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第23話『3つの戦い』

 双方が共に新しいルールを見据えた戦いは、黄昏の盟約側が一枚上手と言ってよかった。

 真由美の代替、悪い言い方をすれば劣化に過ぎない美咲のやり方と、バックスだからこそ、より言うならば莉理子だからこその手段では後者の方がより突き詰められている。

 諸々の動き全てを察したからこそ、誰よりも荒れ狂う少女がクォークオブフェイトの最後方で強い憤りを感じていた。


「ああ、もう! 全部、私のミスじゃない!」


 周囲に人影もない状況で美咲が叫ぶ。

 美咲の技量自体に問題はなかったが、発想の面での枷が彼女を縛ったのだ。

 莉理子が展開した術式の精査を行いつつ、彼女は自分の迂闊さに凄まじい後悔を感じていた。

 他の者も気付かなかったなど、彼女には何の慰めにもならない。

 自分の役割だからこそ、誰よりも深く考えておくべきだったのだ。

 美咲が気付くべきだったことを、敵から教えられる。

 これほどに屈辱的ことがあるだろうか。


「遠回しに、私の行動を予測していたって、言いたいんですか――莉理子さんっ」

 

 噛み締めた唇から血の味がするが、頓着している余裕はない。

 防衛術式、とわざわざ名付けられた術の効果は先ほどの戦闘で現れていた。

 問題はどこまでの効果があり、継続時間が如何ほどなのかということである。


「立夏さんのディメンションカウンターと同系統の術式。だったら、あれもただの空間の壁で魔力を遮断するものじゃないかもしれない」


 美咲が放った力を逆用してくる。

 可能性として考慮しない訳にはいかないだろう。

 あるかもしれない、存在感でこちらを揺さぶってくるやり方は間違いなく三条莉理子の戦い方である。

 武雄と並び称されたバックス。

 最強が武雄ならば、最高は莉理子。

 昨年度の評価が頭に過った。


「経験で負けて、才能は互角。でも、頭の巡りが私は悪い、そんな感じかしら」


 美咲は才能があろうとも知名度という観点では無名に近い。

 今までのバックスはそういうものであり、純粋にバックスとして名前が売れていたのが莉理子とジョシュアしかいないことを考えると、彼らが突出した存在であることがわかるだろう。


「それでも、負ける訳にはいかない」


 序盤の主導権は向こうに取られた。

 しかし、試合はまだ序盤なのだ。

 向こうの好きなように選手をぶつけられて不利なのは事実だろう。

 己が招いたとも言える事態に慙愧の念が絶えることはない。

 それでも美咲は信じていた。

 クォークオブフェイトの魔導師たちがこの程度の苦境に屈することなどあり得ない。


「お願いね、優香、健輔」


 2人の仲間に祈りを託して美咲は彼女の戦いに集中する。

 戦場の空気に竦む身体に喝を入れて前を向く。

 震える手を見なかったことにして、美咲は集中力を必死に高めるのだった。






 主導権を奪われる。

 特に序盤に取られた場合、発生する事象は至極単純なものだった。

 かつては真由美によってクォークオフェイトが自由に握っていたために問題にならなかったこと、つまりは戦う相手の選定である。

 黄昏の盟約の戦わせたい組み合わせが戦場に反映されてしまう。

 結果、このような戦いは発生することとなっていた。

 

「クラウディア!」

「お相手願います、健輔さん!」


 2つ名の雷光に恥じぬ速度で戦場を駆けた戦乙女が意中の戦士に戦いを挑む。

 以前よりも若干細身になった剣を構えて、切り込む様はリーダーとして十分な威容を放っている。

 

「ハッ!」

「シャァッ!」


 健輔は咄嗟に双剣へと魔導機を変更して、手数での勝負に出る。

 火力での攻めは下策――クラウディアとの能力差以前に莉理子の防衛術式というものに対する警戒感が出た故の選択だった。

 系統の比率を優香と同じ高機動型に合わせる。

 クラウディアの戦い方も健輔もよく知っていた。

 最近は練習回数も減っていたが、昨年度は幾度も練習を行った仲である。

 癖、後は好みなどもしっかりと把握していた。

 故にこの対応は両者にとって既知の動きである。

 異なってのは、ここからのクラウディアの動きだった。


「なっ!?」

「どうかされましたか? 今がチャンスですよ」

「ちぃ!」


 1度目の交差。

 勢いよく手数で攻めようとした健輔を上手く凌いだクラウディア。

 再度の攻撃を仕掛けようと振り返るとそこにはなんとも反応に困る光景があった。

 クラウディアは防御どころか構えもない無防備な姿をさらしていたのだ。

 虚を突かれて、挑発されることで怯んでしまう。

 健輔としては非常に珍しいことだが攻めるのを戸惑ってしまった。


「嫌な戦い方をするようになりやがって……!」

「友人に少々、意地の悪い方がいますので」

「なるほど、性悪そうな顔でもしてるんだろうな!」

「いえ、中々に男気のある方だと思いますよ。あくまでも、個人的に、ですが」


 健輔はクラウディアを良く知っている。

 しかし、それはクラウディアにも言えることであった。

 現在の基礎となっている部分を積み重ねた時期が完全に重なっているのだ。

 お互いに自分たちの持ち味は理解しているし、強い影響も受けていた。


「これは、困ったもんだなッ!!」

「こちらのセリフでもありますよ!」


 彼女の持ち味は攻撃の属性とパワーである。

 単純に力押しでも健輔には対処が困難なのだ。

 余計なオプションを付けることを覚えられてしまうと考えるべき範囲が広がってしまい、どうしても瞬間の決断は鈍くなる。

 

「ふふ、お悩みのようですね。莉理子さんが怖いですか?」

「お互い様だろうが、美咲が怖かったのか? あいつの努力をあっさりと逆手に取ったってことは対策をしないとまずかったということだろう?」

「さて、どうでしょうか。戦場において火力を潰すのは定石だと思いますよ」

「はっ! 言うねッ!」


 お互いの舌戦も絶好調。

 苦戦、追い詰められる状況に健輔は笑みを浮かべる。

 明らかにかつてのクラウディアよりも強くなっていた。

 動作の1つ1つが洗練されている。

 無駄が省かれて、それでいて癖が混ざっているため素直ではない。


「葵さん、いや下手をすると――」

「――余所見をする余裕がありますか?」


 余計な思考、今は考えなくてよいところまで範囲が及んだタイミングを彼女を見逃さない。

 クラウディアの剣から稲妻が迸り、健輔へと放たれる。

 前動作のない光速度の攻撃。

 当然ながら放たれることを自覚した後に行動しても遅い。

 さしもの健輔も自動展開している障壁に頼るしかなかった。


「マジか!?」


 直撃を受けて、障壁を頼りに棒立ちとなる。

 かつては雷撃の速度に対応するために事前の動作、魔力の動きを読むことで前もって避けていた。

 今、クラウディアが放った攻撃にはそれらの予兆というべきものが皆無だったのだ。

 いきなり出てきた雷撃には流石の健輔も対応出来ない。


「予兆なしとか、ありかよ!」

「まだまだ、これくらいで終わりではないですよ。それとも、降参しますか?」

「抜かせよ!」


 クラウディアが挑発的な笑みと共に健輔へと詰め寄る。

 あなたはそんなものではない。

 剣から感じる想いは、いつかの世界大会決勝と同じ重さを持っていた。

 過大評価に過ぎる、と一瞬だけ表情を歪めるが、直ぐに余計な思考を脇に置く。

 佐藤健輔は単純な男である。

 期待されたら、応えたくなる性を持っていた。

 桜香には期待を逆手に取られてしまったが、敗因をそのままにしておくことなどあり得ない。


「いいさ、お前が何を考えているはわからない。けどな――」


 双剣を構え直して、雷光を見つめる。

 やることは構わらない。

 エースとして、不足のない存在に成りたい、いや――成るのだ。

 クラウディアは強敵だが、ここで足を止める訳には断じていかなかった。

 この程度の障害を越えられずに、世界最強に手が届くはずがない。


「――俺を簡単にやれると思うなよ!」

「当然です。侮るなど私の矜持に賭けて、あり得ないッ!」

 

 エース対エース。

 次世代を代表するもの同士たちたちがぶつかる。

 この戦いの中で見え隠れする次の世界への展望。

 意地を星のように煌かせて、1歩も譲らぬ激闘へと彼らは臨むのであった。






「ちぃ、やっぱりこうなったわね!」

「あら、予想してたの? 流石ね、葵!」

「うるさいわよ、怜!」


 葵は事前に思い描いた通りの光景を前に、露骨に不機嫌な様を見せた。

 火力を美咲で代替することを決定したのは彼女であるが、一抹の不安はあったのだ。

 言うならば数値だけを見て、現場を見ていない決定。

 真由美が凄かったのは火力だけでなく全体を統括する技量を保持していたところにある。

 あの技量と存在感、全てを含めて場の支配を生み出していた。

 美咲は才能はあるが、凄みがまだ足りていない。

 健輔や優香は相応に見せるようになっているが、圧迫感というものを感じさせるにはまだ美咲には実戦経験が不足していた。

 莉理子という格上に食らいつくには、少し足りないものがある。


「ふん、わかってたけど、いざ目の前にすると不快ね!」


 空気を切り裂く拳には苛立ちが籠められている。

 白兵戦では負けない自信があるが、こうも相手に嵌められると苛立つのも仕方がないだろう。

 防衛術式と莉理子がわざわざこちらに念話で届けたのも、積極的な攻勢を阻害することが目的のはずである。

 結果、こうやって相性の良くない相手をぶつけられる始末であった。

 

「女王様がエースとしての誇りも、チームも放り投げた成果がこれかしら?」

「あら、挑発に意味はないわよ。だって、私はリーダーに向いてない自覚があるもの。暗黒の盟約は、在るがままにいればいいチーム。でも、負けたい訳じゃないのよ」

「勝つために、最良の選択はあなたがリーダーじゃないこと、か。私には選べないわねッ!」


 自負と自尊のある葵には選べないリーダー像。

 最適な相手に譲る、という選択肢は水守怜が選んだ強さであった。

 事実、暗黒の盟約と黄昏の盟約では後者の方が強いのだ。

 世界第2位のチームを嵌めることが出来る程度には、良い選手たちが揃っている。

 鞭を生き物のように操り、上手く距離を作りながら、暗黒の女王は微笑んだ。


「まあ、格の差ってやつね。世界にいったからって、ちょっといい気になりすぎじゃないかしら?」

「はっ、安い挑発よ! この腰抜け集団!」

「お互い様じゃない。下手くそな挑発は、ね!」


 怜は総合値では葵にも劣らない優秀な魔導師である。

 鞭を自在に操り、制空権を確保してから彼女は相手を痛めつけて勝利を掴んできた。

 昨年度も猛威を振るった技だが、当然のように弱点も存在している。

 遠近に優れた総合型、大凡前衛としては器用に戦える存在の1人だからこそ、決定打に欠けているのだ。

 エースなのは間違いないが、優等生故に手札が少ない。

 暗黒の盟約の中では1番現実的な戦術眼を備えていたこともあり、この問題点に本人はとっくの昔に気付いていた。

 世界で戦うには、彼女だけでは些か力不足。

 宗則の離脱により大きく戦力が低下する暗黒の盟約は、中堅辺りまで実力が低下するのを予見出来てしまった。


「ふふ、どう、私の博打。悪くはないでしょう?」

「腹立つくらいにはね!」


 プライドよりも実利を選んだのは女性らしい、というべきなのだろうか。

 怜が黄昏の盟約に参加を決めたことで、恐ろしいチームがここに誕生した。

 元より、暗黒の盟約は総合値は高かったのだ。

 そこに世界クラスの人材がネームバリューと共に入ったことで大きな反応を示した。


「新入りも皆、一廉よ。きっと楽しんでもらえると思うわ。あなたたちから、積極的に学習させて貰うわね」

「なるほどね、それが狙いなのはわかっていたけど――」


 鞭を拳が迎撃する。

 絶妙な間合いの測り合い。

 相性が噛み合わないからこそ、傍から見るとずっと牽制しているようにしか見えない。

 高度な駆け引きは怜が培ってきた日々の結晶であった。


「あんたとの戦い、イライラするわね!」

「お互い様よ、こっちはヒヤヒヤだけど、ねッ!」


 近づけば、葵が勝つ。

 距離を取り続ければ、怜が勝つ。

 シンプルな構図は一瞬で勝敗が入れ替わってしまう。

 たった1度のチャンスを掴めばよい葵に対して、怜は幾度も綱渡りをする必要があるのは、両者にある拭いきれない実力の差が原因であった。

 しかし、全てを飲み込んで怜はここにいる。

 今更、その程度の事実で腹を立てることもない。

 暗黒の盟約は魔導師のルールに最も忠実な存在である。

 自己を信じている、その上で現実を凌駕するのだ。

 やり方はそれぞれであろうとも根本は共通している。

 誇りはしっかりと受け継がれて、彼女に根付いていた。

 チームは無くなっても、受け継いだものは何も変わらないのである。

 

「くっ!」

「無理矢理、なんて淑女にあるまじき行為は許さないわよ!」


 行動パターンを変えようとすると、直ぐに2つ目の鞭が形成されて牽制される。

 無謀な攻めはそのまま葵の敗北へと繋がってしまう。

 時間を与えるのは悪手だと理解していても、果敢な攻めへと転じられない。


「……やっぱり、あなたは凄い人ですね。真由美さんッ!」


 先代への敬意を高めて、葵は戦意を静かに沈殿させる。

 彼女に戦場を変える力はない。

 それならば、仲間の力を信じるしかないだろう。

 元々、頭を使うのは彼女の仕事ではないのだ。

 リーダーとして、全ての責任は背負うが彼女の役割は牙である。

 敵を蹴散らすのが本懐だった。


「集中してるわね。ここからが、本番ということかしら!」


 静かになった葵を前に、肌が粟立つ。

 ランカーが持つ圧力を前に僅かに怯えが入った自分を自覚するも怜は意地で抑え込んだ。

 リーダーとしての地位などは失ったが、誇りまで捨てた覚えはない。

 課された役割を遂行するために、全霊を賭す覚悟があった。


「いかせないし、やらせない!」

「そう――私も同じ気持ちよッ!」


 最上級生として、情けない背中を見せないために2人は交わらないダンスを続ける。

 お互いに仲間を信じて、チャンスがやってくるのを静かに待ち続けるのだった。






 黄昏の盟約側の考えは大筋上手くいっていた。

 主力級のメンバーで能力差が大きいという事実と、新人が半数を超えていることを考えればこの結果は中々に誇れることだろう。

 健輔というジョーカーをクラウディアというエースで封じて、葵を相性の良い怜で封じている間に全体の戦況で圧す。

 莉理子らしい堅実な戦法。

 そして、最後の1人。

 九条優香の下には、2名の刺客が差し向けられていた。

 人数差を活かして、最も厄介な存在を封じようとしたのである。

 もし、莉理子に誤算があるとすればこのタイミングだったのであろう。

 差し向けた2人はどちらも暗黒の盟約のメンバーであり、中々の実力者だった。

 1人は紡霧瑠々歌。

 番外能力『コードブレイカー』を保持し、昨年度の優香と互角に戦った魔導師。

 もう1人は、大黒梢。

 ほとんどの近接魔導師にとって鬼門となる魔導師。

 両名は決して弱くない。

 事前の想定からしても、不可能な難業ではなかった。


「瑠々歌ッ!」

「は、はいぃ! わかって、ますよぅ!」


 梢らしくない余裕のない叫びに瑠々歌が涙声で返答する。

 瑠々歌の番外能力は敵の術式を解除するもの、優香のように術式を力の根としているものには効果が抜群の――はずだった。

 昨年度までの優香にならば、その常識は通じたであろう。

 しかし、ここにいるのはもはや去年の優香にはあらず。

 世界最強の魔導師に次ぐ存在、世界ランク第2位に相応しい力を持った怪物級の魔導師であった。


「瑠々歌、後ろッ!」

「っ――」


 魔力で空気抵抗を減衰させて、音速域で移動する。

 優香がやったのはそれだけであり、だからこそどうすることも出来ない類の技だった。

 術式を使わずに圧倒的な魔力量と精緻な制御だけで『ラファール』が誇る最速とほぼ同じ動作を成し遂げる。

 端的に言って、常軌を逸していた。


「させない!」


 瑠々歌を守るように、梢の近接殺しの由来が展開される。

 スライムのような特異な武装。

 衝撃を殺す彼女の相棒が壁として瑠々歌を守ろうとしていた。

 後は浸透系の魔力を用いて、叩き付けられた攻撃を衝撃に変換してしまえばよい。

 相手の力を逆用するカウンター戦法。

 これこそが梢の必勝法、だったのだ。


「――無為です」


 3年間。

 積み重ねた梢の技を見て、優香は静かに冷たく断言した。

 この程度で、私は止められない。

 籠められた意思を前に、梢の全てが最大級の警戒を発する。


「ッ!! 瑠々歌、逃げなさい!!」

「ふぇ!? で、でも――」

「早くッ! あんたを庇うような、余裕はないッ!」


 先輩の怒声を受けて、瑠々歌が急いで離脱を開始する。

 ほぼ同時に、優香の斬撃が梢の展開した壁に叩き付けられて――梢の危惧は現実のものとなった。


「と、とんでもないわね! ああ、もうッ! こんなのとタイマンとか、莉理子に何か奢らせないとッ!」


 消し飛んだ自慢のスライムを引き攣った表情で見る。

 魔力の斬撃が、梢の変換できる量を圧倒的に凌駕していた。

 ようは単純な力押しなのだが、そんなことが出来るという時点でヤバイとしか言いようがないだろう。

 相性が最悪なのに正面突破可能。

 この時点で優香の実力が莉理子の想定を大きく超えているのは疑うべくもない。


「見事な判断でした。やはり、ベテランの方は甘くないですか」

「褒めてもらってうれしいけど……なるほど、去年のイメージに引き摺られたわけか……。あなた、世界ランク第2位だもんね。弱いはずがなかった」

「我が身のいたらなさだと思っています。狙った訳ではないですが、好機であるのも事実。申し訳ないですが、食い破らせていただきます」


 敗北は避けられない。

 梢の全てが即座に答えを出した。

 今の九条優香は、昨年度の国内大会の桜香にも劣っていない。

 世界第2位として、疑うべくもない武威を誇っていた。


「――上等よ。あんまり、舐めないでよッ!」

「私に、そのような心は存在しません。全力で潰させていただきます!」

「それでも、簡単にはいかせないッ!」


 絶望な抗戦。

 それでもここから突き崩される訳にはいかない。

 梢はここが死地であると定めて全力で立ち向かう。

 揺らめく夢幻の蒼は静かに覚悟を受け止めて、愚直に前へと進む。

 チームのエースとして、敵の思惑を崩すために力を全力で展開する。

 試合開始からわずか数分での激戦。

 この激戦の結末が、序盤から大きく試合を荒れる流れに乗せるのだった。


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