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第二話 壁の外

勢いで書いたため誤字ひどいかもしれません。

落ち着いた頃に見直し、修正します

暗黒の森深部巨鳥の巣。

巨鳥の巣は、魔物でない普通の小鳥たちのものと同じ、藁などを張り巡らされて作られる。

最もその大きさは小鳥の巣の比ではなく、卵一個だけで大の大人の半分ほどの大きさがある。その殻の中には、大人でも体を丸めればはいれるほどだ。

そして、その卵が同時に三つや四つも入る巣を支えることができる木というのは限られている。


巨木ユグドラシル。

森の木々を頭三つ分ほど抜かす森一の、世界一の巨木である。

上の方でも人一人の体重を支えられるほど太い枝が生えそろっている木の、てっぺん近くの枝に、彼は腰をかけていた。

黒いロングカーディガンと、腰におびた大剣、首に下げた骨でできた笛以外にその装備に特色はない。

見た目だけならまさかこれから戦いへ赴くなどとは思えないほど、軽装備と言ってよかった。

カーディガンの下に来ているのは、平民が愛用する黄色味を帯びた白い麻の服であったし、腰と裾口に炎が刺繍されたズボンもまた、どこでも買える安物であった。

もっとも、かなり高度な魔法が念入りに何重にもかけられており、その防御力は並の鎧よりもずっと高いのだが、見た目だけならば彼はちょっと異色な平民と言ってもよかった。


黒い髪が風に揺れ、うっとおしいほど長い前髪の隙間からときおり青が見える。

貫くようにタタンの街を見据えた瞳。

彼の口元がうっすらと笑みらしきものを浮かべた。



◆◇◆



びりびりと、緊張感が森からあふれ出る。

それは確かに冒険者たちの勘を刺激した。


ふらりと、森の木々の隙間から現れたまだ幼さの残る無防備な青年のことを、大多数の冒険者たちは一瞬認識できなかった。

青空のもと、映える黒髪。

ノゾミは、呟くように歌う。


「ねんねん、ころりよ、おころりよ、ぼうやは、いいこだ、ねんねしな」


あまりにも場違いな歌。耳慣れない旋律。

否、冒険者たちの中には、その歌に聞き覚えのある人間もいた。

これは、かつて、二十年近く前に小さな辺境の街にふらりとあらわれた少女の歌。国中の街で、世界中の街で歌い癒やした少女の旋律。

歌姫と呼ばれ、慕われたどこまでも穏やかな聖女じみた彼女の。


彼に気づいた人々は、その妙な雰囲気に戸惑いを覚える。

魔物を警戒し、タタンの城壁の外部にまわされた腕のたつ冒険者たち。

彼等が待っていたのは、攻めてくる魔物のはずであった。

それでありながら、青年は何処を見ても人間に見えた。

むしろ、人間以外の何物でもなかった。


「全員、攻撃に備えろ!!」


老獪なAランク冒険者の怒声が届く前に、ノゾミのすぐ近くにいた若い冒険者が死んだ。

自分が死んだという現実を認識できていないようなぼんやりとした戸惑いを浮かべた顔のまま、彼が最後に見たのは黒き悪魔の微笑だった。


「お前ら、全員死ね」


ブワッッ!

膨大な魔力と強力な殺気の混じり合った威圧感がノゾミを中心に広がっていく。

その手には、いつの間に抜いたのか赤い刀身の大剣。

狩られた冒険者の首が地面に落ちる。

百戦錬磨、実力に自信を持ち、死線を生き抜いてきた猛者たちの背筋に寒気がはしり、額に脂汗が浮かぶ。顔に、恐怖の感情を浮かべたものもいた。

長い前髪の奥で光る眼。

捕えられてしまえば、逃げられない。

冒険者たちは錯覚する。

まるで自分たちが生贄のようではないか、と。


ノゾミが走る。

赤い大剣から禍々しい、赤黒い色をした魔力が湯気のように立ち上るのが見えた。

すれ違いざまに切り裂き、切り裂き。

強固な防具が紙のごとく。反応より先に、ある者は首から、ある者は腹から血を流す。

そして立ち込める異臭。

それは、肉が焼ける匂いだと最初、誰も気づけなかった。


「う、うぁああああああああ!」


きっと、魔物相手であったなら。強力な、龍族等の魔物であったなら。

その強大な力を、その圧倒的な力量差を前にしてもこれほどうろたえることは無く、醜態をさらすこともなかっただろう。

だが、やってきたのはまだ成人を迎えたばかりのような人間の青年で、その実力はとびぬけていた。

迷いなく切り、迷いなく飛び込んでくる。

その無謀ともいえる突撃は、しかし速すぎて、隙が多いように見えて一切ない、無駄のない動作。


やっと、一人の冒険者がハッと我を取り戻したかのように、青年に果敢に斬りかかっていったとき、すでに冒険者の四分の一が死に絶えていた。


ふっと息をつき、斬りかかってくる冒険者を見るノゾミ。

三日月を描く口元。


狼が。

白い狼の――氷狼(アイスウルフ)の大群が冒険者に飛びかかった。

その牙に噛み千切られた箇所は凍り付き、その爪に裂かれた箇所もまた凍り付く。

ノゾミに切りかかった冒険者は横から飛びかかって来た氷狼に抵抗する間もなく、その牙に、爪に裂かれ絶命した。

狼の群れの矛先は他の冒険者へ向いた。


『悪趣味だな、斬られるのを待っていたのか?』


一際身体大きな雪狼(スノウウルフ)がノゾミに尋ねかける。


「まさか」


ノゾミは笑い飛ばした。


「君たちが来るってわかっていたからね。ワタアメ、君と君の息子たちのことは信頼してるんだ」

『フハハハハ、それは光栄だね』


ワタアメが上機嫌に高らかに、上を向いて吠える。高く高く、その声はよく響いた。

呼応するように彼女の息子たち(アイスウルフ)も吠える。

その中ででも右目に傷のある氷狼は、誇るように見せつけるように長く長く。

遠吠えの合唱は、その存在を刻み込むように嫌味なほどよく響いた。




馬鹿で愚かな人間ども。悪しき女神を信仰するどうしようもなく愚鈍な弱い人族。

ここが、俺の名をあげるための最初の踏み台。

ここから、俺は女神の喉元を切り裂きに行くのだ。



氷狼は雪狼の進化系です。

右目に傷のある氷狼は、ワタアメの長男であり一番実力のある群長です。

魔物の種類とか考えられません

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