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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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「でも結局、僕の記憶を共有させてもそれは完全とは行かなかった」


リベルタは長々と話をしている。その間にも何度か攻防はあったものの、傷一つ付ける事すら出来ないでいた。

なのでグランは話に適当な相槌を打ちながら、自身の回復とフェリエとの連携を企てていた。


[フェリエ、生きてるか?]

[腕一本で死ぬ程度なら魔王討伐なんか出来なかったわよ]

[良かった]

[リベルのあれ、どう思う?]

[記憶の事か?]

[ええ。完全じゃないとは言っていたけれど]

[今聞いてただけでも結構違いがあったな。国の外壁の事は結局外部から得た情報だったし、陰謀やラムズの話とか。多分要所要所しか見せられないんだと思う]

[つまり、まだ能力を完全に制御出来てなかった訳ね]

[少なくとも"昔は"だけどな]

[けれど変じゃない?]

[何が?]

[あのバカの話と記憶だと、外壁の魔法陣の効果は『リベルを認識出来なくする』みたいな効果だった訳じゃない?けれど実際は…]

[言われてみればそうだな。国民はアレだが俺達はリベルを認識出来ていたし、どっちかと言えば『リベルに会おうとしても何故かその気が無くなる』みたいな]

[多分、魔術がそこまで十全に扱える訳じゃないのよ。元々リベルの魔法も全然レベルが無かったじゃない]

[確かに。つまりまだ勝機はあるな]

[ええ。グラン、貴方どこまで知ってる?]

[嫉妬の魔王の魔力とアイツが融合しているって程度までなら]

[そう]

[やっぱり読めないんだな]

[ええ。『思考把握(オミトオシ)』でもあのバカの思考は読めない。まるでヘドロのようだわ。…役に立たなくてごめんなさいね]

[キャラじゃないだろ]

[ギルドマスターで敬語で話すアンタに言われたくないセリフね]

[ハハッ、お互い様って事だな。……そろそろ動けるか?]

[レディに無茶させるわね。壁役は任せるわよ]

[昔を思い出すな]

[絶対あの頃に戻すのよ]


リベルタはなおも自分語りを続けていた。如何に自分は崇高な思念を持ち、周りを導く存在か。

実際、彼は国王としては有能だった。

ここしばらく、国内での事件はほぼ起こっておらず、また各所への道の開拓、整備を行っており、昔はただの土道だったのが、今では馬車が通れる幅で更に石畳になっている。お陰で各方面からの交易が盛んで大都市とまで呼ばれようという勢いである。

安全で、通行しやすく、色々な物が集まる街。だが必然的に発展していく中で亜人や魔族の姿はほとんど見なかった。

普通の街でなら、罪人や奴隷に亜人や魔族を連れ歩くのはそんなに珍しい事では無い。だがこの国ではそれが極端過ぎるほどに見掛けなかった。そして広まる。亜人魔族排他国家と彼らへの差別。だがそれだけでは無い。

『失楽園』で見た記憶の中には、城の地下にある牢屋に幾人もの亜人達が収容されている光景。その数は数百といったところだろう。中には心臓の部分だけが大きく抉られたものも存在する。

そして心臓にはある噂があった。

『あの国では心臓を国王へ捧げる風習がある』と。

勿論そんな風習は無い。だがその噂を探る内に一人の少女に行き着いた。

彼女の名はユキ、かつて俺達が訪れた亜人の街のあの子だ。ギルドマスターへと上り詰めても何もして来ないリベルだったが、あの子との接触だけは避けさせている感じだった。

どうやらあの子は、リベルの秘書のような扱いになっているらしい。その子がギルドに加入し、国から出される依頼だけを嬉嬉として行う姿に最初は違和感を覚えた。ギルドでは明るく真面目で、ギルドの者もいつしか亜人という垣根を超えて普通に接していた。

しかし、彼女は日に日に暗い影を落とすようになっていた。その頃からだろうか、リベルは遠征軍を率いて亜人の村に出掛ける事が多くなる。亜人達には悪いと思うがチャンスだとも思った。

そして彼女に接触、事情を聞けば、両親を人質に取られていた。しかもリベルの部屋には多量の心臓が保管され、血を飲む姿が印象に残っているという。


ここで一つ思い当たる事があった。

それは亜人領に踏み込んだ際、リベルは『血癒』を俺に使ってくれたらしいのだが、その力を吸血鬼の能力と勘違いされた事があるらしい。魔族の中には血を飲む事で能力を上げられる種族がある話は聞いた事がある。しかし、リベルは普通の人間でありそんな事をしても身体を壊すだけだろう。

いや、アイツは今本当に人間なのか?そう思い込んでいるだけじゃないのか?


そうしてギルドマスターという地位と『剣聖』という名声、更に男爵として社交界に貴族との会談。全てを駆使して結論に至った。

今、アイツの身体は半魔半人と化している事を。

理由はおそらく、記憶の中で見た魔王討伐直後の蛇から噴き上がる魔素のせいだろう。記憶が飛び飛びなせいで確証は無いが、今の話で確信した。


魔王はまだ死んで居ない。

もし魔王が、死んでも誰かに乗り移って生きながらえるとするならば…。


[フェリエ]

[あら、なぁに?]

[悪いが周りを先に殲滅しておきたい]

[そっちを先に言うのね]

[…。そっか、そういや心が読めるんだったっけ]

[考える事は同じね]


覚悟と決意。フェリエも同じ結論に辿り着いていた事に、少しの安堵と巻き込みたくなかったという想い。そしてもう二度と言える機会が無いこの気持ちと共に、俺はフェリエへと念話石を使わず言った。


「フェリエ。ずっと好きだった、愛してる。だから俺と死んでくれ」


その言葉に顔を赤らめるほど青くは無いフェリエは、躊躇いなく、そして立ち上がり言った。


「アタシはリベルが好き。だから貴方の気持ちには応えられないわ。だけど三人の関係は大好きだったわ。だから──」


一拍置き、殺気を込めながら言う。


「皆、ここで死にましょう」


夜は明け、フェリエの背に日が昇り照らす。その表情は影に隠れるも、その様相はまるで『鬼』のような姿だった。

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