それぞれの思惑
私の名前はユキ。職業はローグ。
盗賊の上位職であり、ギルドでのランクはC。
亜人に排他的なこの世界で、努力と経験だけでスキルをも凌駕する戦闘力と実績を積み上げてきた。
私が欲しいのは強さじゃない、お金だ。
お金は絶対に裏切らない。
私は今までずっと裏切られて生きてきた。
だからこそ、私はこの世界で1人で生き延びてやる。
そんな私にゴブリン討伐の以来が来た。ランクはD。
本来はこんな雑魚の仕事など受けないのだが、このゴブリン達は廃坑を根城にしているという。
廃坑は昔は魔鉄鉱の採掘が行われていたという。
魔鉄鉱、魔素を多く含む鉄で装備等には欠かせない素材。
売ればそこそこの価値がある。
くだらないクエストかと思っていたけど、俄然やる気が湧いてくる。
今日は好物のシチューが食べられそうだ。
廃坑前まで来ると、ここがヤバイ事が解った。
ゴブリン程度でランクDという難易度に指定されていた理由が解る。
ゴブリンは本来、森を中心に活動をする。
理由は狩りをしやすく身を隠しやすいからだ。
しかし、この廃坑のゴブリン達は違う。
私が廃坑へと近付いた瞬間にほぼ真上から飛び降りて来たのだ。
確かにゴブリン達は奇襲を得意とする。
とはいえ、洞窟となってる廃坑上部から跳躍してくるなど、明らかにゴブリンの性能では無い。
恐らくはゴブリンリーダーが居るのだろう。
ゴブリンは群れで暮らすと言っても、実際はゴブリンリーダーを中心に構築された組織だ。
リーダーが居なければその群れの質はグッと下がる。
逆に頭を潰せば討伐など容易い。
まずは目の前のゴブリン達を倒して、リーダーを探して…と考える私の足に痛みが走る。
後ろを振り向くともう1体のゴブリン。
上からの2体は囮でもう1体から奇襲を受けたのだ。
素早く短剣を横薙ぎに振るも、アッサリ躱され2体の後ろへと陣取る。
くっ…足をやられたのはかなり痛手だ。
私は速度特化のスキルが多く、一撃離脱を得意としていた。
だが足を怪我したのでは、満足に戦う事は出来ないだろう。
慢心、傲り。
ゴブリン程度と充分な準備もせず、回復薬も下位が1つ。
煙玉が二つあるが、この数では逃げるのも厳しい。
ゴブリンがロングソードを振りかぶる。
私はそれを受け止め弾き返す。
どうやらこのゴブリン達は、廃坑内の魔鉄鉱で、自身の装備を強化しているようだ。
成程、これが狙いで住み着いているのか。
だがこれで私の勝ち目が薄くなる。
私は職業故、逃走と強奪に重きを置いている。
なので攻撃力の高い武器、というより素早さを求めた軽く足止め程度の武器なのだ。
相手の重装備に対して、私の武器は傷付けるどころか折れてしまうだろう。
どうやら私はここが死に場所のようだ。
そう覚悟した。
その時、目の前が炎に包まれたと思えば更に一瞬真っ暗になる。
慌てて固有能力《千里眼》を使う。
これは自分が最後に居た地点を中心にして、半円形約30メートル程度を立体視出来るというスキルだ。
そこで見た光景は驚愕の物だった。
まずあの炎を放った主は同族であるゴブリンだった。
そのゴブリンは規模から察するに火弾を使いこなしている。
しかも避けられ、空中に飛び退いたゴブリン達に地弾を食らわせていた。
有り得ない。只でさえ魔法を扱うのは難しい。
ゴブリンも一応は亜人の1種だ。知能はある。
だが、それを持ってしても魔法などかなりの才能が必要になる。
しかも2属性も操っている。
なんだこのゴブリンは…。
そしてもう1体。
私はミミックに飲み込まれたのだと気付いた。
だが様子がおかしい。
私を食べるつもりならわざわざゴブリン達と戦闘する必要は…
と考えている間に、私に怪我を負わせたゴブリンに体当たりを食らわせていた。
そのゴブリンは3~4メートル程吹っ飛び木々に身を預ける。
その光景に思わず口を開ける。
今のは何だ?
そのミミックの声が、私の今居る空間まで聞こえる。
ローリングバッシュ…聞いた事無いスキルだが、バッシュの類いで間違い無いだろう。
だが威力が異常だった。
本来のバッシュとは相手に衝撃を与え怯ませる程度の威力しか無い。
にも関わらず、このミミックは敵を吹き飛ばす程の威力を見せたのだ。
何なんだこの2体は。
私は一体どうなってしまうのか。
頭をブンブンと振り回す私は辺りを見回すと更に絶句してしまう。
思わず鑑定を使う。
私の固有能力の1つ、窃盗鑑定。
これを使うと相手の所持しているアイテムやお金、その効果等が見られる能力。
その鑑定結果に顔が引き攣る。
辺り見渡す限りの小瓶、その全てが中位回復薬以上なのだ。
中位回復薬1本だけで銀貨50枚は下らない。
それがなんと2000本以上あるのだ。
有り得ない、化物だ。
回復薬は製造国が限られている。
そもそも原材料であるヒイラ草は、魔素が多分に吸収出来る環境でなくては育たない。
確かにこの一帯は魔素はそこそこある。
だが、そこまでだ。
更に上位回復薬など貴族でしか買えないような物まである。
私は顔がにやけていた。
こんなにも金の成る木が目の前にあるのだから。
そうして考えている間にも戦闘は終わる。
ミミックは私を外に出した。
ああ、もっとあの場所に浸っていたかったなぁ。
お礼を言い、どうにか一緒に旅を出来ないか考えていると足の怪我を治してくれた。
私の鑑定はあくまでも効果が見れるだけで、所持品を盗む事は出来ない。
だから回復薬もどうやってねだろうかと思っていたら、アッサリと使ってくれた。
この分なら討伐するより仲間になって製造の秘密を探りたい。
そして私はお金持ちに…。
ミミックさんは表情が読めないが、ゴブリンさんの方は私に好意がある感じ。
ならば煽ててあわよくば、と思っていたらどうやら同行してくれるとの事。
なんて私は運がいいのか…。
暫く観察に専念する私がいた。
オイラはオード。しがない魔術師っス。
自分、衝撃を受けたっス!
なんて可愛らしい女の子何でしょう!
うわぁ、初めて感動を覚えたっス!
くうぅ。魔力感知の精度をもっと高めねば!
この女の子、狐の亜人っスか。
身長は自分の倍ぐらいだけど、ゴブリンも成長するっス!
その時には丁度この子と同じぐらいに…。
ミストくんが何か微妙な目で睨んで来てるっスが、オイラのハートはユキちゃんに釘付けっス!
ああ、誘ったら一緒に旅してくれないっスかね〜デヘヘ。
と頑張って誘ったら一緒に来てくれるっス!
イヤッホォウウウウ!!
ここからゴブリンとミミックと狐っ娘の旅が!
今!始まる!!
戦闘中、詳細鑑定で飲み込んだ女の子を鑑定していた俺。
個体名:ユキ
種族:狐亜人
属性:風
称号:疾風
職業:ローグ
固有能力:《千里眼》
窃盗鑑定
能力:疾風迅雷、風の加護、空中跳躍、強奪、速度補正、
回避補正、縮地
魔法:無し
んんー……。
多分この子、ギルドか何かから派遣されてるのかな?
見た目の可愛らしさに騙されるけど、結構修羅場踏んでそうだな。
…ん?
何かお腹の中で違和感を感じる。
多分固有能力使ったのかな?
まあ、いきなり謎空間押し込まれたら普通慌てるよね。
でもそれだけじゃないな。
窃盗鑑定だっけ?
多分これ、俺の中のアイテム見られてるな。
見るだけならいいか、ぶっちゃけ回復薬だらけだからな。
あー、たまには石やら雑草じゃない物を飲み込みたい。
味がある訳じゃないけど、何かこう…発見が無い。
この子を鑑定したら進化するかなーとか思ってたけど、普通に鑑定結果出ただけだし。
しかしバッシュってこんな強いんだな。
オードにもっと色々教えて貰おう。
ああ、女の子出さなきゃ。
よく見たら怪我してるな。
こんな怪我に中位回復薬なんて使わなくていいんだろうけど、生憎下位回復薬が無い。
まあ、大は小を兼ねるさ。
ぶっちゃけゴミの様にある。
元の素材がその辺の草と石だしな。
売れるなら売りたいが価値も解らんし、多分そんな高くないだろ。中位だし。
うむ、これで大丈夫だろう。
あとは安全なとこまで見届けて…っておいおい。
オードの奴、釘付けじゃないか。
俺も確かに可愛いなとは思ったけど。
でも詳細鑑定したから解る。
多分この子、盗み目的でゴブリンの棲家に来てる。
あんまり厄介事には関わりたくないんだけどな。
まあ、一時的でも仲間が増えるのは有難いか。
いざとなったら回復薬ゴリ押しで逃げよう、うん。
文章が変なところを少し直しました。




