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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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対話

「魔物が喋ったぁぁぁぁ」


うわぁぁぁと叫びながら遠ざかっていく。

そう言えばゴブリン達は魔力、人間種は能力素。

だから言葉が通じないんだっけか。

俺はどっちも持ってるから翻訳されるし、オードは魔物だけど前世で読み書きを覚えてる。

ユキも魔物寄りの亜人だけど、ギルドマスターと話してたところを見ると読み書きが出来るようだ。

フェリエは言わずもがな。

あれ?俺も読み書き覚えた方が良くね?

仲間外れに弱い、日本人の性である。


「まあ落ち着けって、そもそもミミック種は能力素が高い種族なんだろ?」

「ハッ」

「だから大人しく話をだな…」

「甘言で僕達を貶める気だな!そうは行くか!」


暑苦しいなーもー。

今度は懐から取り出した解体用のナイフだろう、それで斬りかかってくる。

横薙ぎに振ったそれを躱しつつ、俺は道具弾(キャノン)で”餅”を打ち放つ。


「ぐああ、なんだこれは!?動きが…くそっ!僕はこんなところで死んでしまうのかっ」

いや、それ火つければ簡単に消えるからね?無害だからね?

しゃーない、1度気絶させるか。

「スマン、頼むユキ」

こちらの意図を素早く察知し、目の前の剣士を昏倒させるユキ。

今明らかにゴスッって音が聞こえたけど。

ヤリスギヨクナイ。


フェリエが腹パンした女の子がアワアワとしながらそれを見ていたかと思えば、今度はユキに向って糾弾し始めた。

「流石は亜人ね!魔物に味方するなんて、最低で最悪な野蛮人め!」

「あら、お姉さんそういう何何だから〜って意見、好きじゃないな〜」

明らか見た目ダンディーなオッサンがお姉さんと言った事はスルーするにしても、今の意見は同感だな。

「な…あなた人間の癖に何を」


フェリエの種族は魔族だが、どうやらフェリエは何らかの魔法具でそれを人間種に鑑定される細工をしているらしい。

魔族は魔物でありながら、高度な知性と魔力、そして見た目が人間っぽいお陰で人間社会の中でも生きて行ける珍しい種族という事らしい。

鑑定後にそう語ってくれたが、それ結構大事な事じゃないのか?と問うたが、

「ミストちゃん達は約束守ってくれそうだもの〜大丈夫よ〜」とか言ってた。まあ、レベル差もあるし戦力差が酷いのでどのみち言う気は無いが。

先程の話に戻るが、幾ら人間の言葉を魔物でありながら理解出来るとは言っても、人間側からすればやはり魔物の一種だという認識らしく、アルストレア王国でも忌避されている。

その為、普段は人間らしく活動してるとの事。

……そんなんでよく商人やれるな、と感心する。


「ミストちゃん、そんな眼差しで見ないで〜。ヤケドしちゃ〜う」

今のは無しだ、こんなのに感心した俺がバカだった。


「とりあえず彼等をミストちゃんの中に放り込んじゃえば良くないかしら?」

「そうね。じゃないとオードが蒸し焼きにしちゃう」

ユキの言葉にオードの方を一瞥すると、未だに火籠(ファイアーケージ)は破られておらず、あの中絶対暑いだろうな、と思った。いやいや。

確かにあれでは中に居る人間がヤバイ。


「オード!魔法を解除したら俺の方目掛けて中の奴等を飛ばしてくれ!」

「よく分かんないけど分かったっス!

食らえ!水壁(ウォーターウォール)!」

火籠(ファイアーケージ)を一瞬にして消したかと思えば、渦潮の様な水が俺に向って来る。オイオイ。

「だがこの程度!俺の能力の敵では無い!」

そう言ってその渦潮共、成長する収納グローアップクローゼットに仕舞う。

そして竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)で素早く移動しながら、ユキが気絶させた魔法使いを仕舞い、更に槍の女の子と剣士の男の子も華麗に飲み込む。ふぅ。


「回転しながらよくそんな事出来るわね」

「ミストくんの特技っス」

「特技じゃねぇよ、固有能力だっつーの」

「お姉さんもそれ欲しいわぁ」

「私も欲しい」

「オイラもーオイラもー」

俺も正直、この能力には結構助けられているが、やっぱりオードやユキみたいに戦闘力が欲しかったなと心の中で思う俺。

その思いに突っ込みを入れる者も一人居たが、声に出していないので誰も気付かないだろう。



「すみません、若。我々では人間とは会話が出来ない故、戦闘で撤退をさせようと思っていたのですが」

「倒しちゃえば良かったんじゃないっスか?」

「それが…村の者は殆ど戦えぬ若輩者か女子供ばかりで、長期戦闘は出来ず、かと言って敵を倒せる程の戦力が無く…。

何やら大きな気配が近づいて来たので、若がお戻りになられたと思い、失礼ながら監視役だった私がお迎えに参りました次第でございます」

なるほど。確かにゴブリンリーダーらしき陰が見当たらない。

アイツなら簡単に組伏せられるだろうな。


「負傷者が居るならこれを使ってやってくれ」

「ミストちゃん」

「ん?なんだフェリエ」

「世の中そんな慈善事業じゃやっていけないわよ?」

「フン、俺は目の前に助けられる奴が居たら助けるが、死にそうな奴とかは助けない。

それに別にこれも慈善事業なんかじゃない。

オードから色々聞いたが、このゴブリン達はこの森を広範囲縄張りにしているらしい。

なら、ギルドの調査にコイツ等の力を使った方が捗るってもんだろ?」

「なるほどねぇ。無償提供する代わりに調査に協力させるのね」

「そういうこった。それなら問題無いだろ?」

そして中位回復薬を渡し、調査にも協力してくれると確約してくれた。


「さて、じゃあ中に居る奴等と話するわ」

「ミスト、手荒な真似は」

「大丈夫、心配すんな」



「くそっ!くそっ!!僕達はこんなところで…」

「ハル…」

「ここはどこですかぁ?」

「多分ミミックの腹の中だし」

「うぉぉぉぉぉ!!」

項垂れる剣士と槍の女の子、ユキに気絶させられた魔法使いっぽい女の子とオードの魔法で捕まってた女の子は、へたれた様子で座り込んでいる。

あと魔法で捕まってたもう一人の野郎が、爆弾みたいなものを投げまくっている。

別に痛くも痒くも無いが、畑とか荒らされるのはやめて欲しいな。大した被害じゃないが。


さて、鑑定で探ってもいいが、今のまま鑑定したところで抵抗(レジスト)されるだけだろうし、少し会話しなきゃダメだな。


「あーあー、テステス。聞こえるかー?」

「きゃああああ殺される!」

「落ち着け皆!」

「いやいや。話がしたいだけだって、全く…よし、代表して剣士のお前!」

「魔物風情が!ぐっ」

よく見なくても怪我が深いか。まあ、回復してもこの空間から出るのは難しいだろ。

そう思って俺は回復薬を差し出す。

「な、何の真似だ」

「いや、怪我してたら対話しにくいと思って」

「回復薬と偽り毒を盛る気だな!そうは行くか!」

何かめんどくさくなってきたな、もう全員回復してしまおう。

そう思って俺は中位回復薬を適当にぶっかけた。


「え?傷が…」

「なっ!?これは中位回復薬」

「何!中位回復薬だと?!バカな」

傷が完全に完治した様子に驚く一同。

「信じてもらえたか?」

「……いいだろう、聞いてやる」

「お前達はなんであの村を襲ったんだ?」

「そんな事を聞いてどうする、魔物風情が」

「…。別に魔物風情が何だろうが、言われて気に触る訳じゃないが、仮にも治療した俺に対して失礼じゃないのか?」

「それはそっちが勝手に襲ってきたからだ、僕達は何も悪くない」

「だからお前達がゴブリン村を襲ってるから…って話がループするだろうが!」

「フン」

「あの…」

槍の女の子が手を挙げ、申し訳無さそうにしている。

「ハル…彼は別に悪い人じゃないの。

ただ貴族だから、魔物にちょっと敏感で」

「ノーリン!こんな魔物相手に」

「でもこのミミックさん、別に私達に危害を加えようとはしてないじゃない!

さっきも傷を治してくれたし、中位回復薬なんて私達じゃ買えないような物を」

「それはこの魔物が価値を知らないだけだ」

「けど今だって私達の言い合いにも口を出さずに何もせず待ってくれてるし、そもそも私達を食べる気なら飲み込まれた瞬間にそうしているでしょ?」

「ぐっ…た、確かに、そう、だな。少し冷静さを欠いていたようだ。済まない、ノーリン」

槍の女の子ことノーリンは笑顔で頷く。


「先程は済まない。少し気が動転していた。

魔物であるはずの君が僕達との対話を望む時点で、君が転生者の類いかも知れない点を見逃していた」

「あー、やっぱり喋れる魔物ってそういう認識なのか」

「魔族ならば人間の言葉を話せるが。ミミックも言葉が分かるだけで喋れたりはしない。となると答えは1つ。君が転生者である可能性が高いと判断した。

先程は魔物だ何だと喚き散らし、本当に申し訳無かった」

見事な土下座を見て、何か申し訳なくなる俺。別にそんな深々と謝られる様な事をした訳じゃないんだが。

「まあ、なんだ。別に謝ってほしかった訳じゃないんだ。

ただ、なんでゴブリン村を襲ったのか、その経緯を聞きたくてな」

「ああ、それは…」



話を纏めるとだ。

彼等は学園の方針で仮入部みたいなノリでギルドに入れさせられ、そこでクエストを受けた。

この森へとやって来た一行は、植物の採取や魔物の生息域を入念に調べていた。

その時にゴブリンがパーティーを組んで行動していたと。

別にゴブリンが集団で居る事は珍しくないそうだが、この森の魔物はかなり強い(らしい)のに弱いゴブリン達が居るのはおかしい。

泳がせて跡をつけるとそこには村が。

リーダーと思しき奴が居ない時を見計らい、村の大きさを調査していたところ、辺りの散策をしていたゴブリン(多分オルディンだな)に遭遇。

仕方なく戦闘に至った、と。

てか、ギルドの依頼って俺達が受けた調査と同じ奴じゃん。

俺達が受けた依頼(クエスト)は誰でも、複数募集というもの。

その為、こういう調査の場合、現地で同じクエストを受けたパーティーと鉢合わせする事がある。

その場合、大体は協力する事が多い。むしろ殆どそうだろう。

受けた時期にバラつきがある為、協力する際には互いの情報交換が必要になるが。

まあ、話を聞いた限りでは誰が悪いって訳でもないし、コイツ等が元々襲う目的じゃないってのが聞けて良かったと思う。


「あー、そのクエスト俺達のパーティーも受けたやつだと思う。グラロマニカ大森林調査ってやつだろ?」

「えっ。君達、ギルドメンバーだったのかい?」

「ああ、アルストレアのグランって奴から受けたんだが」

「グラン!?剣聖グラン・ツェルトか!?」

何それ初耳。何あのグラちゃん、凄い人なの?



「なぁ、フェリエ」

外で待機しているメンバーは優雅に紅茶を飲んでいた。

どこから出したそれ。

「あら、アタシの能力見たんじゃなかったの?」

「いや、大収納だろ?いやいや、それはいいんだが。

グラちゃんって剣聖なの?」

「あら、あの子達とは話が進んでいるようね。

まあ昔の話だけど、各国旅をしていた時にちょっとね」

「やっぱり知り合いって関係じゃないのか」

「ふふっ、腐れ縁って奴よ」

「なるほど」



「あー、その剣聖で合ってるらしい」

「なるほど…。同じギルドメンバー、しかも仮の我々と違い本職の方々に手を出してしまったとなれば、我々は権限剥奪…最悪打ち首に」

「待て待て待て待て。別に俺達は怪我とかしてないし、そもそもまだなって一週間ぐらいだから、な?」

「しかしなって一週間でこの森の調査とは…君達のランクは幾つあるのか…」

「ん?Cだけど」

それを聞いた途端、彼等が叫ぶ。


「「「「「成り立てでランクCなんてあり得ないだろ!!!」」」」」

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