品種改良
はぁ。まあ聞いたのは俺だし。
王都に入る前に聞けたのは良かったか。
しかし、思ってたよりも夢が無いな。
魔法ファンタジーで王国着いたら、宿や酒場でどんちゃん騒ぎと思っていたけど。
まあ、これが現実か。
うわぁ、異世界も地球もあんまり変わらねぇ。
って、そりゃいくら魔法が有ろうが世界が変わろうが、そこに生きている以上、こういう問題も付き纏うか。
しかし、何の為にそんなに人間を集めてるんだ?
しかも仮にも勇者だろ?
まだ何か裏があるな。
ギルド入って鑑定屋でレベル把握する予定ががが。
「あの…」
ジルニフさんが心配そうに見つめて来た。
俺には表情とかは無いが、発している魔素や能力素の流れで、大まかな気持ちが図れるらしい。
実際ユキもそうやって俺を読んでいる。
オードは……あれは勘だな。
「いや、ちょっと考え事をしてた。
それより嫌な事を思い出させてしまって申し訳無い」
「とんでもない。私も話を聞いて頂いて少し気持ちが軽くなりました」
ま、人間に話すより魔物の方が楽なんだろう。
例え誰かに今の事を言ったところで、魔物の言う事だからな。
そこまで考えてるかは知らんが、気が軽くなったのは本当だろうな。
「いい情報を貰ったし、礼を出さないとな」
「え?!それは我々の方こそ」
「いや、受け取ってもらおう!
俺の秘密兵器その2 品種改良版パーレの種!」
ドドーンとセルフSEを入れながら。
若干ユキが何言ってんだこの箱、みたいな眼差しでこっちを見ている。
オードも、うわっコイツまた何かやってるよ、みたいな顔してやがる。
ふっ、知らんな!
「俺の新作を受け取るがいい!」
と言って芋の種を渡す。
「これは…先程食べた芋ですかな?」
「そそ、種芋って言ってな。
それを植えて毎日水をやればあら不思議。
大体一週間くらいで食べられる大きさになるよ」
おおっ!と歓声が上がる。
こんな事をやれたのも、俺の能力《進化予測》にある。
俺はずっと畑を作りながら成長を促し、品種改良に努めていた。
あ、いや、決してスキル強化しなくて夜も起こさない様にと思って暇だったなんてそんな訳無いんだからね?
勘違いしないでよね?ぷんぷん。
進化予測はアイテムの成長先がどうなるのか、というスキル。
これを使えば、品種改良で魔法薬や回復薬に適した薬草が出来ないか、という実験の前段階として、食糧になる物を研究していた。
それがこれ、パーの種。
パーからパーラとパーレ、二種類の違う芋を作り、更にそれの種を作る。
そして今度はその種を安定かつ最速に育つ様に、進化予測と成長する収納を使って改良を重ねる。
これぞ錬金術の初歩。
オードは俺にアルケミストから名を取ってくれた。
ならば俺はそれに答えよう!フハハハハハハ!
オードは思っていた。何やってんだこの人は、と。
確かに夜、見張り番をしているのは知っている。
しかし、努力の方向性が間違っていないか、と。
スキルを強化するって意味じゃ正解だと思うっスけど、体内で何してるんスかねこの人。
でも魔法薬も材料が必要だから、最近は森を削りながら進む感じだったスからね。
ブルドーザーかと思ったくらいっス。
それにしてもこの芋、パーラとか言ったっスか。
人間の方に食べさせてるのは品種違い。
これはオイラ達が飢えない様に気を回してくれてるんスかね。
だとしたら、最近事ある毎に魔法薬を強請っていた自分が恥ずかしいっス!
オイラ達の事を考えながら行動してくれてるのに。
だってあの魔法薬、薬って付いてるのにまるでジュースみたいな味なのがいけないんス!
ユキちゃんもハマったぐらいの美味しさなのに!
でもそろそろ自重しないと…自重……。
ああ、無理っス!
もうあの味を知ったオイラはミストくんの傀儡っス〜!!
ダメっス、でも感じちゃうビクンビクン。
ユキは思う、予想の斜め上へとこの人は進化している、と。
そしてこの人は村人から話を聞くなんて言いながら、実際は村を救う為の改善策を与えた。
確かに、1食与えたところで意味は無い。
けれど、食糧そのものを生み出すプロセスを贈る事で、問題の一つを解決する。
全てが解決する訳じゃない。
あくまでも改善する事に意味がある。
例え救ったとして、我々に甘えている様ではいけない。
自分達の足で立たねば、自力で道を切り開かなければならない。
彼はそれを示そうとしている。
私は自らを恥じる。
道中彼は常にスキルの真髄を探っていた。
それがこの品種改良。
これが有れば、あの魔法薬も沢山…ジュルリ。
ハッ、違う違う。何を弛んでいるんだ私は。
最近事ある毎に、あの魔法薬を求める様になってしまっていた。
だって仕方ないじゃない。
あの魔法薬、魔力を回復させるアイテムのくせに甘くて美味しいんだもん!
薬って付いてるけど、もしかしたら中毒性があるのかも知れない。
彼の威信に泥を塗りたくも無いし、今後は控えよう。
………でもちょっとぐらいはいいよね?
ん?
オードとユキが身悶えしてる。
ユキは顔が赤くて何かエロいが、オード。
その動きはキモい。
この後、王都に着くまで二人からの魔法薬の催促がちょっぴり減ったのは余談である。




