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新訳 東方紅魔記  作者: グレ
運命
12/29

絶望

図書館に群がる兵を次々と倒していく。

・・・ある程度倒した後、レミリアは急ぎ玉座へ向かう。

主が動く前に動かなければ勝機はない。各個撃破しか方法はなかった。この時、始めから主が全戦力を当てていたら勝ち目はなかっただろう。

・・油断。侮り。傲慢。そこをついた迅速な行動が必要だった。もたつく暇はない。

レミリアが、全速を出そうとした時


『レミリア様!主様は玉座にはいません!屋上にいます!』


美鈴が叫んだ。

気を感じるのか、集中した時の彼女のこの力は凄い。

恐らく館内くらいなら全てを把握出来ている。誰も彼女にばれず行動するのは無理だろう。

その力を頼もしく思い、レミリアは感謝した。


『美鈴!ありがとう!』


レミリアの瞳が真っ赤に染まると凄まじい気を放ち、周りの兵をゴミの様に薙ぎ払いながら屋上へ向かった。


『・・す、凄い。あの方はこんなに強いんですか?・・これが吸血鬼。・・あの力なら・・予知は必ずうまくいきますね。』


美鈴は畏怖を感じたと同時に強い憧れ、尊敬を抱いた。

恐怖だけを与えた主の力とは違い、レミリアの力にはどこか暖かさの様なものが混じっていた。


(・・[今の]この館は、凄い人ばかりだ・・私も、もっと・・)


『美鈴!来るわよ!?』


咲夜の声で美鈴は我に還った。


・・・物凄い数の兵が図書館を攻め立てる。紅魔館の全兵力だった。

パチュリーや咲夜が前衛で次々倒しているが、捌ききれず何人かはその間を掻い潜り、後衛の美鈴、小悪魔の方にも押し寄せてくる。


『・・くっ!』


体が思うように動かない美鈴は、その僅かな兵を相手にするのでさえ手一杯だった。


(・・完全に私が足を引っ張っている・・・。小悪魔さんの援護がなければ、もうやられている。)


・・・ッ!?


『あらあら。まさかレミリア以外勢揃いとはね・・』


禍々しい気を感じ、敵味方関わらず全員が声のした方へ目をやる。

・・そこには妃がいた。


『レミリア一人で主様へ挑むなんて、貴女達?あの子を見捨てたの?酷い下僕達ね。』


妃はクスクスと嘲笑い。空から見下した。


『・・貴女をすぐに倒して、レミィを救援に向かうから大丈夫よ?御心配なく。』


『私を?倒す?フフフ・・。貴女達、下僕だけで?・・・・そうねぇ?ここにレミリアがいたら私も危なかったかも知れないわね?・・あの出来損ない。腐っても吸血鬼だから。』

『・・それに、その様子だとフランドールの覚醒もまだみたいね?予定は狂ったけどここで貴女達を殺せば、結果は同じね。』


(・・・覚醒?フラン様にもレミィみたいな力が?)


パチュリー同様、咲夜と美鈴も考えたが。深追いすると相手のペースにハマる可能性がある。挑発にも耐え冷静を保った。


『お母様!やめて!皆を殺さないで!』


フランが懇願した。彼女にとっては唯一の母親。自分を殺そうとしたとはいえ正直な所、レミリアや美鈴達と戦う所なんて見たくないのだろう・・。


『フランドール・・・そうねえ?・・仕方ない。・・いいわよ?』


『お母様!』


フランは喜び、妃に抱きつきに走る


『・・貴女が死ぬならね?』


・・・ッ!?


近寄ろうとするフランの心臓をめがけ妃の爪が伸びてきた。


『危ない!』


美鈴が咄嗟にフランを突き飛ばした。


・・グサッ。


『美鈴!?』

『ぐっ!・・ゴホッ!ゴホッ!』


美鈴の体を貫通していた爪が元に戻る。美鈴の傷口からは夥しい量の血が出ていた。


バタンッ!


『美鈴!!お母様…なんで!?』


泣きながらフランは倒れた美鈴を抱き抱えた。


『フランドール・・貴女は危険よ?主様の為にも死ぬべきなの?解ってちょうだい?』


『お母様・・ッ!?』


泣くフランの涙を美鈴が指でそっと拭った。


『わ、私は、フラン様の、涙はもう、み、見たくないですから、お願いです。あ、明るく、笑っていてください』


『・・美鈴。』


フランは、グッと涙が流れるのを抑え、美鈴を涙目のまま見て、ニコッと微笑んだ。


『あ、ありがとうございます、これで、まだ……いけます!』


ヨロヨロと立ち上がる美鈴。


『起きちゃ駄目だよ!』


『私、いいましたよね?フラン様?・・貴女を・・・守ると。』


血塗れで構える美鈴を見て、嘲笑う妃。


『おめでとう。貴女の命が一番早くなくなるわ?』


・・・その瞬間!


『吸血鬼にありがちな慢心ね!』


咲夜がそういい放ち、妃が気付いた時にはもうナイフは投げられていて回避不能な所まで迫っていた。


それを合図のようにパチュリーの魔法の業火が妃を焼き払う。


二人は怒りをひたすら抑え続け、レミリアの予知を信じ、美鈴の存命を確信し、ただひたすらにこの隙を狙っていた。我慢に我慢を重ね、ようやく生まれたチャンス。


・・二人は怒りを解放し、各自の持つ最高の力で攻撃した。


『手応えはあったわ』


パチュリーが自信ありげに言い、様子を伺う。


・・・炎が弱まって、中が見えてきた。


『・・・慢心?・・・違うわ?・・・貴女達はアリを潰すのに全身全霊を込めた一撃でも放つのかい?フフフ』


・・・ッ!?


無傷!?


咲夜の渾身のナイフは刺さっていた。しかし、その傷はすぐに再生していた。パチュリーの全力の魔法は妃の衣服を焦がした程度だった。


『そ・・そんな?・・・計算外の強さね・・。レミィの予知は本当に当たるの?勝てる気しないわ?』


パチュリーが戦意を喪失しかけている。自分が今まで何年も研究し続け、ようやく編み出した最高の魔法が、服の端を焦がした程度なのだ。無理もない。


『パチュリー様!お嬢様を信じるんです!信じて!私達は全力で戦うんです!』


咲夜の叱咤で、パチュリーはハッとする。


『ごめんなさい・・咲夜?そうね。一度で効かないなら効くまで何度もいくわよ!?』


『はい!』


・・・・・・


バシッ!ドン!バシッ!


美鈴は動き出した兵の相手で手一杯だった。咲夜とパチュリーが妃にかかりっきりになっている為、最初とは違い、今は倍以上の兵を相手にしている。こあに治癒に専念してもらい戦っているが、治癒が追いつかなかった。美鈴に限界が来ていた。


『はあ、はあ、はあ・・・情けない・・あの二人の力になれない自分が歯痒い・・』


美鈴は自分の腑甲斐なさから悔しさの余り歯軋りをし、口からは血が出ていた。



【屋上】


『屋上!ついたわ!』


レミリアは主と対峙した。

・・レミリアの到着を解っていた様に主は月明かりの元、待ち構えていた。


『レミリアか?生きておったのか?父は嬉しいぞ?』


『白々しい。解っていたんでしょ?・・それに、お父様はお母様を殺した。』


『・・だからどうした?』


『私は貴方を許せない・・・お母様の仇を討つ!そしてフランや皆を守る!』


『仇?・・・貴様一人でか?』


『お父様の相手くらい私一人で充分よ?』


・・・・。


『フ、フハハハ!・・・・余り舐めるなよ?出来損ないが!』


レミリアの目の前から主が消えた。

・・いや、余りのスピードにレミリアですら目で追えなかった。レミリアが気付いた時には既に主の爪は確実に心臓を狙っていた。


『くっ!』


ガキン!


レミリアは見えていないはずの主の攻撃を同じく爪で受け止めていた。

レミリアは予知を使う事で主の攻撃を先読みしていたのだ。


『ほぅ?・・貴様、昔のレミリアではないな?ようやく目覚めたか?・・・しかし』


主の攻撃が激しくなる。一撃にしか見えていない攻撃が徐々に三撃、四撃と回転を増してくる。


縦横無尽に飛びかう見えない主の攻撃。・・その瞬撃全てを辛うじて受け続けるレミリア。


しかし・・・


シュ!シャ!バシ!


『くっ!』


徐々に擦り始め、今となっては致命傷を避けるのにやっとでサンドバックのように、なぶられていた。


・・・ッ!!


(予知、が、・・追い付かない!・・最後の結末も、変わってない)


レミリアは主の圧倒的なスピードに対し、予知してからの守りでは追い付かなくなっていた。


『フハハハ。初めの勢いはどうしたのだ?』


次々に切り刻まれていく。余裕の主とは対称的にレミリアは全力だった。

絶望的な力の差。ここまで差があるのはレミリアにとって大きな誤算だった。


(・・・力の差がありすぎた。私には予知があるから受けるだけの時間稼ぎくらいならならなんとかなると。そう思っていた。・・・だけど、これは。それすらも・・・。)


レミリアは絶望した。


仮にも相手は、あの大戦の覇者であり、この世界を統べる者。レミリアの力を10とすれば主は100。それくらいの差があった。神に逆らう愚行。圧倒的な無力。



しかしレミリアも吸血鬼、回復能力により少しは回復している。しかし、それより受けるダメージが大きく、傷は増えていった。下手に回復する分、余計に痛みを感じ続けていく。


『ふむ・・出来損ないにしては大した回復力だ。』


主は手を止めた。緊張の糸がほつれ、レミリアは膝をつく。


『貴様をなぶるのにも飽きた。最後に私の本気を見せてやろう。・・これが数々の強敵、吸血鬼達を闇へ葬り去った技だ。良く見ておけ。』


・・・ッ!?


突如大気が震えだし、主の右手に膨大な魔力が集まってきた。


そして・・


それは一本の槍の形に収まった。


『フゥゥゥ』


絶大な魔力を使い、流石の主も少しは疲れたようだった。


(あ、あの槍は!?)


その槍の形は、レミリアが以前予知で見た物と同じ・・・レミリアを貫き、殺していた物と同じ形だった。・・・確実にその時が迫っていた。


『我が娘レミリアよ・・。これは、[神槍・スピア・ザ・グングニル]というものだ。私が今まで強者と認めた者のみに使った物。弱者の貴様には勿体ない物だが久しぶりの戦い。・・・少しは愉しめた。私からの褒美だ。』


(グングニル・・勝利をもたらす槍か・・・。たいそうな名前ね。でも予知ではあれに当たると私は死ぬ。なんとか避ける方法を。)


『この槍には再生能力を無効化する力がある。・・・その力で吸血鬼を殺してきた。その力で大戦を制した。・・・貴様もその中の一人になるのだ!光栄に思え。』


『・・貫け!グングニル!』


!!!


主が槍を投げてきた。グングニルはレミリアに向かい真っ直ぐ飛んで来る。


(は、早い!?)


飛んで来るグングニルの残像しか見えないが、初動で振りかぶったおかげで軌道を読み、勘で身を躱した!


(よ、避けれた!?)


(予知は!?)


(これを躱したのだから未来もッ!)


・・・ッ!!


グサッ!


『がはっ!』


(なんで?)


確実に避けたはずのグングニルが体に刺さり、そのまま屋敷の壁に突き刺さって宙吊り状態になった。傷は癒えず徐々に意識が遠退く。


『ククク・・・。グングニルは狙いを外さない。避けたと思っても瞬時に標的に刺さる。私がこれを使った時点で貴様は死ぬ運命だったのだ』


(・・・運命?・・そうかやっぱりこうなるのね?・・・皆?後は、任せたわよ?フランをお願いね?・・・ご・・ごめん・・なさ・・い。)


レミリアの気が消えた。

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