嵐の前
レミリアは頭を整理していた。
(お母様は元人間・・・と、言うことは私は純血ではない・・・)
(私の教育係は実はメイド長・・・と、言うことは・・・まあ、これはいいや)
(メイド長はお母様の妹・・・と、言うことはメイド長は私の叔母?)
(2人は元吸血鬼狩人・・・と、言うことは元々敵?)
・・・。
(どこから手を付けろっての・・・?)
整理がつかず混乱状態のレミリアをよそに、パチュリーは話を続ける
『恐らく唯一の身内であるレミィが生きてるのが分かれば彼女は、ほぼ確実に此方に賛同すると思うわ。・・まずは彼女をこちらに引き込みましょう。彼女なら美鈴が相手になっても、なんとかなるわ』
・・・ッ!???
『え!?確かに腕は立つけど恐らく、こあのちょい上、前近衛兵長ぐらいの力量だったはずよ?』
『フフッ・・体術だけなら・・ね?・・・彼女には貴女の知らない能力があるのよ。』
ムッ・・・。
『なんか知らないことばかりでむかつくわ・・・』
『仕方ないわよ。貴女はずっと地下にいたし。私はこの紅魔館で、知識や情報だけなら誰にも負ける気しないもの』
自信ありげに語るパチュリーを頼もしく思う反面。レミリアは少し悔しかった。・・・身内である母の事でさえ、自分はなにも知らずに今日まで生きていたのだ。しかし、常に冷静であり頭のキレる彼女に対しレミリアは憧れに似た感情を抱いていた。
『さて、レミィ?とりあえず今日はもう休みましょう?体力を回復してないと、いざというとき動けないわよ?明日、子悪魔を使いにだして彼女を連れてきてもらうから』
パチュリーは、小悪魔に伝言を残し、部屋を出た。
(確かにパチュリーの言うとおりね。万全な状態じゃなければ・・。)
(・・・地下にいたから・・か。パチュリー、気を遣わせたわね。・・。私が、もっとしっかりしなくちゃ。・・地下・・そういえばフラン。寂しがってるかな・・・。)
(・・つ!また・・・?・・フランのこと考えたら、この痛みが来てる気が・・・・考えすぎかな?)
【紅魔館玉座】
玉座に座る主、周りには左右4人の近衛兵が立っている。その主の正面にある者がいた。
「主様、突然の謁見に応じていただきありがとうございます」
その、ある者は・・・・・。
レミリアを探しに行ったはずの美鈴だった。彼女は跪き、主に感謝を述べていた。それに対し、主は少し上機嫌だった。
「どうした?美鈴よ、また休暇願いか?」
どうやら美鈴は、入ってまだ1週間くらいなはずなのに何回も休暇願いを出していたようだ。(またか?)と言う表情で主が応えた
「・・いやあ、それもいいんですけど。実はそれより・・以前、主様おっしゃってた、レミリア様の死。・・・その遺体て、まだあるかなあ?と思いまして」
いつものように、砕けた感じの言い方で美鈴は主に尋ねた
・・・・・・。
暫らくの沈黙の後主の表情が変わる
「何故、その様なことを聞く?」
主から僅かだが殺気を感じた。しかし美鈴は臆す事なく応えた。
「そのー・・・怒らないで、くださいよ?実は・・・・・・。』
『すこーし・・でいいから食してみたいな、って・・・。いやぁ。吸血鬼食べれる機会なんてそうそうないじゃないですか?どうせ死んでますし?」
美鈴は笑いながら応えたが、主の表情に変わりはなく、殺気も消えてなかった。
・・・・・・・
・・・・・
(・・流石に失敗・・・したかな?)
美鈴が諦め、主に不意討ちの一撃与える為、構えようとした時
『・・ふははははははははははは!』
(え?)
主は殺気を止め、急に大声で笑いだした。
「レミリアを!主の娘を!高貴な吸血鬼を!たかが、下級妖怪。たかが、近衛兵が食すか!?」
・・・・・・・・・
「おもしろい!その気概。気に入った!よかろう!貴様の願い、許す!」
美鈴は正直ホッとした。勝つつもりは初めからなかった。やられる前にやり、一瞬の隙をつき逃げるつもりだったのだ。だが、主の殺気が消えた今となってはその必要はなくなった
(・・・助かった・・・・)
「この書状を持って図書館にいるパチュリーを尋ねよ。あやつが実験で消し炭にしてなければ、その場で存分に食すがよい!」
「・・・はい、では、これにて・・」
「・・・・待て!」
・・・ッ!?
「はい?なんでしょうか?」
美鈴は冷や汗をかいていた。このタイミングでの制止。不意討ちをしようとした時に僅かに出た殺気がばれたのか?〔存分に食せ〕に対し、不快を覚えた事に気付かれたのか?・・・あらゆる不安が彼女の脳裏を駆け巡る。
「味の報告・・忘れるなよ?・・・・・・ふははははははは!」
・・・っ。
「はい。かしこまりました。では、失礼します」
美鈴は高笑いする主に礼を言い立ち去る。安堵しながらも彼女は内心凄まじい不快に感じていた。
(わかってはいたことだが、こいつ最悪だ・・・自分の娘に対し、そこまで。)
ガチャ、バタン!
・・・・・・
「・・味の報告・・・出来るとよいなあ・・・クククク」
美鈴は玉座を出て、長い廊下を歩き出す。そして、玉座の部屋の近くにある花瓶の裏に顔を出す。
「フラン様もう大丈夫です。出てきてください?」
そこにはフランが小さく座って隠れていた。フランは美鈴を不安そうに見ながら、花瓶の裏から出てきた
「美鈴?お姉様を食べるの?」
フランは怯えながら美鈴に聞いた。美鈴は一瞬驚き、笑顔でフランに応えた。
「食べませんよ?そもそも私、人肉食べませんし!」
「お父様がお姉さま死んでるって・・・本当はもう・・・。」
フランは涙目になりながら震える声で再度美鈴に聞いた。・・美鈴はその目に溜まった涙を指で拭きながら
「あれは嘘ですよ?レミリア様は生きてます。フラン様が信じなくてどうするんですか?・・・それに、もし!・・・死んでても生き返らせて、必ず私が!生きているレミリア様にフラン様を会わせます!」
「ほんっ!?」
美鈴は、フランの口に人差し指を当てて言葉を遮り
「本当です!私はフラン様に嘘はいいません!」
・・・・・。
『うん!約束!』
『はい!約束です!』
(・・・・・・・それになぜかフラン様を見ていたらレミリア様が生きている気がするんですよねぇ・・・・・うん?)
「あれ?もうこんな時間か。フラン様、今からいっても無駄かもしれませんし、明日まで我慢できますか?」
「うん!美鈴がいうなら平気!」
「いい子ですねー。・・あ!あとこれ!持っててください。大事な物です。・・・でも私、すぐに物を無くしてしまいますから。」
「・・もう!美鈴は駄目だなー?」
「ははは。本当すいません。」
「ではフラン様?明日迎えにいきますので。おやすみなさい」
「うん、おやすみー」
タタタタタタタッ
美鈴は笑顔のまま、フランをその場で見送った。そして、フランが視界から消えた瞬間。急に表情が険しくなった。
・・・・・・・・
「さてと・・・・・・・・・・・おい!そこのやつ、出て来い!?」
美鈴は後ろを振り返り、構えた。