表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

少年サッカー 第2話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/05/08

 エンリコでのランチに何度か誘われ、そのたびに山下コーチに口説かれ、結局、金曜夜のコーチ会に顔を出すことになった。店の奥のテーブルでは、六年担当の高橋コーチ、四年担当の村上コーチ、そして店長の山下コーチが、料理の手が空くたびに席に戻ってきては、真剣な顔で話し込んでいた。


 どうやら「システム」の話らしい。4-2-3-1 と 4-3-3。数字の羅列に見えるが、彼らは当然のように理解している。聞いてみると、フォーメーション、つまり選手の配置のことだという。


 言われてようやく、4人がバックスで、真ん中がミッド、前がフォワードの人数だと気づいた。そんな基本すら知らなかった自分が、ここに座っていることが急に恥ずかしくなる。


「4-2-3-1 は中央が固くて守備が安定するんです。トップ下が司令塔になるので、ゲームメイクがしやすい」


 高橋コーチが説明すると、山下コーチが頷く。


「Jリーグでも多いですしね。理解しやすいけど、高学年向きかな」


 村上コーチも「なるほど」と相槌を打つ。


「低学年は 4-3-3 がいいですよ。役割が分かりやすいし、サイド攻撃がしやすい。四年はこれが合ってます」


 彼らの会話を聞きながら、胸の奥がざわついた。

 ――自分はサッカーのことを知らなすぎる。

 ――こんな場所にいていいのだろうか。


 話題は次に「審判」に移った。大会では主審一人、副審二人が必要で、試合のないチームから一人ずつ出す決まりらしい。しかし四年はコーチが二人しかいない。負担が大きいから、もう一人ほしい――その視線が、自然と自分に向けられてくる。


「四級免許が必要なんですけどね」と山下コーチ。


 副審ならまだしも、主審なんてとても無理だ。サッカー経験ゼロの自分にできるはずがない。


「石川さん、ラグビーやってたんですよね? 副審の経験あるでしょ?」

 村上コーチが言う。


「まあ、ありますけど……ラグビーとサッカーじゃ違いますよね?」


「同じ、同じ。ボール出たら旗上げればいいんですよ」


 いや、そんなはずはない。サッカーにはオフサイドがある。


「オフサイドって、副審が見るんですよね?」


「慣れれば簡単ですよ」

 今度は山下コーチまで加勢してくる。


「試合を生で見ると分かります。テレビじゃダメ。子どもの試合でも、Jリーグでも、生で見ると審判の動きが見えてきますよ」


 Jリーグを生で見たのは一度だけ。子どもの試合も数えるほど。そのとき審判の動きなんて意識したこともなかった。


 ――サッカーの審判なんて、できるだろうか。


 帰り際、何度も「コーチやりませんか」と声をかけられたが、正直に「無理だと思います」と答えた。

 店を出た夜風が、妙に冷たかった。


本編はこちらから読めます。

https://ncode.syosetu.com/n0828ls/2

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ