私と魔女
私の名前は『マリィ』
お友達は今は眠っているわ。もう、何年も遊んでいないわ。
お友達の名前は『凛ちゃん』
私は、凛ちゃんが生まれた時に、凛ちゃんのパパが用意してくれた人形。
凛ちゃんは毎日私と遊んで、毎晩一緒に寝たよ。
でも、ある日凛ちゃんはお家で突然倒れたの。
凛ちゃんは私を抱きしめたまま、病院に連れて行かれたわ。
何時間もの間、私は凛ちゃんと離れて、凛ちゃんのママの手の中にいたの。
私は人形だから、喋ることも、泣く事もできなかった。
ただ、凛ちゃんを治してくれるお医者さんが出てくるのを、パパとママと待つしかなかったの。
ママはずっと私を見つめながら泣いていたわ。
パパも、頭を抱えたままだった。
私にはどれ位の時間が経ったのか分からなかったけれど、お医者さんが出てきたの。
パパもママも必死にお医者さんに凛ちゃんの事を聞いていたわ。
『娘さんは、今の医学では治りません。ただ、もし奇跡でも起きれば、娘さんはまた、元気に外を走ったりできると思います。』
お医者さんはパパとママに絶望を言っていたわ。
凛ちゃんが小学生になる年のある日の夜中。
凛ちゃんと私だけの部屋に、一人の老婆が現れたの。
『うーん。このままだと、この子はこのまま目を覚まさず、死んでしまうな。』
そう呟いて、私を見て嬉しそうに私に話しかけてきた。
『あんた、この子の人形かい?それとも、友達かい?』
私はしゃべる事は出来ない。だから、目で話しかけた。
『お友達よ。』
『そうかい。じゃあ、私の言う事、あんたは聞けるかい?あんたが私の言う事を守れたら、お友達を元気にしてあげよう。』
老婆の出した条件は、凛ちゃんが元気になっても私の記憶は凛ちゃんから消える。
それだけだった。
私は『分かったわ。お願いだから、今すぐ凛ちゃんを元気にしてあげて。』
そう、言ってしまった。
老婆は魔女だったのだ。呪文を唱えて、凛ちゃんのまぶたにキスをして、『約束だからね』と言って、消えた。
凛ちゃんは翌朝元気になった。
パパもママも、大喜びした。今まで一緒だった私の存在は、家族の誰からも忘れられていた。当然、凛ちゃんからも。
凛ちゃんは無事に小学校に入学できた。
その翌年、私はまた凛ちゃんと一緒に暮らす事が出来るようになった。
どうしてって?
それは、私が凛ちゃんの妹として、この家に生まれてこれたから。
私がこの家に凛ちゃんの妹として生まれてきて、私に名前を付けてくれたのも凛ちゃんだった。
今の私の名前は『麻莉』
どこかで聞いた名前?
それは、お話の一番最初に出てきたからじゃないかな?
私はこれから凛ちゃんと一緒にお散歩。
またね。