まな板の上のトカゲ
あれから一週間ほど経った。
いやね、色々あったんだがとにかく見て欲しい。
個体名:ミスト
種族:ミミック
属性:無
称号:コレクター
職業:冷蔵庫
固有能力:
詳細鑑定
成長する収納
薬効調合師
能力:
竜巻頭突き
完全擬態
一括整理
進化予測
回避補正
命中補正
念話
毒耐性
魔法:
道具弾
爆裂道具弾
個体名:オード
種族:ゴブリン
属性:火、水、風、地、闇
称号:ゴブリン族の若
職業:魔法戦士
固有能力:
魔力感知
幸運
能力:
バッシュ
不幸せな踊り
ドレイン
逃走補正
感知補正
魔法:
火弾
風弾
水弾
地弾
毒弾
個体名:ユキ
種族:狐亜人
属性:風
称号:疾風
職業:ローグ
固有能力:
千里眼
窃盗鑑定
能力:
疾風迅雷
風の加護
空中跳躍
強奪
速度補正
回避補正
縮地
毒耐性
魔法:無し
これが現在の全員の能力一覧。
どうしてこんな事になっているかは4日目の朝まで巻き戻る───
───旅立ちから4日目。
オードとユキは中位魔法薬を飲んでいる。
廃坑で予備に渡していた保険だったが、今では完全にジュース扱いだ。
今では俺も片手間で出来るぐらい、調合にもなれた。
まあ、感覚で言えば頭の中でずっと算数してる感じなんだが。
オードがやたらせがむので与えていたら、ユキも後ろ手にモジモジしていたのであげたら物凄い喜ばれた。
最初は可愛いからと、ついつい甘やかしていたら、現在事ある毎に魔法薬を強請って来る様になってしまった。
そのせいか、二人とも魔素の吸収限界が底上げされているらしい。
廃坑での戦いでもそうだったが、魔素を吸収出来るのにも上限がある。
また吸収してる時に放出は出来ない、逆もまた然り。
半永久機関ではあるが、戦闘中にそんな器用な事は出来ない。
従ってオードも、上限ギリギリの魔法を使ったせいで動けなくなったのだが。
その上限が魔法薬の飲みすぎで大幅に上がったという。
理由はオードの魔法の撃てる回数や、ユキの能力の効果時間が延びていた事から、そういう結論に至った。
この魔法薬、人間が飲んだら毒薬だが、魔物や亜人が飲むと強化されるのを改めて確認した一幕だった。
で、オードが掃除機などと言ってたせいで、自分を鑑定すると長らく称号:掃除機だったのが、今ではコレクターになり、
職業:倉庫屋から冷蔵庫にクラスチェンジしている。
不愉快極まりない心境である。
まあ、二人とも喜んでいるし、まあいいか。
同日昼。
俺達はアウリスハイリザードという魔物に出くわしていた。
名前から察せるほどに見た目があのトカゲなのだが、全長10メートル以上あり、ここまで来たら小型の龍種なのではと思える程に威圧感があった。
隣を見ると額に汗を浮かべるユキ。
この表情で奴が強いのが分かる。
分かると思いかけた。
反対側のオードが大トカゲの方を見ながら、顎に手を当て
「あの肉質…焼きよりも煮る…いや、燻製も捨てがたい」
とか言ってた事で、物凄い気が抜けてしまった。
オードによればゴブリンの主食として狩られているのがこのトカゲであり、この大きさを狩る事も別段珍しくは無い。
そういや腹減ったとか言って大体狩って来るのあのトカゲだもんな。
でも縄張り荒らしてるようなものだし、何より親玉とかが復讐に来るんじゃ…。
とか思っていたがそれも杞憂だった。
オードの話ではトカゲは群れる習性は無いようで、個体毎にバラバラに棲息しているとの事。
また近くに川があるので、水飲み場になっている為、出現率が高いだけの様だ。
ああ、拠点の近くの川がそうなのか。
そんな訳でオードは普通にトカゲに突っ込んで行く。
真正面から、堂々と。
ユキはそんなオードを見て困惑している。
まあ多分オードの名前の由来を勘違いして受け取ったせいだろう。
オドオドしてるからオードと付けたが、正確に言えばビックリしやすいだけであって怖がりでは無い。
それでも、同族であるはずのゴブリンや自分の顔に怖がったり、幽霊を信じてるらしく、夜寝る時俺から離れなかったり。
よくそれで一人暮らししてたなとは思うが、多分他人と関わる様になったが故の甘えや余裕が出来てしまったんだろう。
話は逸れるが、夜寝る時は勿論野宿。
見張り番は睡眠の必要の無い俺がやっている。
その間もスキルの練習は欠かさずやっているが、二人の就寝姿の観察も行っている。
オードは地面に直に寝ている。
普通は身体が冷えそうなもんだが、なんと火魔法を薄ら地面に流して暖を取っていた。
何寝ながら器用な事してんだコイツは。
一方ユキは尻尾を敷いて寝ている。
普段、お尻から足の先までぐらいの大きさしかないのだが、寝る時になると何故か全体を覆える程の大きさになる。
理由は風の加護によるもの。
風の加護は飛び道具等の軌道を逸らせたり、風の抵抗を受けにくくする力なのだが、これが常に発動している。
そのせいで、尻尾が必要以上に縮こまった状態になっている。
なので、寝る時は加護をオフにするので尻尾が巨大化する訳だ。
ユキは基本野宿はせず、殆ど宿屋で寝るそうだ。
王国領に入るには二週間の予定だが、あくまでも俺達の足での話だ。
ユキは半日ぐらいで着けるらしい。
俺も回転頭突きを移動に使えば早く進める。進めるのだが。
これをずっと使っていると疲れる。
睡眠を必要としないにも関わらず、動く事が出来なくなる。
眠ってる訳じゃない、意識はあるのだ。
つまりゲームとかで言うところのスタミナ切れに当たる。
能力素を使い続けるのだから、限界があるのは当たり前か。
と、本当にどうでもいい脱線をしたな。
オードは既にトカゲとドンパチやってる。
魔法を惜しげも無く使って。
また後で魔法薬強請られるな、多めに作っとこう。
硬直していたユキを参戦するようだ。
ユキの速度なら背後も余裕だろう、外だし。
廃坑の広場みたいな密閉空間で無い限り、ユキに攻撃を当てるのは至難の技だ。
現にトカゲの攻撃を全て躱している。
撹乱に乗じてオードが風弾を横から放ち、体勢を大きく崩させる。
そこに俺が粘度のある失敗作、命名”餅”を道具弾で飛ばす。
完全に身動きが取れなくなるトカゲ、お前は食糧でしかないのだ。
正に、餅の上のトカゲだ。慈悲は無い。
そんな訳でこのトカゲは普通に焼くのと、燻製にした。
燻製にはポポル草という薬草を使う。
オードが森から適当に取って来たのだ。
どっから取ってきたそんな気持ち悪い植物。
見た目、大きい真緑のムカデの様な形。
しかも足の様な部分がモソモソと動いている。
人間の時ならドン引きしてただろう。
だが、俺はミミック。最早その辺りは諦めた。
て事でそのポポル草を飲み込んで鑑定。
ポポル草 魔力22
魔物が寄ってくる香ばしい匂いを放つ。焼くと臭いが増す。
何これ危険物じゃねーか。
麻薬じゃないの?
思って聞いたが、どうやら魔物は魔素の吸収率が高い物を美味しいと感じる。
亜人も半分魔物みたいなものなので、魔力が多い物は基本的大好き。
成程、魔法薬をジュース感覚なのはこのせいか。
また調合の研究材料行きだな。
因みに生えている場所はアウリスタートルとかいう、木の上に住んでいる亀。
それだけ聞いてどうなんだと思ったが、そのポポル草はその亀の甲羅から生えている。
大事な事なのでもう一度言おう、どうなんだそれ。
長かったので切っています。




