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第183話『あなただけの――』

 真っ直ぐに対峙する両名。

 言葉よりも雄弁な視線がぶつかり合い、双方の意思を告げる。

 大荒れ模様の試合の中で繰り広げられるエース対決。

 健輔の後を継ぐ蒼き輝きが理不尽な正義へと立ち向かう。


「能力展開!」


 先手を取ったのはアメリア。

 極めて強力で、かつ状況を選ばぬ異能が容赦なく牙を剥く。

 生じる脱力感に優香は僅かに眉を顰めた。

 この試合では2度目となる大幅なパワーダウン。

 既に体感していたらこそ、大きな落差は感じないが、あまり良い気分でなかった。


「最初よりも強い。いえ、これは……」


 冷静に己の身体に起きた異変を推し量る。

 思うところはいろいろとあるが、試合の最中に感情に飲み込まれるほどバカなことはない。感情に操られるのではなく、操るのが大切なのだ。

 見本はいつも傍にいた。

 同じようにすることなど造作もない。

 

「こちらが本来の形、ということでしょうか。ですが」


 1度目と比べて、アメリアという存在を見極める。

 高速で回転する思考。

 必要な事柄を並べて、結論を導く。

 この場で重要なのは自らの固有能力が封印されたことでもなければ、アメリアの能力の強大さでもない。

 相手の舞台に引き摺り込まれた上で、どうすればよいのか、ということだった。

 その点で言えば、この状況はなんとも容易い。

 最初の封印よりも拘束が厳しいことなど、わかり切っていたことである。


「想定通りです――!」


 漲る魔力が消え失せたが、気にせずに直進する。

 外への放出には制限が出たが、元より白兵戦を挑むつもりだったのだ。

 予定には変化がない。

 相手も優香の対応は見越していたのであろう。

 慌てた様子もなく、鞭を展開して受けに回る。


「はああああッ!」

「やあッ!」


 複雑な軌道を描き優香に迫る鞭を紙一重で回避して、一気に距離を詰める。

 必殺のタイミングでの胴を狙って一撃。

 この後の展開を想定しつつ、放った一撃は、


「無駄です!!」


 直撃する直前で動きを止める。

 加速していた剣戟が一気に鈍くなって、相手の障壁に止められたのだ。

 内部に漲っていた魔力の消失。

 現象としては先ほどまでの能力封印と同じ原理であろう。


「やはり……!」


 相手からの反撃を受ける前に大きく後ろに下がる。

 追撃が放たれるが、片手の剣で弾く。

 意識するのは魔力の生成機能について。

 ここが封じられると流石に厳しいが、今はまだ動いてはいる。

 最悪の事態は頭の片隅において、少しだけ距離を取った。


『マスター』

「ええ、この人の固有能力、とても強力です」


 全貌はまだわからないが、表に出てきた分の考察は完了していた。

 この能力の肝は相手の能力を封印すること――ではなく、何を持って、干渉するのか、という点が重要になっている。

 わかりやすく言うならば、ポイント制とでも評すべきであろうか。

 アメリアは自分が持っているポイントに応じた規模で、相手の能力を封ずることが出来るのだ。

 通常時の持ち点は変動しやすく、基本的に多くはない。

 だからこそ、彼女は相手の能力をポイントに変換して、相手の能力で相手の実力を封印するという手段に出る。

 自らの固有能力なのに、主体性が存在していない。

 敵によっては成り立たない方程式。

 この辺りはまだ本質を発揮できていない部分なのは明確だった。


『深層展開していない状態でも危険度は特級でしょうか。浸透系の能力としては最高峰でしょうね。干渉する、という部分に関しては無条件な辺りに性格が出ていますよ』

「封印と表現してますが、正確には通常通りに能力を発揮できなくさせているんだと思います。浸透系がメインで、距離を問わないところから考えると、遠距離系も複合しているんでしょうね」


 ざっくりと言えば、葵を5点、優香を5点、フィーネを10点と評価し、葵と優香でフィーネの能力を相殺した。

 これが最初の能力封印の原理である。

 ただ、この通常時の封印は完璧なものに成り得ない。

 固有能力の中には、途中で出力などが変動するものがある。

 優香の『夢幻の蒼』、皇帝の『魔導世界』などは代表例であろう。

 つまり、アメリアの評価では5点だったが、実は10点に変化していた、と言うこともあり得るし、基本的に発動時が基準点となるアメリアの能力は『変化』に弱い

 アメリアの価値観に沿っているからこそ、通常時にはどうしても対応できないケースも混じってくるのだ。


『深層展開した場合の評価は如何でしょうか』

「今年度では間違いなく3指に入るでしょう。昨年度でも上位は揺るがないです。非常に癪なことですが、姉さんとの相性はかなり良い」

『固定の値には強い方だから、ということでしょうか』

「ええ。どれほど強力でも、変化・・がない力には強い。本質が展開してしまえば、圧倒的な拘束力も手に入りますからね」


 通常でも強烈な能力だが、まだ奥があるのが厄介な部分である。

 仲間の撃墜をトリガーとして発揮される深層展開。

 こちらこそが、本命であり、アメリアを攻略する上で避けられない部分であった。


『仲間の撃墜は何よりも重い。ゆえに、あり得ないレベルの拘束が発生する』

「はい。私の固有能力も今は沈黙しています。条件付きで完全に能力を封印する固有能力。あの方の能力はそういうものなのでしょうね」

『私のデータベースの中でも上位にくる危険な能力だと思います』

「……でしょうね。おそらくですけど、根本的に対抗できる能力は少ないと思います」


 封印と言っているが、正確には敵の能力に干渉し、機能不全を起こす、というのが正しい表現だろう。

 能力はただ、その1点のみ。

 特化したタイプゆえに優香や皇帝のような広い範囲での応用はできないため、汎用性という意味では下の下だろう。

 バトルスタイルもこの固有能力ありきになってしまい、固定化は避けられない。

 しかし、それらのデメリットを大きく覆すメリットも大量に存在していた。

 この能力による干渉を防ぐには、浸透を遮断するタイプの能力か、機能不全を解消する類の能力でなければどうしようも出来ない。

 明確に対抗できる強さでなければ、何もすることが出来ないのだ。


「姉さんでも、抜本的な対策は無理。私が知っている魔導師でどうにか出来る人はいないかもしれないです」

『マスター……』

「健輔さんでも、万全であるならば、という言葉が頭に付くでしょうね」


 固有能力は魔導における最上位。

 ポイント式で言うならば桁が異なると表現すべき位置づけにある。

 下位の能力、ようはリミットスキルなどで抵抗しようにも持ち得る出力差が大きな障害となってしまう。

 格が違うゆえに対抗が困難、というのはそういう事情があった。

 おまけに仲間が撃墜された後の強制力は数値化すると文字通りの意味で、桁が違う次元となる。

 能力の特性のみで対抗するのは厳しいだろう。

 事実、能力値が変動することで封印から解き放たれていた『夢幻の蒼』が完全に沈黙してしまっている。

 おそらく、この戦場でアメリアの能力を防げるのは、自らへの変化を完全に遮断する『美姫』ぐらいしか存在していない。

 クォークオブフェイト側では優香がもっとも相性が良い、と考えても何も問題はないだろう。


『マスター……』

「並べてみると、中々に状況は悪そうです。いえ、最悪と表現すべきなんでしょうね」


 結論から言えば、多少の小細工は可能、というレベルの差になる。

 ライフが万全でなければ打つ手もあったが、既に相手は全快してしまっていた。

 ここから削り落とすには奇跡の1つや2つは必要だろう。

 

「……私に出来ることは、1秒でも長く戦い、あの人の全てを解き明かすこと」


 上げていった要素はアメリアの圧倒的な能力を示すモノばかり。

 絶望の1つや2つはしてもおかしくはない状況だが、悪い知らせばかりという訳でもなかった。

 アメリアの能力は変動する能力に弱い。

 仲間の撃墜という条件で強制力を高めているだけで、瞬発的な出力を高めれば一時的に拘束を解除することは十分に可能である。

 強制力が高まり、能力としての完成度が高まっただけで、大本の部分に変化は少ない。

 所詮は小細工。だが、何も出来ない訳ではなかった。


「――いきますよ!」


 顔には笑顔を。

 胸には誇りを。

 相手は難敵。強大な壁を乗り越えることこそ、魔導師の本懐たれば。

 この状況は正しく天啓だと、優香は確信している。


「前に、出てきますか!」

「無論です。行動しなければ、良き未来には決してたどり着けない!」


 魔力の放出を最小限に抑えて、内部に力を溜め込んでいく。

 問答無用に機能停止させる能力ではない以上、タイミング次第では上手く能力を使うことも不可能ではない。

 健輔は『万華鏡』を使用不能にされた上で、内部魔力にも手を加えられていたのだろう。

 急激な落差が発生しているところに、相手側からの妨害。

 基本的に万華鏡を失えば万能系の弱点が表に出てきてしまう。

 常の力を出せる方がおかしいと言えた。

 その点、優香は十分に考察を行ってから攻撃を仕掛けている。

 部分的な優位に過ぎないが、主導権は握っていた。

 攻撃を仕掛ける側である以上、能力の発動に対して注意していれば、戦闘は可能である。


「くぅぅぅぅ!」

「ふッ!」


 素早く移動をして、連撃を放つ。

 大きな痛手にはならないが、ダメージはダメージである。

 何より、相手側のフィールド効果を無力化できているのも大きい。

 撃墜しないと発動できない効果。

 これ以上のライフを与えるつもりはなかった。


「思った通り」


 固有能力を問わず、能力の類を機能不全に陥らせる力には驚いたが、戦闘能力という意味では大したことがない。

 相手を引き摺り落とし、同じ舞台で戦う。

 結果を表すならば、その一言に尽きた。

 勝利を得るためにはどうしても最後は自らの戦闘能力は必要になる。

 戦闘能力を補助する類ではない以上、アメリアの能力自体に大きな変化はないと断言してよいだろう。

 相手の能力を無効化することで多少の出力アップはあるようだが、メイン能力ではない上に出力アップの恩恵は微々たるものと言えた。

 固有能力がなくても、優香の戦闘能力ならば十分に抵抗が可能である。


「ッぅ!! 止まり、なさいッ!」

「お断りしますッ! 押しとおる!!」

「させない!」

 

 優香の身体に大きな干渉が行われる。

 鈍くなる思考、魔力の生成に大きな障害が発生していた。

 アメリアの渾身の妨害を前にして、健輔と同じように無防備な姿を晒す。

 急激な落差についていけない相手に対して、万全の状態で迎え撃つ。

 近接におけるアメリアの必勝パターン。

 正義の炎の中で突破できた者は誰1人も存在しなかった。

 絶対の自信と共に敵を引き摺り込む。

 

「舐めないでください!」


 アメリアの自信を正面から粉砕するかのように、九条優香が吼える。

 鈍くなったと理解した瞬間、彼女の秘策が炸裂した。


「魔力の膨張!?」

「臨界突破――! 魔力バースト!!」


 アメリアの能力は常時発動であるが、効果のほどにはムラがある。

 最初の封印には対抗できていたのだ。

 挑むまでに魔力を溜め込むことなど造作もなかった。

 急激な魔力の膨張。

 つまりは、大きな変化が本当に一瞬であるが、アメリアの拘束を緩める。

 続くものがない1発限りの爆弾であるが、このタイミングでの効果は十分以上であった。

 アメリアの拘束は干渉を行い、それ以下の数値のものを行動させない点にある。

 この時の干渉力は彼女の認識が影響しており、仲間の撃墜が最高レベルの干渉力となっているのだ。

 逆を言えば、一瞬であろうが、干渉力を超えた場合に咄嗟に対応することは難しい。

 最大レベルの拘束を一瞬であろうとも凌駕する力。

 アメリアの認識を下にしているゆえに、評価できない類の力には脆い。

 突発的な変化を前にして、瞬時に能力の価値・・を評価できるほど、己の能力を彼女は使いこなしてはいなかった。


「そんな、方法で……ッ」


 絶句するアメリアを優香を不敵に笑い返す。

 一瞬の攻防。

 この刹那に掛けるために、準備をしていた。

 僅かでも能力による拘束を上回れば、一撃ぐらいは当てられる。

 理想を全力で回転させて、魔力を限界まで高めていく。

 制御など無視して、自らの身体を弾き飛ばす勢いで魔力を生成する。

 アメリアが後先を考えずに拘束を仕掛ければどうなるかわからないが、相手の思考よりも蒼き閃光が速く動く。


「きゃああああ!?」

「続けて、参ります!」


 渾身の一撃は完璧に入ったことで、優香は確信を深める。

 試合の開始時から引っ掛かっている部分があった。

 わざわざ固有能力を封じるなどということはせずに、魔力の生成自体を止めしまえばいいのに、と不思議に思っていたのだ。

 ルール上で止められているのか、とも思ったが、攻撃を受けて、相手側の能力が明らかになる度に違和感が増していくことで違うと理解できた。

 やらない、ではなく出来ない。

 正確にはやる意味があまりない、というべきであろうか。

 アメリアの能力は固定された価値観でこそ力を発揮する。

 常に変化する価値観の前には脆い。

 ここまでくれば、優香とて簡単にわかった。

 何故、単純に考えれば1番相性が悪いであろう優香ではなく、一見すると相性が良さそうな健輔を狙ったのか。


「――ふふ、ここまで曝け出せば、十分かな」


 微笑みは刹那。

 穏やかな表情を浮かべて、優香はそのまま勝利へと足を進める。


「勝利を、いただきます!」

「――生意気な子っ!」

「血縁に傍若無人な姉がいますから。あなたからすれば、大したことがなにのでしょうけど」

「よく、口が回る!!」


 暴走気味の力のままに、優香は剣を振りかざす。

 慌てるアメリアの対応は後手。

 当然ながら、仲間の撃墜分の力は使っている。

 しかし、2人分の犠牲でも出力バカの力は止まらない。

 これが全力全開の九条優香。

 世界ランク第2位は伊達ではないのだ。

 どれほど素晴らしい仲間であろうが、残酷な現実の前では太刀打できない。

 これもまた、1つの事実であろう。


「はああああああああッ!」


 変化に弱いから、魔力の生成などを制限することは通常時には出来ない。

 仲間の撃墜という強力な固定値が加わっても原則に大きな変化はなかった。

 超出力を持つ優香だからこその逆転の一撃。

 一気呵成に攻める優香を前にして、アメリアは防戦に回るしかない。

 下降を始めるアメリアのライフ。

 勝てるはずだった戦いが一気に劣勢へと転がり落ちる。


「一撃、二撃!」

「ッ、そう、何度も!!」


 慌てる心を抑えて、アメリアも決死の反攻を行う。

 能力は全開で封じに掛かっている。

 出力値がとんでもないことになっているため、影響が出てないように見えているが、制限は必ず掛かっているのだ。

 本来の優香の火力ならばとうの昔に終わっていたであろう。

 アメリアの腕で拮抗が可能な時点で確かなに弱体化は発生している。

 その上で、


「甘い!」

「嘘ォ!?」


 純粋に優香の方が強い。

 技巧、力、速度。全てで上回る近接アタッカー。

 距離を問わない戦いが強みのアメリアではどうしようもなかった。

 おまけに悪い時には、悪いことが重なる。


『正義の炎――フィールド効果、アウト』

「しまった!?」


 優香が稼いだ貴重な時間は『正義の炎』の貴重なリソースを削り取る。

 反転する結末。

 優香がいくつもの策を重ねて、ついに導いた勝利へと道。

 

「くぅ――」

「終わりです!」


 最初とは逆転した立場と異なる視線。

 再び生まれた刹那。

 直前とは異なる結末へと至る一瞬で、


『正義の炎、エイナ・レント選手、アレス・サイドリック選手、撃墜判定』


 ――終わりを告げる宣告が響き渡る。

 直前までの優位から一気に顔色が変わる優香。

 逆に満面の笑みを浮かべるアメリア。

 両者の立場が一瞬にして逆転するだけの事態。

 無論、クォークオブフェイトの仲間たちが意図的にやったことではない。

 相手の特攻を撃墜しないように懸命に耐えていたが、『正義の炎』側にも最後の切り札があった。

 仲間の撃墜を意図的に引き起こす撃鉄。

 自爆によって勝機が『裁きの天秤』に舞い降りてくる。

 撃墜よりも効果は落ちるが、自爆という献身も重い価値を持っていた。

 仲間が犠牲になると言う過程さえ満たしていれば、ある程度の効果は発揮している。

 今大会において、間違いなく最凶の固有能力であった。

 如何なる魔導師でも翼を捥がれてしまえば、地に落ちるほかない。

 新たに追加された2重の拘束が優香の全てを繋ぎとめる。


「後、少しだったわね」


 勝ち誇った笑顔での勝利宣言。

 逆転した立場。

 もう1度の奇跡に期待できるはずもなく。


「これで、終わりよ――!!」


 連続攻撃の直撃が一気に優香のライフを削り取る。

 0へと向かう数値。

 最後の希望が散り、この試合の結末が示されるのだった。










 ――無念の撃墜。

 手から離れた勝利を前にして、彼女が抱いた想いは『納得』だった。

 可能ならば自分の手で勝利を掴み報告したかったが、何だかんだでこの結末も受け入れてしまっている。

 自らが勝利するよりも、大切な誰かが栄光を掴む方がいい。

 どこまでいっても彼女・・の性分とはそういうもので、もその事はよくわかっていた。


「後は、お願いします」


 無念の撃墜にも関わらず、勝利を確信したかのような笑みは何故なのか。

 対峙する『裁きの天秤』にはわからずとも、彼にはわかっていた。

 無条件の信頼。

 1度の敗北程度、あなたならばすぐに乗り越えてくれるという確信が言葉と笑顔に籠められていた。


「ああ、任せろ」


 絶対の信頼を背に受けて、男は雄々しく宣言する。


「絶対に、勝ってやるさ。俺たちは世界最強のペアだからな」


 2人の共同作業。

 共に挑み、超えられない壁はないと信じている。

 見据えるのは遥かな先。

 頂に至るためにも、この程度は笑って乗り越えていこう。


「まさか、この場面で!」

「その、まさかだよ!」


 白銀・・の魔力を身に纏い、魔力の化身が戦場へと舞い戻る。


『クォークオブフェイト、フィールド効果発動。『生命帰還』』


 不敵な笑みは、ここからの勝負に高揚している証。

 敵の強大さなど、己を高めるためのスパイスに過ぎない。

 絶望などとは無縁の最強のエースキラーにして、クォークオブフェイト最高のエース。

 

「さあ、リベンジマッチだ。――ああ、まずは挨拶が必要だよな」


 ――佐藤健輔、帰還。

 より強力となったアメリアを前にも不敵な態度は揺るがない。

 普段の態度そのままに、微塵も臆さず彼は声高に宣誓した。


「俺が先に進むために、踏み台にしてやるよ。『裁きの天秤』」

「笑わせる。もう1度、あっさりと潰してあげるわ! 『境界の白』!」


 相手の言葉に笑みを深くして、静かに構える。

 敗北の屈辱は最後の扉を開いてくれた。

 奇しくも同じ先生・・の教え子同士、導いてくれた恩も兼ねて、先輩には熱い返礼が必要であろう。

 高揚した雰囲気のままに瞳を研ぎ澄ませて、健輔は敵へと告げる。


「見せてやるよ、これが本当・・の万能系だ」


 状況は再び混沌へ。

 3度目となる決戦を制するのは、『正義』か、それとも『万能』か――。

 


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