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第176話『VS正義の炎』

 今年度の大会から戦場として設定されるフィールドはお互いのホームから外れるところが選ばれるようになっている。

 クォークオブフェイトは日本。

 正義の炎はアメリカ。

 つまり第3の候補地である欧州のバトルフィールドの中からランダムに選択されるのが今大会の仕様であった。

 戦域となるのはオーソドックスな陸戦フィールド。

 見晴らしがよく、正面からの激突には持ってこいの状況である。


「隠れる場所がない」

「そうね。お互いの地力が試される。まあ、隠れることが出来るからって勝敗が変わる訳じゃないわ」

「話によると今回のフィールドはこういう空を起点にして、正面からの戦闘を強いる場合が多いって聞きましたけど」

「ああ、事実じゃないかしら。私も噂で聞いたし、実際にいろいろな試合を見たけど過半がこういう場所だったわ」

 

 フィールド内に様々な特色を持たしていたのは、空を飛ぶことが普遍化する前にあった伝統である。

 現在ではどんな選手も飛行が標準となったため、地上におけるオブジェクトの重要性は著しく低下していた。

 無意味ではないが、わざわざ積極的に推奨するほどでもない。


「フィールド効果やコーチもこういう部分まで考えてですかね」

「正面対決が増えていくならば、下のチームが経験を積むのも難しくなるわ。まあ、そんな上の視点なんて考えても仕方がないわよ。正面から、堂々と、いつも通りに粉砕する」

「俺たちはそれで万事解決ですか」

「ええ。私たちはそういうチームで、そういう魔導師でしょう?」


 葵からの不敵な笑みに同じような笑みで応じる。

 リーダーが変わっても本質に変化はない。

 類は友を呼ぶと言わんばかりに似たような形質を持っているのだ。

 緊張した様子だが、楽しそうな雰囲気を隠せていない後輩たちにもしっかりと伝統の性質は引き継がれている。


「健輔、わかってると思うけど」

「この戦い、相手は時間稼ぎに終始するでしょうね。狙うならば撃墜も狙ってくるんでしょうけど。その上で、最初に撃墜を狙うのは」

「あなたよ。私は強いけど、安定している分だけ読みやすいわ。優香は圧倒的な戦闘能力だけど、だからこそ絶対に対策を何処のチームも考える。簡単に対応できるようなものじゃないけど、仮にもランカーだった魔導師を擁するチーム」

「俺たちが桜香さんを国内大会で落としたように、絶対にないとは言い切れない」

「ええ。だからこそ、相手はあなたを狙ってくる。対策をしても、それに対して対抗が可能なあなたをね」


 エースとしての単純な強さでは健輔は両名に及ばない。

 しかし、変わりに溢れんばかりの可能性があった。

 どれほど対策しようが、どれほど優勢になろうが、佐藤健輔がフィールドにいる限りにおいて相手の盤石はあり得ない。

 チームの相性上で最も警戒すべきは優香であろうが、絶対に生き残らせてはいけないのは健輔の方である。

 この程度の分析は必ずしてきているだろう。


「相手のチーム、能力の特性はわからないけど傾向は読めるわ。私たちが抑えられるからこそあなたが要よ」

「了解です。エースの1人として、必ず苦境を乗り越えてみせますよ」

「信じてるわ。今回、フィールド効果の発動権はそっちを優先にするわ」

「俺、葵さん、香奈さんの順ってことですね」


 フィールド効果は全てのメンバーが発動できるが、それで無秩序に発動してしまうと効果の意味がなくなってしまう。

 そのため、発動権の優先度が設定されている。

 普段は香奈が最上位で、次点が葵なのだが今回は変則対応だった。

 後方の方が安全に対応は出来るのだろうが、今回は臨機応変さを優先している。

 より言うならば健輔の生存を優先していた。

 相手の力が読み辛い状況で最大の対応力を誇る男を活かすのは当然だろう。


「とりあえずは後衛として援護をお願いね。どうせ、相手の隠し玉は直ぐに出てくるわ」

「隠すほどの余裕はないですか」

「私と優香ちゃんの圧力をそのまま受けられるほど相手の前衛は固くないわ。必ず『裁きの天秤』が何かするでしょうね」


 作戦としては持久戦も視野に入れているが結果的に凄まじい殴り合いになる可能性は十分に存在していた。

 むしろ、その可能性の方が高いだろう。

 こちらも久しぶりの強豪戦である。

 高ぶりは隠しきれない。

 世界大会の決勝から既に半年を経過しようとしている。

 どれほどまでに成長できたのか。

 1つの試金石となるのは間違いなくこの試合であろう。


「待ち受ける側というのも中々に面倒ですね」

「あら、それも楽しい、じゃないの?」

「楽しいですけど、疲れもしますよ。ここから先に何処で強敵が潜んでいるかもわからないんですから」

「もう次を考えるの? 気が早いわね」

「からかわないで下さい。超えた時のことを考えるのは自然だと思うんですけど」


 お互いに今更何かを伝え合うような間柄ではなかった。

 以心伝心。

 師弟の絆とさながら姉弟のような関係。

 真由美とは似ていて違う関係が2人にはある。

 

「じゃあ、頼んだわよ」

「任されました」


 最後の確認を終えて、前に立つ葵を見送る。

 

「……始まるか」


 意識を試合に集中し、遥かな先を睨みつけた。

 クォークオブフェイト対正義の炎。

 世界大会選抜戦の中で最高峰の戦いが始まろうとしていた――。






 固有能力。

 魔導の中でも一際異彩を放つこの力。

 魔導師の強さを判断するのにも用いられ、社会的な評価にも直結している。

 魔導の最終奥義とは固有能力を獲得すること、とは極論ではあるが1つの解答ではあるのだろう。

 学園で学び、魔導師として大成する――これを目標するとならば、固有能力の覚醒こそが1つの目安なのは間違いないことだった。

 事実、昨年度の3強も固有能力の強大さが強さを支えているのは間違いない。

 

「……私も仕事柄、多くの固有能力に触れてきましたが」


 観客席で両チームの戦いを見守る1人の女性。

 ある意味ではどちらのチームにも彼女の教え子がいる。

 どちらを応援するでもないが、結末だけはしっかりと見守るべきと判断して、彼女はこの場にやってきた。


「アメリアの固有能力は歴代でも間違いなく五指に入る能力でしょうね」


 固有能力は発現したからといって競技的に強いものとは限らない。

 そもそも競技に向いていないという場合もあるが、既存の魔導の体系に当て嵌まらないものほど強力な傾向があるのが固有能力である。

 優香の『夢幻の蒼』などもそうだが扱いが難しいものが多く、すぐさま自由自在に扱えるようにならないのも大きかった。

 身の丈にあっていなければどれほど強力でもあまり意味がない。

 しかし、アメリアの能力はそういった面が皆無であった。

 ある程度の扱い辛さはあるが、齎す効果と比べて習得難易度は著しく低い。

 それでいて効果は強力であった。

 ――まるで、誂えられたかのようにルールにも抵触しない強大な効果を見て、メアリーはまた新しい時代が来ていることを感じた。

 

「……能力に依って立つ魔導師にとっての天敵。己の基準で裁きを下す独裁者」


 この能力の恐ろしいことは効果の強大さと対策のしようの無さが両立していることになる。あくまでもカタログスペックだけであるが、数値だけを見れば『皇帝』すらも打破が可能であろう。

 それほどまでに普通・・の魔導師にとって相性が悪い。


「しかし――」


 彼女にとっての2人の教え子。

 どちらの面倒も見たからこそ、メアリ―には1つの確信があった。


「――圧政に逆らうのは、あなたみたいなタイプですよね」


 試合の開始と同時に全域を覆うアメリアの能力。

 後衛で発動を見つめる健輔。

 開戦の号砲となる固有能力の発動が試合をいきなり大きく動かす。


「大帝の時代、群雄の時代、そして3強の時代を経て、次の世代を担う子たちよ。競いなさい。存分に、全霊で、楽しくね」


 優しく見つめる彼女の瞳は魔導の未来を見据える。

 自らは主役にならずに裏から見続けてきたからこそ、次のステージへと移る魔導のことが誇らしい。

 ここまで引っ張り上げてくれた後輩たちにもまた同じようなものを感じていた。


「どちらが強く、どちらがより楽しむか。つまるところ、魔導なんてそんなものです」


 心の中で描く弟子2人はどちらも資格を満たしている。

 必ず見応えのある試合になるだろう。

 母のごとき、慈愛で両者の激突を見守る。

 この戦いの果てに、どちらかが涙を流すと理解しているからこそ、メアリーは決して目を逸らすことはしないのだった。






「我が名を以って、勅命を下す」


 メアリーをして歴代でも五指と表現された能力。

 能力名『天秤の勅命』。

 基盤となっているのは相互干渉能力であるが、発展したこの能力の厄介度は元の能力の比ではない。

 効果自体はそこまで複雑ではない。

 アメリアが指定した何かと対になるものを捧げて、2つを相殺し合うと言う効果をメインとし、無効化後に無効にした能力に応じた魔力を発生させるだけのものだった。

 発生する魔力の量は無効にした能力の質に応じており、魔力量を補えるのはアメリアだけではなくチームメイトにも及ぶ。

 ここまででも強化と弱体化を同時に発生させられる強力な能力であることは誰にでもわかるだろう。

 しかし、この能力の本当に恐ろしいところは効果そのものではない。


「ちょっ……」

「まさか……」

「……厄介な人が出てきたものです」


 異変が起こったのはクォークオブフェイトに所属する3人だった。

 優香、葵そしてフィーネ。

 彼女たちに共通するのは全員が固有能力を持っているということ。

 そう、アメリアの能力のもっとも恐ろしいところは能力を無効化することではない。

 敵、味方の判定基準が関係なく彼女の主観のみで無効化の選別が可能ということである。

 敵の能力で敵の能力を無効化してしまう。

 彼女の正義に対峙したものたちは己の根幹である部分を崩されてしまうのだ。

 そして、裁きの数だけ彼女たちの力は増す。

 一切の対価もなしにただただ利益だけを享受する。

 悪法もまた法であると言わんばかりの今大会でも最高クラスの性能を誇る固有能力。


「――来るわよ! 優香ちゃん、栞ちゃん、準備はいい?」

「大丈夫です」

「は、はいっ!」


 正義の炎の全体から魔力の増大を感知する。

 敵の能力の詳細はわからずとも葵は歴戦の魔導師であった。

 自らの能力が使えなくなった後に発生した敵魔力の増大。

 因果関係がないと考える方がおかしいだろう。


「私の能力が使えない、だけじゃないわね」


 情報が欲しい、と思うと同時に親友から素早く念話が入る。

 フィールド全域に及んだ異変。

 バックス側でも何か掴んでいたようである。


『単刀直入に言うけど、気付いている?』

「ええ、私の能力と何かが繋がる感じしたわ。魔力に覚えがあったし、もしかして」

『うん、優香ちゃん、葵、フィーネさんで魔力網が形成。その後に全員の固有能力が使用不能みたいだね』

「ふん、そういうことか」


 舌打ちと共に、相手の戦力を大きく上方修正しておく。

 この状態で敵を迎え撃つとなると些か以上に不利は否めない。

 簡単に負けるようなことはないが、ハッキリと根幹部分が崩されている。


「……仕方ないか。私は前で可能な限り抑えてみる。後衛の方に指示はお願いね」

『任された。うん、初戦から苦労しそうだ。頑張って姿は隠すようにするよ。美咲ちゃんだけしかバックスで戦えるのはいないからね』

「護身ぐらいはしっかりしてよ。……じゃあ、後はお願い」

『ほいほい、了解しましたー』


 念話を切り、敵の攻勢へと思考を走らせる。

 相手の能力だけは想定を超えてきたが、流れ自体は当初の予定通りでもあった。

 細部を微修正し、隣にいる優香に確認を取る。


「私の固有能力が使えない。優香ちゃんはどんな感じ?」

「こちらもです。恐らくですが、何かと引き換えに無効化された感触がありました。感じた魔力は、フィーネさんのものでしたが」

「やっぱりか。うん、つまりはそういうことなんでしょうね」

 

 優香が持つ固有能力と番外能力。

 葵が持つ固有能力。

 合計して3つ能力と引き換えにして、フィーネの持つ固有能力を封じた。

 それだけの容量を持つ女神を褒めるべきか、相手の鬱陶しい能力を評価すべきか。

 流石の葵でも迷うところである。


「案の定か。毎度のことながら、ランカーというのは嫌な相手ね」

「葵さん、多分相手も似たようなことを思ってますよ」

「あら、そうかしら? ま、能力を封じたぐらいで勝てると思われてるのも癪だし。精々、暴れてやりましょうか」

「お付き合いします。私も何もないのは久しぶりですから」


 構える葵たちの視界に正義の炎の前衛たちが映る。

 数はアメリアを込みで3名。

 オーソドックスなスタイルであるが、そのままで終わるほど相手も呑気ではない。

 何よりも眼前の3名以外も動いているのは明白なのだ。

 攻めてきている。

 この状況から何もわからないほど葵は鈍っていない。


「とりあえずの狙いは私からかしら、天秤さん?」

「ええ、あなたがこのチームの支柱だ。崩しておいて、損はないでしょう?」


 アメリアが魔力で作られた剣を構える。

 中々に堂の入った構えは俄か仕込みではないことが窺えた。

 トリッキーさに偏っていた去年までとは根本的に違うのだろう。

 

「なるほど――ねッ!!」


 いつもよりも格段に鈍い魔力の練り。

 幾分の支障が出ているのは認めた上で、葵は冷静に魔力の制御を開始した。

 封じたられたものをどうこうするにも現状の葵では手の打ちようがない。

 うだうだと悩むぐらいならば、相手を倒して解除してしまえばいいのだ。

 撃墜後にも効果を発揮する類の固有能力もあるにはあるが、明らかにアメリアのはその類ではない。

 本人依存ならば倒せば元通りで、何よりもこの能力が敵の戦法の根幹となっているのだ。

 アメリアを倒すことがそのまま勝敗に直結する。


「てえええええええいッ!」


 決断の後には迷わない。

 葵らしい果断さは攻めに現れている。

 拳、蹴り、体当たりとバリエーションに富んだ手段でアメリアを迎え撃つ。

 映像でしか葵を知らないアメリアからすると能力を封じたはずなのにほとんど影響がないように感じられるほどの動きであった。


「固有能力を封じても、これですか!?」

「あんまり自分の能力に頼った記憶がないのよね。ほら、能力がなくなったからって戦えなくなるのは恰好が悪いでしょう?」


 あくまでも葵にとって固有能力は添え物。

 己の根幹を成すものではないのだ。

 ある方が強いし、便利ではあるが必須ではない。


「やはり、あなたは私が相手をして正解でした――!」


 アメリアの予想通りに白兵戦では分が悪い。

 決してアメリアの白兵技術が低い訳ではないのだが、能力でランカーとしての評価を受けている彼女と白兵戦技術でランカーになった葵ではどう考えても後者が優越する。

 事前の作戦でもほとんど能力の低下がみられないと予想されていた。

 

「あなたに敬意を。その上で、落とさせていただきます!」


 アメリアの中で固有能力が胎動する。

 既に発動し、能力に封印を掛けているが別に1度しか使えない訳ではない。

 封印を続けていく度に魔力の生成量が増えていくため、無尽蔵でもないがまだ余裕はあった。

 何より、今回発動するのは新しい方ではなく元々持っていたものである。

 1対1での決闘で負ける訳にはいかないのだ。


「これは……!」


 葵の中から大きな力の塊が抜ける。

 生成する端から無効化されていく感覚。

 激しい脱力感と共に来るべきものが来たのを悟った。

 相互干渉能力。

 アメリアをランカーに押し上げた決闘向きの力である。


「くっ!」

「貰います。ここで落ちろ、破星!!」


 大量の魔力を籠めた魔導斬撃が空を駆ける。

 アメリアの渾身であろう一撃と必殺のタイミング。 

 流れを持っていきかねないコンビネーションを前にして、


「――ダメよ、その真っ直ぐさじゃね。こっちのエースはもう1人いるのよ?」


 笑いを含んだ警告が放たれる。


「なッ!?」


 虚空から斬撃が放たれて、アメリアの必殺にカウンターを仕掛ける。

 咄嗟に反応できたのは彼女もまたランカーである証であった。

 世界の頂点に名を連ねた存在として、あっさりとやられるはずがない。


「早い――!」


 アメリアは敵の対応の早さに顔を歪める。

 この状況でアメリアに対応すべく動く者。

 そんなもの、1人しか該当しない。


「境界の白……!」

「おうよ。お前の相手は俺だ」


 言葉と共に健輔が転移してくる。

 後衛に位置していようがポジションを選ばないのがこの男である。

 本当の意味での遊撃班。

 ポジションなど一切選ばない。


「全て順調には、いきませんね。流石は、王者を破ったチームです」

「いやいや、順調だろう? これだけ楽しくて派手なんだ。もっと笑えよ」

「……なるほど、私の能力を前にしても変わりませんか」

「当たり前だ。誰が相手でも俺は変わらん」


 葵を庇うように前に出て、意識を集中させる。

 背後から葵の気配が消えるのを感じつつ、脳内では得られた情報を高速で処理していた。

 未だに健輔の『天昇・万華鏡』は封じられていない。

 開戦と同時に他のエースたちは大半が封じられたにも関わらず、である。

 

「さて、葵さんに代わって俺がダンスの相手を務めよう。よろしいですか?」

「嫌だ、と言っても代わってくださらないのでしょう? 私も自らを狙うハンターに背中を向ける流儀ではありません。正面から再度、お参りすることにします」


 会話で少しだけ時間を稼ぐ。

 外と中で温度が違うなどもはや健輔には慣れたものである。

 昨年度の強敵たち、数多の女性との邂逅に1年ぶりの感謝を送っておく。

 

「なるほど。では――」

「正々堂々と――」


 余計な方向に脱線しつつも健輔はこの戦闘で最も重要点について気付いていた。

 この戦いで重要なこと、それは万華鏡が使えるということである。

 万華鏡が封じられていない理由は恐らく2つ。

 1つは、不意に封印することで隙を生み出すため。

 もう1つは封印するための何かが足りないため。

 恐らくはこの2つのどちらかであろう。

 どちらも相応にあり得る。

 この事を念頭に置いて、相手の能力を解き明かしながら健輔は戦う必要があった。

 おまけに相手は優勢の状況。

 普段と違う展開にチームが動揺しているのだ。

 時間を掛け過ぎるとそのまま勝敗の天秤が相手に傾きかねない。

 あらゆるものが高難易度。

 予想を超えた苦境に健輔の魂は歓喜する。

 

「――参るッ!!」

「勝利しますッ!」


 歓喜の叫びと勝利への意気込みがぶつかる。

 双方譲らぬ戦意の発露。

 戦場に響き渡る激突の合図は試合に参加する全てのものへと届いた。

 此処に至って、新入生たちは理解する。

 これが、『魔導』なのだと――。


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