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「ほら、いい加減泣き止みなさい。」
「ううっ。冷たいよ、翠花。」
「仕方ないでしょ。彼女がいたんじゃ。いつも言ってるでしょ?思い立ったら特攻もいいけど少しは落ち着いて考えなさいって。彼女がいるかいないかぐらい調べてから告白しなさい。」
先程の大きな声で人の名前を呼びながら、親友の有紀が抱きついてきた。電車で一目ぼれした相手に、告白をしたが見事に撃沈したらしい。今年に入ってから3度目の失恋である。有紀は、惚れっぽく次から次へと好きな人が現れる。
「だって、知り合いでもない限り、告白しないと始らないじゃない!!お友達になって下さいって言っても彼女が大事だから無理って断られるんだよ!!」
有紀の片思いの相手は大抵イケメンである。当然、そんな高物件に彼女がいて当たり前だ。
しかし有紀は中身は少々変わっているが、黙っていれば可愛い。
にもかかわらず、お友達になって下さいも通じないというのは、全員、ほぼ一目惚れにもかかわらず野生の勘か、見た目だけでなく中身もいい人達なのだ。彼女が好きで大事だから心配かけたくないからごめんねと言われ、毎回告白しては振られるを繰り返す。
「人を見る目はあるのにねぇ。縁がないんじゃどうしようもない。」
「ひどいよ、翠花ぁ~。」
「はいはい。帰りにケーキでも奢ってあげるからいい加減泣き止みなさい。」
「ほんと!?約束だからね!!」
「はいはい。」
キンコーン、カンコーン
ケーキを奢ってもらえると聞いて有紀は泣き止み、始業のベルを聞いて席へと戻っていく。
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放課後。今朝、有紀と約束したケーキを奢る為に街へとぶらぶらと向かう。
「どこに行く?」
「ん~、アルパジョンもいいし、メープルもいいし。」
「あんまり高いとこは却下ね。」
「わかってるよ~。あっ、あそこ何のお店かな?窓のガラス細工が綺麗だけど、どこから入るの?」
有紀が指を差したほうを見ると看板が横並びに3つあるビルがあった。看板は3つあるが、扉は2つ、扉の間にガラス窓が1つあった。
「隣の扉はそれぞれのお店の入り口みたいだし、確かにどうやって入るのかしらね?」
看板には、Lily of valley とだけ書かれている。
「あら、お客さんかしら?」
窓を覗き込むように見ていた翠花と有紀はびくりとして背後を振り返った。




