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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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交渉

「んじゃ早速なんだけど何か割の良さそうなクエストをやりたいな」


せっかくギルドメンバーになったのだから、ここは一発ドカーンと目立ちたい。

だがグラちゃんが済まなそうな顔をしている。

「先程の試験では御二方の実力は把握致しました。

ですが、まだメンバーに成り立ての者に大きな仕事を任せるには、信頼性が無いのです」

「つまり、いきなりランクCのクエストを受けようとしても、実績が無いから斡旋出来ない、と」

「お話が早くて助かります」


ふむ。まあ普通に考えれば当然か。

物凄く腕のいい職人が入ったとしても、実績も貢献も無い奴にデカイ仕事は任せられないか。


「んじゃ、何かサクッと信頼が得られそうな仕事を斡旋してほしい」

自分で言っててどうなんだそれ?とは思うが、俺も有名になりたい。

別に意味は無いけれど、勇者以外でも有名にはなれる。

まあ、業界じゃ有名、ぐらいがいいな。


「でしたらこれは如何でしょうか」

と紙を見せられたのだが、全く読めない。

それを見かねたのか、隣からオードが翻訳してくれた。


「薬草の採取っスね」

「ええ、今ギルドで保有している在庫が底を尽きそうになっていまして」

「the・初心者っぽい感じがするな」

「いえ、薬草採取と言えども、群生地が魔物の蔓延る地域にしか生えておりませんので」

「栽培したらいいんじゃないのか?」

「ハハハ、流石はミストさん。冗談がお上手で」


冗談を言ったつもりは無かったんだが。

無言で居るとそれを察したのか説明してくれた。


「薬草を栽培、とは言っても、薬草は魔素の濃い水でしか育たないのです。

その為、原産国も限られており、それも現在鎖国している状況でして…。

どうにかやり繰りしているという訳です。

本来なら、加入時に一式アイテムをお渡しするのですが、回復薬どころか薬草も不足してまして。


先程、我々に貴重な回復薬を使って頂き、誠にありがとうございます。

貴方のお手持ちも少ないでしょうに」


誤解がマッハ。

適当に飛ばしたあれが、何か良いように受け取られているな。

てか、これ別に薬草集めて来なくてもいい様な…


「いや、別に問題無い。

むしろその回復薬を売り捌けないかと思って、街に来たってのもあるんだ」

といいながらグラちゃんに回復薬を渡し、

「そのクエスト、それ納入したら達成って事にはならないか?」

「少し使用しても?」

「構わないよ」


グラちゃんは剣で自身の指を少し切る。

そこに回復薬に浸した布を患部へと巻く。

ああ、回復薬って本来そう使うのね。

ぶっかけるもんだと思ってたわ。

まあ、あんな細かい真似出来ないから結局ぶっかけるんだがな。


「これは…驚きました。

試験中に使って頂いた時も思いましたが、まさか少量でこれほどとは」

見れば切傷は完全に塞がっていた。

「で、達成にはなるのか?」

「はい、勿論です。

あと出来れば数本欲しい所ですが」

「そんな数本なんてまどろっこしい事言わず、100本くらい納入すればいいんじゃね?」


そう言って俺は回復薬を約100本くらい、グラちゃんの前に無造作に置く。

一括整理があるからと言っても、出せる量が限られているのは面倒だな。


「こ、これは…、よ、よろしいのですか?」

「売り捌く分はまだあるから大丈夫だよ」

「これほどの量とは…」

何かブツブツ言ってはトリップするを繰り返してる。

何なんだ。


「あ、すみません、私の悪い癖でして。

こちらが今回の報酬です」


と銀貨500枚を渡された。


「いいのか?」

「はい、むしろ少ないぐらいです」


ユキから聞いたが、中位で大体50枚ぐらいだったか。

そう考えたら少ないのか。


「あとの足りない分は、私から感謝を込めて商館への書状をお渡ししたいと思うのですが、いかがでしょう?」


知り合いですから安心出来ますよ、と付け加えて。

いや、何か安心出来ないんだが。


けれどよくよく考えれば、この人ギルドマスターなんだよな。

そのギルマスが紹介してくれるのだから、きっと良い商人だろう。

「ああ、受け取ろう」


その後俺達はアウリス地方の調査依頼というクエストを更に受けた。

これはあの廃坑のその後の経過や周辺地域の変化等を調べるというものだ。

任務期限に制限が無かったので、オードの拠点やゴブリンリーダーの件もある。

その様子見も兼ねて引き受けた。


「じゃ色々ありがとう、グラちゃん」

「いえいえ、こちらこそ感謝致します。

商館の方へは既に伝令役を遣えておきましたので、いつでも会えるでしょう」

「分かった、じゃあ今から会いに行くとするか」

「調査依頼の方はゆっくりで構いませんので、また無事に顔見せして下さい」

「ああ。じゃあ行くか」

「グランさんありがとうございます」

「グラちゃんまたねーっス」


こうして俺達はギルドを後にした。



商館は市場、この王都で唯一山に面した場所の一画丸々が、商人達の交流の場となっていた。

また買い物客が生活用品を買ったり、山から取れる鉱石等も売られており冒険者達も行き交う、国最大の人口密度を誇る場所でもある。


そんな市場の中でも、一際大きい真っ白い建物がこの国一番の商館。

初見で豆腐かと思う程の真っ白具合に、自己主張の激しさを匂わせる。

中に入ると秘書のお姉さんが部屋まで案内してくれた。

ええのう。

そして部屋には1人のイケメンが居た。


うわお、マジイケメン。

髪は白髪だがアイドル並みの背格好。

けれど顔はオジサマで顎鬚が少しあるけど、渋くて大人の色気を感じる。

そんなオジサマが徐に立ち上がりこちらに迫ってくる。

そしてユキの前に立ち、後頭部に手を添える。

そして…


「やーん、もー、かーわーいーいー」

「ヒゲ、ジョリジョリ、痛い」


…訂正。危ないオカマだった。


「そこのミミックちゃん、オカマとは失礼ね」


はっ?考えを読まれただと?


「うふふ、それが私の固有能力(ユニークスキル)思考把握(オミトオシ)》よーん」


成程な、じゃあ喋る必要も無いか。


「それは違うわ。

私以外の人達には声は聞こえないし、喋ってくれないとアタシ、変人かと思われちゃうじゃなーい」


いや、既にオジサマがオカマ口調で少女を撫で回してるこの光景が変人なんですがそれは。


「もー、細かい事はいいじゃない。

それに固有能力と言っても、これ結構疲れるのよ?」

そう言ってユキから離れ、元居た席に着き、俺達にも座る様に促す。


「初めまして、アタシは当館の総元締めをしているフェリエ・リエールよ」

「ミストだ、よろしく」

「オードっス!」

「………」

「あっちはユキだ」


さっきの事を怒ったのか、無言を貫いている。

まあ、今回商談するのも俺主体だし問題無いが。

後で魔法薬をあげなきゃな。


「それで。早速だけど取引したい品を見せて」

「いや、書状は見なくていいのか?」

「あのサボり魔の下手な字なんか見たくないわよ」


そう言って受け取った書状を一瞥すると、ゴミ箱に捨ててしまう。

てかグラちゃん、サボり魔なのか。

ギルドマスターが何故試験に立ち会ってくれたのか、その理由が図らずも知れてしまう。

またしょうもない理由だな、大丈夫かギルド。


「まあグランは上手くやってる方だから、ギルドは問題無いわよ」

「その固有能力切れないのか?」

「あら、失礼しちゃったわね。

…はい、これで大丈夫よ」


大丈夫って言われてなあ。

…………やーいやーいオカマ口調!


「オカマ口調じゃなく私は乙女よ」


切れてないじゃん!


「顔に出てるのよ」


俺は見た目は完全にただの箱のはずなんだが。


と思っているとオードが、

「ミストくん、動きで何となく読めるっスからね」

と言った。

マジかよ、気付いて無かったわ。

普段から無表情オートポーカーフェイスに甘んじていた様だ。

これは改善だな。


「これを売りたい」


そう言って中位回復薬を見せる。

本当は上位回復薬を売りたい所だったが、成長する収納グローアップクローゼットでもなかなか数が出来ないでいる。

多分、元々精製しにくいんだと思う。

それが無料で入手出来てると考えれば、既に3000近くある中位回復薬の量は異常だと言えるな。

原産国も限られているみたいだし。


「1つにつき、金貨一枚で買い取らせて頂戴」

マジマジと観察していたフェリエがそう言った。


「え、いや」

「あら、ご不満だったかしら?」

「こっちとしては嬉しい申し出だが良いのか?」

「正当な評価をしたつもりだけれど」

「…ならその値段で頼む」

「交渉成立ね」


握手を求めてきたが俺は何も出来ない。

なのでオードを一瞥し、察したオードが握手をする。

あ、オード。そんなブンブンしなくていいから。


「これは数は幾つぐらいあるのかしら?

出来ればもう数本あれば嬉しいのだけど」

「そうだな。出せるのは大体2500本ぐらいかな?」

「え…ちょ、ちょっと待って頂戴」


流石に多過ぎたか?と思ったが、暫く考え込んだ後、

「それは全て同じ値段で買い取らせて貰えるのかしら?」

と言って来たので頷いておいた。


他にも中位魔法薬、解毒薬、それにパーレ、パーラも見せてみた。

魔法薬と芋には金貨2枚、解毒薬には銀貨80枚の値が付いた。

また、定期的に買取りもしたいと言ってきたが、暫く何もしなくてもいいぐらい稼いだので、

「また気が向いたら来るよ」とだけ言っておいた。


「もう、ミストちゃんならいつでも大歓迎よー」

「そのオカマ口調どうにかしたらな」

「レディにオカマなんて言うんじゃ有りません!」


いや、そんなダンディーな風貌で言われてもな。

そう言えば交渉中は思考把握(オミトオシ)は本当に切ってくれてたらしい。

一応そういう所は真面目な様だが、なんでこの国のお偉いさんは皆キャラ濃いんだろう。

キャラ濃くないとトップに上がれない呪いでも掛かってるんだろうか?


「じゃあ世話になったな」

「またいつでも待ってるわよー」

「暫く来ないと思うが」

「ぶーぶー」


最後までクネクネしながら駄々を捏ねてた。

おいやめろオッサン。その顔でその動きは駄目だ。


さて、次は鑑定屋か。

今日は忙しいな。

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