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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
21/123

仲間

一方、水禍流(アクアトルネード)によって廃坑の各部へと流されたゴブリン達は迷っていた。


本来、ゴブリン達は各々に決められた場所を守っている為、他の者が防衛する所へ行くのは、せいぜい連絡係くらいなものである。


廃坑自体の大きさは然程大きなものではなく、深さは50メートル程度、枝分かれした道が無数あるだけで、大きな通りを進めば広場に着けるはずだった。


だが、今回は違う。

ゴブリンリーダーは予め敵が乗り込んでくると部下達に言っており、本来広場直通の道を壁と同じ様にカモフラージュし、細い道とその上に張り巡らされた奇襲用の隠し通路だけを残した。

奇襲用の隠し通路だが、これも一部の者と連絡係以外は道を知らない。


オードとゴブリンリーダーが戦闘を行っていた際に誰一人として広場に戻って来れなかったのは、この為である。




そして決着が着いた一時間後、広場へ続々と戻って来る尖兵達。

だが戦う闘志どころか、完全なスタミナ切れで立つ事もやっとになっている。


ゴブリン達の中で隊長と言われた者もその中に居た。


「も…申し訳……ぜぇ…あり……ハァハァ」

「もういい、それは終わった」


見ればミミックが味方とリーダーに薬だろうか?を掛けていたところだった。


「この廃坑もそんなに広さは無いだろ、何がそんなに疲れる事があるんだ」

「あ、多分それはっスね」

リーダーの問にオードが答える。

水禍流(アクアトルネード)を使った時に、一緒に泥も流れたと思うんスけど、あの泥をこの広場に来るまでの道に所狭しと配置しといたっス!」

「それ俺達が逃げる時も影響あるだろ」

「いやぁ、ノリでつい」


相変わらず、サラッと凄い事している。

俺は基準を知らないから何とも言えないが、オードってもしかしたら物凄く優秀なんじゃ…?

いや、このドヤ顔は無いな。


「楽しそうな所悪いがオード。杖を返す。すまなかった」

「いいっスよ。終わり良ければ全て良しっス!」

「まあ拾われた命だ。これからは村のゴブリン達の為に働くとするよ。

そこの狐ちゃんにも礼を言わねばな」

「…それなら魔鉄鉱を頂戴。本当ならここを制圧したら、好きなだけ持っていっていい契約だったから。

まさか何体は殺したとはいえ、半数以上生きたままなんて…」

「全くっス。空気ブレイクも大概にしてほしいっス」

「大半はお前だろ、洗濯機かお前は」


「…リーダー、本当にいいんですか?」

「ふっ。何だかあの連中を見ていると、何故あそこまで執念に駆られていたのか分からなくなるよ」


俺とオードのしょうもない喧嘩はあったが、無事杖を取り戻した俺達は、廃坑にて採掘…もとい、飲み込み作業をしていた。

洗濯機を根に持ったオードに掃除機と言われ、また喧嘩をしたけれど。


「あ、ユキちゃん、どうせならミストくんから貰った方がいいっスよ。

固有能力で効果上がるっスからね」

「…固有能力があるなんて珍しいですね」

「まあ、オイラ達二人共転生者っスからね!」

「……………。そうなんだ」

「最初、初めてのクエストで〜とか言ってたけど、あれ嘘だろ?」

「え…」

「そうなんスか?!」


ユキは黙る。表情は変えてないが動揺している。


「いやいや、初めてって割には手馴れていたし、それに移動中にコッソリ鑑定させてもらったよ」

「……………」

「俺は飲み込んだ物や生き物を鑑定する能力がある。

ユキのスキルは固有能力も知ってる。

ユキも俺の中に居る時、窃盗鑑定(ヌスミミルヒトミ)だっけ?

それを使って俺のアイテムを観察してたんだろ?

それに固有能力があるって事は、多分ユキも転生者なんだろ?」

「えぇっ!?そうなんスか!?」

「…………」


ユキは短剣を水平に構えながら距離を取る。


「私をどうするの?」

「いやぁ、どうもしないよ?」


一瞬硬直し、理解出来ないとばかりにキョトンとするユキ。

直ぐに我に返り問いただす。


「何故?」

「別に何か隠し事をしてたからって、それをどうにかするって事は無いよ。

むしろ、こうやって共闘してくれた訳だし、実害も無いからな」

「転生者を隠していたのよ?」

「俺は転生して日が浅い。

転生者がどういう扱いを受けているのかは、ハッキリ言ってオードの話しか知らない。

転生者って言わなかったのも、言いたくない過去の一つや二つあるもんだろ?

例え何か利用する為に近づいたってんなら、警戒はするけど。

元々は成り行きだからな。

だから単にキャラ作って会話されるのが疲れるなーと思って聞いただけだよ」


少し考え、何か納得をしたのか、構えていた短剣をそっと降ろし、鞘へと戻すユキ。


「あなた、意外と聡いのね」

「それを仕事に活かせないのが難点だがな」

「ふふっ」


初めて笑顔を見せるユキ。


「何二人とも分かりあった空気出してるんスか?

置いていかないでほしいっス!」


空気ブレイクの称号をお前にもやろう。


そうして俺とユキは本当の意味で仲間になる。

オードはまあ…何とかするだろ。


「まあこれでちゃんと仲間になった事だし、ミミックさんとかは止めようぜ、ユキ」

「………そうだね。宜しくね、ミスト、オード」

「ひゃああああ。女の子に名前を呼ばれたのは久しぶりっス!

胸が高鳴るっス!」


無言で回転頭突き(ローリングバッシュ)をかます俺。

あ、杖でガードしやがった。

そんな光景を笑うユキ。

少しは打ち解けられただろうか。


そしてある程度──と言っても、概算500個くらいの鉄鉱石を回収した俺達は、ゴブリン達と別れ廃坑の外に出ていた。


「ふーっ、やっぱり外の空気は美味しいっス!」


ぐぅぅぅぅぅぅ。

大きな音が鳴る。


「オード」

「違うっス!無実っス!」

「お前以外に誰が居ると」


隣を見ると赤面し、目線を反らせながら、

「……私」

と呟くユキ。


「照れてる姿をチャーミングっス!」

「なんかごめん」

「いえ、別に…」

「でも確かにお腹ペコペコっスね」

「俺は減らないけどな………ああ、そう言えば」


そう思って体内を探す俺。

取り出したるは、以前オードとの狩りにて鑑定したまま放置していたリザード焼き。

日数にして8日程経っている。


「ちょっとそれ…食べられるんスか?」

「分からん」

「えぇ…」

「鑑定してみる」


個体名:熟成リザード焼き

味:普通

栄養:無いよりマシ

腹持ち:普通

種族:アウリスリザード

属性:地

能力:スタミナが多少持続、毒耐性(小)


「………何か熟成されてて味が良くなってるらしい」

「何故に?!」

「多分、成長する収納グローアップクローゼットの効果だと思うが。

食料まで変化するのかよ」


相変わらずの地味さだが、かなりいい能力だ。

能力に毒耐性まで付いてるし。

とりあえずユキに渡す。


「まあともかく、これでも食べて」

「いいの?」

「俺は何故か食べる必要も無いし、味も分からないからな」


と、恐る恐る齧るユキ。

どうやら気に入ってくれたのか、今迄だらんと垂れて動かなかった尻尾がブンブンと揺れる。

あ、それ動かないからアクセサリーと思ってスルーしてたけど、本物だったのね。

そんな事思ってる俺に、

「ミストくん、オイラの分は?」

「ヒイラ草でいいか?」

「ぶーぶー」

「何でだよ!薬草だぞ!」

「食べ物がほしいっス!」

「回復薬なら大量にある!」

「回復薬だけあっても……っス」


いつものコントを始めていると、


「その回復薬、街で売ったらどう?」


と言われた。

確かに街には行きたいと思っていた。

ギルドの事も詳しく聞きたいし。……あ。


「そう言えば、ユキは実際にギルドで働いているのか?」

「そうだけど…もしかしてギルドに加入したいの?」

「ああ、オードが魔物でも知性が有れば雇ってくれるって言うからさ」

「オススメはしないけど、大丈夫?」

「どうせ魔物風情がー的な事言われるんだろ?

社畜を生き抜いた俺にその程度、問題無いさ!

なあ!オード!……あれ?オード?」


いつの間にかオードが居ない。

と思って辺りを見渡していると、森の中から火柱が上がる。

そしてあのトカゲを背負いながら戻って来るオード。


「ミストくん、リザード焼いて来たっス!

これ保存しといて欲しいっス!」

「お、おう」


流石一人で生活してただけはあるな。

と心の中で感心しつつ、リザード焼きを口へ放り込む。


「じゃオード。街目指すぞ」

「話済んだんスか?」

「おう、まずギルドに行ってみようと思う」

「おお!これでオイラ達も冒険者っスね!」

「そんなにいいものじゃないけどね」


ユキは苦笑しているが俺は内心ワクワクだ。

この世界の街はどんな感じなのだろう。

オンゲーでいう、アプデで新しい武器が出るぐらいのワクワクだ。

…うん、分かり難いよね、知ってた。


と、ともかく俺達は一番近い国、アルストレア王国へと歩み出したのであった。










玉座にて嗤うはアルストレア王国国王。

名をリベルタ=アルストレア。

グラスを傾け口に運ぶ。


「ふふっ、美味しいねぇ」

「機嫌が随分いいようだな?あぁ?」

「しっ!止めなよ兄上」


国王の前にはドワーフが二人。

一人は普段は豪放磊落な雰囲気を漂わせる様な優しい顔つきの男。

ヒゲを蓄え寸胴型の体型。

鍛冶で鍛えられたその腕は、丸太の如く太い。

もう一人はその弟。兄とは違い気の弱そうな印象を受けるが、冷静でしっかりと相手を見据える胆力がある。


そんな二人は後ろ手に手枷を嵌められ、王の前で正座させられている。

兄は怒り、弟は苦悶に満ちた表情をしている。


「いやいや機嫌が良くなるものさ。

目の上のタンコブがどうやら討伐出来た様だ。

生憎、その確認は出来ないけれど。

さて、君達二人には近々戦争を起こそうと思ってるんだけど、その為の武具を打ってほしいんだ〜」

「誰が貴様のような外道に!」

「挑発するな兄上」

「弟の方が優秀だと、兄は困るもんだよね」

「なんじゃと!!」

「兄上!」


弟が必死に止めるが兄は一向に怒りを収める気配が無い。


「まあそりゃそうだよね、家族を人質に取られてるんだから怒るぐらいは許してあげるよ。

さあどうする?断る?」


リベルタは選択を迫る。

答えなど1つしか無いと解っているだろうに。


「くっ……家族達には手を出すな」

「モチロン」

「兄上…」

「ありがとう、流石ドワーフは頭の出来が違うね」


と再び嗤う。

臣下達にドワーフを牢に繋いでおけと命令すると、またグラスを煽る。


「ああ…これがドワーフの血の味かぁ、ふふふ」


王はまた一人、悦に入る。

今度はあの兄弟でどう遊ぼうか、それだけを考えて。

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