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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
110/123

SS リベル⑰

未だ蛇の猛攻を受けるグランの顔はそれほど酷いものでは無かった。あの内向的で放っておけば壊れてしまいそうな危険性があるリベルが、無遠慮に自分を頼ったのだ。これほど嬉しい事は無い。

元からの性格なのか、それとも過去にやっていた"あいどる"?とか言う職業が原因なのか、リベルには第一印象よりも暗い印象を受けた。ざっくり聞いた感じでは後者のようだが。


元々、転生者でしかも前世の過去を持つ者は総じて内向的な者が多い。

自身の死に不満やトラウマを抱えていたり、記憶を持つ事で前世と今世の能力差に苦しんだりと様々である。中でも、前世が異世界だと転生すれば必ず記憶を継承する、そう言われて普通の者は最初安心するのだそうだ。大切な仲間や忘れたくない思いがあるとか言って。

そうして転生した者は気付く。自身が死んでも記憶が引き継ぎ続けられる事の恐怖に。

何度となく自分には死が訪れる。種族的にだったり、排他的にだったり、受動だったり戦地だったり。だが死んでも殺される、死ぬ瞬間の記憶はあり、更に死ぬ事で忘れ去るという手が打てなくなる。必ず自分の死と向き合い続け無ければならない。

やがて、自身の死に向き合いきれなくなるほどの転生を行った者は、魂がボロボロに摩耗して消滅する。と、研究者が話すのを聴かせてもらった事がある。

リベルは途中からげんなりしていたが、そもそもそこまで至るのに何百年と掛かる話である為、エルフにでも転生してない限り信憑性の低い話である。というのも、転生する毎に記憶がどんどん魂から離れていってしまう為、長命でも無ければそうそうそんな悲惨な事にはならず、やがて自分が何者だったかさえ忘れてしまえば、そこが本当の死という訳だ。


ま、だからと言って生き返るのだからとさっきみたいな無茶はやめてほしいもんだがな。保証も確実では無いんだし。

さっきのは多分、前に限界値を測る時に使った『加速』の応用技法だろう。物凄く速く動けるが、その分反動もデカイ危険な大技で、『血癒』で無理矢理回復して動いているけど、フェリエや俺にも『血癒』をもう何度も使っている。『血癒』にゃ当然血が多量に要る訳だが、戦闘中流した血と俺らに分け与えたもの、更にあの無茶な技法のせいで、もうあと何度使えるか分からない。

フェリエの方は持続・継続回復であり、掛けておけばある程度効果はあるが、『血癒』ほどの即時効果は無い。


考えている間も敵の攻撃を幾らか擦りそうになる。敵は蛇でおそらく毒がある。牙にあるのか、はたまた身体全身にあるのか分からないが、状態異常の方ならばフェリエが一発で治療してくれる。ただ即死効果があるかも知れない。情報が少なく仲間がいない内は、決して前に出ない。あくまでも今の俺の仕事は足止めだ。倒す必要は無い。だから攻撃を『流水』で逸らしつつ、敵の体格やら攻撃を出来るだけ見続けた。

攻撃が幾らか顔を横切って地面へと音を響かせていたそんな時、目の前に光の壁が出来、攻撃が一時的に止まる。


「お待たせ」

「遅れました」

「なんだ、早かったな」


どうやら予想よりも少し遅く(・・)駆け付けてきたようだ。『血癒』での損耗がそれほど激しくなっているのだと察する。


「敵の攻撃パターンだけど、どうやら自身の配下っぽいのを使役してくるみたいだな」


周りを見るように首を振ると、リベル達は辺りに複数の影があるのを確認する。


「さっきもアウリスリザードやらアウリスタートル系の魔物が襲ってきてたぜ」

「大丈夫なの?」

「見りゃ分かるだろ?」


そう言ってフェリエに光弾を誘導させると、側には魔物の死体が幾つも転がっていた。数にして10や20では効かないだろう。


「流石にあれ相手にしながら無傷じゃなかったが、あの雑魚共は何か魔物っぽく無かったな」

「どういう事?」

「なんつーか、攻撃がスゲー単調で突進とかしかして来ないんだよな。あの蛇もそうなんだが。いや、蛇の方は時折後ろに引いたと思っていたら、周りを魔物でかこまれていたりな」

「………!」

「何か面白い顔しているな」

「もしかして…」


グランの話をある程度聞いた僕は、ある確信を持って行動に移る。



敵はなおもグランへと攻撃を続けている。そのすぐ後ろではフェリエと僕が互いに背中合わせになるように立っている。顔だけ蛇の方を向けていると、蛇が突如攻撃を止めた。その瞬間、周りに居た魔物に動きがあったとグランから声が掛かる。


「数21、全方位から!来るぞ!」


そう言って周りを警戒すれば、魔物の影が蠢くのを捉える事が出来た。その動きに合わせ、斬り掛かり、たまに蹴りなどの体術も交えて捌いていく。そしてその間蛇は攻撃を止め、全ての魔物を捌き終えた途端、蛇はまた猛攻を始める。


「やはり…」

「どういう事なんだ?」


確信を得た僕に、グランは攻撃を僕らに当たらない位置へ逸らしながら聞いてくる。


「多分、僕の『意識収束』と同じで、魔物を操作する類いの能力なんだと思う」

「だから攻撃が単調に思えた訳か」

「他の魔物が攻撃する間はそれに集中している訳ですね」

「多分だけどね」


そうは言うがほぼ確実にそうだと思っている。魔物であっても能力や魔法は使える。猛攻を止める意味が無いと思っていたが、もし攻撃の手を休めるのではなく、能力を使っているが故の行動だとすれば…。

僕が『意識収束』を使っている事もヒントとなった。僕も今でこそ集中すれば多少動けるものの、当時は発動中全く動く事が出来なかった。どういう能力はまだ解明出来ていないものの、それが操作系能力だというのはすぐに理解していた。

魔物を数十も動かすのだから、きっと相当な集中が必要なのだろう。それに、グランが帰り道にいきなり魔物が出現した、と言っていたのも、恐らくは操る事で人形のような状態にしていたんだと思った。僕らが穴へと入り、奥に進むのを確認した後、通路へと魔物達を操って退路を断つ。僕らが最奥に来たのを確認、その後退路へと立ち塞がれば…。

分かってしまえば単純な事だ。僕も『意識収束』を使えば気配を極力薄く出来るのだから。

それ以上に敵の知性に驚愕した。魔物の中の王。まだ目の前の蛇がそうだと確証が無いのだけれど、それでも所詮は魔物、そんな意識が心の奥底には眠っていた。

けれど今は違う。心の底から厄介な相手だと理解させられた。

魔物も知性ある者なのだ。計画し、計略し、計算し、計策する。


敵が考えなしにタフな魔物から、考え謀る厄介な魔物となった瞬間だった。

だが裏を返せば、突破口となりうる事を僕は理解したのだった。


「僕が同系統の能力を持っていた事と怨むといい」


僕達は反撃へと打って出る。

⑳になる前に終わりそうです。長々とすみません。纏めて書ける時間があればなぁ。


月末に近付くほど、杜邪の能力が八段階ダウンしていく…

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