SS リベル Last
ラムズさんとの一件の後、僕は国民の支持もあって国王になっていた。この国では世襲制のように、子に跡目を継ぐという事も無く、市民全員の投票で決まっている。
僕も前国王の死という混乱を正す為、弾除けの役割として国王として立たされた事は分かっている。おそらくは貴族の差金だろうが、もうそれも時間の問題だ。
壁の魔法陣ももうすぐ書き換え終わる。そうすれば直ぐにでも傀儡になってあげるよ。勿論、君達もだけどね。
そんな中、ギルドの遠征軍が帰還した。
まだ情報統制が不十分の中、グランは謁見の間まで来ると僕を呼び出すように申し出てきたそうだ。何とも情報の早い事で。
「リベル!お前…大丈夫なのか?」
「こらっ!口を慎まんか!この方は今や」
「良い」
「しかし…」
「大臣、悪いが人払いを頼む。二人きりで話がしたい」
「……。ご命令のままに」
大臣はこんな僕でも国王として立派に応対してくれる。この大臣は残してあげなきゃ。
「久しぶりだね、グラン」
「リベル」
「どうしたの?変な顔して」
「お前、何があったんだ?」
「別に。でも無いか、色々あったよ」
「そっか」
「調査」
「へ?」
「調査、三人で行くって約束してたよね」
「あ、ああ。でも、お前はもう国王で…」
「今夜、月が真上に昇る頃」
「…………分かった」
二人はそれだけの言葉を交わすと、もう用は無いと言わんばかりにグランは謁見の間を後にする。
他の者ならいざ知らず、僕とグランは家族なのだ。血が繋がってなくとも、前世の記憶があっても、本当は歳がグランの方が上でも、僕らは同じ歳の兄弟であり家族なのだから。
真夜中、月が真上に昇り、辺りを白く輝かせている。
「こんな世界でも月は綺麗だな」
「なーに感傷に浸っているのよ」
「国王様が城抜け出してこんなとこ居るって知れたら…はあーあ」
後ろから声が掛かる。振り向けばグランとフェリエが昔みたいに軽装に身を固めて立っていた。
グランはギルドでは師範と呼ばれるほどの剣術の達人と化していた。遠征軍を率いては各地の問題解決に奔走している。
フェリエは商会長を束ねリエール商館なるものを建ててしまった。生鮮食品を取り扱い、たまに交通整備なんかも担う大手となっている。
二人とも見ない間に斜め上の方向に進んだものだ。人の事は言えないが。
「で、正式に国王様になっちまう前に、最後の約束を果そうっつー訳だな」
「そういう事。これで後腐れ無く国王出来ると思うとボクも嬉しいよ」
「?」
「どうしたの、フェリエ」
「いや、今一瞬リベルの雰囲気が違って見えた気がして…」
「ふふっ。フェリエも可愛くなったように、僕も少しはカッコ良くなれたって事かな?」
「か、可愛く…」
「おい二人ともー!何してんだよ!行くぞー」
二人で会話していると、既にあの大穴の中に飛び込もうとしているグラン。まるで昔のようだ。
僕ら三人は、以前の約束を果たす為、あの大穴の前に集まっていた。お互いにあまり自由に動けなくなってはいるものの、目を盗んで国を出るくらいならば余裕である。多分、周りの混乱は計り知れないけれども。
そうして集まった僕達は、今大穴の中を進んでいる。
ぶっちゃけてしまえば、この探検に意味は無い。既に討伐後、編成隊がギルドと軍で組まれ、何度も調査が行われており、洞窟内部も人の手が入り、もはや一種の観光スポットのように歩きやすくなっている。まだ軍関係者しか入れないようになっているものの、魔族領も魔王が討伐された事で大きく後退し、僕らは更に国土を広げ発展に繋がるという働きをした事になった。実感無いなぁ。
最下層、と言っても一本道をずっと下ってきただけだが、最奥の広間へとやって来れた。
魔王の亡骸は国で回収されており、鱗や皮は防具に、牙は剣へと加工され、目玉や内臓も薬と、普通の魔物と同じように素材と化している。その為、この場所にははっきり言って何も無い。
強いて言うならば、広間の更に奥の方にある、硬すぎる上に持ち上げるのも困難な謎の宝石が嵌っているぐらい。
「いやー、なっつかしーな」
グランは広間の天井を見上げながらそう独り言ちる。それを聞いてか、フェリエも部屋の真ん中に腰を下ろし呟く。
「アタシ達が魔王を倒した…なんて、今でも信じられないわね」
「だな。結局は止めはリベルが倒した訳だけどさ」
「皆の連携があったからこそだよ」
そうして昔話に花を咲かせる。
フェリエはあの頃、家族に捨てられ不安だった事。
グランは一般人である自分が勇者の護衛なんて出来るか、本当は悩んでいた事。
僕は迷って悩んで最後には諦めてしまうそんな自分が、勇者という重荷を背負って行けるのかという事。
皆それぞれ悩み苦しみ、それでも今こうして居られるんだと、昔話を交えながら会話した。そっか、皆も色々思う事があって、それでも頑張って道を切り開いていたんだね。
そうして何時間喋り込んだのだろう。気付けば壁の灯りが薄く光っている。壁に取り付けられた魔道具は、時間と連動して朝になると灯りが光を放ち始め、夜につれて消えていくというもので、主に洞窟や炭鉱など、外の様子が分からない場所での生活リズムを崩さないように知らせるものである。
それが光ったという事は、どうやら外はもうすぐ明朝らしい。
「ヤバイな、そろそろ帰らなきゃ」
そう言って立ち上がると、皆もそれに続きそしてグランが先導を買って出る。
「こうしてると、ホント昔みたいだよね」
「だな。って、リベル?どした?」
グランとフェリエが入口へ向かう中、僕だけは広間の最奥へと足を運ぶ。何しているんだとグランとフェリエは近づくと、僕はあの宝石に手を置いた。
「そういやその宝石、動かす事もできないみたいだし一体なんなんだろうな」
「ねー。研磨すれば凄く綺麗になりそうなのに」
「これはね、こう使うものなんだよ」
僕が魔素と能力素を同時に込めたその瞬間、広間を一瞬で満たすほどの魔力が洞窟内いっぱいに瞬時に広がる。
同時に、宝石が嵌っていた場所には小さな穴が空いたと思うと、そこから数匹のあの蛇が姿を現す。
「そんな…嘘…」
「おいおいおいおい、リベル!こりゃどういう…お前、一体誰だ!!」
どうやらやっと、僕が彼の知らない『僕』という『ボク』である事を理解し、両剣を引き抜き僕へと構える。
「何って、ただ質問に答えて動かしただけだよ。魔素を無限に生み出し、魔物を魔王へと変える穴の封印をね」
「それって…」
なお濃度が濃くなり、もはや普通の人間では絶命してしまうほどの猛毒と化した部屋の中で、フェリエは現実が信じられないのか、首を左右に振るばかりで動く事が出来ないでいる。
グランは僕へと剣を構えるが、未だ僕と対話出来ると思っているのか、攻撃してくる気配は無い。
そうしている間に、蛇達は二人へと襲い掛かり始めた。
「ぐっ。リベル!どうしてこんな…ぐぁあ!」
何も答えず、来た道を引き返す僕を見て、グランが声を張り上げる。蛇達が道を塞ぐが、昔よりも更に強くなった彼に蛇達が数匹で攻撃しているにも関わらず、僕の方へと向かって来ている。
「リベル!リベル!!」
流石に鬱陶しいな。そうだ。
「どうしてこんな、か。君なら、君達ならいいか」
「何を言って──」
「『失楽園』」
一瞬、リベル、グラン、フェリエの時間が止まったように身体が硬直する。その後、何事も無かったかのように歩き出す僕。
声を必死に張り上げようとするグランだが、先程の能力のせいか、動く事すらままならない。
フェリエも同様で、もはや放心状態になっている。
大罪能力 『失楽園』
これは僕の記憶と経験を、そのまま相手にも共有させる能力で、掛けられた相手は10秒程度の間でここ数年の記憶を叩き込まれる。普通なら自我が崩壊してもおかしくないのだが、これは元々あった記憶として処理されるのか、これを受けて廃人になった者は未だ一人も居ない。
ま、これ以外の能力で人形になった者は居るけれどね。
グランは辛うじて後を追ってくるが、背後からはグシャッと何かが潰れたような鈍い音が響く。振り返ったグラン。フェリエがどうやら死んだらしい。洞窟内に慟哭が響く。あ、洞窟と慟哭って響きが似ていて面白いな。
僕は後ろを振り向く事無く、そのまま王国へと戻る。
封印を解いた事で、今頃王都は僕の望んだ姿へと形を変えているだろう。
これで過去の後腐れも精算出来た事だし、次は世界を変えなければならない。国王なんていうチンケな存在で満足しては居られない。
大穴の出口から出た瞬間、奥から悲鳴とも叫びとも似つかぬ大声が響き渡る。
「リベルゥゥ!!!いつかお前を元に戻──」
僕はそっと大穴を蛇の身体で塞いだ。もう聞く必要は無い。僕は『あの御方』の為、そして世界平和の為にこの身を捧げなければならないのだから。
誰がそう呼んだのか、僕は『嫉妬の勇者』という名を世界へと轟かせて、国王としての活動を始めたのだった。
21って〇数字で出ないんだよね。
これにてリベル視点(ちょいちょい別視点あった気がするけれど)完結です。
ちょっと早足になり気味だったのは仕事なので勘弁して頂きたい。
多分誤字脱字ありそうだなぁ(´・ω・`)
一人でこれだけって事は…七人やったら800超えるな。爆散しそう。
また次からは本編になります。短いのが連続するかと思いますが、出来るだけ毎日投稿維持を目標に書きたいと思いますのでよろしくお願い致します。
…たまに見るぐらいのノリでお願いします箱|ω・)




