黒装束は最強無双
サメ視点です。
サンドシャークは、ソレに一定の距離までに近づくと急停止し、
体を大きくうねらせながら、地中深くまでもぐった。
この砂漠海は地表の砂が一定の温度に達すると、地下の冷たい砂と地表の暑い砂がいれかわる。
そのため、まるで海流のような流れがそこら中で発生している。
サンドシャークはその流れを、長年の経験と鍛え上げられた感覚により、
完璧に熟知していた。
そのおかげか、サンドシャークはその流れに乗ることでこの砂漠海一高速で泳ぐことができるようになった。
今回は、接近を悟られないように地下深くまで潜り、ソレが歩くことにより発生する音に耳を澄ませ、位置を把握。
狙い定めて、流れに乗って、一気に襲い掛かった。
ソレが逃げるようなそぶりを見せなかったため、サンドシャークは捕食の成功を確信した。
その味を確かめるため、骨や血肉を食い砕くために、その大きな口を勢いよく閉じようとして、
空へ吹き飛ばされた。
サンドシャークはこの事態にまったく対応できなかった。
空を飛んだ経験など皆無だし、そもそも自らを地中から引きずり出せるような怪力の持ち主に出くわしたことも無い。
ただただ困惑し、自体を把握することもできないまま、サンドシャークは空中に大きな弧を描いて、高速で地面に叩きつけられ、絶命した。
「・・・・・でかい」
さて、その吹き飛ばした犯人はというと、なにやら奇妙なポーズをして固まっていた。
腕をピンと伸ばして、拳をにぎりしめ、天へとかかげていた。
そもそも、この砂漠海で丸腰というのは正直いって、自殺行為である。
最近では魔物が活発化して、人を頻繁に襲い掛かっていた。
人は非力で、魔法があまり使えないとすぐ魔物に殺されてしまう。
では、なぜ、丸腰のはずのソレはサンドシャークを吹き飛ばすなどという化け物じみたことができたのか。魔法を使わずにこのようなことができる者など、まず存在しない。
「・・・・・にしても。」
ソレはつぶやいた。
「・・・・・コレ、どうしよう。」
ソレは先ほど吹き飛ばした、サンドシャークの死体を見ていった。
「・・・・・最寄りの街まではもうすぐだけど。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・。」
「・・・。」
「・・・しょうがない、バラバラにして、持っていくか。」
そう言うと、おもむろに手を開いてぴんと伸ばし、サンドシャークに向かって手を振り払った。
すると、その場所に一陣の風が吹きぬけた。
そしてサンドシャークは部位に分けられていた。
「・・・ちょっと、多いけど、まあ、いいか。」
バラバラになったサンドシャークを持ち上げると、町に向かってまた歩き始めた。
もう気がついているとは思うが、今回ソレが行った「吹き飛ばす」「切る」
などの所業はすべて、『素手』により行われたものである。
主人公、最強乙。