鑑定屋
商館を後にした俺達は鑑定屋に向かっていた。
市場から鑑定屋は真逆の方向にあるらしく、目立たない様にユキの案内の下、路地裏をくぐり抜けていた。
流石は魔物に厳しい国。
裏道でチンピラに絡まれる絡まれる。
中には騎士っぽい奴も居て「成敗!」とか「正義執行!」とか叫んで斬りかかって来る。
その全てを峰打ちで気絶させるユキの手際もどうなんだ。
そんなミニイベントもやりつつ鑑定屋に到着した。
なんて言うか、外観はお化け屋敷みたいな。
「ユキ、ここで合ってるんだよな?」
「1度来た事あるだけだけど、多分」
黒い屋根に煤けた木造の建物で、魔女でも居るんじゃって雰囲気がある。
おいオード。俺を盾にするんじゃねぇ。
「まあとりあえず俺が先頭で入るから、な」
「流石ミストくんは頼りになるっスね!」
「オードくん、足震えてる」
「武者震いっス!」
「漏らすなよー」
何か後ろで俺をポカポカ叩く音が聞こえるが気にしない。
中もなんて言うのか、感想にしにくい。
辺り一面に本やら植物が散乱している。
所謂、汚部屋って奴だな。
客の気配を感じたのか、奥から人影が迫ってくるのが見えた。
「ヒッヒッヒッヒッヒ…ブワァァァァ」
「キャァァァァァ!!」
お婆さんが暗闇から脅かしてきたが、オード以外無表情である。
オードの女子力が増したのはほっといて。
「アンタが鑑定屋って奴か?」
「そうだよ、ヒッヒッヒッヒッヒ」
オードをギラリと睨むその眼光に、オードは思わず股間から水魔法を発動する。
うん、俺の語彙力だとこの程度が限界だ。
「すいませんマゼンダさん、仲間が粗相を」
ユキが謝るが粗相した本人は完全に俺の中に引き篭もっている。
中に入るのは構わないが、せめて洪水を止めてから入って欲しいもんだ。
「魔物にしては度胸が無い子だねぇ」
マゼンダと言ったか、そのお婆さんは台所へ行きお茶を持ってやってくる。
「魔物が鑑定に来るなんて珍しいねぇ。
もしかして魔物堕ちかい?」
「まあ、似たようなもんだな」
「そうかい」
そう言ってお茶をズズっと飲むマゼンダさん。
とりあえず俺もお茶を貰う。
味はしないがアイテムを増やすのは大事だ。
「アンタは魔物に嫌悪感みたいなものを示さないんだな」
道中、殆どの人間が俺達を避けるか絡むかして来たんだが、このお婆さんは普段通りという感じ。
「別に魔物だからって好き嫌いがある訳じゃないよ。
それにそこのお嬢ちゃんとは、何度か市場で世間話する仲さ。
魔物だからどうのこうの言うのは、勇者教とかいうバカが出来た辺りの時代の人間さね」
成程。つまりギルドマスターやフェリエは結構歳食ってるのか。
いや、あの人達は一応トップの人間みたいだし、表立っては出さないか。
「ところで鑑定するのはいいけれど、お金は持っているのかい?」
「ああ、金貨3000枚程」
あ、お婆さんが椅子から転げ落ちた。
「じゃあそれだけのお金が有れば、ユキちゃんの」
と言いかけてユキが首を横に振ったのを見て悟った様に口を噤む。
「まあ、まだ言えないならいいさね。
だけどちゃんと話してやるんだよ?」
ユキは頷く。何かあるとは思っているけど、このお婆さんには話している。
って事は信用出来ると思う。
『うう…でもやっぱり怖いっスよ〜』
『お前なぁ。出て来てくれないと鑑定して貰えないだろ?』
ユキとお婆さんとの会話中、俺はずっとオードの説得をしている。
念話のスキルだが、これは別に発動しなくても俺自身念話を元々持っている。
だがスキルと元々の能力では微妙な違いがある。
一番最初の頃は相手がオードだけだったので気づく事が出来なかったのだが、スキルを使わない念話だと中に入ってる奴全員に声が届く。
対してスキルの念話は個別に話が出来るという違いだ。
脱線したが、また要は念話にてオードを呼び出してる最中なのだ。
本人さえ出ようと思えば出られる事が最近分かったが、出ないと思えば何故かロックが掛かる。
お前、俺のアイテム化してんじゃねえよ。
ユキとマゼンダさんの話終わったぞ?
『このまま鑑定してと言って下さいっスー』
『オーケーオーケー、じゃ頭ガードしてろよ』
『それはダメっスー』
道具弾!
壁に勢いよく顔面強打するオード。
んー、飛ばす時に上下の把握が足りないのか。
要練習だな。
「酷いっス!痛いっス!」
「マゼンダさん、オードから先に見てやってくれ」
「このゴブリンさんの名前かい?」
「ああ。そういや名乗って無かったな。俺は」
「大丈夫よ、なんてったって鑑定屋だからねぇ。
ヒーッヒッヒッヒッヒ」
「ヒィィィィ」
あの笑い声はわざとやってるな。
「ところで鑑定屋って具体的にはどうなるんだ?」
「かなり曖昧な質問ねぇ。お嬢ちゃんから聞かなかったのかい?」
ユキの方を見ると、目線を逸らされる。
「何か大まかにレベルが見られる様になる、ってぐらいしか知らないんだが」
「ああ。そういう事ねぇ」
マゼンダさんが何やら察した様だ。
「大丈夫よ、体重とかは見れない様にしてあげるから」
「え?体重?見れるってどういう事だ?」
「本当に具体的な内容を教えずに来たのねぇ」
「…私が鑑定して貰ったのが7歳ぐらいの時だったので、詳しくはあまり覚えてなくて」
「はいはい、そういう事にしておきましょうねぇ」
「マゼンダさん、イジワル」
「ホホホ」
「結局どういう事なんだ」
「鑑定屋の仕事は二つあるのよ。
1つは対象者への鑑定、これがさっき言ってたレベルを表示出来る様になる特別な鑑定。
固有能力《技量開示》という能力で、対象者の現在のレベルを暴き出す事が出来るのよ」
「へぇ、鑑定って名前じゃないんだな」
「なかなか珍しいスキルなのよ。
そしてもう1つは仲間のステータスを表示出来る様にする事」
「それは鑑定無しでって事か?」
「ええ。鑑定系のスキルを持っていなくとも、仲間と認識していれば、その人のステータスを表示出来るというものよ」
「おおっ、鑑定屋すげぇな。それも鑑定系のスキルなのか?」
「いいえ。能力《贈呈者》で、私の《技量開示》を対象者に習得させるのよ。
劣化しての習得だから、鑑定そのものは出来ないでしょうけど」
「何か思ってたより凄かった。……ん?
て事はそのステータスって」
「勿論、身長や体重、お胸を大きさまで分かっちゃうから、女性冒険者にはプロテクトを掛けるわよー。
良かったわね、お嬢ちゃん」
ユキが赤面しながら膨れている。
オード、可愛いって気持ちが顔に出てるぞ。
「まあ、あんまり苛めないでやってくれ」
「あら、ミミックさんは優しいのね」
「いや、正直早くしてくれないと、ユキが俺とオードを投げ飛ばしかねん」
既にオードは投げ飛ばされてるしな。南無南無。
「部屋の中がボロボロねぇ」
「すまないな、修理代も出すよ」
「魔物堕ちにしては礼儀があるだけいいと思うわぁ。
じゃ本来は金貨3枚取るところだけど、お嬢ちゃんの元気な姿も見られた事だし、2人で金貨5枚にしてあげるわよー」
「いいのか?」
「いいのいいのー。
どうせ鑑定屋なんて年に10人来ればいい方なんだから〜」
ああ、1度来たら来なくなるからか。
それとも値段が高いからだろうか。
だから外観が…いや、何か思考読まれてそうだな。
前例があるしな。今更だろうが。
金貨を5枚渡すとオードの方を向き、
「じゃオードさん、ね。行くわよーヒッヒッヒッヒッヒ」
「ヒィィィィィィィ」
戦いになったらシャンとするのに。
何故オフの時はこうなのか。
「はい、終わったわよー」
「え?もうっスか?」
「何か水晶出して発光するイメージだった」
「鑑定屋に変なイメージ持たないで欲しいわぁ」
「どうだ?オード」
「お?おおおおお!!
何か見た事無いスキルがあるっス!!」
「ん?何か覚えたのか?」
「いや、何か…凄いっス!」
うん、オードの説明はフィーリングだからよー分からん。
「じゃあ俺もお願いします」
「もー、お婆ちゃん遣いが荒いわー。休ませて欲しいのにー」
「よくそんな商売で食べていけるな」
「マゼンダさん、貯蓄はいっぱいあるのよぉ」
「いや、そんなのいいんで」
「マゼンダさん、お願いします」
「お嬢ちゃんに急かされたんじゃ、しょうがないわねぇ。
はい、技量開示」
目の前にリストのような物が表示される。
個体名:ミスト Lv.0
真名:無し
種族:ミミック
属性:無
固定称号:コレクター
変動称号:冷蔵庫
職業:盾
固有能力:Lv.3
詳細鑑定
成長する収納
薬効調合師
能力:
竜巻頭突きLv.21
完全擬態 Lv.3
一括整理 Lv.5
進化予測 Lv.7
念話 Lv.4
毒耐性 Lv.1
酸耐性 Lv.1
雷無効
魅了無効
魂魄無効
回避補正
命中補正
技量開示
魔法:
無属性 Lv.2
道具弾
爆裂道具弾
拡散道具弾
すげぇ。今まで見る事が出来なかったレベルが表示されている。
てか、何か知らない能力あるんだが。
今はそんな事よりオードの方を見る。
オードも俺の方を見てふむふむ、みたいな顔をしている。
個体名:オード Lv.17
真名:表示出来ません
種族:ゴブリン 転生者
属性:火、水、風、地、闇
固定称号:ゴブリン族の若
変動称号:怖がり
職業:魔法戦士
固有能力:Lv.3
魔力感知
幸運
能力:
バッシュ Lv.3
初級防御Lv.5
不幸せな踊り Lv.9
ドレイン Lv.2
逃走補正
感知補正
魔力上昇補正
技量開示
魔法:
火属性 Lv.3
火弾
火壁
火籠
火劍
風属性 Lv.2
風弾
風壁
水属性 Lv.2
水弾
水壁
地属性 Lv.2
地弾
地璧
闇属性 Lv.2
毒弾
酸弾
オードの方にも見た事無いスキルや魔法がある。
というか改めて見ると魔法多いな畜生。
「何か俺が鑑定した時では見た事無いスキルがいくつかあるんだが」
「ああ、ミミックさんは鑑定持ちだったねぇ。
だけど鑑定も万能じゃない。
いや、万能鑑定というスキルが本当の万能なんだけど、その他の鑑定は特定の条件でしか発動しないのさね。
例えばミミックさんのそれは自分が理解、又は進化などで取ったスキルしか表示されない。
知らない能力って事は理解していなかったんじゃないかい?」
確かに…。
てか魅了無効とか魂魄無効とか何だよ。
いや。その辺りは詳細鑑定を使えば効果は出るか。
あと世界の意思も進化や理解は伝えてくれるらしいが、元々持ってたり理解に至らなかった物は教えてくれない模様。
そういう意味でも鑑定屋に来る必要があるとの事。
「真名ってのはどういう事だ?」
「ミミックさんには真名が無かったようだけど。
これは普段呼ばれている略称では無い、自分の本当の名前の事さ」
ああ、ニックネームと本名みたいな感覚か。
「真名があるのと無いのではどう違う?」
「そうさねぇ。
魔法使いが真名を呪文に組み込む事で、魔法が強くなるとか何とか」
「真名は自身の魂の象徴っス!
魔法でそれを呼び覚まして威力を上げる事が出来るんス!」
ようやく回復したのか、それとも魔法の事だからなのか。
解説ありがとう、だからそろそろ股間拭こうか。
「ヒッヒッヒッヒッヒ、物識りねぇ。食べちゃいたいわぁ」
「ヒィィィィ助けてっス、ミストくんッ」
口を頑なに閉じてたら盾にされた。
んで固有称号ってのが、世界の意思が認めた効果付きの称号。
変動称号ってのは風聞で付く効果の無い称号。
この変動称号を大量に持つと、”コレクター”という固定称号が手に入る様だ。
その際も世界の意思は何も言って来ない。
世界の意思さん、重要な事はスルーしないで欲しいな。
因みに”コレクター”の効果は、アイテムを集める際、魔素又は能力素が低い物が出にくくなる、という地味だけど便利シリーズだった。
俺の能力、地味だけど…系が多くて困る。
もっと派手な技が欲しい。
そういう意味では魔法に何やら追加されている奴が気になる。
が、今は置いておく。
楽しみは取っておくものだ。
後でオードやユキとスキルの見せ合いをしながら、練習をするという日課もあるしな。
他、固有能力は個々にレベルが付くのでは無く、固有能力自体のレベルが上がり進化もする。
能力はレベル10毎に進化、補正にはレベルが無い、耐性はレベル10にした状態でレベルを上げると無効に進化する。
魔法は属性毎にレベル上がり、レベル10で進化。
レベル毎に技のレパートリーが増えていくそうだ。
予想以上にボリューミィなお陰でよく分からん。
一応、体内でメモを取っているが。
あと、一番何よりもツッコミたい事がある。
むしろ謎度が増した気がする。
「俺、何でLv.0なんだ?」
間が空いてすみません。
眠魔が集団で襲ってきてました。
オードの能力に技量開示が入って無かった。
後でまた改稿する可能性。




