SS リベル⑫
「グラン、左!」
「おっしゃあ!」
僕らは立ち回り方を話し合い、そしてそれらを元に実戦の訓練をしている。勿論、周りの魔物を間引きながら。
「フェリエ!今だ!」
「は、はい!『光弾』!」
光の弾が魔物へと着弾すると同時に、当たった場所が大きく凹み血が噴き出す。
「やった…やりました!」
笑顔になるフェリエを見て、このやり方で正しかったのだと実感する。
最初、グランが前衛、僕が中衛、フェリエが後衛の陣形を取って戦ってみたのだが、思いのほかうまくいかなかった。というのも、フェリエの魔法は遠くに行くほど威力が落ち、近くであるほど威力が上がるというものだった。その為、後衛では火力にならず、ならば支援回復役をお願いしたのだが…。
結論を言えばかなりの問題があった。
僕も魔法は明るくないものだから、アドバイスとかが出来ないのもあったのだけど。彼女は今まで殆ど外に出た事が無く、あまり人と会わない生活をしていたらしい。それに魔法も人前で使う事は無かった。
つまり何が悪かったのかと言えば、彼女は彼女自身には回復が出来るものの、他者にはかなり不安定にしか使えない事だ。
『祝福の光』と『大いなる祝福』は継続回復な為、発動さえしてしまえばあとはそれを維持するだけなのだが、他者に掛ける場合、魔力を多く使ってしまう傾向があり、すぐにガス欠を起こす。回復自体は問題無いが、他の魔法を使えなくなってしまう。一応それでも緊急回復にはとても心強く、僕の『血癒』と違い遠距離から掛けられるし傷の治りもかなり早かった。
ならばと『大魔を祓う煌めき』での防御支援も頼んでみたのだが、彼女が言う通り15秒程度しか持続せず連発も難しい。ここぞという時に使うぐらいか。それに僕の『意識収束』との相性もあまりよく無い。
じゃあダメ元で前衛をやってもらって驚かされた。
フェリエは魔法の鍛錬は欠かさずやっていたものの、実戦経験が殆ど無い。だから気付かなかったのだろう。
彼女が言った『岩がちょっと凹むくらい』というのは、距離を長く取って撃った時の事だ。それに気付けたのは実際に試し撃ちしてもらった時の事だ。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いえ、いつもより威力が無いみたいで…調子悪いのかな?えいっ!えいっ!」
魔法は魔力を注ぐ事で威力や効果が変わる。それに加えて魔法陣や魔道具、魔晶石などを複合させる事で、効果の質や特性も変えられる、らしい。
フェリエは魔力を上げて撃ってるみたいだけど、威力が変わる気配は無い。光自体は大きくなっている辺り、攻撃範囲は大きくなっているようだけど。…範囲って事は射程も変わるんだろうか。
グランの『月影』は能力素を込めた分、能力の射程が変わる。けどその分命中率が下がるのが難点ではある。
僕の『加速』も能力素を込めれば速度は上がるけど、止まる位置や動体視力が追い付かなくなる欠点がある。
じゃあ彼女のそれは、本当に範囲が大きくなるだけだろうか。
「フェリエ、済まないけどちょっと対象との距離を縮めて撃ってみてくれるかい?」
「え、ええ。構ませ…構わないけどそれじゃあ後衛が」
「いいから」
「? はい」
結果、対象に近いほど威力が増す事が分かった訳だ。
それに彼女は魔法の扱いが素晴らしくうまいのか、篭手の周りや拳のすぐ前に光弾を滞留させる事で、拳撃や蹴撃と同時に魔法を放つ事も出来る。
そしてグラン同様かそれ以上に『身体狂化』と『意識収束』の組み合わせで、身体能力も卒無くこなせる。ただグランと違うのは『身体強化』は自身の体調を絶好調に維持する、とかいう名前負けな効果に対して、『身体狂化』は自身に掛かるリミッターを解除する感じの能力らしい。レベルが低い為そこまで反動は無いようだけど、自身への回復でそれすら無効にしている。あと魔力による能力発動と普通に発動では微妙に違うらしく、フェリエが使う『身体強化』はグランと違い防御力寄りに傾いているみたいで、発動中回復などはしてないのに傷付きにくかった。
とまあ、結局前衛をグランとフェリエ、中衛を僕という事で折り合いを付ける事になった。正直不安が残ったものの、先程の連携はなかなか手応えを感じるものだった。同時に恐怖もした。
この世界では魔物を倒すのは当たり前の事で、それが生きる術になっている。フェリエも魔物を殺す事に違和感も嫌悪感も無く倒していた。僕も最初は抵抗があったけれど、そういう事なんだって事は納得はしている。けれども、こう笑顔で喜びを表現されると何だかなぁと思ってしまう。認識の違いか、教育の違いか、倫理観の違いか。
でも億さず立ち向かえるというのは、この場に取ってとても重要で大事な事でもある。及び腰で怯んでいるよりも、倒す喜びや役に立てる実感を得る事も。僕個人がどう思うかなんて関係ない。
そうしてまたモヤモヤ考えている間に周りの魔物を殲滅し終わって、笑顔で近寄ってくるフェリエ。顔や服は黒く染まっており、魔物の血でベトベトである。
行動は幼いが、プロポーションはとても良く、魔物の血と知らなければ割と扇情的な…。
「おいリベル」
「はっ」
「大丈夫か?」
「え?な、なんで」
「いや、さっきから顔が青くなったり白くなったりしたと思えば赤くなるし」
「気の所為、気の所為だって」
流石身内。グランは案外人の事見ているからなぁ、気を付けないと。
そんなグランはフェリエが『大収納』から出した布を濡らして拭いてやっている。まるで兄弟みたいな光景だ。
そう呑気に思えるが事態はあまりよくない。
首都はまず陥落しないだろうけど、散った魔物の数が桁違いだ。幸い、魔物は村よりもあの魔素の奔流に向かう者が多いのが救いだったが。けど念話も繋がらないし。
だから目的は当初と変わらず魔物の殲滅及び魔王の捜索。魔王の方はおそらくだが魔物が大量に湧き出ている辺りが怪しいと睨んでいる。けれど、フェリエにそれをどのタイミングで話すか。
勇者というのは秘密にしておきたい。僕自身が隠したいのもあるけれど、勇者だからと特別扱いされて、今みたいな軽い感じで接していられなくなるのは何か嫌だ。それにフェリエが勇者を利用する勢力じゃないとも言いきれない。
けれど魔王討伐を知れば、そこから僕の推測をするのも容易だろう。嘗て軍団を率いて勝てなかったとされる相手に、たった二人で挑もうとしていた訳だし。
いや、でもやっぱり…うーん。
モヤモヤと考えはじめるリベルを見るグラン。またいつものかと溜息を吐く。そしてもの凄く軽い感じで、流すように言った。
「あ、それとフェリエ、リベルは勇者だから魔王討伐しに行きたいと思ってる。だから覚悟しとけよー」
僕の思考は一時的に停止した。
夜勤で投稿時間が(´・ω・`)
月末だけ冬眠していたい。




