絡まれやすい空腹のクウ
「おい!そこにょ黒いの!」
クウがアーク国に入って、そして速攻で絡まれた。
「こにょ国の一大事っとぅえ時に来るぬわんて大した度胸じゃにぇえか。それとも、知らずにきたんか!?」
絡んできたのは、べろんべろんに酔っ払った大柄のゴツイ大男だった。
銅の胸当てとくさりかたびら、腰に鉄製の剣を差し、背のマントには盾の中にトラの刺繍がしてある。
どうやら何処かの傭兵のようだ。
「あんのサメのせいでコロシアムは延期、そのせいで国内の税金の増加、こちとらやってらんねえっていうのによお!」
朝から自棄酒でもしていたのか、ろれつが回っていない。国外からやってきたクウに愚痴って八つ当たりしているようにしか見えない。
しかし、当の本人は、
「・・・・・・・(グ~~~~)」
朝から砂漠海を歩いてきたので腹が減ったようだ。
傭兵の事など気にも止めず、食料を探してあっちへウロウロ、こっちにウロウロとしていた。
「無視してんじゃあねえよ!!!」
当然傭兵はキレる。
「・・・・・・・(ウロウロ)」
クウは彷徨う。
「おい、なめてんのかてめぇ!?」
更に傭兵はキレる。
「・・・・・・(ウロウロ)」
が、クウは無視する。
「・・・・オイ。殺されてえのか?」
プッツンといってしまったようで、傭兵は剣に手をかける。
「・・・・・・・(ウロウロ)」
しかし、クウは無視する。
一応傭兵の存在は気づいているが、空腹に耐え切れず、今は食料の探索に意識がむかっていた。
(ブチッ)
どうやら、理性のほうも切れてしまったらしく、傭兵はクウに襲い掛かった。
「死ねええええぇええぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ブンッという風きり音とともに、傭兵の剣はクウの首を狙って振り下ろされた。
周囲の人間が息を呑むが、傭兵は気にしなかった。
ガキィーーーーーーン!
だがしかし、サンドシャークを素手で倒せてしまうクウにとって、そんなものは簡単にひねりつぶせたようだ。素手で弾いたことにより発生した耳障りな金属音に顔をしかませながらも、右足を軸にしてクルッと一回転すると、傭兵の首を両手でつかみ力をこめた。
「グガッ!?ウンググググググググggyゥ・・・・・・!!」
いきなり首を絞められたことに驚愕の表情を見せた傭兵は、苦痛に顔を歪ませジタバタと暴れだした。
もう、完全に酔いが醒めたらしく、その顔は赤くなったり青くなったりを繰り返し、挙句の果てには真っ白になってガクガクと痙攣しだした。
「ギュ!・・・ガギ・・・・・カセッ・・・!!」
「・・・・ッグウ!・・・・・」
「・・・クッ・・・・・」
「・・・・」
「・・」
「」
「・・・・やっと、静かになった。」
傭兵が口からブクブクと泡を吹いて白目をむき意識を失うと、クウはその手を離した。
クウからしてみれば、空腹でイライラしている時に突然意味の分からないことで絡まれたと思ったら剣を振るわれたのだから、溜まったものではないだろう。
「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」
が、周りの目からしてみればソウでもなかったらしい。
ドン引きである。
傭兵が大声を上げて旅人に剣をふるったら、その旅人が傭兵の首を絞めたのだから。
当然町の人々はクウを警戒した。
「・・・・あの」
「ヒイィッ!?」
「・・・・すみません」
「キャアァァァァァ!!!」
「・・・・・ちょっと、話を」
「(ヒュン)」(無言で逃げる音)
「・・・・・・」
クウ、無視され始めました。