空中のバー〇ンハウスへようこそ
「本当に宜しいのですかな?
このような種まで貰ってしまったのに、何もお返し出来なくて」
ジルニフさんが言う。
「いいよ〜ん。…話、有り難うございました。
今日の事は誰にも言いませんので」
「魔物なのに変わったお方ですね」
クスッと笑うジルニフさん。
やっぱり、俺は誰かが笑ってくれていた方が楽しくなるな。
「んじゃ長居しても悪いし、俺達は行くわ」
「貴方方の旅に幸あらん事を」
俺はピョンピョン跳ねながら村を後にする。
ユキは一礼して、オードは手を振って。
「いやぁ、楽しかったっスね!」
「そうだな。ジルニフさんも話しやすくて助かった。
ところでユキ」
「分かってる。この国について黙っていた事、怒ってる?」
クールを装ってるな。
最近分かった事だが、尻尾が項垂れている時はしょんぼりしてる証だ。
ふふふ、お兄さんが大人の叱り方を教えて…なんてな。
「そんな事話してどうすんだ?」
「え?」
「お前が俺達にそんな事を話したとして、何か解決するのか?」
「だけど…少しでも知っていたら」
「確かに知っていれば対処は出来るかも知れん。
でももし話していたら、王都に行こうとは思わなかったはずだ」
「あ…」
「国なんてモノはな、大きくなるに連れて何か大なり小なり問題があるもんだ。
まさかそれが国王にあるとは思わなかったけどな。
だからそうクヨクヨすんな!分かったか?」
「………うん、うん」
涙ぐみながら尻尾を振ってる。
少しでも前向きに捉えてくれたなら有り難いが。
「てか、オード」
「何っスか?」
「お前…難しい話に少しぐらい入ろうって気は無いのか」
「オイラ、前世では女の子は師匠しか絡んだ事無いっスから、扱いが」
「あぁ?お前の師匠って女なのかよ!
チートで天才な上にリア充とか、爆発しろ」
爆裂道具弾餅バージョン!
「ぐわぁぁぁ!何かベタベタくっ付くっス」
「フハハハハハハ!どうだ、この餅を拡散される気分は」
「う、うおおおお!!火壁!!」
「ふぁ?!」
オードの周りに火が、まるで壁の様に円柱型に取り囲む。
ぐぬぬ。俺の火に弱い性質を受け継いでるのか、あの餅も火に弱い。それを見抜いただと?!
「ふふふ。ミストくんだけが進化している訳じゃない事を教えてあげるっス!
喰らえ!地璧!」
すると俺の周りに形成される、高さ3メートル程の壁が四方。
正三角形を成しており、その壁がこちらに倒れてくる。
潰されるかと思いきや、どうやら四角錐の形になって敵を捕縛する魔法の様だ。
「ふふふ、どうっスかユキちゃん!
難しい話に入れなくても、オイラには魔法があるんス!」
「…凄い」
「でしょでしょ?やっぱり戦えないミミックより、魔法が使えるゴブリンの方が、ユキちゃんもその…す、好……」
何か外で話し声が聞こえるな。
こんな時念話が使えれば苦労はしないんだが、あの念話のスキル、あくまで俺の体内に居る奴としか会話出来ない制限がある。
うむ。新しい課題が出来たな。
さて、とりあえず目の前はこれ壊すか。
「竜巻頭突き&爆裂道具弾魔鉛弾!!!」
ガラガラと崩れる壁を竜巻頭突きで散らしていく。
ユキが放った魔鉛弾をじっと見つめている。
「ああああ!ミストくん早いっスよ〜」
「ふっ、この程度では俺は閉じ込められんな!
てか今度は防御魔法覚えたのか」
「そうっス!褒めて欲しいっス」
「ああ、うん。魔法薬あげるから」
「ひゃっほい!」
そんなんでいいのか、オードよ。
「ねぇミスト、これは?」
魔鉛弾を指差すユキ。
「そりゃ魔鉛だな」
「え?!何処でそんな」
「廃坑にレールがあっただろ?
あれのメッキに使われてたのを剥がして魔力を注いだんだ。
数も少ないし、魔力も低いけど、重さがあって衝撃にも強いから弾と打ち出すには向いてると思ってな」
「ミスト…本当に凄いね」
「いやぁ、まだまだだな。
もう少し精度や威力を上げたい。
そしていつかはオードの魔法に勝つ!」
「ふふふ、そうはいかないっスよ。
オイラはまだまだ進化しているっスからね!」
「ドヤ顔決めてる割に、直ぐ壊れる壁なんか作る奴が進化なんてするのかなぁ?」
「ムキーッ!やらいでか!」
「おおともよ!」
「「え?」」
何故か物凄い上空に飛んだ、いや飛ばされた。
「新しい能力《投擲》」
やあ
ようこそ、お仕置きの空へ。
この魔法薬はサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このスキルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。
そう思って、この事を思ったんだ。
じゃあ、注文を聞こうか。
「ぎゃああああああ落ちるっス!!」
「オード!風だ!風で衝撃を和らげるんだ!」
「な、成程!それなら見るっス!
新技 風壁!!」
風が俺達を包み込み、地面に激突する事なくふんわりと降り立つ。
「うおおおお!!生きてるっス!!やったっス!!」
「ふぅぅぅぅ、高い所から落ちるのはトラウマだわ」
「二人共、急いではいないけど、あんまり喧嘩しないで」
「ユキちゃん、ごめんなさいっス!」
「いやぁ、スマンスマン」
「ミストくんちゃんと謝って!」
「…悪かったな」
「もういい。いつもの悪ふざけなのは知ってる。
オードくんも悪ふざけは程々に、ね?」
「分かったっス!ユキちゃんの為に!」
何かユキが最近お姉さんっぽく見える。
前世との年齢考えたら、一番かも。
いや、止めとこう。
でもまあ、ユキはクスクスと笑っていた。
なんだかんだでユキも馴染んだもんだな。
旅立つ時はまだ警戒心が強かったイメージだが、今じゃよく笑う様になった。
ユキは何か抱えてる。オードもそれは見せないが、たまに表情を落とす事がある。
多分、この世界では何か俺の知らないもんが渦巻いてるんだろう。
俺はそれをどうにかしてやりたい。
ただ、仲間の笑顔を見たい。
そんな密かな野望は隠して、王都へと旅を続けるのだった。
前世での年齢/今世の年齢
ミスト 28/0
オード 15/5
ユキ 13/14
なのでまだミストが一番年上だったりします。
ユキは亜人の為、年齢は14ですがまだ幼い方で、逆にゴブリンは短命なので大人に近いです。
前々世での年齢も合わせればオードが最年長になるはず。
何処がなんだ、と。
本編で語れるといいですね。




