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新訳 東方紅魔記  作者: グレ
仲間
7/29

美鈴と従者

【美鈴の部屋】


『・・・ん?』


主は目の前にいたはずの美鈴がいなくなり辺りを見渡していた。

・・そして部屋の変化に気付く。

・・・閉まっていたはずの窓が開いている。


(ここから逃げたのか?しかし・・・どうやって・・・・。)


暫らく考えた後、外を一目見て、チッと舌打ちをし、倒れこんでいる衛兵を蹴起す。


「いつまで寝ている!奴は窓から逃げた。今すぐ兵を使い探しだせ!奴は手負いだ。お前たちでも十分にやれるはずだ、見つけ次第殺せ。」


「ハ、ハハァッ!」


起き上がり慌てて部屋を出る衛兵達。


「あの傷では、パチュリークラスの治癒魔法でもない限り長くは持たぬだろう・・・」


「・・・パチュリーか・・」


そう呟くと薄ら笑みを残しつつ主も部屋を後にした


ザーーーーーーーー


大雨の中、屋敷の外に美鈴は倒れていた。

自分でも現状を理解出来ていなかった。


(ここは?なんで・・?ッ!)


体中からの激痛に耐えながらも周りを見渡した


・・ッ!?


足元に誰かいた。ぼんやりとしか見えない目で見てみると。其処には見覚えのある女がいた。


(・・・ッ!!あのメイド!!はあ・・・結局死ぬのかぁ・・)


(どの道このままじゃ助からないだろうから同じか)


美鈴は笑った・・・彼女は完全に諦めていた。


「ジッとしてて!」


???


(なにをいってるんだ?)


美鈴は、もう一度足元に目をやりメイドを見てみた


・・・???!!


メイドは、美鈴の完全にちぎれかけた足を縫い合わせ、止血をしていた。

しかも、腕のほうまで既に縫い合わされていた。


「な、なんで?」


とはいっても今までの出血等でろくに声も出せないが力を振り絞り聞いてみた。


「あなたに死なれては困る理由ができた。それだけよ」


メイドはこちらに目もくれずに答え、治療を続ける。


・・・・・・・・


「とはいっても人為的応急処置しか出来ないからこのままじゃ死ぬけどね。もっと早く着いてれば・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・


足のほうも終わったようだ。

まるで時間でも止めていたかのような素早く適切な治療だった・・。


(なんという素早く適切な治療なんだ・・。)


「さて、後は・・・」


メイドはおもむろに立ち上がり、胸元から1本のビンを取出し、美鈴に振りかけた。


「こ・・これは?」


「・・あくまで一時的だけど、痛みを麻痺させる薬よ・・・・もうないし二度と作れないから本当は貴女なんかに使いたくないんだけど、貴女にはどうしても答えてもらわないといけないことがあるから・・」


(・・・う、動ける!)


美鈴は、手の指から足の指まで動くのを確認してから勢いよく立ちあがった。


!!!!!!!!


「〜〜〜〜くううう・・・」


「いったあ!・・なんですか!?痛いじゃないですか!?」


美鈴に激痛が走る。

その様子をメイドが呆れた顔で見ていた。


「・・限度を考えなさい。貴女はこのままでは死ぬくらい重体なのよ?それを麻痺させているだけなのに、余計負担かけてどうするの!?」


・・・・


「ご、ごめんなさい・・」


美鈴は謝りながらチラッとメイドのほうを見てみた・・・。


メイドが少し笑った様な気がした。


「まあいいわ、あなたに聞きたいことがあるの」


と思ったらすぐに真剣な顔をして聞いてきた。

美鈴もその真剣な顔を見て、姿勢を正して真面目に応えた。


「私が知ることなら答えますよ?いまんとこ命の恩人ですし」


「・・・お嬢様・・・レミリア様は生きてるの?」


(・・・・そうきたか・・私も確証はないしな・・・)


「答えなさい。貴女は妹様を会わせると、確かに言った。だが主様はもう死んだと私に言った。私にはなにがなんだかわからないわ・・・・お嬢様がいないなら・・・私は・・・・」


美鈴が気を読まなくても分かるほどの忠誠心が伝わる。

そして恐らくレミリアの死を確認してしまうと恐らくメイドは死を選ぶ。ということも。

メイドからは涙が見える・・・本人は雨でわからないとでも思ってるのか充血した目は祈るような瞳でこちらを見据えている。


「早く答えなさい!」


(・・・ここで死んでいるかも知れないとか言うと、絶望を受け、最悪この場で自害してしまいそうだ・・・。それに、この人はなんか死んでは駄目な気がする・・・)


「・・・・生きてますよ?」


メイドから安堵、歓喜、希望。そういった気を激しく感じた。


「・・では!いまはどこに!?」


冷静を装っているようだけど、明らかに舞い上がっているのが分かる。

涙は止まり、その目には希望に溢れていた。


(・・・・て・・やっぱそうなりますよね・・・・参ったな・・今更私も知りません、なんなら生きてるか死んでるかも・・なんていえないしなあ。唯一の手掛かりは・・パチュリー様か・・・ええい!どうにでもなれ!)


「図書館に・・い・います・・。」


(神様仏様パチュリー様頼みます!!!)


「図書館!?それならすぐにいきましょう!あそこにはパチュリー様もいるからあなたの怪我も治せれるかも知れないし!一石二鳥よ!」


パン!と手を合わせ嬉しそうに話すメイドを見て、少し罪悪感に包まれながらも、その女神の様な笑顔に美鈴は驚きを隠せなかった。


(・・・うわあ、初めて会った時と違いすぎる・・・これが本来の彼女なのかもですね。・・あっ・・・てか、そうだ。このままじゃ私、死ぬんだった)


「さあ!急いでいくわよ!?急がないとそろそろ追手も来るだろうし!」


メイドはそういいながら、嬉しそうに美鈴の手を引く。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


メイドの手を抑え美鈴は足を止めた。


「どうしたの?」


「その前に・・・フラン様に会いたいのですが。」


・・・・・。メイドの表情が少し険しくなる。


「貴女、今の状況分かってる?」


「え?」


(フラン様をレミリア様に会わせる。それが私の最優先事項、なにがあっても・・・)


「今、貴女は追われてる、その貴女は兵一人にすら勝てないほど弱ってる、相手は貴女と妹様の関係を知っている。私が兵ならフラン様の周りを重点的に探すわ。それに、仮に会えたとしても私一人ではあなた達二人を完全に守りながら図書館に行くなんて無理よ?」


「その時は私を見捨ててくれて構わない!」


美鈴は懸命に言ったのだが、メイドは呆れた顔をしている・・・。

美鈴は真面目に応えたつもりだったのに、その顔を見て少しムッとした。


「貴女は馬鹿ね。それじゃあ残った妹様はどうなるの?それに貴女が来たせいで妹様まで危険な目に会うのよ?・・・大事な人が死ぬ苦しみだけでも辛いのに自分のせいでとなったら・・。」


・・・・・・・・。


自分はその気持ちを知っていると言わんばかりのメイドのその表情を見て、美鈴は黙り込んだ。


『それにその麻痺薬もいつまでもつかわからない、私達には時間がないのよ?ここから図書館までなら近くて兵も手薄だしあなた一人くらいなら私が守るわ。急がば回れってやつよ。」


(・・フラン様を守る為に離れるか・・・・・・・ふふっ、それに{私達}か。一人なら簡単に図書館に行けるのに・・わざわざ会ったばかりの私を守って・・・・いい人・・だな。・・・尊敬する)


「わかりました!メイドさんに従います。その代わり、後で必ずフラン様に会いに行きますよ!?」


「当たり前でしょ!?お嬢様の大事な妹様なんだから!」


そうして、図書館へ向かう二人。二人の希望を後押しするように外にはもう太陽が見え始めていた。



「・・・・・ところで、メイドさんてのも変ですし、名前はなんなんですか?」


「・・・・・・ないわ・・・・・ただのメイド長よ・・・」


「え?」





【図書館】



「では、パチュリー様いってまいります」


小悪魔が図書館から出てメイドを迎えに行っていた。


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