表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
34/123

SS ユキ ②

私は転生したと理解するまでに、かなりの時間が掛かった。

自分の身体が、まるで赤ん坊のそれであり、それが自身だと気付くのに。


私は願った。

もし次の人生があるならば、と。

まさかそれがこんな早くに訪れる事になるとは思わなかった。


いや、もしかしたら私が理解出来ないだけで、私は長い間眠った状態だったのかも知れない。


だけど変にも思っていた。

私は私が前世の記憶をしっかりと持っており、私という存在を失っていない。

転生とはそういうものなのだろうか?


「あら、おはようユキ」


まだ首も座っていない。動けない私に語り掛ける存在。

金色に輝く耳と尻尾とお尻まで伸びた髪、身長は低めだが何処か母性を垣間見る。

童顔で眼が碧い、この人が今世の母だと思うのには、そう長くは掛からなかった。


だけど私は、前世での両親、とも呼びたくないけれど。

あの人達の事を思い出してしまい泣いてしまう。

そんな私を優しく抱き寄せて撫でてくれる。

私はそこで初めて親の温もりを知った。



「ユキ、元気にしてたかい?」

そう、男の人が話掛けてくる。

ブロンズの髪にほっそりとした体付き。

そして髪を束ね、ローブの様な服を着たこの人は、私の今世の父親だ。

そして私にユキという名をくれた人。



「ユキ、お前は私の故郷の”雪”の様な、とても綺麗な毛色をしている。

キラキラと舞い落ちて、でも触ると消えてしまう。

儚いけれど、そこに美しさがある。

ユキ、お前は過去に捕らわれている。

それを直せだとか正せとは言わない。

けれど、過去は過去であって今この時じゃない。

過去に過ちがあるなら、それを背負って今を強く生きればいい」


物心付いた頃に、鑑定屋で私が転生者だと知った父に言われた言葉だった。

転生者は過去がある故に、その過去に縛られる傾向がある。

私がどういう人生を生きてきたのかは、両親は知らない。

けれど、私という存在を彼等は真剣に向き合ってくれている。


私は今まで、誰かにそんな事を言われた事も無かった。

目と目を合わせて、真剣に話をしてくれる人も居なかった。

いや、マザーがそうだったかも知れない。

けれどマザーは、私を真剣には見てなかった。

私はそれがショックだった。

私はマザーを本当の親同然に思っていた。

だけどそれは私の独り善がりで。


私は私が嫌いだ。

けど、私の事を好きだと、愛してると言ってくれるこの両親は好きだと言える様になりたい。

いつかこの気持ちに向き合える日が来たのなら、私は本当の家族になれるのかな?

こんな汚れた手で、穢れた心で。

この人達に触れられる日は来るんだろうか?


過去は過去であり今じゃない、過去に過ちがあるなら今を強く生きろ。

私はその言葉を胸に刻む。


私はユキ。

雪の様に、いつか哀しみも罪も溶けて消えるなら。

でも私は背負う。そう選択する。

選択肢なんて無かった私が、初めて自分で選んだ道。

私はこの人達に応える為の努力をしよう。

まだ子供の身だが、私は心で強くそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ