廃坑を掘ろう
俺達は廃坑の中へと入っていく。
一番最初、俺が転生した場所は肌寒い感じがあったが、ここは若干湿っぽい。
地下へ地下へと掘られたその空洞の壁には、採掘したであろう痕跡が見え隠れしている。
地面には線路が敷かれ、トロッコが点々と存在する。
「オード、辺りに罠とか無いか?」
高さは3メートルあるか無いか、横幅は2人が通れるくらいのこの穴の中では、恐らく罠があるのではと思い、オードに魔力感知を御願いしようとしたのだが、
「いや、自分の魔力感知だと魔素を含んでない無機物とかは感知出来ないんスよね。
一番最初、ミストくんに気づくのが遅れたのもそのせいっスね」
という事らしい。
ううむ。俺も罠とかは見つけられないし。
というか俺、道具作成と体当たりしか出来なくね?
うわぁ、俺弱ぇ…。
仕方ない、壁役として頑張ろう。
痛覚は無いし、回復薬ゴリ押しで何とかなるだろう。
ああ、そう言えばオード曰くほぼ無機物の俺だが、ちゃんと回復薬が使える。
というのも、一応身体は魔物のそれであるらしく、回復薬を使えば傷ぐらいなら治る。
けど上位回復薬とかの臓器回復はよく解らん。
臓器あるのか?
…深く考えるのはやめよう。
「あの…」
そんな事を考えていると、ユキが手を挙げた。
「私の千里眼なら、大体30メートル範囲の罠なら見つけられますよ」
「おお!千里眼!師匠も持っていたっスけど、あれ便利なんスよね!流石ユキちゃん可愛い」
そこ、可愛さ関係あるのか。
しかしこういう場所だと魔力感知よりも役立つな。
何処かの回復薬だけ多量に持ってる商人職よりよほど頼りになる。ああ本当に。
「でもかなり入り組んでいるっスね」
「うん、ちょっと大変かも。…罠は無いみたいだけど、あちこちに隠し通路みたいなのが点在してる」
「確かに。これは厄介っスね」
感知出来ない俺は暇なので、いつも通りそこら辺の物を飲み込んで鑑定をしている。
鉄鉱石
鉄。武器などに幅広く使える。
トロッコ 魔力10
トロッコ。何でも載せて運搬出来る。
レール 魔力10
線路。トロッコを使う際の必需品。
魔鉄鉱 魔力35
魔力を含んだ鉄鉱石。武器や防具に使用すると魔法への抵抗力が上がる。
壊れたツルハシ
破損したツルハシ。採掘に必須。直せば使える。
て感じだな。
レールやらトロッコにまで魔力持ちとは、余程ここの廃坑には魔素が充満してるんだろう。
もっと鉄鉱石が欲しいな。
俺はそこら辺の壁に向けて回転頭突きを発動させる。
するとガラガラと音を立てて崩れる壁。
おお!鉄鉱石がいっぱいだぁ!
そう思ってるとオードから、
「何やっているんスか!崩落したらどうするんスか!
やるなら一言欲しかったっス!」
と怒られてしまった。
ううむ。こういうところが俺はダメなの解ってるのに、やってしまう。
見兼ねたのかユキが、
「でもこれで近道出来たよ」
と言ってくれた。
「そうっスけど……ん?」
「スマン…ん?どうしたんだオード」
「そうか!それで行くっス!」
「何がだ?」
「ミストくんのローリングバッシュで壁壊しながら進めば早く着けるじゃないっスか!」
「成程!……ってさっき自分で崩落気にしてたじゃないか!」
「大丈夫っス!オイラを信じるっス!」
オードには策がある様子。
ならそれに乗っかる方が面白そうだな。
「じゃあ、私は千里眼でサポートするね」
ユキもやる気のようだ。
2体の会話を受け、千里眼でサポートすると言ったユキだが、そもそも前提がおかしい事に動揺を隠せない。
このミミックのバッシュ、どうやら衝撃を与えるバッシュに回転が加わる事で吹っ飛び効果も付与されていると思われる。
のだが、ここの壁は鉄鉱石が採掘出来る。
つまり、普通の壁より幾分かは硬い。
硬いはず。
なのにこのミミックはまるでそれが普通であるかの様に、その壁を破壊してみせた。
そして崩落するかもと怒るゴブリン。
そりゃ最もだろうと思ったのも束の間、そのゴブリンから壁を破壊して進もうという、頭のおかしい提案をする。
それだけ壁を破壊すれば、崩落の危険なんてどころでは無いのに。
でも目の前にあるのは鉄鉱石。
魔鉄鉱よりも大分質が悪いけど、磨けばそれなりに売れるし需要もある。
何よりこんな大量にあるのだから、普通に持っていってもこの2体なら許してくれそう。
案の定、貰ってもいいかと問うと別に要らないから持っていってもいいと言ってくれた。
むしろ後で高品質のあげるよ、とミミックが言う。
このミミック、何故か知らないけど出してくるアイテム全てが高品質なんだよね。
理由は分からないけど。
でも着いて行けば確実にいいアイテムをくれる。
とりあえず、千里眼をこまめに発動させる準備を始めるのであった。
「おし、全員準備出来たか?」
「OKっス!バリバリっス!」
「準備出来たけれど…これは?」
見るとミミックの口から蔦が伸びており、その先にトロッコが括り付けてある状態。
そのトロッコにオードが乗せられていた。
「いや、俺の中に入っていると魔法とか使えないしな。
多分だけどユキは千里眼を俺の中からでも使えるよね?」
「うん」
そう、ユキは俺の中に入って貰っている。
一番安全だからだ。
そしてオードには中位魔法薬を持たせてある。
これで魔素切れの心配も無い。
渡している時にユキも羨ましそうに眺めていたので、ユキにも2本ほど渡している。
魔物や亜人は魔素を吸収して生きている関係上、魔素を含んだ物を食べると回復が早くなる。
だから中位魔法薬もジュース感覚なのだろう。
人間が飲んだら毒薬レベルだろうけど。
まあ、そんな感じで準備を整えたのだった。




