SS ユキ ②
私は転生したと理解するまでに、かなりの時間が掛かった。
自分の身体が、まるで赤ん坊のそれであり、それが自身だと気付くのに。
私は願った。
もし次の人生があるならば、と。
まさかそれがこんな早くに訪れる事になるとは思わなかった。
いや、もしかしたら私が理解出来ないだけで、私は長い間眠った状態だったのかも知れない。
だけど変にも思っていた。
私は私が前世の記憶をしっかりと持っており、私という存在を失っていない。
転生とはそういうものなのだろうか?
「あら、おはようユキ」
まだ首も座っていない。動けない私に語り掛ける存在。
金色に輝く耳と尻尾とお尻まで伸びた髪、身長は低めだが何処か母性を垣間見る。
童顔で眼が碧い、この人が今世の母だと思うのには、そう長くは掛からなかった。
だけど私は、前世での両親、とも呼びたくないけれど。
あの人達の事を思い出してしまい泣いてしまう。
そんな私を優しく抱き寄せて撫でてくれる。
私はそこで初めて親の温もりを知った。
「ユキ、元気にしてたかい?」
そう、男の人が話掛けてくる。
ブロンズの髪にほっそりとした体付き。
そして髪を束ね、ローブの様な服を着たこの人は、私の今世の父親だ。
そして私にユキという名をくれた人。
「ユキ、お前は私の故郷の”雪”の様な、とても綺麗な毛色をしている。
キラキラと舞い落ちて、でも触ると消えてしまう。
儚いけれど、そこに美しさがある。
ユキ、お前は過去に捕らわれている。
それを直せだとか正せとは言わない。
けれど、過去は過去であって今この時じゃない。
過去に過ちがあるなら、それを背負って今を強く生きればいい」
物心付いた頃に、鑑定屋で私が転生者だと知った父に言われた言葉だった。
転生者は過去がある故に、その過去に縛られる傾向がある。
私がどういう人生を生きてきたのかは、両親は知らない。
けれど、私という存在を彼等は真剣に向き合ってくれている。
私は今まで、誰かにそんな事を言われた事も無かった。
目と目を合わせて、真剣に話をしてくれる人も居なかった。
いや、マザーがそうだったかも知れない。
けれどマザーは、私を真剣には見てなかった。
私はそれがショックだった。
私はマザーを本当の親同然に思っていた。
だけどそれは私の独り善がりで。
私は私が嫌いだ。
けど、私の事を好きだと、愛してると言ってくれるこの両親は好きだと言える様になりたい。
いつかこの気持ちに向き合える日が来たのなら、私は本当の家族になれるのかな?
こんな汚れた手で、穢れた心で。
この人達に触れられる日は来るんだろうか?
過去は過去であり今じゃない、過去に過ちがあるなら今を強く生きろ。
私はその言葉を胸に刻む。
私はユキ。
雪の様に、いつか哀しみも罪も溶けて消えるなら。
でも私は背負う。そう選択する。
選択肢なんて無かった私が、初めて自分で選んだ道。
私はこの人達に応える為の努力をしよう。
まだ子供の身だが、私は心で強くそう思った。




