進めると村があった。

しかもそこそこの大きさ。

この判断は間違いかも知れないと思った頃には、目の前からゴブリンの群れが。

何やらキーキーと言っているが、言葉が通じない。

仕方なく僕達はゴブリン達との戦闘を強いられた。


それから幾度となくギリギリの怪我をしない様にする戦いに、ゴブリン達の後方から増援が来た。

しかも何か凄い勢いで何かが転がって来る。

それに気を取られていたのか、ノーリンとカニスが炎に包まれた。

幸い捕縛系の魔法だったようで、二人に怪我は無かった。

だけどそれを放っていたのは、なんとゴブリンだった。

普通、魔物が魔法を行使するのは稀だ。理由は二つある。

一つは知性が無い事。魔物が魔法を理解する程の賢さが無い。

もう一つは魔力を使い過ぎると魔物は消滅、死亡してしまう事。

魔物が自身の命を削ってまで魔法を行使するというのは、本当に命の危険があった時に使うぐらいで、それも極単純な魔法しか使えないのが一般常識だ。

けれどあのゴブリンは、あの高度な魔法を放ったどころか、それを維持し続けている。

ああ。今考えればオードさん、ウチのルルより遥かに凄腕なんだな、と今更ながら思うよ。

二人が捕まってる間にそのルルがユキさんによって峰打ちにされていた。

風の噂で疾風と呼ばれる亜人が居ると聞いた事あるけど、まさかね?

ノーリンはフェリエさんの手刀をモロに食らったらしい。

フェリエさんって大商人、ドケチのフェリエと聞いた時は食べていた肉を吐きそうになった。

だって噂じゃ魔物被害が頻繁している道を、安全の為に遠回りした方がいいと奨められるも、勿体無いからと強行突破して伝説級の魔物を殲滅した、とか。

お腹が空いたからと怪鳥を焼き鳥にして食べた後、その怪鳥の卵でパーティーの食糧確保した、とか。

昔、砲台の弾が無くなったからと剣聖グランを砲台に詰めて飛ばした、とか。

噂だけだけど、この人相手に命があっただけとても運がいいと思ったよ。


そして僕の相手をしたミストさん。

あの時、仲間がやられて精神的に消耗していた僕は周りが見えず向かってくる全てが敵に見えていた。

恥ずかしい。本当に。

将来騎士になると誓ったのに、こんな事で取り乱してしまうなんて、僕はまだまだ未熟なんだなと痛感した。

それに加え、あの身体からは想像もつかない身のこなし。

ミミックってあんな機敏に動けるものだったっけ?


そして和解に至り食事しながらクエストを協力しないと誘われた。

断る理由なんか無いし、そもそもウチのノーリンが食糧を食い荒らしてしまって本当に申し訳ない。

いや、僕も久々のまともな食事に思っていたよりも沢山食べてしまっていたけど。

肉もそうだが、あの芋はなんだったんだろう。

見た事無い品種でしかも能力素が恐ろしい値を示していた。

多分、鑑定が無ければこの恐ろしさに気付かずにいただろう。

ミストさんに聞いたら、どうやら彼の能力で作ったものらしい。

農業系の能力なのかな?


その後明日の予定を話合った後、もうそろそろ寝ようかと思っていたら、


「ハル達は風呂には入らないのか?」

どういう意味だろう?あ、多分水浴びの事かな。

「ああ。大丈夫。さっき布を濡らして身体を拭いたから」

「ん?いやいや。風呂ってお湯を張ったあれだぞ?」

「それは分かるけど…。そもそも貴族と言ってもお風呂は贅沢品だからね。

実家を継ぐならともかく、冒険中のこんな場所でお風呂なんてそんな」

「ミストくんお湯沸かしたっスよー」

「おー、グッドタイミーング」

え?どういう事なんだ?

「じゃ、そういう事だから汗流して来たらどうだ」

「そうっスよ〜!オイラも入るっスから一緒に行こうっス!

あ、ミストくんも入らないっスか?」

「俺は川行って来るから今日は大丈夫だ」

「はーい。じゃこっちっス」


今の会話もよく分からなかったが、案内された場所に行くと岩盤に囲まれた風呂があった。

「地魔法と水魔法と火魔法の合わせ技っス!」

ドヤッとした表情で腰に手を当て胸を張るオードさん。

そもそも今サラッと三属性の魔法が使えるとか言わなかった?!

ええっ…本当にランクCなのだろうか。

お風呂は男女別々に離れた位置に作っていた事は、何か最早凄いを通り越して魔物か疑う魔力量だ。

そう言えば何か食事中にジュースのようなものを飲んでいたけど、あれってもしかして魔法薬?

いや、そんな高価な物あるわけ…


お風呂から上がるとユキさんが焚き火用に薪を切っていた、解体用ナイフで。

あれってあんな切れ味あったかな?

僕の記憶じゃあんな事したら折れると思うんだけど。


その隣ではフェリエさんがクネクネとユキさんに擦り寄っていたが、ユキさんが手伝いを求める動作をした。

直後薪を切り出した、手刀で。

ユキさんも凄いと思うけど、フェリエさんはもっと凄いと感じた。

そんな二人にミストさんはどこへと尋ねると、近くの川に行っているらしい。

何でも能力に使う水の補給との事。

ああ、農業系スキルに使うのかと思いつつ様子を見に行ったら…

川のド真ん中で口を開けたまま静止するミストさんを発見した。

全く動かないけど、ミストさんの後ろの川が干上がったかの様に川幅が狭くなっている。

ミストさんの前から来る水は全てミストさんの口へと飲み込まれていく光景を見て、

「ああ、このパーティーは常識が通じないんだな」と一人悟ってしまった。


この後、カニスとルルも同じ光景を見たのか、

「ミストさんの収納が桁違い過ぎた」

「オードさんの能力がおかしい件」

とそれぞれが落ち込んでしまったのを宥めるのに、結構掛かったのは言うまでも無いだろう。

次回からは大森林の騒乱編になります。多分。

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