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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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SS 最果ての魔術師 2

私は目を疑った。

その場に居た人間が、尽く力無く果てる様を。

あの屈強な騎士達が。


何が行っている?

奴は一体何をした?

魔法を行使した様子は無く、能力を使った痕跡は無い。

だが私は知っている。


以前、龍種と相対した時にたった1度だけ見た力。

伝説とさえされる”能魔融合”、これしか無い。

それは自身の能力素に魔素を吸収して二つを混ぜ合わせるというもの。

魔素は強大な力を得る一方、制御が難しく扱える者が少ない。

能力素は生まれ持つ力であるが故に、扱いは簡単だが威力がそこまで出ない。

練り込み─練度を上げる事で威力が増す。


そんな相反する二つを混ぜ合わせるなど、身体は疎か魂すら耐えきれず消滅する。


だが、そんな事をやって退ける存在が龍種以外に1つだけ存在している。

それは異世界からの転生者、つまりは勇者と呼ばれる存在。


異世界を渡る程の魂の強さを持ってすれば、能魔融合は行えると言われている。

史実上、過去にも魔王に対して勇者が使ったとされる記実を見た事があった。



だが、私はそれは御伽噺の中の出来事だと、心の中では思っていたのかも知れない。

私の最高魔法である”薄氷”が粉々に砕けていなければ。



その少年は語る。ただ静かに無感情のまま。


「おや?ボクの攻撃に対処出来るとは思っていたけれど、まさか耐えられちゃうなんてね」


少年は嗤う。無邪気に嗤う。


「何故こんな事をした?」


私は震える手を抑え、絞り出す様に問う。

少年はニタリと口を三日月状に釣り上げ、


「ごめんね。ボクは魔物は滅べばいいと思ってるんだ。

だからお兄さん、死んでよ」

「何を…何を言ってる。私は人間だ、魔物では無い」

「お兄さん、魔法が使えるよね?つまりは魔素を吸収している。

それってつまり、お兄さんは魔物と同じって事だよね?

だからボクはお兄さんを殺して、世界を平和にしてあげるんだ。

魔物は敵、魔法使いも敵。

魔素を持つ者は全て敵。ね、簡単でしょ?」



少年の言う事が暫く理解出来なかった。

少年が言う通り、魔法使いは魔物と同じく魔素を吸収して生きている。

人間が元々持っている能力素を捨てて。

だから、魔法使いは忌み嫌われる傾向がある。

だが嫌われはすれど、殺そう等と狂った行動を起こす者等居ない。居ないはずだった。


恐らく、この少年はある宗教に関与している。

私の予想が正しいなら、私は彼等の敵でしか無い。

それが本当なら…私は彼女を巻き込んでしまったのか。

私と出会わなければ、こんな結末にはならなかっただろうに。

私は…私にはもう…。


「さて、懺悔は出来た〜?

そろそろ衛兵が集まって来る頃だし、君に罪を被って貰わなきゃならないんだ。

だから少しの間だけ操られて欲しいんだ」


恐らくは洗脳の類のスキル持ち、か。

衛兵もグルだろう。

私は魔導師としてはかなり有名となった。

私が捕まれば、それこそ魔導師達の立場は…。


いや、もう遅い。

私は気づかなかった。

この少年が少しずつ内部から蝕んでいた事を。

一介の魔導師如きが気付けるものでも無いだろうが、私にも意地がある。


生きる意味や希望が無くなったからと言って、何も無せずただ傀儡になるのは癪だ。


どうせ罪は私に全て降り掛かるのだ。

ならば、ここでこの少年を巻き込んで終幕としよう。

どうせ防がれるだろう。

だが、もうこの国に居場所は無いだろう。


この国の宗教”勇者教”は勇者こそが神であり、魔を持つ者は全て敵なのだから。



「すまない、私は傀儡等という道は歩みたくない」

「まあ、最初は皆そういうのさ。でもそんな事言ってられるのも今の…」

と言いかけて、私の魔法陣に気付く。

だが、もう遅い。


「くっ!自爆魔法かっ!!」

「散る時は華々しく散ろう!共にな!!

終焉の災禍(イクスプロージョン)!!!」






だが、私は生きていた。

あの魔法は黒炎を圧縮した球体を投げ、着弾した場所から半径300メートル以内に焦土を巻き起こし続けるというもの。

だが、奴は着弾直後、咄嗟にその球体の軌道を逸らしてみせた。

あんな事が出来るとは…勇者とは最早化物の領域だな。

お陰で私にも転移魔法を使う余裕が出来た。

幸か不幸か。


さて、ここは最果ての地。

咄嗟の転移にしてはいい場所に出たものだ。

あの少年と対峙したいが、あれは私の手に余るものだ。

ならば私は彼女を蘇生させる準備を進めよう。

なに、私が長年掛けて習得した闇魔法の真髄、延命魔法。

本来なら彼女と永きを共にする為に開発を進めていた魔法。

だが彼女はもう居ない。

居ないならば、この魔法の更に先を見つければいい。

丁度ここは魔物も人間も居ないが、龍種と魔王が撒き散らした魔素が高濃度に漂っている。

普通の人間には毒だろう。

魔物に取っては毒でなくとも近寄りたくはないだろう。

ならば私が独り占めをしても、誰も文句など言うはずが無い。


私は禁忌を犯す研究を始めたのだった。

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