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失敗勇者の邪神転生  作者: 杜邪 悠久
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SS リベル⑨

「サバイバルに必要なのは、如何に過しやすい地形に拠点を置くかが重要なんだ。それにここはこうで──」


僕達はすっかり打ち解けていた。

ユキはどうやら遊び相手が居なかったようで、普通の遊びよりも冒険に興味があったみたいだ。

それに…この子もきっと転生者だろう。それも異世界の。この歳にしては僕らの話す内容の理解度が高く、他の子らよりも落ち着いている。

人伝いにしか聞いた事が無いけれど、亜人の多くは人間よりも寿命が少し長い。その分幼少期なども少し長い為、成人になるにはまだ先の話。なのだけど、ユキにはそれが無かった。

加えてこの世界の者だとほぼ記憶を継承しないに対して、異世界人だと転生しても記憶を必ず継承する。

それだけで決め付けるのはどうかと思うけれど、触れるとそれが正しい事がはっきりと分かった。


稀少性鑑定(ミツケダスヒトミ)』。この固有能力は普段何となくでしか理解していなかった。単純に上質なものや稀少性が高いものを見付けやすい、それだけの能力だと。

しかしこの稀少性は物だけに反応している訳じゃなかった。転生者はこの世界にごまんと居る。だけど異世界の、と付くとそれは多いと言えるが全体から見れば稀少性の高い存在と言える。

要は元異世界人を探り当てる事が出来るのだ。グランやあのラムズでさえ反応しないにも関わらず、こんな幼子に反応しているのは、そういう事だろう。

今は物なんかは感覚で判別出来るけれど、異世界人の判別となると直接触れて一瞬光る現象を確認出来るか程度だ。能力も鍛え、使い込む事で能力のレベルが上がり、強く使いやすくなる。なら、固有能力もきっと同じで使い込めばそれだけ精度も上がる。

見分けたからと言って何になる訳じゃないけれど、きっとこの能力も意味を為す時がきっと来る。まさかそれがすぐ来るとは思ってもみなかったけれど。




遊び疲れた僕らは駐屯地の一室に戻っていった。途中ユキが離れたくない様子だったが、ケルビンが何か話があるそうで、結局家に戻っていった。


そして聞いた、彼が元異世界人であり、軍事に巻き込まれ命を落とした事。


────君達が何故王宮に仕えているのかは、私の知るところでは無い。

だが、私は過去、その王宮から信頼され騎士となった。

ある程度の自由と引き換えに、様々な任務を熟したよ。

しかしある時を境に、私を軍事利用し始めた。

私はそれも国の為、と身を粉にして尽くした。


しかし…それが間違いだった。


私は私の強さと異常性を甘く見ていた。周りの評価も。

結果、私は戦争の最前線で戦い、目の前の全ての敵を倒した後、…後ろから味方に刺された。



まるで今の僕らのように思えた。

確かに自由に出来るよう配慮され、役職の名目上は騎士、民衆には勇者の護衛となっている。

ギルドや国から依頼が来ており、それをほぼ毎日仕事としている。

そして──


──魔王が軍を率いてアルストレアに侵攻を開始しておる。すまぬが勇者殿、討伐部隊を編成するまで持ちこたえては貰えぬだろうか?出来る限りで良いのだ。


──済まない。殲滅出来るならそれに越した事は無いが、無理なら即座に引いて構わん。だが、魔族領に近い勇者殿が頼りなのだ。期待しておるぞ。


そうだ。確かに魔族領へは僕達の意志で来た。けれど、その情報を提供したのは王宮魔術師じゃないか。彼が知っているなら、国もそれを把握しているはず。

いや違う。僕は何を考えているんだ。それは国王陛下の善意であって、


──これ、リベルさんがよく買ってるやつを真似て作ったんです!良ければ!


僕の事を思っていてくれて、


──ああ、リベル様も私と同じものが好きだなんて…身近に感じられて嬉しいよぉ!!


僕を…『僕』…を……



『私は強過ぎたのだよ。敵だけではなく、味方にさえ。

「異世界人」の強さは噂によって拡散されていた』


拡散…人は知らぬ間に僕とは違う『僕』を噂する。



『だから目の前でそれを見るまで、それが本当かなどは判断出来ない。

そして私は示してしまった、己が力を。異常なる能力の数々を。』


国王陛下の前で、宰相様の前で、大臣達の前で、僕は自らの能力を披露させられている。

それは彼らに能力(チカラ)を示した事にならないのか?



『背後を振り返った私に映ったのは、勝利に喜ぶでも生き延びた思いに涙するでもなく、ただ私への恐怖心に怯える一人の人だった』


もし僕も、彼のような運命を辿るのだとしたら、既に、もう…



『もし君達も同じような理由で戦っているのなら、もう一度だけ自分というものを考えてほしい。

異世界人は強い。種族に差はあれど、「異世界人」という事実が問題なのだ。

君達はまだ若い。若いからこそ利用されやすい。

別に私の言葉は鵜呑みにする必要は無い。

だが、知っていてほしかったのだ。私と同じ過ちを辿ってしまうかも知れない者へ、私のかつての経験を』



聞けば聞くほど、まるで僕は蜘蛛の巣に絡め取られた餌のように、ただそれが真実のように聞こえた。これは彼の物語で僕の通る道じゃない、頭ではそう考える。けれど、彼の話は深く、なお深く僕の心に焼き付いていく。

僕は利用されているんじゃないのか?

王宮やギルドでは必要最低限の知識しか与えられていない。例えば亜人達と仲が良くない事も知らなかった。

しかしそれは逆で、知らせようとしてなかったのでは?

亜人達と仲が悪いのであれば、そこに近付かせないようにしたりするのでは?

魔王の存在を示唆して、すぐ近くの魔族領に魔王が都合良く居るものなのか?

『勇者』と称え保護したにも関わらず、何故そんな簡単に敵地に向かわせたのか?


疑問を一度考え出すと、そこからはもう止まらない。疑心暗鬼が心を支配していく感覚。結局僕はあの頃からずっと─


「リベル」

「えっ」


肩に置かれた手を見て、僕は現実に戻れた。気づけば大量の汗をかき、握った拳からは血が出ていた。


「思い詰めるなよ。あの人は一人だった、けど俺達は二人居るんだから何も問題ねぇ、だろ?」


その言葉は暗く澱んでいた心を一瞬にして真っ白に変えてくれた。

そうだ…そうじゃないか。僕にはグランが居る。何を迷っているんだ。あの頃は一人だった。彼も一人だった。

けれど僕達は違う。二人なら、きっと。


だからこそ気づかない。暗く澱んでいた心に、まだ"闇"が潜んでいた事に。





「ありがとうございました。お陰で色々知る事が出来ました」

「君達ならいつでも歓迎しよう。最も、害を無さなければ、だがね」


僕らはケルビンとユキ、他数名に見送られ町を後にした。

そして僕らはそのままアルストレア王国に帰還する事にした。

グランと逃げる際、両剣を放置したままだった為、どちらにしろ戻らざるを得なかったのだ。


「あの話を聞いた後に戻るのはなぁ」

「相変わらずリベルは暗いよな」

「うぐっ、結構気にしてるのに」

「考えていても答えが出ないもんは、とりあえず胸に抱えて留めておけ、有名な人の言葉だぜ」

「こっちでも偉人の言葉は偉大、か」

「そろそろ見えてくるぜ。覚悟出来てるか、リベル」

「…ああ、問題無いよ。とりあえずね」



木々を抜けしばらく走ると、遠目にアルストレア王国を囲う外壁が見えた。これは以前、僕が提案していたものだが、壁を作る能力を持つ者が少なく、費用もバカにならない為保留にされていた案件だったはずだ。

僕らが出ていく時にもこんな壁は無かったはずなのに、一体ここ一ヶ月程度のうちに何が…。


気にはなるものの、国の様子が先だとその壁をよじ登り、壁の上から見た光景は─


青い奔流に包まれる王宮の姿だった。


「なんだよあれ…」


グランがそう言うのも無理は無い。あの光は間違いなく魔素が持つ光。しかも、かなりの高密度の。あれだけ濃く視認出来るとなると、おそらく王国内は…


嫌な予感だけが膨らんでいく中、グランはすぐさま駆け出した。僕も一度冷静になり後を追う。

やがて近づくにつれ、その奔流の全貌が明らかになっていく。

王宮を包み込むようにして魔素の竜巻が発生しており、更に都市全体をドーム状の渦が覆っている。その渦のすぐそばでは、ちょうど魔物が数体、渦に触れようとしているところだった。


グギャアァァァァァ


断末魔がだんだん呑まれるように魔物は灰燼と化し、塵芥に変わるのを見てこれがようやく何らかの魔法によるものだと理解する。

魔素を大量に放出させ、それを高速で回転させている。触れれば一瞬にして先程の魔物同様、粉々になってしまうだろう。

確かにこれなら攻撃は受けないだろうけれど、中に入るのは難しそうだ。


「グラン、どうやらこれは王国の誰か(多分状況から見てラムズさんだと思うけれど)が張った防壁だと思う」

「こんな大きさのをか」

「確証は無いけどね。でもさっき魔物が塵芥に変わるのを見ただろ?」

「…魔族側がやっているなら味方をやるはず無い、か」

「ああ、それに周りをよく見れば魔物の数が多い。多分抜け道でも探しているんだと思う。

この王宮と城下町周辺は守れているみたいだけど、壁の中には幾つか村が点在しているはずだ。それらを放ってはおけない」

「なんつーか、俺はそういうとこが『勇者』っぽくて好きだぜ」

「ふっ」


今日は本当に走ってばかりの日だな。

心では愚痴を零しつつ、顔は何故か笑っていた。


僕らは壁の中に入って来ていた魔物を倒していく。グランは魔物の顔面を殴りつけ、その手に持つ剣を奪っていく。そうして二本の剣を奪うと双剣術で魔物を屠りながらジグザグに進む。

最初その行動がよく分からなかったが、アウリスフレアリザードという燃えるトカゲを見つけた途端、その魔物の背中に柄頭を向け突き刺した。


「熱つつつつ」

「ちょっ、グラン!?」


急いで引き剥がそうとするとグランから「来るな」と言われてしまう。背中に乗る形でいる為、グランの足や腕には火傷が広がっていく。剣の柄は真っ赤になり、先になるほど融解している。

それを確認すると背中を十字に切り付け魔物を倒すと、着地しながら二本の柄を強引に力技で押し付ける。すると、歪な形で溶着された二本の剣、おそらく両剣の代わりにする為だろう。


「グラン、『血癒』があるからって無茶しないでほしいんだけど」

「得物がなきゃ効率半減だろ?」


『血癒』を使い火傷を治していく。まだ柄は熱く触れられそうにないが、気合いで何とかするとの事だ。流石に見習えないや。

斜め掛けしたベルトと留め具に両剣もどきをしばり付け、冷えるまで拳撃で充分だと意気込むグランを他所に、回る順序を立てていく。


「まずは一番近いリューガ村から、そこから北上しながら一周しよう」


魔物達の侵攻は主に東から来ており、西側であるリューガ村にはそれほど数はいない。また魔族領は北東寄りにある為、北の方に行くほど魔物も多い。だが、足の早い魔物や飛翔する魔物は既に多く散っている。

討伐部隊というのがあのドーム状の防壁の外に居るのかは知らないが、自分達に出来る範囲で対処しよう。


そうして殲滅しながら北上していき、数々の敵を屠っていた時、あの時感じた悪寒が背筋を突き抜ける。

北の森の中から、誘うようにして。

僕らは迷う事無く森の中をひた走る。そこで出会う、後の『戦姫』と謳われる一人の少女を。

そう言えば100部行ったようですね。

三日坊主で終わるはずだったのに、いつから並行世界に行ってたのでしょう?

そして何気に毎日更新が出来てる(∗•ω•∗)定時パワー

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