新たな仲間?いいえ、オカマです。
ミスト達を見送った少し後。
今日は書類整理も済んだし、偶には外に見回りに行くのもいいなと、そう思っていた時、扉を軽くノックする音が聞こえる。
部下ならばそのまま入ってくるはずだが、ノックをした後一向に中に入って来ようとしない。
軽く殺気を込め、剣に手を掛けながら扉を睨み、
「誰だ」
短く、淡々と発したその言葉に、
「あら、あなたにそんな風に言われる筋合いは無いと思ったのだけど?」
扉をガチャリと開けて入ってきたのは、
「愛しのマイハニーフェリエちゃんだった」
「変なナレーション入れるんじゃないわよ」
「エヘッ」
「全く、昔からアンタは…」
肩を竦め、頭をブンブンと揺らすフェリエ。
それを見て微笑むギルドマスター・グラン。
「で。今日は大商人様が何の御用事で?」
「しらばっくれるんじゃないわよ」
「と言うと?」
「あのミミックの事よ」
「ああー!ボクのラヴレターは受け取ってくれたかい?」
満面の笑みで茶化そうとするグランだったが、フェリエの顔つきは何時になく真剣だった。
「あのミミック、転生者だって言ってたのよね?」
「書状にも載せた通りだよ。
彼は自身を転生者だと思っているようだが、鑑定した時にそれが出ない。
つまりは何らかの方法で異世界から渡ってきた可能性が高い」
「……あのミミックを調べろって聞こえるわね」
「やっぱりダメかい?魔物と一緒に居ると知れば国王を裏切る事になるしね」
「ふんっ。あのバカはもう、アタシ達の事なんて見えてないわよ」
「だけどキミはどうすれば彼を元に戻せるかを探っている」
「流石ギルドマスター様は情報がお早いですわね」
「いえいえ、滅相もない」
「あのバカも、パーティーを組んでた頃は気さくで優しくてアタシの憧れだった。
けれど、何があんな風に変えちゃったのかしらね」
「分からない。ボクも調べてはいるんだけどね」
「アンタはサボってるだけでしょ」
「アチャー、痛いとこ突くねー。
部下が有能だと上司は哀しいもんですよ」
「相変わらずね」
「で、どうだい。調査に赴いては」
「それ、ちゃんと報酬出るんでしょうね?」
「ギルドを通さない依頼になる。
だから思っているよりかは多い方だと思う」
「そ。ならいいわ、受けてあげる」
「流石はマイハニー」
「アンタもそういう所が無ければ頼れるのにね」
照れ屋めー、と言うグランにチョップを食らわすフェリエ。
痛たと頭を擦りながらも、その顔にはおちゃらけた雰囲気は感じられない。
「何時も悪いな」
「いいわよ、ギルドマスターともなれば自由行動が難しいものね」
「その点、商人を羨ましく思うよ」
「フェリエ、気付いているとは思うが彼らの仲間の亜人の子は」
「大丈夫よ、解ってる。アタシもそこまで馬鹿じゃないわ」
「苦労を掛ける」
「依頼は彼らの監視、それとあのバカの傀儡が何の命令を受けているかを探る、でいいのね?」
「ああ」
「報酬たんまり用意してなさい、この大商人フェリエを動かすのだからね」
「ははっ。元パーティーのよしみでまけてくれると嬉しいんだがな」
「それは嫌ね。ああ、でも、数日後良いものをギルド宛に送ってあるからそれで我慢なさい」
「お前の良いものって禄な物じゃ…」
フェリエはギルドを後にし、急いで検問所へと向ったのであった。
そして現在。
「やーん、ミストちゃん、オードちゃん、ユキちゃん久しぶり〜!」
検問所へと先回りに成功し、三人を出迎えるフェリエ。
ミストとユキは微妙な感じであるがオードは手を振ってくれている。
どうやって同行するかは既に決めてある。
後は運次第だが念の為、固有能力《激運》を発動し相対するのであった。
検問所の方を見ると、厳ついオッサンがオネェ言葉で叫んでいる。
ああ、アイツか。
商館の主、フェリエである。
何故3日前程に別れたはずのフェリエが、検問所の方で待ち伏せているのか。
元々怪しい奴だったが、更に俺から絞ろうとでもしてるのだろうか。
オードが手を振って応えているが、正直警戒心が働いている。
俺を呼んだって事は、少なからず用があって呼んでいるのは解る。
だが理由が不明瞭だ。
とにかく話してみてからにしよう。
どうせ俺の頭脳では先にあれこれ考えた方が失敗しやすいのは分かり切った事だしな。うんうん。
検問所に近付いた俺達にフェリエが近寄ってくる。
その乙女ですよ、的な腕を曲げて内股で走ってくる姿はやめて欲しい。
オッサンがやると本気で引く。
「あら、相変わらず酷い思われ様ね」
「あら、相変わらず酷い能力だな、それ」
俺は相手に合わせて返答する。
「フェリエさん、お久しぶりです。
先日は回復薬を買って頂き有難うございました。
また今後もご贔屓にして頂ければ幸いです」
「もー、ユキちゃん固いわねー。
でもそんなユキちゃん、かーわーいーいー」
少女に抱きつくオッサン。
世界が世界なら、時代が時代ならアウトである。
「ユキちゃんから離れるっス!」
「あら、オードちゃんも抱きついて欲しいの?」
「い、いや、それは遠慮するっス!」
「茶番はいい。一体何の用件だ?」
「あら、グランから聞いてないの?」
「ん?」
「今回の調査はギルドが未調査だから、ギルドから護衛が付くって」
勿論大嘘である。
だが、ギルドメンバーでありそこそこの経験を持つユキならば、そういう事もあるだろうと受け入れると踏んでいた。
実際ユキにはかなり効果的だったようで。
「そうなんですか」
「そうなのよー、アタシも急で困っちゃうわー」
クネクネと身を捩らせるオッサンの図。醜いものである。
「でも商館任されてる程なんだろ?そっちはいいのか?
それにギルドからって事はメンバーなのか?」
「商館は助手兼可愛いミッちゃんにお願いしてきたわ。
商人になってからはギルドの依頼は殆どしてないけれど、これでもランクAなのよ〜ん」
ランクA、相当上位の魔物であっても即時殲滅出来る、そんなランクの護衛。
明らかにおかしい。
フェリエが付いたのもそうだが、ただの調査任務、しかも期限が短い訳でもない。
つまり、魔物が大量発生している等の不確定要素が絡んでいるかも知れない、という意味の護衛だと初めは思った。
だが、受けた時にそんな事は聞いてない。
例え未調査の依頼であっても、事前に依頼内容は説明を受けている。
つまり嘘なのは明らかであり、それを隠す気が無い。
しかも相手は思考を読む能力を持っている。
俺が嘘だと気付いているのは顔つきで分かる。
だが俺の方を見ようとはせず、視線はユキの方へと向っている。
……つまりはユキの監視が狙いか。
ギルドマスターもユキを気にしていたし、ユキが国王と繋がっているだろうとは思っている。
と言う事は、フェリエはギルドマスターからユキの監視を頼まれた可能性が一番高い。
次いで俺をだまくらかしてアイテムを根こそぎ、って辺りだろうか。
いや、それは無いか。めっちゃ不機嫌な顔をされた。
ともかく、監視するのは構わないが、一応仲間だ。
手出ししないでもらいたい。
そう思っているとフェリエはこちらを少し見て頷く。
その能力を切れとは思うが、念話が出来ない俺には都合がいい。
いや、そもそも勢いで飲み込めば良かったんじゃ、とは思ったが結果オーライである。
「なるほどな、じゃあよろしく。
自己紹介するのも面倒だし、鑑定使わせて貰っても大丈夫か?」
「え」
「なんだよ、えっ、て」
「いや、確かに派遣で来た訳だし、戦力確認って目的だと思うけれど。
乙女を鑑定するなんて、ミストちゃんエッチねぇ」
「誰もオッサンを好き好んで鑑定したいと思わねぇよ。
単純に戦力把握と信用出来るかどうか、って事だ」
「あら、アタシそんなに怪しいかしら」
「普通に考えて怪しいだろ。そういう意味でも、鑑定で手の内を明かすなら一応信用出来る。
逆に隠す理由があるのか?
別のパーティーで仕事してる奴なら、自身の能力を隠したいとは思うかも知れないが、本職は商人なんだろ?
なら、能力を隠すよりも手の内見せて信用を得た方が、商人的には得になるんじゃないか」
「別に隠したい訳じゃないわ。
けれども、アタシだけが能力を見せる事は不公平じゃなくて?」
「勿論そっちが見せるなら、こっちも見せるさ。
どの道、俺の鑑定は文字通り、手の内を見せる事になるんだしな」
「………はぁ、分かったわ。
信用してもらう為なら仕方ないわね」
「了解を得た所で。じゃ飲み込むぞー」
「は?」
フェリエが突っ込む間もなく、ミストの腹の中へと誘われる。
一瞬視界が暗くなるが、直ぐに目の前に広がる謎空間に目が行く。
本来ならばここで「いきなり何するのよ!」などの糾弾をしている所だろうが、目の前のそれに目を奪われていた。
目の前に広がるは一面の畑。
その畑の草は全て薬草ヒイラ草である。
そう、最近ようやく大量生産のサイクルが出来ていた薬草畑である。
商人であり冒険者でもあったフェリエはその畑に食いついていた。
薬草の栽培は極々限られた地域でしか出来ず、しかも質もバラバラである。
だがフェリエが審美眼を発動すると、全てが高品質の薬草。
顔面蒼白であった。
確かに自分に売ってきた回復薬は、相当な質を誇っていたが…。
まさかそれをこのミミック一人だけで作り上げているのかと思うと、何も言葉が出て来ない。
しかもこの謎空間の広さもおかしかった。
空間魔法や収納系の能力は、冒険者ならスクロールを買ってでも欲しい代物である。
冒険に行く際、食糧や水、装備等、結構な重装備をしなくてはいけないところ、収納系の能力なり魔法さえあれば、その負担がグッと減る。
ユキやフェリエも勿論持っており、必要最低限の回復薬や食糧を入れている。
オードは魔法で水を補える他、食糧は現地調達が主なので手持ちが無いのは分かる。
だがこのミミックは収納容量が桁違い、どころか畑を作って薬草栽培までしており、フェリエは顔面蒼白になりながらも畑の状態を興味津々に観察していたのだった。
体内にフェリエを入れたミスト。
何か中で畑の薬草を引っこ抜いたりしているな。
そのラインはまだ育ちきってないから抜かないで欲しいが、別に数百株抜かれたとしても特に問題は無いな、とスルーしていた。
まずは鑑定である。
向こう側は何故か鑑定を仕掛けて来ないが、何か変な事でもあったんだろうか?
まあ、いきなり別空間に飛ばされたら戸惑うか。
そのうち慣れるだろ、と詳細鑑定を発動した。
個体名:フェリエ・リエール Lv.55
真名:フェリエ・リエール 転生者
種族:夢魔
属性:光、闇
固定称号:アルストリアの英雄
変動称号:ドケチ
職業:大商人
固有能力:Lv.6
思考把握
審美眼
万里眼
激運
商魂
能力:
身体強化 Lv.30
身体狂化 Lv.99
ドレイン Lv.32
暗視 Lv.30
幻影 Lv.45
浮遊 Lv.50
英雄補正
状態異常無効
大収納 Lv.99
技量開示
魔法:
光魔法 Lv.6
光弾
拡散光弾
祝福の光
退ける光
大いなる祝福
裁きの閃光
大魔を祓う煌めき
闇魔法 Lv.4
闇弾
闇炎
阻む霧
重力弾
久々のドン引きだった。
何これ強過ぎるんですけど?!
オード以上のレベルとか、どんだけだよ!
というか、護衛じゃなくて最早主力だよこれ。
しかも人間かと思ったら悪魔じゃねぇか!
能力の中にレベル99とかある時点で普通じゃねぇ!
自分もなかなかチートじゃないかな?とか思っていたがそんな事は無かった。
上には上が居るもんだ。そう悟りを開いたのだった。
毎日投稿とは(´・ω・`)?
過去の自分にビンタをする杜邪の前に立ちはだかる1つの影。
奴は仕事と残業と言う強大な敵であった。
善戦する杜邪だが、趣味だからと言い訳し小説を書かない日々。
どうにかして毎日投稿するのだと意気込む。
次回、杜邪死す。




