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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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ランクD試験 vs オード

ああ、こりゃまた書類が増えるな。

グランは頭をポリポリと掻きつつも、安堵した面持ちで周囲を見回していた。


それとミストさんにお許しを頂けて良かった。

終わった後も、偶然なんで!全然俺強く無いんで!と仰っていたが、あの変異種に見事な対応力、そして我々の防御力を上回ると見越しての回復薬を飛ばす判断力。

お陰で軽傷者は居るものの、この爆発で重死傷者0。


見事な手際過ぎてギルドマスターである自身が虚しく見える。

この方が今後ギルドに加入して下さるなんて、とてつもない戦力だ。

流石はユキさん、何て心躍る紹介を受けたものだ。

これは書類整理をしていたら気づけなかった。

切っ掛けをくれたチャチャチャさんとユキさんには後で報奨を差し上げねば。


と、次はオードさんの試験の準備をしなければ。

「さあ皆さん、次の受験者がお待ちですよ。

早く準備を進めて下さい」


半分仕事を忘れ、先程の光景に悦に入るギルドマスターであった。




ミストくん、あれ明らかに魔素水ミスしたっスよね?

心の中でツッコミを入れるオード。

隣を見るとユキちゃんも同じ意見なのか、えーって顔をしている。

何故かギルド側のミスって事になったっスけれど、オイラ達の目はごまかせないっスよ!

そう言う目でミストくんを睨むと、プイッとソッポを向かれてしまう。

全く、逆にあれで誤解されたままで苦労するのはミストくんの方なのに。

でも何か今更それを言うのは、このグラちゃんの愉しそうな姿が見れなくなる。

うん、そっとしとくっス。




そして次にオードの試験が始まった。


「えー、ハプニングがありましたが次に参りたいと思います。

今度はオードさんですね。準備は大丈夫ですか?」

「いつでも大丈夫っス!」

「元気なお返事ありがとうございます。

ではこれより冒険者オードのランクC昇級試験を執り行います」



あ、もういきなりCやっちゃうんだ。

誤解だけどまあいいか。

お前なら勝てるさ、多分。


オードの目の前に現れたそれは、アウリスアクアリザードという魔物だった。




先程とは違い、というかグラちゃんが凄い唖然としている。

てか周りの役員も呆然としている。

そりゃそうだろう。

まさか開始30秒で決着が付くなんて思っちゃいなかっただろうよ。

俺ももっと掛かるかと思っていたのに。

俺の苦労を返せ!





グラちゃんが合図を送った直後、アウリスアクアリザードが檻から飛び出し、こちらに泡を吐いてくる。

あの泡は触れると急激な眠気を誘わせる攻撃っス。


オイラはそれを地壁(アースウォール)で防いだ後、トカゲに向かって風弾(ウィンドバレット)を飛ばしたっス。

風弾(ウィンドバレット)自体を食らってもビクともしないトカゲ。

でも狙いはそっちじゃないっス!

先程の戦いで熱せられた地面を地弾(アースショット)で固めて飛ばす。

そして動きが鈍ったトカゲを地壁(アースウォール)を四角柱の形に形成する。

逃げ道を失ったトカゲに、上から地弾(アースショット)風弾(ウィンドバレット)火弾(ファイアーボール)の順で放っていく。


まず四角柱の一番上の面に岩塊を飛ばす。

次に風で切りぎさみ、火で砂状になった石礫をガラス状に変化させる。

それがトカゲへと降り注ぐ。

中からトカゲの断末魔が聞こえてくる。

修練所に居る者は皆ドン引きである。


オード、もっと手加減してやれよ。

役員とグラちゃん、めっちゃ顔色悪いぞ?




本日二度目の驚きだった。

アウリスフレアリザードもランクDでそこそこの強さがある魔物だった。

そしてそれの対となるアウリスアクアリザード。

水の中だとランクCまで行くが、今回は陸での試験の為、ランクはD止まり。

けれどこのオードさんにも期待が高まる。

ゴブリンというのは、どれだけ強くてもE程度。

けれど、国からの命令でユキさんにランクDのゴブリン討伐を任せていた事から、このゴブリンにも期待する事を躊躇わなかった。

そして私は捕獲した中でも大きい個体を選び、ランクC試験として宛てがう。


結果、それが本当に目の前で起こったのだから、私は動けずにいる。

知性がある事から、恐らく魔物堕ちだとは思っていたけれど。

能力や魔力はどうしたって身体に依存してしまう。

いくら前世が強くても、ゴブリンやミミックの身体ではランクDでも怪しい。

そんなバカな事を考えていた自身を殴りたい。

今日は本当に失態ばかりの一日だ。


オードさんがなんと火、風、地の3属性の魔法を操って見せた。

一言で言えば有り得ない。異常そのもの。

まず魔物でも、属性を複数持つのはかなり上位種か変異種ぐらい。

しかも3属性なんて…。次元が違った。

ふとユキさんの方を一瞥したが、あれが普通と言わんばかりに無表情。

そしてお疲れ様、と声を掛けている。


あんな、あれが普通?!

魔物は魔法をほぼ使わない、いや使えない。

魔物は魔素で生きている為、その魔力を自身から放つなど自殺行動に他ならない。

1発ならまだいい。

しかし、オードさんは目視で追える限り12発もの魔法を放っていた。

この魔力はどこから来ているんだと。

ギルドマスターの疑問は尽きない。




ユキは思っていた。

グランさん、顔に出過ぎ。


でも私だって最初はこの二人に驚かされた。

確かに転生者は特別な固有能力を持って生まれてくる。

けれど二人共、固有能力依存じゃない能力でその異常さを垣間見えさせている。

オードくんは前世で色々あったと聞いていたので驚きはしない。

けれどミストは違う。

偶然とはいえ、ランクCに匹敵するような魔物を個人で倒した時点で、ギルドからかなりの信用を買うだろう。

それぐらいの凄さ。


私も地道に経験と苦労を重ねここまで来たけれど、それをこの一瞬で成し得てしまった二人には敬服に値する。

自分の目に狂いは無かったと思うと同時に、私を自由にしてくれるのではと期待してしまう。


駄目だ、この二人には迷惑ばかり掛けている。

自分は何も出来ないと言いつつ、しっかりフォローを入れてくれるミスト。

いつも巫山戯てばかりいるけれど、本当は私を落ち込ませない様に目配せしているオード。


私はこれほどまでにこの二人を大事にしているのか。

ユキは一人、心の中で呟いた。





「いやあ、御二方共お強いですねぇ。

私びっくりして腰が抜けそうでしたよ」


グラちゃんは頭に置いた手をポンポンとさせている。

俺達はギルドに戻って来ていた。

あの後修練所を一ヶ月程修理工事したのは余談かな。


「では改めて。

ギルド加入おめでとうございます。

貴方方の働きに期待しております。

では、こちらがギルドメンバーの証とランクを表すプレートになります」


ギルドメンバーの証、証明書みたいな小さなカードを渡された。

これはギルドにクエストを受注する際に必要になる。

その他、他国へ入国する時に身分証明にも出来る物だ。

これさえあれば、あの検問所もスルーする事が出来る。

各国に拠点を持つギルドならではの強味の1つだ。


そしてプレート。

これは受注出来るランクを表している。

そのプレートには、ランク毎に材質が違い、自身のランクが押印してある。…読めないが。

FやEではランクは材質が紙だが、Dは銅、そしてCは鋼製だ。


因みに偽造とかされないのかと聞いた所、ギルドマスターであるグラちゃんを筆頭に、役員は瞬時判定(カンリスルモノ)という固有能力を獲ている。

カードとプレートにはその持ち主の魔力ないし能力素を媒体に作成するのだが、その固有能力(カンリスルモノ)はそれらを瞬時に見分ける事が出来るそうだ。

また、普通に書類でも情報を記載しているそうで、余程の事が無い限り、偽造するのは不可能らしい。


まあ色々(主に俺のうっかりが)あったが、俺達は当初の目的の1つ、ギルドメンバーの一員になった。

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