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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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ゴブリン村の喧騒

訓練やら試し打ちやら魔法薬の生産増加に対応しながらも、目的地であるオードの拠点近くまで戻ってきた俺達。

別段用事は無いのだが、今後の事も話したいし、一番慣れ親しんだ場所がいいと、この場所を選んだのである。


「ここだよな?」

「ここのはずっスけど…」


拠点は小川の近く、ノーデンス大聖洞から歩いて20分ぐらいの場所。

不自然に草木が倒れているし、空き地っぽいスペースもある。

うん、ここで合ってるはずなんだが。


「見事に何も無いな」

「オイラの拠点が…」


何故か掘っ建て小屋よりも廃屋化していた拠点が、綺麗さっぱり無くなっていた。


「普通に考えて自然災害とか?」

ユキがそう言ったが、それは違うと思う。

自然災害であるならば、木片ぐらいは残ってそうなものであるが、目の前には本当に何も残されて無かったのだ。

なので俺は首(なんてものは無いが気分的に)を振った。


「じゃ盗賊にでもやられたんじゃないかしら?」

今度はフェリエがそう言うのだが、やっぱりそれも違うと思った。

ここまで全て持って行くっていうのは相当な手間だし、なにより盗る様な物は無かったはず。

確か魔物を解体する為の錆びたナイフ、薬草が少し、ベッドと言い張る干草とシーツ、あとは着替えと呼べるかも分からないボロい布切れ、そんな物ぐらいしか無かったと思う。

それでも本人には思い出の品であり、大切な拠点なのだが、それが跡形もなく無くなっていた。



「若、お戻りになられましたか!」


その時、背後から初老の男の声がした。

振り返るとそこには、あの廃坑に居たゴブリンの一人が立っていた。


「オルディン!久しぶりっスね!」

「ええ、若。廃坑の件、誠に申し訳ございませんでした」


何かオルディンって橋の名前かと思った。いやいや。

どうやら廃坑戦において、伝令役を務めているというオルディンと呼ばれる年老いたゴブリンがそこには居た。

初老と言ってもゴブリンの寿命からすれば、もう然程長くないだろう。

それぐらいの年齢の者が伝令役を担っているとは…。

大丈夫なのか、ゴブリン族。


「若、お戻りになられてすぐではございますが、少し揉め事がございまして」


何でも、ゴブリンの村で人間の子供が暴れているというフワッとした情報。

いやそもそも、手の平ドリルか!と思わせる程の手の平返しである。

現場を見ていた者からすれば、若といきなり呼ぶのは…とか思うが、ここに来るまでに称号が発現してたところを見るに、別にいきなりでは無いのだが。

一応、リーダーに認められたというのは事実なので、若と呼ばれてても違和感は無い。ブフッ。


「ミストくん、何吹き出してるんスか?」

「残念だけどミストに同意見」

「ええ?ユキちゃんまで?!」

「アンタ達、仲良いのね…」

呆れるオッサン、達観した少女、慌てるゴブリン、そして吹き出す俺。

うむ。いつも通りだな。


「とりあえずそのゴブリンの村に行こうか。俺達も様子見に行くつもりだったし」


そういう訳で俺達一行はゴブリンの村へと向かう事にした。

オード以外はゴブリンの村に行った事は無いという。

まあ、俺もオードから聞いた話しか知らないから、ちょっと楽しみではある。

魔物(って言っても亜人の部類)の町並みがどんな感じなのか興味があるが、オードの拠点があれだったからな。

まあ、あれはオード一人で作ったからあんな感じだったってだけで、きっと素敵な村に違いない。そうだ、そう思おう。


「見えてまいりました、あれが我等の村でございます」



……うん。まあ分かっていたんだけどね?

ほら、なんていうか期待しちゃうじゃん?


予想通り、オードの拠点が乱立したような家屋。

家っていうよりただ柱に葉っぱを被せてテントっぽくしました、みたいな感じ。

ゴブリンの身長が低いからいいものの、フェリエとかユキでは住めないだろう。


「これが村?」

「まあ、ゴブリンちゃんの村だからこんなものよ〜」

ユキとフェリエがそれぞれ感想を述べたが、俺とあんまり変わらないようだ。

「んで、その人間が暴れているってのは…あそこか」


俺達が来た方向のほぼ反対側で、何やらゴブリン達が集まっている。

その先をよく見ると、少年少女の計5人がゴブリン達と戦闘をしていた。


「若、申し訳ございませんがお力を貸して頂けませんか」

「うーん、ミストくんどう思うっスか?」

「俺に振るなよ、若」

「あー!今めっちゃバカにしたっスね!」

「してないしてない。まあ仲違いしてたとはいえ和解もした事だし、とりあえず止めに入るか」

「ぶー」

「そこ、ぶーで返事しない」

「分かったっス」

「ユキもそれでいいか?」

「大丈夫」

「あら、アタシには何も聞いてくれないのね」

フェリエは護衛なので勝手について来るだろ。

「フェリエちゃん、心読めるからって扱いがぞ〜んざーい」

「よし、皆行くぞ」





「ゴブリン達は集団での戦闘に長けている。

皆、1体ずつ戦闘に持ち込むんだ!」

「ええ!」

「オーライ!」

「ふぇぇ…」

「分かったし!」


どうやらあれが向こうのリーダーだろうか。

くすんだ金髪に長剣、どうやら剣士のようだ。

顔立ちはまあ何というか、前世の俺親近感を覚えるとだけ言っておこう。

とりあえず戦闘を中断させない事には話も出来ないだろう。

こういう時はあれだな。


「オード、ユキ!後ろの3人を抑えてくれ!」

後ろの3人とは。

男の子が投擲だろうか?何か爆発物投げてる奴がいる。

女の子が杖、おそらく魔法で二人。


「OKっス!」

「分かった」

「フェリエは俺と前衛を止めるぞ!フェリエは槍の女の子を、俺はあのリーダーっぽい奴を相手する」

「ふふふ、分かったわ〜チュッ」

投げキッスについてはスルーする。


「ハル!ゴブリン達の後ろから援軍が!」

「分かってる!くそっ!ゴブリン達だけでもキツイってのに!

ここの地方の魔物はどうなってる!」

「ゴブリンの皆!左右に退くっス!」

「なっ魔法だと?!馬鹿な」

「行っけ〜!火籠(ファイアーケージ)!!」

「ぐああああ……あ?」


あの魔法、確か捕獲用の魔法だったか。

あれでは爆発物は使えないだろうし、魔法使いも残り一人…ってユキが静かに気絶させてた。ユキさん流石です。


「うふふ、女の子がそんな物騒な物使っちゃって〜」

「これも魔物!?いえ、そんな事はいい。

魔物に与する俗物め!覚悟しなさい!」

女の子が槍でフェリエを貫い、て、無いわ。手刀で受け止めてた。どういう事なの。

「あら、ごめんあそばせ」

「がっ」

前のめりに倒れる女の子、酷ぇ。

今よく見えなかったが腹パンしてなかったか?

もう少し手加減してやれよ。


「貴様等ぁぁぁぁ!!よくも僕の仲間を!」

そして正面から向ってくる男の子。

歳は高校生ぐらいかな?近くで見ると少年じゃなくて青年だな。

でも真正面から攻撃ってのはどうかと思うぞ?


キィン

ザクッ


「なっ」

俺は竜巻頭突き(サイクロンバッシュ)で剣を弾き落とす。

回転しながら地面へと刺さる剣。


「で、これで話を聞いてくれるだろうか」

「え、ま」

「絵馬?」

「魔物が喋ったぁぁぁぁ」

月末は忙しくて投稿が遅くなりました。

申し訳ございませんでした。

仕事の方が一段落着いたので、投稿期間が少し早められるかと思います。…多分。

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